キャリア教育コーディネーターってどんな人? vol.4

プロジェクトに関わる皆が共に学び成長できる場作りを大切に

山本直子さん(旧姓:池田) 

 NPO法人JAE(2013年12月より㈱酉島製作所に転職) 

【30代女性/活動エリア:大阪府】

山本直子さん(旧姓:池田)
山本直子さん(旧姓:池田)

未来を創る若者達に伝えたい思い

 

山本直子さんが、キャリア教育コーディネーターという仕事についたのには、ある思いがありました。大学時代にフィリピンでの家建設のボランティアに参加。フィリピンの貧困地域で出会った人達は、経済的には恵まれていなくても、とても明るく親切で、子ども達は「将来は学校の先生になりたい」などと夢を持ち、一生懸命に毎日を生きていました。

「そこでの出会いや体験から、自分のこれからの生き方を真剣に考えるようになりました。さらに、これからの未来を創る日本の若者達にも、いろんな人と出会っていろんな価値観に触れてほしい、教科書や教室の中だけでなく実際の社会に飛び込む体験をしてほしい、そして自分の可能性をたくさん感じてほしいと思い、そのことが実現できる機会を自分が作れたらいいなと考えました」。

その後、社員教育を行う会社に就職。中小企業の経営者の方々から、「誇りややりがいを持って仕事をしているが、知名度がないために若い人が入ってこない」という悩みを聞き、社会にはたくさんの魅力的な仕事や生き方をしている人がいる、そのことも若者に伝えられたらと考えました。

こうした思いから、2006年、会社を辞めて、NPO法人JAEに所属。キャリア教育コーディネーターの活動を始めたのです。

 


子ども達が企業から与えられた課題に対して企画立案する授業をコーディネート

山本さんは、2006年度より現在まで、小・中・高等学校で30件のプロジェクトをコーディネートしてきました。子ども達が主体となって、企業から与えられた課題を解決するための企画立案を行うプロジェクトのコーディネート実績が多く、強みとなっています。また、その中で働く大人のすごさを実感できることも重視しています。

プロジェクトのコーディネーターとしては、(1)企業の実施が決まってからの学校開拓・マッチングなどの学校との関係作り、(2)企業から与えられる課題に対して子ども達が企画立案しプレゼンテーションを行うプログラム(ドリカムスクール)のプログラム開発、(3)実施準備・当日支援、(4)ボランティアを含めた関係者との調整、(5)社会への発信(プレスリリース等)、(6)プログラム実施前後の社員研修を行っています。

 


<プロジェクト例(高校の事例)>


・2007年度「こんな携帯、あったらいいなを企画しよう!!」北陽高等学校1年生・(株)NTTドコモ関西 
・2008年度「じゃがいもを使ったメニューを考えよう!」北陽高等学校2年生・(株)カネジ(現(株)トドクック)/夏休みに3日間の職場体験+じゃがいもを使った商品企画(実際の商品化・パンフレット掲載まで)
・2009年度「大阪企業家ミュージアムを中高生が楽しく学べる施設にするための提案をしよう!」北陽高等学校3年生・大阪市立鶴見商業高校3年生・大阪企業家ミュージアム
・2009年度「20年後(または50年後)の未来の家を考えよう!」大阪市立鶴見商業高校1年生・3年生・大和ハウス工業(株)  ⇒ プログラムの詳細はこちら
 
これらのほかにも、行政からの委託事業や地域でのイベント、教員研修等も担当しています。2009年度以降は、新たにキャリア教育コーディネーターをめざす人の育成にも携わっています。


子どもも大人も共に学び成長する場を作れた喜び

多くのプロジェクトの中で、山本さんがもっとも印象に残ったのが、大阪府茨木市内の小学校4年生に実施した、(株)酉島製作所の若手社員さん8名によるものづくりの出前授業(ドリカムスクール)。授業の3日目の最終日に、子ども達からサプライズで社員さんへのお礼のメッセージが伝えられました。「ものづくりって楽しいです」「仕事の話、かっこよかったです」。この言葉を聞いた社員さんは思わず涙。

