第9回教育コーディネータフォーラム

~社会が求める力・育つ力を引き出す「場」づくり~

アスクネット×アスバシ

<第25回愛知サマーセミナーコラボ企画 2013年7月13日>

愛知県でキャリア教育普及の牽引役となっているNPO法人アスクネットと、市民からの寄付で子ども達にインターンシップなどの機会を提供しているアスバシ教育基金による、教育コーディネータフォーラムが実施されました。(2013年7月13日@南山大学)

学校、コーディネーター、父母、企業それぞれの立場から、キャリア教育への取り組み、そして子ども達の力を引き出す「場」づくりについて、報告がありました。

-司会-
白上昌子氏(NPO法人アスクネット 代表理事)
-モデレータ-
毛受芳高氏(一般社団法人 アスバシ教育基金 代表理事)
-ゲスト-
浦崎太郎氏(岐阜県立高校教諭)
生重幸恵氏(一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会 代表理事)
坡山洋子氏(私学をよくする愛知父母懇親会、第25回サマーセミナー副実行委員長)
市川博久氏(アクセンチュア株式会社 マネジング・ディレクター)


フォーラムが全国の教育コーディネーターのネットワークにつながる


白上)


最初に、この教育コーディネータフォーラムがどういった経緯で始まったのかということを説明させていただきます。


2001年に、私どもアスクネットがNPO法人として立ち上がりました。そして、「地域の教育資源、人材やイベントに精通し、教育目標を効果的に達成する教育プログラムを企画・推進できる専門家が必要なのではないか」という問題意識のもと、全国の同様の活動をしている団体に呼びかけて、2004年に第1回の教育コーディネータフォーラムを開催しました。以来、途中1年のお休みを挟んで毎年開催し、今年は9回目になります。


このフォーラムが契機となって全国各地の教育コーディネーターのネットワークが生まれ、このサマーセミナーのような教育イベントが全国に広がりました。

※サマーセミナーについては、こちらの記事をご参照ください。


今回は、テーマにもあるような「社会が求める力・育つ力を引き出す『場』づくり」の先進事例を、学校、コーディネーター、父母、企業のそれぞれの立場から語っていただきます。

 

毛受芳高氏
毛受芳高氏

毛受)
 
この10年間の教育コーディネータフォーラムを振り返ると、やはり資格制度の発足がポイントだったと思います。


学校の教育の場に、地域の人的・物的資源を取り入れることの必要性は明らかでした。このフォーラムでは、両者をつなぐ役割を果たすキャリア教育コーディネーターが必要である、ということを一貫して示してきました。


この動きが認められ、2008年には経済産業省が「地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト」を開始しました。さらにキャリア教育のコーディネーターを資格にしよういうことになり、認定試験がスタートしたわけです。

 

今回のテーマでは、特に「場」という言葉に意味があります。社会が求める力というのは、教室の中で上からこうしなさい、ああしなさいと教えられて学ぶようなものではありません。子ども達がそこに参加することで、「なるほど!」「そうだ!」と感じるような、豊かな場が必要なのです。そういった場を作るには何が大切なのか、パネリストの皆さんに語っていただきます。

 

最初に、学校は今どういう課題を抱えていて、どのように変わっていったらいいかということを浦崎先生にお話しいただきます。浦崎先生は、公立高校に勤務されていますが、キャリア教育のコーディネートまでご自身でされている、非常に熱心な先生でいらっしゃいます。

 

 

浦崎太郎氏
浦崎太郎氏

最近の高校生の傾向~地域と連携した取り組みの必要性


浦崎)


この10年~15年で高校生がどのように変わってきたのか、高校の教員という立場で感じたことを、お話ししたいと思います。まず、とても素直で従順なよい子が増えました。また、能力や意欲の範囲内ならば、言われたことをきちんとやる子が多くなりました。その反面、能力の限界を超えようとしない、失敗や傷つくことを過度に恐れる、すぐあきらめる、という側面も持ち合わせています。また、昔の生徒は高校3年生になると、気持ちが引き締まり、考え方や成績も上がっていたのが、最近はそうではなくなりました。その原因を探って「覚悟の低下にあるのではないか」と気づき、「覚悟を高めなければ、今後、彼らが大学で学び、社会に出ても成長していくことができないのではないか」という危機感から、昨年度、高校3年生に対して、特別プログラムを実施しました。

 

