「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

理工系人材育成に係る現状分析データの整理

(学生の文・理、学科選択に影響を及ぼす要因の分析)[調査実施:河合塾]

経済産業省大学連携推進室 宮本岩男室長
(第6回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

理工系人材裾野の拡大についての議論をするに当たり、学生の文理選択、学科選択に影響を及ぼす要因を探るために、企業人1万人に対して初等中等教育における進路選択を振り返るアンケート調査を実施しました。(実施時期:2015年12月上旬から中旬、調査実施:河合塾)

 

20~30代の社会人を対象とし、内訳は理系出身者約4000人、文系出身者約6000人、業種や職種は多岐にわたっています。

 

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理系志向・文系志向はいつごろから

まず、約4000名の理系出身者に、いつ頃、理系(あるいは文系)志向を意識したかを尋ねました。

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小学校の時点で約35%の人はすでに理系志向があったと認識していました(上図)。この割合は、中学校に行くと徐々に上がっていき、高校の前半にかけて上がります。青は文系志向の割合ですが、もともと文系で結果的には理系に進んだ人たちが、一定の割合はいるようです。

 

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文系出身者にも、同様に、いつごろ文系志向を意識したかを尋ねたところ、小学校の時点では40%弱の方が文系志向でした(上図)。そのあと割合が増えていきますが、理系と違うのは、高校の後半になっても、文系志向の方が増えるという特徴があります。赤い部分が理系志向ですが、これが高校の前半から高校の後半にかけて、半分ぐらいに減っています。つまり、高校の時に文転した人が結構いるということです。文系からの理転は少ないのに対して、理系からの文転は多いということが見うけられます。

 

文理選択・学科選択で何を重視したか

文理選択に当たり、どのような点を重視したかを尋ねました(下図)。

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文系理系ともに大きく影響した項目が二つありました。一つは関連する科目の成績が良かったということで、おそらく算数や理科が得意な人は理系に進み、国語や社会が得意な人は文系に進んだということ。もう一つは、学びたい・関心がある分野との関連性で、学ぶ内容について関心があったがゆえに、その道に進んだわけです。

 

一方で、文系出身者と理系出身者で差が出るものもありました。理系進学者の方が、文系進学者よりも高いものとして、「学びたい・関心のある分野との関連性」がありました。理系の方が学問分野にひかれる可能性が高いのだと思われます。また、理系選択者の方が「将来希望する仕事との関連性」を重視する割合が高いことも見て取れます。

 

下図は、学科選択で重視した観点を集計したものです。

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文理選択と、学科選択では、重視した観点が多少異なります。学科選択では、「関連する科目の成績が良かった」という観点の比重は下がり、一方で、「学びたい・関心ある分野との関連性」が高くなります。つまり、進もうと思っている分野の学問内容への関心が一番高くなります。「将来希望する仕事との関連性」も高いです。

 

また、先の文理選択と同様に、文系進学者より理系進学者の方が、学科選択で重視する視点として高く出ているのが、「学びたい・関心分野との関連性」、「将来希望する仕事との関連性」でした。

 

文系進学者約6000人に、もし何か前提条件が違っていたら自分は理系にいっていたかもしれないとすれば、それは何かと尋ねました(下図)。圧倒的に高く出ていたのが、「数学や理科が不得意ではなかったら」という回答でした。

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科目の得意・不得意が、文理選択に利いているという結果が出ていますが、理系、文系それぞれ得意な高校の科目、不得意な高校の科目をまとめました(下図)。理系の人が文系の人よりも得意な科目として、当然ではありますが、数学I・II、数学III、物理、化学、生物に大きな差がありました。

 

一方で、不得意だった科目については、数学IIIや物理は、理系の人も不得意であると答えた人も多く、文理でそれほど差がありませんでした。

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さらに理系進学者に対して、高校時代に得意だった理系科目を、男女で分けて集計しました(下図)。数III、物理が得意と答えた割合は男子の方が高く、生物に関しては女子のほうが高いという結果が出ています。

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どのような親の影響があるか

進路選択に際して、おそらく周りの人から様々な影響を受けていると想定されますが、実際にはどのような人たちの影響が大きいのか尋ねました。

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回答者全体を見ますと、文系理系にかかわらず、父親・母親の影響が一番大きく、高校の先生、先輩、友人と続きました。

 

男女別では、面白い傾向として、女子は文系であろうが理系であろうが、母親の影響が大きいということが言えます。男子は、母親よりは父親の影響が強い。さらに文理で分けてみますと、理系男子に対しては、父親の影響が結構強い。理系女子に対しては母親の影響も大きいですが、父親の影響も大きいということが見て取れます。

 

親が子どもにどういった職業に就いてもらいたいと思っているかが、子どもの進路に何らかの影響を与えているのではないかということを調べ、実際に進学した大学の学科別に集計しました(下図)。左側上から、建築・土木、情報、物理科学系(機械、電気、材料等)、生物・バイオ・薬学、医学・歯学、看護・保健、教育、人文・社会系でまとめました。 

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例えば、一番上の建築・土木の帯グラフでは、建築・土木の学科に進んだ回答者が、自分の父親と母親がそれぞれ自分たちにどのような仕事に就くことを望んでいたかという割合を示しています。

 

建築・土木系進学者に関しては、特に父親が建築・土木の研究者、技術者になることを望んでいた比率が圧倒的に高い(濃い青色の部分)。母親も比較的高く出ていますが、特に父親が高いということが見て取れます。

 

医学・歯学系進学者では、父親・母親ともに、子どもが医者になることを望んでいる割合が非常に高く(ピンク色の部分)、看護・保健系に進んだ方は、特に母親が医療・介護・福祉の分野に進むことを望んでいた割合が高い(薄い緑の部分)。教育系では、親が教員になることを望んでいた割合が比較的高く出ています(青緑色の部分)。