「ある社員さんの感想に、『早く大人になって、早く仕事がしたいという子どもからのメッセージが、とても印象に残り、その思いに恥じない仕事をしていかなければと感じました』とありました。子ども達と社員さんが『共に学び成長する』場を作れたことが嬉しかったです。その後、3学期には1/2の成人式で社員さんが招かれるなどの継続的な関係もできました」。

プログラムの実施に当たっては、教える側の大人が活き活きと楽しく授業できることが大切と考え、社員向けの研修を開発し実施。また事後の研修も行い、子ども達に関わることをきっかけに、改めて仕事のやりがいや自分の強みに気づいてモチベーションがアップしたり、チームワークが良くなって仕事に活かされたりするように工夫しています。

そういったことが評価され、山本さんがコーディネート・社員研修を担当していた㈱酉島製作所が、第2回キャリア教育アワードの地域密着部門で最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞しました。

「これからも、子ども・若者はもちろん、教える側の大人や運営に携わるボランティアスタッフなどプロジェクトに関わるみんなが共に学び成長できる場作りを大切に、自分自身も成長し続けるコーディネーターでありたいと考えています」。

 

山本さんによるプログラム事例

20年後(または50年後)の未来の家を考えよう!(2009年度ドリカムスクール講座)

大阪市立鶴見商業高校1年生・3年生・大和ハウス工業株式会社

 

本取り組みは、鶴見商業高校が従来より行っているチャレンジ講座の一環として2009年度に行われました。チャレンジ講座全体のねらいは、「社会のことを学ぶ中で生徒自身が自分の将来について考え、目標に向けて前に進む力を身につけること」です。1年生全体が12の講座に分かれて学ぶ構成とし、その講座の1つがこの「ドリカムスクール講座」でした。これは「生徒が主体となって社会課題の解決に取り組む機会」と位置づけ、生徒はチームで活動しました。

◆プロジェクトの流れ ~「知る」「考える」「形にする」「伝える」の4つのステップ


ドリカムスクール講座では、実際に働く大人が使っているものや題材から設計された、本物のプロジェクト(期間限定の仕事)を「知る」「考える」「形にする」「伝える」の4つのステップで行いました。


具体的には、生徒が4~6人でプロジェクトチームを組み、

(1)働く大人の仕事の考え方や先進事例を「知る」、

(2)企業から出される商品企画等のお題についての提案をチームで「考える」、

(3)チームで考えた提案を発表できるよう「形にする」、

(4)チームで考えた提案を企業へ「伝える」。そして最後に、

(5)生徒の提案に対して、企業は事前に提示した審査ポイントに沿って審査・講評をし、優秀な提案をしたチームは表彰されます。


このステップで、「20年後(もしくは50年後)の未来の家を考えよう!」のカリキュラムも構成しました。

◆本プロジェクトの特色 ~1年生主体のプロジェクトを3年生がサポート


1年生が主体となって「20年後(もしくは50年後)の未来の家を考えよう!」のテーマに取り組むにあたって、まず3年生が、大和ハウス工業の職場見学や働く女性社員へのインタビュー・住宅展示場の見学などを行い、大和ハウス工業について学んだことを1年生に伝え、1年生チームの支援を行いました。

 

また、このプロジェクトには「本物との出会い」があるのも特色であると捉えています。高校から自転車圏内にある大和ハウス工業の住宅展示場に生徒が足を運び、最新設備の住宅を見て、営業最前線の社員さんから生のお話を聞いた上で未来の家の企画を考える構成にすることで、「大人ってすごい!」と生徒が感じ、学ぶ意欲がさらに高まります。

◆実際のカリキュラム

日時

テーマ

内容  (★=企業担当者)

 
 

97日(月)

校内オリエンテーション

・受講生の確定

 

917日(木)

13:2014:10

授業オリエンテーション

知る(過去)

・ドリカムスクールとは?

