高等学校におけるアクティブラーニング型授業の実践

知識構成型ジグソー法を利用したアクティブ・ラーニング型授業の実践

埼玉県立浦和高等学校 英語科 池野智史先生

埼玉県では、2010年度から東京大学のCoREF(※1)と連携してアクティブ・ラーニング型授業を行ってきました。目的は、知識構成型ジグソー法(※2)を主軸に据えた協調学習による授業を組み立てるための指導案やワークシートを作成して、それを皆で共有することです。これを5年間行う中で、年に1~2回公開授業を行って、見学した方から意見をいただいて振り返りを行いながら教材を作り上げてきました。


※1大学発教育支援コンソーシアム推進機構大学発教育支援コンソーシアム推進機構
 http://coref.u-tokyo.ac.jp/
 ※2 参考サイト
 http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/14883

まず、この取り組みの概要をご説明します。

この取り組みは、2010年度から当初5年計画で始めましたが、引き続き5年間行うことになり、結局は10年計画の事業になりました。協調学習はアクティブ・ラーニングの一形態と考えられます。5年間の実践の中で、このうち特にジグソー法について、協調を喚起する手法として推進してきたという流れです。

生徒たちにはわかりかけていること・なんとなくわかる、ということがたくさんあると思うのですが、協調学習のポイントは、「それを自力で言葉にして考えましょう」というところになるかと思います。また、そうして考えながら話をしていくことが確認できれば、十分にアクティブな学びを実現しているであろう、という解釈のもとで実践しております。

それから、生徒が自分の言いたいことをしっかり言葉にできる、例えば英語科としては、自分の言いたいことをうまく英語にして話すことができている、という点もポイントとみなしています。

グループ学習というと、「結局はできる子が一人でやっているのではないか」とよく言われます。一方的に教えるとか聞くとかいったことが生徒間でも行われてしまって、これでは教師が一方的に話す講義の形と変わらないのではないか、といったことを懸念されるのです。


実は、先生にはちょっと質問しづらいということも、生徒同士であれば聞きやすい。また、教える側の生徒も「自分はこうやってわかった」と言っても相手に理解してもらえなかった時、どうしたらわかってもらえるかということを考えます。教える側にも教えられる側にも良い効果があると考えてよいでしょう。

「グループ学習をするなら多くの生徒に発表させたいが、授業時間内では難しいのではないか」という危惧もあると思います。しかし、そもそも3・4人のグループの中で意見を共有するという時点で、十分に自分の言葉で咀嚼し、発表しようとしています。クラス全体で共有する前段階で、十分にある程度の発表共有が小規模に行われているというので、小グループ内での発言に、全体の前での発表を凌ぐ効果を見出している、ということです。


さらに、「できる子・できない子の差が埋まらない」という批判もあるのですが、差が埋まるかどうかではなく、できる子は一層伸び、できない子はわからないことをお互いに聞きあってクリアするというステップを踏むことができる、というところがメリットであると思います。

グループ学習の方法としてジグソー法を用います。ざっと流れをご説明します。


先ほどお話しした知識構成型ジグソー法は3人組が基本になっています。最初に、資料を3種類準備し、同じAの資料を持っている3人組、Bの資料を持つ3人組、Cの資料の3人組を作ります。そして、それぞれの資料について、「1人ではちょっと難しく、3人いても、話し合うなどしないとちょっと難しくて最後まで答えはできないかな」というレベルの問いを設定してあります。これを3人で共有して考えて、ワークシート上にまとめます。この中で、教え合い、学び合うことをします。これが「(1)エキスパート活動」です。

続いて、先ほどの(1)のグループを解体し、図のようにABCのメンバーがそれぞれ入った形で新しいグループを組み直して次のジグソー活動に移ります。そして次の黄色いワークシートへ移るのですが、ここでは、さらに一段高いレベルの問いを設定してあります。グループのメンバーは、(1)で学んだそれぞれ別のものを持っていますので、それを持ち寄り、うまく組み合わせると答えられる設定になっています。これが「(2)ジグソー活動」です。


ジグソー活動が終わったら、(3)クロストークを行います。これは、グループ3人組でやっていたことをクラス全体に説明するという段階です。時間がない場合には省略してしまうこともありますが、それは、説明を分かってもらえなかった時に、ではどのように説明しようか、という試行錯誤が繰り返される、というところが重要であると考えるからです。聞き役・話し役の「役割交代」がジグソー活動やエキスパート活動の段階でも必要というのもポイントといえるでしょう。


最後に、一人で答えをまとめる作業の時間を作ります。当初に与えるのと同じ問いなのですが、それを一人で整理して答えが作れるか、という再確認の投げかけを行います。これを最後に置くことで、個人の理解深化も念頭に置いています。

 

初めて取り組むにあたってどうしたらよいか、という話がよく出てきますが、まったく初めての人が教材も作らねばならず、かつやり方も知らないではやりづらい。


それに関しては、埼玉県内ですでにいろいろな実践を重ねて来て、事例もいろいろあります。


「CoREF」で検索していただき、ホームページの「使い方キット」(※)というところを見ていただけば、国語から英語、保健体育に至るまで、いろいろな教科の指導案や教材が載っていますのでご覧ください。すでにいろいろな人が実際に授業を行ってみた実践例がたくさん載っていますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

http://coref.u-tokyo.ac.jp/archives/5661


[質疑応答]

質問1) 形だけではなく、本当に深い学びになっているというのは、どこで判断できるのでしょうか。授業をする中でキーポイントがあれば教えていただきたいと思います。そして、アクティブ・ラーニングをしたから生徒が伸びた、というエビデンスをどうやってとるのかについてもお願いします。