その一環として、若手公務員の有志の方々と一緒に、「防災クロスロード」というゲームを行いました。これは、阪神大震災で災害対応にあたった神戸市職員へのインタビューをもとに作られたもので、避難所の運営等で実際にあった厳しいジレンマの状態を模擬体験するものです。大人と高校生の混成班で、各自YesかNoかを選択し、その答えを選んだ理由を交流する活動を通して、生徒は大人が持っている視点や価値観の広さや深さを実感したようでした。そして、学ぶとは何かをつかみ、今の自分がどんなに甘いか、気づいたようでした。これは「大人と一緒の場」が持つ力だったと思います。

 

子ども達を取り巻く地域社会も大きく変わってきました。ここ20~30年間、進学校は「子どもの希望する進路をかなえよう」という大義名分のもと、都会の大学に若者を送り続けてきました。その結果、地方は若者が減り、さびれてしまいました。これは、全国の地方の町が抱える深刻な問題です。これではいけない、地方を何とか再生するためには、若者に対してどのような教育が必要か、考え直さなければならないと思っています。

 

さらに、今ある職業が数年後そのままの形で残っているとは限らなくなりました。このことについて、高校生に「20年前、本が大好きだから本屋になりたいと思っていた人がいました。その人は、夢がかなって本屋になりました。では、現在この人は20年前に想像していたような仕事ができていると思いますか」と問いかけてみます。

 

20年前、ネットショッピングはありませんでした。本が手軽にインターネットで注文できるようになって、昔ながらの書店は、少なからず影響を受けているはずです。ネットショッピングのアマゾンの物流センター行きのバスが市内を運行しているので、生徒達にはより現実味を持って感じられると思います。

 

このような例で、「今ある職業が、そのままの形で将来も残っているとは限らない」ということを実感させるわけです。そして、不安がらせるだけでなく、これと同時にどんなに世の中が変わっても、その時代や環境なりの困りごと、望まれごとはあるから、それに応えていけるような力をつけておけばいいんだよ、と伝えています。

 

では、具体的にどのような力をつければよいのか、ということで、地域に根差した取り組みの一環として、市役所と協力して行っているプログラムをご紹介します。


このプログラムでは、導入として、親子が川の自然環境に親しむイベントで、高校生にスタッフとして企画運営を手伝わせ、地域課題に対する関心や当事者意識を高めます。そして、夏休み明け、市役所の方、地域のいろいろな専門家の方たちから講話をうかがい、さらに考察を深め、最後に高校生から市に対して提言をします。

 

このような地域の問題を発見し、解決するプログラムでは、地域(この場合は市役所)は、高校生に対して社会とのつながりを実感できる場を提供することで、彼らが地域の問題を自分のものとしてとらえることにつながります。一方、我々高校は、将来彼ら高校生が地元に貢献できるだけの広い視野や高い専門性を身につけるための素地となる教育をします。これで地域も学校も、お互いに得られるものがあるわけです。


課題発見力の重要性は言われていますが、それはどのようなものかというと、あまりに抽象的で、教員も何のことだかわからないし、ましてやそれでは子ども達には伝わりません。まず身近な地域の中で体感することが重要だと思います。


毛受)


浦崎先生のお話は、課題発見力をどのような「場」で身につけさせるかという点で参考になります。


学校の先生方は「課題発見力を身につけなさい」「コミュニケーション力は重要だ」と言われますが、先生自身が持っているかどうかわからない抽象的な能力を身につけろと言われても、子ども達には伝わりません。ですが、今浦崎先生が言われたように、具体的に自分達の町をどうするかということを子ども考えさせることで、子ども達自身が「課題発見力はこういうことの延長にあるのか」と実感することができます。

 

さて、高校に限らず、先生方はたくさんの仕事を抱えながら、キャリア教育というものまで考えていかなくてはいけない。そこで、学校のニーズにあったキャリア教育を支援する、キャリア教育コーディネーターの力が必要になります。その点について、生重さん、お願いします。

 

 

生重幸恵氏
生重幸恵氏

社会総がかりの取り組みの中で、キャリア教育コーディネーターに求められる役割


生重)
 
私は今中央教育審議会をはじめとして、いろいろなところで委員を務めていますが、正直なところそこで報告される教育の現場の状況は、現実の社会に対応がしきれない学校が多くあります。そんな中でいくらグローバルだの技術力だの言っても机上の空論にすぎません。

 

