高等学校におけるアクティブラーニング型授業の実践

日常の授業と論文その他さまざまな学校行事とをつなぐデザイン

渋谷教育学園渋谷中学高等学校 国語科 河口竜行先生

最初に、渋谷教育学園中学高等学校と私自身の自己紹介をします。私がこれからお話をする内容全体に、この学校紹介が結構かかわっていますので、ご説明させていただきたいと思います。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校は、1996年に開校した共学の完全中高一貫校で、高校募集はありません。渋谷教育学園幕張というより有名な先達が同じ学園にありますが、そちらよりも13年後にできました。それから早稲田渋谷シンガポール校というのもありまして、どちらも姉妹校です。理事長・校長は幕張と同じ田村哲夫です。今の中1がまだ20期生、この春卒業した生徒が14期生という新しい学校です。

1学年は約200名、6学年で1200人程度の学校で、5対6の割合で女子が多い状態です。帰国生入試を1月末に行い、「帰国英語」というクラスに入る生徒は定員の1割くらいです。それ以外に、英語は話せるけれど帰国英語のクラスには入れないという生徒も2、30人いますので、全体の3~4割くらいは海外生活の経験があることになります。

キーワードは「自調自考」


この後何度も話に出てきますが、学校目標は『自調自考』。自分で調べ、自分で考えるということで、最初からアクティブラーナーを養成する学校であるいう意識で取り組んでいます。さらに『国際人』『正しい倫理感』という、この3つを柱にしております。2010年からユネスコスクール(※1)、2014年からはスーパーグローバルハイスクール(SGH:※2)にも選ばれ、活動が始まっています。


本校の特徴として第一に挙げられる活動は、高校1年から2年で、1年以上をかけて「自調自考論文」を作成することです。12,000字以上は書きましょう、という本格的なもので、それについても後ほどお話をしたいと思います。


※1 ユネスコスクール http://www.unesco-school.mext.go.jp/
※2 Super Global High school  http://www.sghc.jp/

ここで、皆さんにペアワークをしていただきます。みなさん周りの人とお知り合いになった方が、リラックスして話も聞けると思いますので、目の前の方と簡単に自己紹介をしてください。まず簡単に自己紹介をしていただいて、その後「今までどんな授業をされてきたか」ということと、「1週間急に休みができたらどこで何をしますか」ということについてお話しいただければと思います。どの順番でもかまいませんので、2,3分でお願いします。それではどうぞ。

はい、ありがとうございます。急に打って変わってアクティブになられましたね。自分もかなり緊張していましたので、今のでほぐれてよかったです。

 

さて、再び本校のアクティブラーニングの紹介に戻ります。本校のアクティブラーニングは授業だけではなく、学校で行うこと全てがアクティブラーニングと思って行っている、ということにご注目いただきたいと思います。これが今日の結論でして、先に結論を言ってしまったので、後は気軽に話をさせていただこうと思います。

私の自己紹介ですが、今は進路部で仕事をしています。1987年に私立高校に国語の教師として採用されましたが、当時はすぐに辞めようと思っていました。というのも、自分で「河口塾」というのを作りたくて、そのための修行をしようと思って学校に入ったからです。でも面白くて辞められなくて、結局10年勤めた後、念願の河口塾を作りました。しかし、肝心の生徒がいない、ということで生徒を募集する傍らヤマト運輸で契約社員として宅急便を配ったりしまして、憧れのトラック運転手と憧れの自分の塾というものをかなえたのが90年代です。

その後しばらくして、この渋谷教育学園渋谷が創立したばかりでしたが、何だかとても面白いことをしている、という話を聞き、「これは面白い、自分の塾でやりたいと思っていたことと全く一緒じゃないか」と思い、この学校に来たわけです。創立3年目のことでした。

自調自考を目指すことそのものがキャリア教育、ひいてはそれがアクティブラーナーを育てる

それでは本校のアクティブラーニングの具体的な内容をご説明します。本校では学校での全ての活動が自調自考に基づいて行われています。自調自考を目指すことそのものがキャリア教育になり、ひいてはそれがアクティブラーナーを育てているということになります。これは開校以来の基本理念であり、私たちもこれに基づいて教育を行っています。

