高等学校におけるアクティブラーニング型授業の実践

目的を明確に持ち、できるところから・協力し合って導入に取り組む

アクティブラーニング型授業の導入事例

岐阜県立可児高等学校 浦崎太郎先生

<2>実際にアクティブラーニング型授業はどのように行っているか

入試演習の授業で、生徒の必要性に合わせた内容の学びが実現できた

浦崎太郎先生
浦崎太郎先生

数学と理科では、入試演習でアクティブラーニングをたくさん使いました。アクティブラーニングとはこんなに使えるものだ、ということを私達自身が実感しました。

 

例えば3年生の11月頃、物理も化学も教科書が終わり、マーク試験対策までにはまだちょっと時間があるという時期に総復習をしたい時を考えてみます。クラスの中には、(1)物理Iのみをセンター試験で必要とする生徒、(2)物理IIを必要とするが基礎力に乏しい生徒、(3)物理IIを必要とする基礎力が高い生徒、の3つのタイプの生徒がいます。今までのような一斉授業で難しい問題をドンと持っていったら、(1)の生徒は「どうしてこんなことしないといけないの」となり、(2)の生徒はついていけません。こちらが提供する教材でついていける子は半分から1/3程度になってしまいます。

 

そこで同じ悩みを抱えていた化学の若い先生が、原形を確立しました。

 

毎回配るプリントには(1)物理Iのマーク問題、(2)物理IIの簡単な基礎問題、(3)物理IIの発展問題の3種類を1回のプリントに落とし込み、配布します。(1)~(3)のそれぞれの問題をやりたい生徒同士でグループを作らせて取り組ませました。私達教師は基本的にレクチャーしません。これにより、同じ50分の1つの教室の中で(1)、(2)、(3)のそれぞれ異なった内容を同時進行で進めることがはじめて実現できました。1つの教室で、教師が最初から最後までしゃべる授業では実現できない入試演習の授業が実現できたわけです。

 

アクティブラーニングが面白いのは、ベテランも若手も関係なくできるところです。ベテランには彼らだけが持つノウハウを出すことができ、若手は新しいアイディアをどんどん出すことができます。そこで互いがフラットな立場になったことで良い授業を作ることができたんだと思います。

 

目的は生徒の力をつけること。そのためにアクティブラーニングが有効だったら使う

今年度の本校でのアクティブラーニングの実践をお話しします。

 

「受験学力の向上」を外すことなく、とありますが、これはつまり本校はアクティブラーニング至上主義には走っていないということです。目的は生徒の力をつけることで、そのためにアクティブラーニングが有効だったら使う、という立場です。科目によってアクティブラーニングの向き、不向きがあります。それから単元や時期によっても違います。このあたりの条件は考慮します。

 

なおかつ教員が一人でアクティブラーニングを行うのではなく、取り組んでいる教員同士が相談・情報交換しながら、「ここはアクティブラーニングをやったほうがいいね」というイメージを共有できた部分について実施します。私は毎時間やっていますが、効果的なところで集中的にバッとやるという教員もいます。また、もしワンウエイの授業の方が効果的だと判断したときは、それでやる。このような使い分けも可能です。

 

チャレンジをして「良かった」「良くなかった」という情報を交換し、徐々にゆっくりとノウハウを確立しつつあります。何がなんでもアクティブラーニングをやるのではなく、課題を見つけ、それを克服しながら、アクティブラーニングを進めるという了解のもとに学校全体が動いています。また、授業だけでなく補習にもアクティブラーニングを取り入れています。私がやっている土曜講座は名大オープン模試の過去問題を使って物理演習をやっています。このときもそんなに解説はしません。

 

授業は2コマ通しの110分で、区切りはワンサイクル55分です。まず25分間は問題を自力で挑戦します。次にグループワークの段階で解説を配り、解読しながら自分達で理解を進めていきます。グループワークは15分程度です。その後、8分程ピンポイント解説をします。ラストの7分はその時間に学んだことをレポートに書きます。生徒には実力差があるので、レポートで解くレベルや問題数はまちまちです。このように55分を2コマ行います。

 

最後はレポートを書かせて個人の頭の中で再構成させることが必要

自力解答とグループワークを通じてあれこれ考えさせます。私は、板書はしません。自分達で解答できているからです。私が伝えるのは、念押しやさらに別の考え方があることを示すだけです。グループワークを15分間とることにより、私が説明しなければ生徒が救われないという事態はなくなります。生徒達に任せておけば、初めの方の問題はみんな自分達で解答し、生徒達は満足して1日を終えていきます。その後レポートを書かせて終わります。

 

グループワークは、雰囲気だけの追求に終わってはいけません。グループワークが盛り上がると教員は騙されます。これだけ活発に議論しているんだから、きっとみんな完璧に理解したんだろうと錯覚します。でもその後にテストをしてみると全員できないこともあります。つまり、全員でつなぎ合わせたらできたけれど、一人ひとりの中で全体像が組み上がっていないために誰一人、答案を作れないという落とし穴があります。

 

これを解消するためには、最後はきっちり個人に落とすということです。レポートで学んだことを自分の頭の中で再構成させるということです。

 

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