まずは、自分で考え、行動できる若者を育てなければならない。そのための教育の場づくりには、学校や家庭、地域、企業など社会が総がかりで取り組む必要があります。それぞれの立場からできること、やるべきことがあるはずで、それを実際に教育の場で子ども達にどうやって届けるかを考えなければなりません。子ども達の将来を国や学校に丸投げではいけません。親や社会全体が子どもを取り巻く社会環境や企業の動向といったものを意識しなければいけません。


いい高校、いい大学に行ったら、いいところに就職できると信じたい親達もいますが、現実はまったく違います。一流と言われた会社でもどんどんつぶれていくご時世です。


インド、台湾、韓国、中国の子達は3ヶ国語、4ヶ国語をばりばり話します。日本語しか話せない、海外に行きたくないと言うような子ども達が、これからの社会で活躍できるはずがありません。

 

毛受さんや私たちはこの10年、教育を国や学校に任せきりではいけないと、お金もないのに一生懸命、風車に向かうドンキホーテのようにエイヤエイヤとやってきて、何とかいろいろなものが動きはじめました。その一つとして、経済産業省の事業として、キャリア教育コーディネーターを資格化し、社会に押し出すところまでやっと行き着きました。全国で養成講座を開催していますので、多くの方に興味を持っていただけるといいなと思います。

 

では、キャリア教育コーディネーターは実際にどのような機能を担えばよいでしょうか。

 

キャリア教育を学校だけで行うことは、多忙な先生方には負担でしょう。そこで、キャリア教育コーディネーターは、学校の目的に応じた地域の資源を学校につなぐ役割を果たします。そのためには、学校のニーズを把握して、キャリア教育プログラムを開発・提案したり、企業に働きかけて依頼や調整をするための、専門的な知識と技能が必要です。

 
キャリア教育コーディネーターの資格を取得するためには、まず指定育成機関の講義型研修に参加して、キャリア教育に関する知識とコーディネーターの活動に必要な知識の習得を目指します。次に実践コースとして、学校現場で最低限1単位時間の授業に直接携わるコーディネーター業務を実際に経験します。この2つが修了したら、記述試験、小論文、実技試験、面接による認定試験を受験し、合格した人に「認定コーディネーター」の資格が与えられます。今年までにようやく200名の認定コーディネーターが誕生しました。ぜひ多くの皆さんに挑戦していただきたいと思います。


※キャリア教育コーディネーター認定までの道のり、および、2013年度キャリア教育コーディネーター育成研修実施一覧(一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会HPより)
http://www.human-edu.jp/newstopics/2735

 

 

キャリア教育の理念は「子ども達を自立に向ける」ということです。そして、キャリア教育コーディネーターは、今日のテーマにもあるように、その場を提供するのです。子ども達が自ら考える場を提供することで、社会を生き抜く力を身につけることを支援しているのです。


毛受)


生重さんは、何とか現場を変えていかなくてはいけないという情熱と熱い語りで、全国各地をまわっていらっしゃいます。場を提供するための専門家であるキャリア教育コーディネーターの資格制度ができましたので、多くの方に興味を持っていただければと思っています。

 

続いて、坡山さんから父母の立場からお話しいただこうと思います。父母は子どもの教育にどのように関わっていったらいいのか。私学をよくする愛知父母懇親会(以下、父母懇)に入ったきっかけやその中でどのような変化があったか、体験談を交えてお話いただきたいと思います。

 

坡山洋子氏
坡山洋子氏

子どもの自立のために親が学びの場に参加し自立することの大切さ~父母懇の活動で得られたもの

 

坡山)
 
私には、大学3年生と大学1年生の娘がおりまして、現在は親元を離れて横浜に二人で住んでおります。娘が私立の中学に入ったのがきっかけで、父母懇に入って活動をしています。父母懇は愛知県内の私立中学・高等学校に通う子どもを持つ父母の集まりで、会員は約175,000人です。愛知の私学の教育に関わる問題に取り組んだり、学園や地域で親睦を深めたりしながら、よりよい教育を目指して学びあい、つながりを広めています。「ひとりぼっちの父母を作らない」がスローガンで、子どもが卒業しても参加できます。

 

父母懇の活動の大きなものの一つが、「サマーセミナー」の企画・運営になります。

※サマーセミナーについては、こちらの記事を参照ください。

 

父母たちだけでなく、高校生にも支えられているわけですが、ここに先生とアスクネットも加わって、四者の力で運営しています。今回のようなセミナーを開催するまでの準備では、寝るのが明け方の3時という状態が2週間くらい続きました。今日も汗びっしょりで走り回っています。


