第6回キャリア教育アワード

【経済産業大臣賞(中小企業の部)】 

ダイソン株式会社 

■プログラム名

全国中高生対象 ダイソン問題解決ワークショップ  

 

■活動の内容(概要)

<事前授業1>
<事前授業1>

ダイソン問題解決ワークショップは、ジェームズダイソン財団との提携のもと、ものづくり・技術の楽しさと重要性を伝え、技術を用いて生活上の問題を解決するエンジニアの仕事について学ぶ機会を提供することを目的に実施する実体験型ワークショップである。

 

プログラムは中学校の技術の教育課程に沿っており、生徒の問題発見・解決力や協力する力、論理的思考力・表現力を育成し、外部講師が行う授業を通して社会との繋がりを学ぶ場を提供する。教員による事前授業、講師が訪問して行うワークショップ、教員による発展授業の三部構成となっており、事前授業では財団が用意する分解組立用のサイクロン掃除機を分解・観察し、身近な工業品やその技術に対する興味・関心を高めその仕組みを学ぶ。事前授業を学校の担当教員が行うことで、ワークショップ全体が、エンジニアという職に興味を持たせ、技術・エンジニアリングの可能性を知ってもらうための授業であるということを生徒がより理解し、ワークショップと日頃の学校での学習の繋がりを明確にすることにつながっている。

 

講師が訪問し行うワークショップでは、歴史上のエンジニアの話や、問題の解決策として物を生み出すエンジニアの仕事内容をクイズやディスカッションを交えながら学び、生徒が見つけた生活の中の「問題」に対する「解決策」をグループで考え、段ボールなど身近にある材料を使い実際に試作品を作り発表する。例えば「机がガタガタする」という誰もが経験したことがある問題を見つめなおしたグループは、その不安定さが机の脚に起因するとし、解決策として脚のない、天井から板を吊るす形の机を発案した。

 

ワークショップ実施前には担当教員との打ち合わせを複数回行い、その学校にとって最良な実施を計画する工夫をしている。例えば、理系女子の育成に力を入れたい学校では、ワークショップ内で女性エンジニアの活躍の紹介を多く取り入れたり、英語学習に力を入れている学校では、ワークショップを一部英語で行ったりするなど、学校側の目的に合わせて最大限の効果があるよう考慮している。

 

同社は正社員数約180名ながら、約60 名がボランティアスタッフとして登録しており、全国各地での活動を実現。これまでに5,000 人以上がこのワークショップを既に体験し、今後もさらに実施の場を広げていく予定である。

 

※写真上:<事前授業1>の掃除機の分解と組立では、生徒4~5人につき掃除機を1台提供し、生徒たちが自ら分解を行って製品内の仕組みやデザインについて考え、空気の流れやサイクロン技術を学ぶ。生徒たちは「これ何?」「だからここは丸い形だったんだ!」など口々に言いながら分解を進める。生徒自ら疑問を持ち、答えを発見していく。 

 

※写真右:ワークショップにて、「雨の日に濡れた傘を教室に持ってくると廊下がぬれて危険だ」という問題を見つけたグループは、解決策として傘の自動乾燥機を考えた。事前学習で学んだサイクロン技術と、身近な問題を解決するというエンジニアの仕事内容を理解した上で問題定義と解決を行い、グループで協力し試作品を製作した。 

 

 

 

■活動の内容(詳細)

 

◇「継続性」についての具体的な取組、工夫している点など

 

実施内容の理解を深めるために事前に学校への訪問や電話会議を行い、実施日程、実施の目的、事前授業のやり方やポイント、ワークショップの運用形態、発展授業の計画、普段の技術科目の中でどのように取り入れるのかを学校側の意見を聞き協力して行う。

 

