「協同的な学び」あるいは「アクティブラーニング」導入と現在の状況について

~授業の中で学力を高めるためのキーワードは「協同」

鳥取県立倉吉東高等学校 校長 河田雅志先生 

vol.1 アクティブラーニング導入の経緯

河田雅志先生
河田雅志先生

本校は鳥取県の中央部に位置し、創立106年目を迎えます。地域のトップクラスの生徒達が集まる学校なので、一定の質と量の大学進学実績を残すことが期待されています。もちろんそれだけではなく、人間性を高めていくことも目指し、学校教育目標として「21世紀をリードする人材育成」と「主体的学習者の育成」を掲げています。

「21世紀をリードする人材」を説明するために、まず21世紀を「グルーバル化がより一層進行し、他国との関係性の中で生きて行く世界」と捉えます。これからの世界では、きっとこれまで誰も経験したことがない問題が現れるだろうと予想できます。生徒達が学校で学ぶ教科書の問題には正解がありますが、彼らがこれから生きていくことになる実社会の問題には正解がありません。こうした問題を解決するためには、既存の知識だけでなく、他の人とコミュニケーションしながら、「私の意見」と「彼の意見」「あの人の知識」を結び付けることによって、新たなものや解を創り出すことが必要になります。「21世紀をリードする人材」とは、それができる人材のことであり、それに必要となる力を育てていこうとしています。

 

(勉学に)興味がない・自信がない・将来展望がない生徒たちへ「協同的学び」の導入

本校がアクティブラーニングを授業に取り入れて、今年度(2014年度)で3年目になります。まずその導入の経緯と現状について説明します。現在はアクティブラーニングと呼んでいますが、導入当初は「協同的学び」と言っていました。

2011年度に、前校長がスライドのような問題意識を示しました。当時の生徒達の状況を、「(勉学に)興味がない・自信がない・将来展望がない」と捉えており、学校経営方針の説明の中で、私達に「生徒達は基本的に進んで勉強したがらないものだ、という考え方を持っていかなければならない」と話されました。また、「生徒の関心は自分自身に向かっていて、自分の幸せだけを求める生徒が増加している」と分析されました。私達が目標に掲げている、「21世紀をリードする人材育成」「主体的学習者の育成」とは全く逆向きの方向性だったのです。

そこで、解決の方向性として、
(1)学びに対する興味を引き起こし、「主体的な学び」へ
(2)内向きの志向を外向きへ(社会・貢献)
とすることにしました。そして「自分さえ良ければいい」と自らの幸せのみを追い求めるのではなく、自分自身の力を社会に役立て、社会を良い方向へ導くこと、自分にはその力があり、社会と関わることができるということ(「社会的自己実現」)を生徒に知らしめなければならない、ということになりました。これが当時の問題意識でした。


2011年度末の職員会議で、私達は、「一斉教え込み型の授業には限界があるので、これからは『協同的な学び』」を導入」することに合意し、2012年度当初から「協同的学び」の導入を決定しました。

こちらが2001年に策定された中長期ビジョン「倉吉東高のかたち」の概念図2011年度版です。これをベースとして学校経営が行われています。この中にアクティブラーニングの研究というものが入りました(赤枠内)。学校の取り組みとして全教員が関わるために、このような位置づけにしたわけです。

 

平成24年度「倉吉東高のかたち」
平成24年度「倉吉東高のかたち」

鳥取県教育委員会が協調学習を推進

このような方向性に舵を切ったのは前提があります。


2011年度に鳥取県の教育委員会が、「新時代を拓く学びの創造プロジェクト高等学校学力向上推進委員会」を発足させました。全国と比較して低迷する鳥取県高校生の大学進学率に端を発し、経済状況・国公立大学志望の高さ等の条件を考慮しつつも、卒業時には一定レベル以上の学力を身につけさせなければならないという現実的な課題が生じていたからです。また、日本の子ども達は、思考力に欠け、家庭学習時間が少ないという世界的な調査結果に、県内の高校生も同様の傾向を示していることを指摘するとともに、「教育の商品(サービス)化傾向」、社会的貢献意識よりも「個人利益の追求傾向」が強いという現代的風潮をも指摘していました。その上で、本県の生徒が生き生きと学び、より良き人生を送るための手段である進学や就職を果たしていくために、どのような学力向上方策を取ったらよいかについて話し合いに入りました。そこでは「学力」を、「学んだ結果としての学力」と「学ぼうとする力、あるいは学ぶ力」と定義し、後者を重要視しながらも前者を無視しないと確認しています。

2011年度末に提出された提言の中心は、「授業改革」と「家庭学習の充実」でした。いわゆる「一斉教え込み授業」の限界を指摘し、生徒自らが理解を深めようとする活動を支援する教授モデルへの転換、また家庭学習の意味を高めるような授業実践を要求しています。


鳥取県教育委員会はこの提言を受け、2012年度に協調学習を取り入れた授業改善へ向けて10校を研究指定校にしました。当時、本校は別の指定を受けていたので、この10校には入ることができませんでした。しかし、指定校の枠組みを超えた全県規模の授業改革を目指す取り組みとして「学習理論研修」も同時に始まったので、本校もそれを利用しながら、本校独自で協調学習に取り組むことにしました。これが導入の経緯になります。


<つづく>

vol.2 倉吉東独自の協調学習 (1)初年度2012年の取り組み
~年間計画とモデル教科を設定し、示範授業と研究授業を行う
vol.3 倉吉東独自の協調学習 (2)2年目以降の取り組み
~目標達成のための指標作りを行う

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