しかし、父母懇での活動は、そういった苦労にも代えがたい情熱が得られます。父母であっても自分が高校生になったような気分で青春を謳歌しています。高校生と一緒にやっていると、楽しくてしかたがないです。

 

私は父母懇を通して、他の学校のお母さんや高校生と、一つの目標に向かって一致団結することで、とても多くのことを学ばせてもらいました。サマーセミナーなどの活動に参加してがんばっている高校生を見ていると、すごくパワーがもらえます。自分の子ではないのですが、その子たちが一生懸命やっているのを見ると、自分も頑張らなくては、という気持ちになります。

 

父母懇には卒業がありませんので、上は60代の方から、さまざまな年代の方がおみえです。そういった学校も年代も違う、幅広い人間関係の中で、多くのことを学ばせてもらっているという実感があります。皆で協力して何かをする時には、相手の立場に立って考えることができれば皆の信頼も得られます。そういった、家庭にいるだけでは経験できない学びや気づきなどを得られるのが父母懇だと思います。

 

今日のテーマは「場」ですが、私は父母懇という場で自分自身が明るく楽しくやれているのがすごくいいなと思います。娘たちは私が父母懇に没頭するのを見て、「お母さん無関心だよね、私たちには。父母懇くらい力を入れてよ」と言いつつも、「楽しいならいいじゃん」とも言ってくれます。


他人の子ばかりを支援して、自分の娘たちはほったらかしになっていますが、娘たちは楽しそうな私の姿を見ながら、たくましく育ってくれているようです。


毛受)


坡山さんがおっしゃったように、お母さん方がこういう場の中で社会的な気づきを経験し、変わっていくことが大切だと思います。新しい経験をしたお母さんが家に帰ると、子どもを見る目も変わります。例えば子どもがテストで悪い点数を取ってきたとしても、「こんな点じゃダメだ」と否定的に見てしまうのか、「次はがんばりましょう」と明るい気持ちで接するのか。どうとらえるかが違ってきたら、子ども自身の意欲も変わってくるのです。結果的には家庭の場もよくなるんですね。


坡山さんの娘さんたちも、「ほったらかしだ」なんて言いながら、お母さんの生き生きしている姿をうらやましく見ているのではないかと思います。

 

続きまして、こういった場の中で成長してきた子どもたちが、最終的には社会に出て、働く際の「場」となる企業の動きを、市川さんにお話しいただきたいと思います。

 

 

市川博久氏
市川博久氏

企業も長期的な視点から若者の就労支援に取り組み始めた


市川)
 
アクセンチュア株式会社は、コンサルティング、テクノロジー、アウトソーシングの三つの事業を中心に展開している企業でして、社員数は世界で約25万人、日本では約5000人になります。

 

私が責任者を務めますインフラアウトソーシングの事業についてご説明します。情報システムの運用を自社でやっている企業から情報システムの運用業務をお任せ頂いた場合に、運用業務の標準化とオフショアの活用により、情報システムの運用業務のコストを削減します。つまり、運用の無駄をなくし、かつスリムアップした業務を、人件費の安い海外に出すことによって、発注していただいた企業のITにかかるコストを抑える、というビジネスになります。

 

最近は不景気でしたので、たくさんの企業からお引き合いを頂きました。けれども、一方で日本に視点を戻したときに、我々の推し進めてきたアウトソーシング事業によって、若者の雇用の機会が奪われているのではないか、という思いがわいてきました。そして、企業による若者の就労支援が必要なのではないか、と考えるようになりました。なぜなら、日本の社会で若者が働けるような環境を維持しないと、企業活動そのものが存続できず、日本の経済全体の発展にも支障が出るからです。

 

ここ最近、企業は競争でコスト削減、スリム化というのを推し進めてきましたが、これは資本主義のあり方として、短期的に成果を求められるということの一つのゆがみでもあるのかと思っています。今後は、企業による社会貢献活動(CSR)として、新しい雇用を作るということに、長期的な視点をもって取り組んでいかなければならないと思います。アクセンチュアもその一環として、若者の就労支援、就業力強化を行っています。

 

今、若者の雇用状況は深刻な状況です。例えば、創立5年以上の企業が毎年減らしている雇用の数は年間60万人に上ります。これには企業の行き過ぎたコスト競争が、少なからず影響していると思います。


若者の失業率が深刻であるという点について、今若い力を求めている企業はありますが、企業の求める能力の要件に対して、就業したい若者のスキルとの間にミスマッチがあると考えられます。そういった原因ならば、スキルアップによりミスマッチを解消することが一つの対策となります。