ワークショップ実施後には、参加生徒と教員に事後アンケートを実施する。アンケートはワークショップ内容を評価する選択式質問に加えて記述式の質問も設け、生徒と教員からのコメントの細かなヒアリングを行う。アンケート結果はデータ化し実施校に報告するとともに、コメントや気づきをプログラムに反映させ、内容や実施方法に関し常に改善を行っている。

 

現在社員約60名がボランティアスタッフとして登録しており、ワークショップ実施が決定すると、登録者に参加を呼びかけ人員を確保している。一回のワークショップにつき、財団スタッフ1名とボランティア2~3名が参加し活動をサポートする。登録者には定期的に活動の報告をメールで行い、登録者の増加、参加者の確保が確実に行えるよう体制を整えている。 

 

 

◇「普及性」についての具体的な取組、工夫している点など

 

ワークショップの希望は全国の学校から受け付けており、他のワークショップと日程が重なるなどの物理的要因がない限り実施を行う。地方の技術教員向け研究会などにも訪問や資料での紹介活動を行い、首都圏だけでなく全国での活動活発化を目標としている。その結果2015年は予定を含め24か所の実施が決定しており、東北、関東、中部、関西、中国、四国、九州地方と幅広い地域での活動が実現している。 

 

◇「汎用性」についての具体的な取組、工夫している点など

 

ワークショップ実施前には担当教員との打ち合わせを訪問、電話、メールで複数回行い、実施学年、実施単元とタイミング、ワークショップの実施形態などを詳しくヒアリングすることで、その学校にとって最良な実施を計画する工夫をしている。 

 

◇「企画性」についての具体的な取組、工夫している点など

 

ワークショップは生徒が自発的に考え、グループで話し合って協力し、自らの手を使って学ぶ内容を多く取り入れることで、生徒の意欲を掻き立て自発性やコミュニケーション力を高めている。試作品を作った後は、グループごとに自分たちが見つけた問題と、それに対する解決策として作った試作品を発表する。各グループがクラス全員の前で発表を行うことで、それぞれの成果を他者に認識してもらう場を設けると同時に、他者のアイデアからの学びにも繋がる。発表は担当教員と財団スタッフによって総合的に評価され、上位1~3位を表彰するとともにそれぞれの作品とグループとしての活動全体を通してのフィードバックを行う。 

 

◇「キャリア教育としての教育効果」についての具体的な取組、工夫している点など

 

プログラムを通して生徒は自ら考え、発言し、手を動かすという実体験を通してエンジニアという仕事を学ぶ。実施後のアンケートでは、エンジニアの仕事を良く理解できたかどうか、そしてエンジニアの仕事に興味が湧いたかを聞くことで、生徒の将来に対する興味の変化や気持ちを理解するよう努めている。 

 

■審査委員からの評価コメント

 

○ 問題解決型ワークショップを通じて、ものづくり・技術の魅力を伝えるとともに、自ら問題を見つけ解決策をグループで考えることで、より実践的なキャリア教育を行っている。理系女性育成の支援や、活動を全国に拡大させている点も評価。

○ 「技術・家庭科」に特化しつつ学習指導要領及び学校の教育活動との親和性を保持している点、事前の学校との話し合いの機会を設け学校のニーズ・要望を反映しつつ実践している点、教員研修プログラムの充実を図っている点が評価できる。

○ 生活に身近な製品の分解を通じて、ものづくり、技術への興味関心を高められる。生活の中の問題解決策をグループで考え、試作品を作成し、発表することを通じて工学、エンジニアの仕事の理解につながると共に、社会生活における問題にも興味を持ち、学習意欲の向上に繋がることが期待できる。

○ 「ものづくり」を通して、技術の楽しさや重要性とともに、ものをつくる仕事の大切さや楽しみを学ぶことができる体験学習である。技術・家庭科の授業での展開により、教科における「材料と加工に関する技術」や「エネルギー変換に関する技術」の深化につながり、技術や理科教育の基盤拡大に期待ができる。 

 

出典:第6回キャリア教育アワード事例集

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