高等学校におけるアクティブラーニング型授業の実践

目的を明確に持ち、できるところから・協力し合って導入に取り組む

アクティブラーニング型授業の導入事例

岐阜県立可児高等学校 浦崎太郎先生

<3>導入期の課題への対応と、アクティブラーニングの成果

アクティブラーニングに取り組む生徒の姿が教員の意識を変えた

当初はアクティブラーニングの導入には時間が必要だろうと、慎重な計画を立てていました。ところが実際は、思いもかけず歯車が回っていきました。理由は2つあります。

 

まず、2013年度に着任した新校長が、アクティブラーニングは実力をつける上で効果があることを実感として知っていました。だからとにかくアクティブラーニングを導入しようというトップからの指示が出ました。しかし、トップダウンだけでは物事は進みません。非常にラッキーだったのは、ボトムアップが機能したということです。それはアクティブラーニングに取り組む生徒の姿を教員間で共有できたことです。

 

放課後に全統第1回記述模試の復習をしていたのですが、その年の試験は難しかったので、生徒が危機感を持って復習をみんなでやろうという空気が醸成されました。

 

私は、放課後に生徒達が自主的にみんなでグループワークしているときに職員室に行って「今、生徒達がこんなことをしているんだけど」と声をかけ何人かの教員に来てもらいました。そしたら、「これやりたい。こういうふうに可児高校を変えていけたらいいね」とベテランや中堅が口にしました。これが大きかったです。この光景が可児高校を変えたシーンだったと思います。これによって、2年前倒しで一気にアクティブラーニングの導入ができることになりました。このように、トップダウンとボトムアップがかみ合ったことが幸いしたと思います。

 

授業の質をどのように担保するか

次はクオリティの問題です。私はアクティブラーニングにはクオリティが必要で、そのノウハウがあるということは知っていました。しかし最初から「あれが必要だ」「これも必要だ」と言っていたらみんな引いてしまいます。そこでどこまで簡略化ができるかという実験をしてきました。そうすると簡略化した分、なかなか結果に出てこない。そこで私自身が改めて何が必要なのかを勉強する必要性を感じました。そして小林先生に何度もお越しいただいた中で、このような視点を持って授業をすると良いというアドバイスもいただきました

 

席の配置も実際に島を作る必要があります。アクティブラーニングの最初の一歩は隣同士の会話でも良いとは言いますが、島を作ったときとは生徒の反応が全然違います。だから1のstructureの問題は大きいと思います。

 

それから教え方です。だらだらと教えていてはダメだということです。これまでのように懇切丁寧なレクチャーの上には、アクティブラーニングは成り立ちません。時間がどれだけあっても成り立ちません。大胆に説明はカットしていく必要があります。だから、どれだけの時間で、どれだけの内容を、どこまで伝えるのかということが重要です。あとはプリントです。どのレベルのものをどのように配布するのか。ここはけっこう知恵の絞り所です。

 

グループワークをどのようにファシリテートしていくか。これは実は難しいところです。アクティブラーニングを進めていくと、必ずここに行きつきます。いかに生徒に問いを投げかけることができるか。これらのポイントを意識してやっていくと、確かにそれまでとは動きが変わってきます。面白いのは、若手教員でもポイントを全て押さえてやると、生徒が熱中します。この辺りは、ベテランも若手も関係ありません。

 

新たに導入する学校に予想される展開は

「導入期の課題と対応」という話をしてきましたが、「今後導入をする学校には新たにこのような展開があるのではないか」という話をします。

 

まず、校長の強力なリーダシップによる唐突な導入の場合。これは絶対校内がギスギスしていきます。そうならないために必要なのは「授業研修体制の確立」です。校内に体制を作っていく。それで授業のクオリティを上げて、「生徒が確かに変わるね」という手ごたえをある程度、教員間で共有した上で組織的に広めていく。このような段取りを作っていかないと破綻します。校長がある日、転勤・退職となった時点でその学校からアクティブラーニングが消えてしまいます。

 

逆の場合、校長がアクティブラーニング導入に非常に慎重で、現場の教科担任レベルで導入に熱心な教員がいる場合です。おそらく校内での研修はできないと思いますので、例えば校外の研修会などに足を運び、とにかくスキルアップをします。そうすれば授業が変わります。授業が変われば生徒は必ず変わります。「これだけ授業のクオリティを高めたら、生徒の反応が変わるでしょ」という実例を作ることが大事だと思います。そこを突破口にして校長からスポンサーシップを得ることができ、組織的導入につながるのではないかと思います。

 

ですから、次のような展開が考えられると思います。いずれの場合もクオリティの担保が大切だということです。

 


アクティブラーニング導入の成果と今後の課題

本校にアクティブラーニングを導入した成果です。学校評議員・県の教育委員会の方のコメントが一番参考になると思います。

「授業に向かう生徒の姿勢が以前より良くなった」

「どこが習熟度の高いクラスかわからなかった」

「ここまで生徒が生き生き動く授業を可児高校で見られるとは思ってもみなかった」

「アクティブラーニングの効果が表れている」

 

それから学級日誌です。これは生徒のウソのない感想です。

「今日はいろいろな科目でグループワークをやりました」

「一人でやるよりも、わからないところをすぐに聞けるので良いと思いました」

「グループワークで理解したところをもう一回やって、一人で解けるようにできれば力になると思いました」

このようなことを言っています。生徒がアクティブラーニングをどう評価しているかが、学級日誌からも読み取れます。

 

学校の外から見ている人はけっこう良い評価をしてくれていますし、私達教員も生徒が変わってきたという実感があります。ただ、今のところまだ数値には表れていません。この先いろんな数字を見ていきたいと思っています。

 

今後の計画ですが、とりあえずアクティブラーニングを導入するというところまではできました。だけど、学力向上につながらなかったら、本校にとっては意味がありません。だから「アクティブラーニングを学力向上に生かすためにはどうすればいいのか」。こういう課題意識を持ってみんな授業をやって行くことになっています。そこで9月頃に全職員が持ち寄ってみんなで相談するような研修をする計画を立てているところです。

 

※2014年7月2日実施

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