ただ、若者の失業者は、ニートなども含めて110万人くらいといわれていますが、その中でもスキルアップによって就業力をつけて、ミスマッチを解消できる人数というのは20~30万人にとどまります。残りの90~100万人は付け焼刃では解決策を講ずることができません。その解決策の一つとして、若者が起業するという選択肢も考えられます。若い起業家がどんどん生まれ、新しい産業や雇用を生み出すような社会的インフラを整備することが必要なのかもしれません。

 

次に、わが社の具体的な取り組みを簡単に紹介させていただきます。


若者に働く意欲を早い時期から持ってもらうことが重要ではないかということで、主に高校生向けのキャリア教育、とりわけインターンシップを推進するための枠組み(※)を整備しています。


具体的には、WEBサイトを通じて、どの地域にどれだけの若者がいて、どれだけのキャリア教育、インターンシップにお金を投じないといけないのかという状況を可視化する取り組みを開始しようとしています。例えばある地域で、「50人くらいの高校生向けに、こういったプログラムをやりたい」という要望があるとします。そのためにはいくら必要なのかきちんと見えるようにして、地域市民の方から社会的投資をしていただくというものです。かつ、そういった社会的投資をしたときに、地域経済にどういったようなリターンがあるかということをきちんと見えるようにすることが大切だと思っています。

 

(※)ユースアクティベーション  http://www.siya.jp/

 

もう一つの取り組みとしまして、我々はITに関連した会社ということもありまして、毛受さんが代表理事をされているアスバシ教育基金さんと共に、既卒者の若者に対してITに関するスキルアップセミナーを実施し、そこで上がった収益を高校生向けのインターンシップなどの推進にまわすという取り組みを東海地方で展開しております。このような取り組みを通じて、アスバシ教育基金さんと全国でインターンシップを推進していこうと思っている次第です。


毛受)


今お話の中にあった通り、アクセンチュアのような企業のアウトソーシングの提供によって、多くの企業は無駄を省いてきたわけです。その無駄には、人もたくさん含まれています。


その中で、なくなってしまう仕事にすがりつくよりも、今後必要とされる仕事にどうやってシフトしていくのかが鍵になります。


例えば、家業の本屋を継げばいいと思ってボンヤリしていると、アマゾンが出てきて、普通に本屋をやっていたら全然立ち行かなくなる。ではそこで売れないまま本屋を続けるのか、それとも新しいタイプの本屋にするのかということが問われるわけですよね。


何かの技術によって、あっという間に今ある仕事のかたちが変わってしまう。こういうことがまさに日常茶飯事に起こっている中で、若者がどうしたら前向きにものごとに取り組んでいける仕組みを作るのか。市川さんのお話にあったように、企業もお金をかけて取り組み始めた次第です。


では、今までの話を聞いて感じたことを、浦崎先生お話いただきたいと思います。

 

 

子どもの各成長段階でどのような人間関係を築く力が必要とされるか

 

浦崎)


今の高校生の人間関係は閉鎖的で、同級生としか人間関係を築けない生徒が増えています。これは本当に深刻な問題です。人間には発達段階があって、本来なら高校を卒業する頃は社会に出ていくタイミングですから、社会で生きていけるだけの人間関係の構築ができなければいけません。ということは、高校の段階では、社会と関わることを覚える時期です。


発達の順で言えば、幼稚園段階では同年齢集団との関わり方を覚え、小学校では異年齢集団との関わり方を覚える。そして、中学校段階では身近な大人との関わり方を覚える時期ということになります。そうすると、高校生が同年齢としか関係が築けないという傾向は、成長が幼稚園レベルに留まっているという見方もできます。


また、発達段階に応じて適度に負荷のかかる場が保障されていればよいのですが、今日多くの場合、そうした場は子どもや若者の生活環境から奪われています。「場」が失われた結果、せいぜい「同年齢集団との関わり方」を身につけただけの段階で止まり、ひきこもりなど深刻な問題の頻発、就活で絶望する若者の増加など、いわゆる不適応問題として発症している、と考えることもできる訳です。

 

幼稚園よりさらに前の段階を考えてみましょう。この時期は、特に親の影響が大きいのです。つまり、子どもが不安感から集団に入っていけないというのは、母親の孤立感が影響しています。ですから坡山さんのお話にあったように、母親が参加できる活動が盛んになることは、子どもの自立につながります。そういう点からも、女性が参加できるネットワークを、地域で協力して作っていかないと、キャリア教育についても、雇用についても、産業の育成についても、根本的な解決にならないと思います。


