「高等学校におけるアクティブラーニング型授業の実践」

~アクティブラーニングで、今までの授業をもう一段レベルアップさせる

京都市立堀川高等学校 井尻達也先生

<1>堀川流アクティブラーニング

1.「どのように生徒に伝えようか」から「生徒が何を・どのように学ぶか」へ

井尻達也先生
井尻達也先生

私自身の経歴からお話しします。大学に入って、宇宙のことを学びたいと思い、JAXAに就職して宇宙ステーション「きぼう」の開発に携わっていました。その後、教員に転職し、教科は数学でクラス担任も担当するとともに、SSHやアクティブラーニング等の研究開発をして今に至っています。

 

授業をやっていて、なかなかうまくいかず悩んでいました。それが去年、ある先輩からアクティブラーニングというものがあることを教えてもらいました。中身もやり方もわからなかったのですが、軽い気持ちで始めました。すると、生徒が本当に楽しんでいるようで手応えもあり、面白さを感じたので、校内に普及したいと考えるようになりました。

 

アクティブラーニングには様々な定義があると思いますが、堀川高校で考えているのは、「生徒が自ら考え、対話し、進んでいく授業。生徒主体の授業」です。これまではいつも「どのように生徒に伝えようか」と思っていましたが、「生徒が何を・どのように学ぶか」という視点であまり考えたことがありませんでした。アクティブラーニングを知った時、そこで自分の価値観が変わった気がしました。

 

2. 堀川流アクティブラーニングの実践

 

現在、本校で行われているアクティブラーニングをご紹介します。

 

いろいろな先生が様々な教科・科目で行っています。これらを次のように分けてみました。まず1つめの群は(A)ペアワーク、(B)グループワークの群です。2つめの群が(C)レポートを作成したり、(D)セミナーで活動していく群。そして3つめが(E)リフレクションの群。これは授業が終わった後の振り返りですね。さらに4つめが(F)その他の方法です。

 


(A)汎用性が高く、短時間で行える「ペアワーク」

まず(A)のペアワークです。これは、隣の席の人と机をくっつけて、向き合って話すだけです。メリットとしては、汎用性が高く短時間で行えます。いろいろな教科で活用されていました。

 

国語でペアワークを導入している先生は、「生徒が眠そうなときや、授業に緩急・リズムをつけたいときにペアワークを使う」と言われます。確かにペアワークをすると、多少授業のスピードが落ちます。生物で導入している先生は、「ペアワークを取り入れると、話が盛り上がる。また、聞いた話を言葉にすることでまとめられたり、理解度が上がったりする」と話されていました。

 

(B)教え合うことが大きな効果を上げる「グループワーク」

グループワークは、ペアワークの人数が少し増えたケースです。「班で協力する、教え合う、メタ認知につながる」というメリットがあると思います。メタ認知と言うのは、例えばグループ内でよくできる生徒が質問を受けますが、相手が思うような答えが返せないことがあります。それを通して「自分は思っていたほど理解できていなかったんだ」という気づきにつながることです。

 

また、少し難しい問題に挑戦すること可能になるのもグループワークの特徴です。数学では、4人程度のグループを作り、少し難しい問題を与えます。生徒に授業アンケートを取ると、「友達に気軽に聞けるからいい」「人に説明できるくらいまで自分が理解しているかが確認できるのがよい」と、できる生徒にもそうでない生徒にも効果があるのがわかります。

 

生物の授業でやっていたのはジグソー法でした。ジグソー法というのは、あるテーマについて複数の視点で書かれた資料をグループに分かれて読み、理解した範囲で情報を交換し合い、交換した知識を統合して全体を理解したり、テーマに関連する課題を解いたりするもので、生徒同士の学び合い・教え合いを促す協調的な学習方法です。ただ少し時間がかかり、50分間の時間内では難しいので、2コマ連続で実施されていました。この授業法は、東京大学のCoREF(大学発教育支援コンソーシアム推進機構)のDVDを先生が見て、これらならできそうだと始めたそうです。

 