 

一方で、情報系、物理科学系、生物・バイオ系では、特に親がどこの分野を望んでいるかがあまり関係なく、したがってこの観点ではあまり影響を及ぼしていないと思われます。学科によって、親の影響が利いているものと利いてないものの差があることが見えてきました。

 

次は、具体的な職業分野ではなく、どのようなタイプの職業に就くことを、親が望んでいたかという観点で調べてみました(下図)。 

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理系、文系それぞれ、父親と母親に分けて、どういったタイプの仕事に就くことを望んでいるかまとめました。文系と理系で大きく差が出るのは、理系進学者では父親・母親共に、理工系・技術系の仕事に就いてもらいたいと思っている比率が、文系進学者の親よりもはるかに高い点。また、専門的な仕事に就いてもらいたいと思っている比率が、理系の親は文系の親よりも高いことがわかります。

 

父親と母親と分けて見ると、母親は、資格や免許のいる仕事に子どもに就いてもらいたいと思っている割合が、文系・理系共に、父親よりも高いという結果が出ています。

 

今度は理系進学者に絞り、男子と女子で、父親と母親がどのようなタイプの仕事に就いてもらいたいと思っているか見てみました(下図)。 

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理系男子に対しては、父親・母親共に、理工系・技術系の仕事に就いてもらいたいという志向性が強く、理系女子に対しては、父親・母親共に、専門的な仕事、もしくは資格や免許のいる仕事に対する志向性が強く、特に理系女性の母親は、資格や免許に対する志向性が高いと出ています。

 

理科実験、実習・演習は理工系選択に影響があるか

 

これまでの円卓会議で、理科実験・実習、教室のような取り組みが、理工系への選択に影響を与えているのではないかという意見がありました。それを受け、まず高校時の実験・実習についてどのような影響があったのかを調べてみました。 

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具体的には、「高校物理での実験・実習」、「高校物理の時間にモノづくりの話がされたか」、「高校情報でのプログラミング」、「高校情報での画像・動画・HP作成」、「高校情報で先端や社会活用の話がされたか」の5つの観点を聞いたところ、そもそもこういった実験・実習の経験について差がありました。

 

高校の物理に関する実験・実習については、50%が経験ありですが、そのうち大学の学科や専門分野の選択につながったと回答した人は、約11%でした。一方、情報に関する実習については、そもそも実施率が低く、ただ、実施された場合は、分野の選択につながったと回答した人は17%程度いることがわかりました。

 

さらに、高校での理系の実験・実習経験者に、どの学科選択をしたかを聞いたのが下図です。

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物理での実験・実習が進路に影響を与えたと回答した人は、やはり機械・電気系に実際に進んでいる人が多く、同様に、物理のモノづくりの話に関しても同じ傾向でした。一方で、情報に関する実験・実習を受けた人で、情報系の学科に進んでいる割合は高くなっています。どのような分野の実習・実験に感銘を受けているかが、それに関連する分野の進路につながっていると言えます。

 

今度は、高校時ではなく、小中学校の時に体験した実験・実習が、進路にどのような影響を与えたかをまとめました(下図)。 

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理系進学者は、化学実験、生物実験、木工・金属作品製作などの体験が多く、また、文理・学科選択に影響を与えたか尋ねたところ、高校での場合とは異なり、多くの実習・実験で影響を与えている比率が20~40%と高くなっています。とりわけ特に電気・機械実験・実習、プログラミングやロボット実験・実習は40%を超える割合で文理選択もしくは学科選択に影響を与えていると言えます。しかし、この二つについては、実際に小中学校の時の実施率の低さが課題といえるかもしれません。

 

◆まとめ

 

まず、教科の得意・不得意が、文理選択や学科選択に与える影響が大きいということが示されました。気になる点としては、理系選択者も、物理などいくつかの理系科目に対しては非常に不得意感を持っているということです。理工系をさらに増やそうということを考えると、そのようなところを検討していかなければならないと思います。

 

「将来の仕事との関連性」というものも、理系選択者には、文系選択者よりは影響を与えているということです。ここも何か鍵になるかもしれません。

 

2点目として、進路選択に大きな影響を与える人物としては、何よりも両親の影響が大きく、比べて教員等の影響が低いことがわかりました。ただし、分野によって異なり、特に建築・土木、医学・歯学、看護・保健などの学科選択に当たっては、親の希望などが極めて大きい影響を与えている一方で、機械・電気、情報などの学科進学者に対しては、親の希望が与える影響が相対的に小さくなっています。また、特に理系女子に着目しますと、母親の影響力は極めて大きく、母親が資格や免許のいる仕事を強く望む傾向があることも見えてきました。

 

医学・歯学など、親がその進路を強く望み、子どもがその分野に進んでいる分野がある一方で、そうでない分野があるということは、親から見ると、進むと得だと思う分野と思わない分野があるということの現れではないかと思いました。そうした親の志向性が、親の影響力が出る分野と出ていない分野があるということなのかもしれません。理工系をさらに増やすためには、親の影響力というのは無視できないものでありますが、親も含め周囲の影響力を活用することも重要ではないかと思いました。

 

3点目として、理科の実習・実験について言えば、高校の時の理科の実習・実験よりは、小中学校の頃の実習・実験経験が、将来の理系選択もしくは学科選択に影響を与えていると思われます。また、その中でもポテンシャルが高いのが、機械、電気、プログラミングやロボット実験などで、それらの実施率は低いものの、実施された場合に影響を与えている割合は高いということが現れており、そのような点も鍵になると感じています。

 

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