池野先生:深さに関して、確証が得られないところはありますが、もし挙げるとすれば、活動の最初と最後に同じ問いに答えてもらう、というパターンがジグソー法の基本形にあります。最初にゴールとなる問いに当たらせておき、いろいろな活動や意見交換を経てから、最後に個人で同じ問いにもう1回答えるというものです。ゴールとなる問いは、まだ何もやっていない段階ではたいていの人が即答はできないようなことを設定するので、最初と最後でどれだけ書ける量が増えたか等で、学びの深さは判断できると思います。


アクティブ・ラーニングをやって伸びたかどうか、ということに関しては、私の場合は英文を書く能力で測るのが常です。授業で扱った内容に関して2度3度と作文を書かせて、その中でどれだけ活動の中で扱ったことが頭に入っているか、結局それができているかどうかによって判断できることは間違いないと思います。


(関連質問を受け)
また、アクティブ・ラーニングをどこで取り入れるのか、というタイミングについては、章や単元のまとめの作業として入れて、さらにペーパーテストで普段通りに評価する、というのがまず一つかな、と考えています。


質問2)今の評価の話を聞いていると、知識をどれくらい持っているかということは評価できると思うのですが、主体的に取り組んでいるかどうかということはどうやって評価できるのかと思いました。主体性などに関しては、どのように考えられているのでしょうか。

池野先生:先ほどの、最初と最後に同じ問いに答えさせるという活動で、最後がどれくらい伸びたかというところで大体測れるということがあります。それ以外では、例えばその時間中に課題に対する会話をどれくらいしていたか、ということもありますが、これだけでは判断しきれないです。なぜなら、ガーッと話しているからしっかり頭に入っているかといえばそうとは限らず、逆に授業中はずっとしゃべらないで自分のパートの説明だけする子の方が、いいものを書いてきたりするので、そのあたりを考えるとやはり最初と最後に書かせるもので判断するのがよいかと思います。ですから、中の話し合いがどうなっているか、というところに関しては、話し合いを放棄する生徒については指導に行きますが、話し合いの姿勢・発言内容は評価には加味していません。

 


質問3)今、自分の授業でスピーチやプレゼンテーションをやらせているのですが、なかなかできません。生徒にこういったスキルを説明するための教材はないでしょうか。

池野先生:本校では、スピーチとかプレゼンテーションの技法は1年次に学んでいます。1年次は週1回ALT(Assistant Language Teacher:外国語指導助手)が担当する授業があります。


ALTは全て英語で話をしており、かつ、教科書のレッスンがある程度終わったところで(1学期の後半くらいでしょうか)、プレゼンテーションをするにあたっての注意というのをしています。例えば「前にきて話をするときにどうしたらいいですか」、「目線の動かし方はどうしましょうか」というテーマに即して、「近くの1人だけを見て話をしていたら気持ち悪いよね」とか、「かといって、後ろの方の時計とかあの辺を見ながら話をしたらロボットみたいだ」とかアドバイスを与えています。


具体例を入れて、これはやったらまずいよね、ということをALTに言ってもらう。あるいは、そういうことを実際にスピーチで場を設定してやってもらう。欧米の人が人前で話をするときにどうしているか、というところを実体験をもとに話をしてもらうのが一番いいのかなと思っています。


質問4)生徒同士の人間関係が難しい場合、教員がファシリテーターとしてうまく関わっていくいい方法や教材があれば教えてください。

池野先生:あまり念頭に置いていなかったケースなのですが、「いつもと気分を変えてみよう」などと言って、それとなくグループの組み替えを指示する、などでしょうか。一般的には、会話を促進するときにはあまりこちらからは働きかけない、ということが基本であると言われています。


教材については、注目すべきところを外さずに何か作ってみることが早道でしょうか。「自分が想像しているのと違う方向に行ったらどうする?」という心配がある時はまず、「このAとBとCを揃えたらこの答えに行くはずだ」というものを自分でシミュレーションをして作るということです。


その上で「こういう変なことを言う奴がいるかもしれない」という可能性があったとすれば、一ひねり加えて筋道を立てておく。そして、生徒たち自身の中で修正する手掛かりを作るよう考えておくとよいのだと思います。例えば「3人集まれば、こういう変なことを言っても他の2人が突っ込んでくれるだろう」とか、「A一つだけならこういう読み方もできるかもしれないけれど、BとCでその可能性を消そう」とか。


教材を作るときに、「ちょっといいものができたかな」と思ったら、他の人に投げかけてみたり、自分でもう2,3日寝かせてから考えてみたりして、「これだったら三人寄れば文殊の知恵で気づくだろう」というレベルまで調整します。授業時間中に教員側から内容へ言及することは避け、「あと5分ですよ」「あと1分だけど説明できますか」という時間管理の言葉かけにとどめ、どうしても困っているグループがあったら、「ちょっと隣のグループに聞いてみようか」といった助け舟を出します。


 

質問5)このようなアクティブラーニング型授業は、どのくらいの頻度で行っているのでしょうか。

 

池野先生:50分全部を生徒の協調学習主体とするのは、学期に1度、年に2~3回程度です。回数は少ないですが、適切なタイミングでこの形態を経験することで、生徒の発話が活発になる効果を期待できます。


また、ジグソー法でなくとも、普段の授業中でペアワークを毎回確実に取り入れていますが、
実感として、普段のペアワークなどの発話が活発になる雰囲気を感じています。ペアワークまで含めると、アクティブ・ラーニングを実践している度合・頻度はジグソー法実施の頻度より高くなると考えます。なお、今回ワークショップで行った教材(パラグラフ・ライティング)は、2年次生を対象に実施しました。

 

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