(C)レポートもアクティブラーニングの大事なポイント

レポートは様々な場で取り入れられると思いますが、アクティブラーニングの観点で言えば、課題探究・成果発表・プレゼンなどで、自分がいろいろな形で報告をまとめていくときに有効です。具体的な場面としては、実践教科や「総合的な学習の時間」の探究活動に使ったり、「数学(教養科目)」では受験を意識しない数学の中にレポートを取り入れています。

 

(D)多様な考え方を知る「セミナー」

セミナーは、先生や生徒が皆の前で問題解説をすることをノートに写すだけではなく、生徒同士で質問を出しあうことです。私も取り入れていますが、これによって先ほどお話ししたようなメタ認知や再確認ができます。

 

生徒が発表することで、思いもよらない考え方、想定していた解答とは違うものも出てくるので、生徒にとって多様な考え方を知るいい機会にもなっていると思います。生徒が前で発表するとき、詰まることがありますが、そんなときは聞いている生徒の側から助けが出ます。

 

(E)リフレクションで「自分がその授業で何を学んだか・学べなかったか」を振り返る

リフレクションのポイントは、認知・言語化・考察です。授業の最後や単元の最後に、「(1)何を学んだか、(2)理解したことは何か、(3)わからなかったこと・わかりにくかったことは何か、(4)疑問に思ったこと、(5)感想」を書かせます。これによって、「自分がその授業で何を学んだか(あるいは学べなかったか)理解したか」を言語化して、メタ認知を促します。

 

ひとつ失敗したのは、「(5)感想」とすると、面白かったとか面白くなかったという授業感想に留まってしまいます。そこでこの項目を「(5)考察」にして、「授業の中で何を考えたのか」を書かせるようにしたら、振り返りの質が上がりました。

 

授業を行った先生方からは、「生徒の様子がこれまでとは違い、盛り上がって楽しそうだった」「やはり生徒は自分の意見を話したがっていると感じた」「生徒たちが対話する場を用意できていなかった」「従来の授業ではテストの点数は伸びても生徒は成長していないと感じた」と言う感想が聞かれました。

 

このように、校内でアクティブラーニング型授業に手ごたえを感じる先生が現れるとともに、アクティブラーニングをきっかけに生徒が前向きに学ぶ様子も表れました。

 

私達はこれまでワンウェイの授業しか受けたことがなく、授業とはそういうものだと思い込んでいました。アクティブラーニングを取り入れたことで、それまでの思い込みは捨てて、授業はもっと自由にやっていいんだと考えられるようになりました。ここに気づくことができたのも私にとってはアクティブラーニングの成果の一つです。

 

3. アクティブラーニングは簡単・手軽に始められる

 

アクティブラーニングがよいものだと頭でわかっても、いざ始めるとなると不安も多く、なかなか普及が進まないのも事実です。そこで、実践のポイントを3点紹介します。

 

1つめは、「簡単」にすることです。

 

アクティブラーニングは、机をくっつけるだけで始められます。生徒同士が会話を始めると、それだけでも授業がちょっとアクティブになると思います。講義形式にの授業に一部アクティブラーニングを取り入れるのもいいと思います。全部でなく、やれそうな時だけでよいのです。

 

私がアクティブラーニングを行う場合は、生徒の様子を見てときどき話しかけるだけで、板書はほとんどしません。授業の準備も、先生方同士で「この問題をアクティブラーニングで使おうと思うけど、どうかな」と相談できますから、想像されるほど大変ではありません。

 

2つめが、「手軽」にすること。アクティブラーニングにお金はかかりませんし、タブレットなども不要です。「どんな問題を出すか」「それをどのようにするのか」をつなげるだけなので、従来されてきたことに加えて特別な準備は必要ありません。すぐに組み込めるので、週明けの月曜から実施可能です。

 

3つめは「安心」です。というのは、大学や高校でもすでに積極的に取り入れているところがありますし、しかも学力が上がったという事例報告も中にはあります。なにより生徒が楽しんでやっていることには安心感もあります。

 

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