・大和ハウス工業とは?(3年生からの説明)

・これまでの家作りの工夫

 

924日(木)

13:2014:10

知る(現在)

★大和ハウス:営業の社員さんのお話

「最新の家づくり(長期優良住宅、ユニバーサルデザイン)の背景や工夫を知る」

「お仕事で大切にしている考え方」など

 

101日(木)

13:2014:10

チーム作り

・チーム作り

・アイディア出しの練習

・社会課題の洗い出し

 

 

調べる

(宿題:大和ハウスさんからの参考資料「環境読本」を読む)

 

1015日(木)

13:2015:10

知る・体験

★大和ハウス:住宅展示場の見学(90分)

 

1022日(木)

12:4013:20

考える

形にする

・チームで企画体験(1)

各班で社会課題を3つ選び、その要因分析や解決策のアイディア出し

20年後(もしくは50年後)の住まいを考えよう!」

 

115日(木)

12:4013:20

考える

形にする

・チームで企画体験(2)

 

 

116日(金)

11日(水)

放課後

・各チームで計画を立てて、プレゼン準備

 

1112日(木)

13:2014:10

伝える

★大和ハウス社員さんへのプレゼンテーション

・チームで考えた企画を発表

・社員さんの審査、表彰式

・社員さんからのメッセージ

 

1119日(木)

13:2015:10

まとめ1

・ドリカムスクールでの学び、気づきを感想文にまとめる

 

1125日(水)

13:2015:10

まとめ2

・ドリカムスクールでの学び、気づきや感想を座談会形式で共有する。(テーマ:住まい、仕事、1年生を教える体験、今後に生かすことなど)

 

 
 

 

◆コーディネーターの役割 ~学びの場の雰囲気作りにも工夫


(1)マッチング:チャレンジ講座を担当されている先生から、高校の近くにある住宅展示場を活用したプログラムを実施したいとの相談を受け、山本さんが所属しているコーディネート団体とつながりのあった大和ハウス工業とマッチングをしてプログラムが始まりました。

(2)プログラム開発:チャレンジ講座としての時間の枠組みが決まっていたため、その限られた時間枠の中でねらいを達成するためにどのようなプロセスで生徒に学んでもらうのかを考え、先生や企業へ提案しました。


(3)関係者との連絡調整:忙しい先生や企業担当者に代わって、プログラム実施に必要な情報を集め、整理し、実施に向けた準備、連絡を行いました。


(4)授業当日の支援、学びの場の雰囲気作り:「アイディアを否定せず肯定する、楽しく取り組む」雰囲気作りを行い、生徒が普段慣れないチームワークや大人との関わりにも前向きに楽しく取り組めるよう、進行を工夫しました。また、プログラム実施をサポートする大学生のボランティアスタッフを集め、事前に研修を行った上で生徒の活動の支援をする等、生徒がプログラムに取り組みやすい環境作りを行いました。


(5)プログラムの成果の見える化:事前事後のアンケートや感想文をとり、効果測定を行いました。また、授業のサポートを行った3年生については、授業後に学びを振り返る座談会を別途企画・提案し、先生や企業のご担当者が直接、生徒の学びの成果を聞く機会を作りました。

◆プログラムを終えて ~授業ではできない経験が好評


受講者が13名と少人数だったので、生徒にとっては、企業担当者やコーディネート団体のボランティアスタッフなどたくさんの大人と交流できました。また、プレゼン前日に自主的に放課後に残って作業や練習をしていたなど、生徒の本気が見られました。


普段の授業ではできない経験が生徒からは好評でした。「自ら意見を出しあう」「いろいろな人とつながりが持てる」「人と接するのが楽しい」といった、普段の授業とは異なる点を評価する声がありました。

※本ドリカムスクール講座は、2013年現在はチャレンジ講座として実施されておりません。当時協働いただいた大和ハウス工業(株)は、現在小中学校を中心にドリカムスクールを展開しています(2013.10)

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