毛受)


幼稚園、小学校、中学校、高校の各段階でどういうことができれば、地域の社会貢献ができるような人材が育っていくのかということを、川の流れのように例えて説明していただきました。私達も、コーディネーターとして、さまざまな発達段階の子ども達に関わってきたので、共感できます。


では、子ども達が各成長段階に望ましいコミュニケーションの力を身につけるためは、どういった場があればよいでしょうか。私が子どもの時代はゲームが無かったので、異なる年齢の子どもが集まり、遊びを創っていくという場がありました。地域にはお祭りがあり、そのような場で自然に異なる年齢とのコミュニケーションを身につけることができました。今は、残念ながら、そういった自然な場はできなくになりました。


最後に、どのように社会が求める力をひきだす場を作っていけばいいかということを、一言ずつお話しいただきます。

 

 

社会が求める力・育つ力を引き出す「場」づくりとは

 

生重)


やはり、社会総がかりで、それぞれの役割を果たしていくことが必要だと思います。親の役割についてお話させていただきますと、子どもの自立には、まず親が自立することが必要なんだと思います。でも、「私は自立するのよ」と言って、自分達だけで完結して自由に生きてきた母親は、本当に自立できているのでしょうか。幸福度調査で指数の高い福井県や富山県は、三世代同居が多く持ち家率も高い。おじいちゃんおばあちゃんに子どもをまかせて安心して働きに出られるからお金も貯まりますし、子ども達の学力も上がっています。かえってこうした親達のほうが自立できているのではないでしょうか。まずは親が自立すること、そして地域活動の場に参加し、自分の子以外の子にも関わっていくにはどうしたらよいかということを、社会全体で考えていくべきだと思っています。

 

坡山)


私は、高校生が同世代としか交流できないという浦崎先生のお話がとても衝撃的でした。なぜなら、私が父母懇を通して関わっている高校生たちは、大人に対しても、自分の意見をはっきり言えるからです。私たち大人が驚くくらい堂々と意見を伝えてくれるので、そうでない高校生が多いというお話には驚きました。

 

私の娘たちも、お金がなくならないと電話ひとつかけてきませんが、たくましく生きているようだからいいかなと思います。こういう親で、果たしていいのかどうかわかりませんけれども、自分が人生を楽しむことが、子どもの成長にもつながっているのではないかと思っています。

 

毛受)


今日のサマーセミナーの運営に協力している高校生たちは、みな自分をしっかり持っています。そういう子たちが、サマーセミナーの運営という場で学ぶことで、さらに主体性が上がります。自分達が何かやらなければ、ということに気づいて、さらに自ら考え動けるようになるのです。

 

市川)


これだけグローバル化が進んで、環境の動きが速いと、企業側もどのようなスキルを持った若者に来てもらいたいかと定義すること自体、難しくなってきているように思われます。そういった中で、先ほど浦崎先生もおっしゃったように、自分の頭で考えて気づきを得ることができる若者ならば、どのような環境でも活躍できるはずです。そういう人材を育成する「場」を作っていけたらよいと思います。

 

浦崎)


高校生の状況について厳しいことを申し上げましたが、決して全員がそうなのではなく、「適応できる子はできる、できない子はできない」と、二極分化が進んでいるのが実態だと思います。そして、両者の成育過程を比較してみると、「すべて環境の影響であり、環境さえ与えられれば、どの子も本来の力を発揮できる」という可能性を感じます。


環境というのは、今回のテーマでもある、「場」のことなのですが、ではどういう場が良いのかと言えば、ごちゃまぜな集団がよいと思っています。年齢、立場、役割が様々な人が集まったところでは、自然に「一緒にやろうぜ」という活気ある交流が生まれます。子ども達をそういう集団に放り込むことで、さまざまな学びができると確信しています。

 

毛受)


本日は、学校、地域、家庭、企業のそれぞれがどのような役割を果たしていけばいいか、また、キャリア教育コーディネーターはそれぞれをどのようにつなげていけばいいのか、たいへん参考になるお話を聞かせていただきました。ぜひ皆様にも、ご自身ができる形で教育の場に参加していただきたいと思います。また、キャリア教育コーディネーターの皆さんには、今回のテーマである「場」というものを理解し、教育の現場に必要とされるものを届ける役割を果たしていただきたいと願っております。

 

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