 

こちらは保護者向けの進路説明会で、保護者に説明するために作った資料です。平成23年に中教審から「キャリア教育とはこういうものである」という指針が出た時に、本校なりのキャリア教育とはどのようなものか、ということをまとめました。

 

具体的にどのようなことを行っているかと言いますと、まず自分たちで時間を管理し、主体的に動くのでチャイムは開校以来使っていません。校則もありません。制服はありますが、セーターなどの細かいことは生徒たちで決めることになっています。

 

「校長講話」が学びの軸となり、自ら学ぶ姿勢の基礎を作る

それから、特徴的なものに校長講話があります。これはいろいろなところで取材されているので、ご存知の方も多いかと思います。校長講話は、中高6年間、年6回の内容の計画が綿密に立てられています。具体的には、中1「人間関係」、中2「自我のめざめ」、中3「新たな出発」、高1「自己の社会化」、高2「自由とは」、高3「自分探しの旅立ち」です。この中で、自分たちがなぜ学習するのか、自由とは、社会とは、という話を聞き、考える機会が与えられています。我々教員のほうも勉強になります。この話が、生徒たちのキャリア教育やアクティブラーナーを目指すためのベースラインになっているので、指導する側からすればとてもやりやすいです。これを聴くことで、生徒たちは、自分から勉強しようという姿勢になっていきますので。

校外研修は、皆でバスに乗って決まったコースに行くというようなことはしません。まず、各自テーマを決めて、似たテーマの生徒同士でクラスを越えてグループを作ります。実際に行くのは10月ですが、1学期からグループごとに何を調べにどこに行くかという計画を立てます。目的地は中1が鎌倉、中2が信州、中3が奈良、高1で広島、高2では中国(中華人民共和国)または九州に行っています。中国はさすがに成田空港集合ですが、他は現地集合で、現地解散の場合もあります。現地でもグループで活動し、帰ってきてからさらに1、2か月をかけて研究発表の準備をして、最終的にプレゼンテーションをするところまで行います。

また、SGH(スーパーグローバルハイスクール)に選ばれたことで、「国際人として行動できるリーダーの育成につなげる」ということも視野に入れています。基本的には英語科が中心ではありますが、これが始まってから他教科との連携も進みました。

論文や調べ学習では「問いを立てること」を重視する


最後の『自調自考論文』、こちらも1期生の時からずっと行っているものです。高校1年生の時にまずテーマを設定しますが、ここを一番丁寧に行います。学校の教員全員の興味ある分野や得意分野を大きな一覧表にして提示します。生徒はこれを見て、アドバイザーとしていろいろな先生のところに相談に行くわけです。しかし、それはゼミを担当する教員というわけではないのです。テーマが近い生徒が集まって15名くらいのゼミを作り、それを1人の教員が担当して、1年間論文の指導に当たるという形になっています。
1年の流れは以下の表のようになっています。


[自調自考論文作成過程例]

完成した論文を高校2年生で提出した後に、優秀論文の発表会を下の学年と一緒に行いますので、下の学年の子は「よし、来年は自分もここに立とう」と発奮します。最近は中学1,2年生でも自調自考論文のことを知っていて、「自調自考論文で評価されるにはどうしたらいいの?」と中1に言われて驚くこともありますが、よい流れになってきているのかなと思います。

それから本校の特徴として、全員で何々をやりなさい、ということはないのですが、生徒が自分たちでいろいろなコンクールに応募します。一昨年と昨年の『図書館を使った調べる学習コンクール』には、全体で1800名ほどの応募者がある中で、本校からは40名くらいが応募したようで、そこでは文部科学大臣賞をはじめとして、優秀賞、優良賞、奨励賞といった賞を受賞しました。帰国生を中心に英語で論文を書く子もいますので、英語の分野でもいろいろ評価していただいています。


話が前後しますが、テーマ設定(問いを立てること)には非常に重きを置いており、まず15~20字くらいで問いを立ててみよう、という練習をしたりします。最初は「○○について」のようなものを出してきますが、具体的な問いを立てる練習を経て、テーマが決まっていきます。

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