【奨励賞】
団体名
キャリア教育推進協議会21
■活動の内容(概要)
キャリア教育推進協議会21は、地場産業「モノづくり」事業所と連携し、大田区内中学2年生全員の5日間の職場体験活動を目指し、長年支援するなどキャリア教育の充実を図っている。また、受入事業所拡大のため、11業種の「職場体験ガイダンス」や、子供たちの事故・怪我等を防ぐための「安全指導マニュアル」「衛生指導マニュアル」を開発するなど職場体験の効果を高める取組を進めている。
■受賞理由
・教育委員会が主体となり、公立私学の30校、3,500人が参加する規模は評価できる。中小企業の多い大田区の産業の姿を学ぶ上でも有効なプログラムである。
・「モノづくり」事業所が中高生に豊かな体験を提供。そこでコーディネート機能を発揮し、学校支援、事業所・地域の協力体制づくりがされている。
・地元の大田区の「モノづくり」事業所との連携しながら、11業種別に「職場体験ガイダンス」や、「安全指導マニュアル」、「衛生指導マニュアル」のプログラム開発に取り組んでいる点が先進的といえ、評価に値する。
・多様な機関・組織の連携によって、区立中学校2年生全員の5日間の職場体験活動を継続的に支えてきた実績も評価できる。
■連携・協働している機関や団体、組織
【教育関係者(学校、教育委員会等の機関や団体)】
大田区教育委員会、大田区立中学校(28校)、私立東京実業高校、私立大森学園高校、都立大森高校、大正大学地域構想研究所
【行政や地域・社会、産業界等】
(一社)大田工業連合会、(一社)日本物流団体連合会、東京都理容生活衛生同業組合大田支部、大田区中学校の職場体験を支援する会、NPO大田教育支援の会、東京蒲田ロータリークラブ
■活動開始の経緯
【活動開始時期】2011年~ 【継続年数】5年目
平成17年に東京都・大田区が平成20年度から5日間の職場体験を全校で実施する旨の発表を受け、大田区教育研究会進路指導部・地元事業所・大学研究者らが関わって、職場体験・キャリア教育の様々な課題を解決する研究会「学職連携ネットおおた」をスタートした。特に、大田区の地場産業「モノづくり」事業所との連携を重視した。それと並行して、大田区教育員会も職場体験推進協議会等の関係委員会を設置、ともに連携して、課題解決のための取組をした。この「学職連携ネットおおた」を平成22年に「キャリア教育推進協議会21」と改称し、関係団体と連携し課題解決から学校現場の職場体験・キャリア教育の下支えし、支援するとともに、事業所の職場体験・キャリア教育の理解・推進を図ることを目指して活動をすすめた。
■「協力性」についての具体的な取組、工夫している点など
平成17年から21年においては、中学校関係者、関係事業所、区教育委員会と高校関係者・大学研究者が連携し、キャリア教育・職場体験の課題解決に取り組み、効果的な学習となるよう、互いの理念を共有していった。そのために、受入事業所開拓のため11業種別職場体験ガイダンスや事故・怪我を防ぐための安全指導・衛生指導等のプログラム開発をした。さらに、学校・事業所・PTAの三者が理解の共有化を図るため、フォーラム等を開催した。
平成22年から平成26年においては、課題解決から学校現場の支援と事業所の理解の推進、並びに、学校現場と事業所との連携を図るため、教育関係者・事業所関係者等による、フォーラムやセミナーを開催した。さらに、年度末には区教委主催の職場体験連絡協議会を学校関係者・事業所関係者と共に実施している。
本会は、学校現場のキャリア教育・職場体験を下支えするために、先行して課題を明らかにし、それをテーマとして取り上げ、教育関係者と事業所関係者等が連携して取り組んできた。
■「継続性」についての具体的な取組、工夫している点など
本会は、関係事業所担当者、連携機関担当者、教育委員会担当者、並びに賛同する教育関係者・事業所関係者と年度始めの総会において、事業報告・収支決算、事業計画・収支予算の承認を得る。年度末には区教委の「職場体験連絡会・協議会」に参画し、教育現場と事業所関係者がコミュニケーションを図り、当年度の課題を明らかにしていく。課題は、本会のテーマとするとともに、区教委を通じて中学校職場体験担当者ならびに進路指導主任会等で提示し改善を図る。また、総会において全中学校の新年度職場体験日程を関係事業所に提示する。
また、年度初めに中学校校長会にて本会の事業計画を説明し、連携を図る。
本会では、活動報告を「ニューズレター」として年4から5回程度発行し、関係者にメール送信および郵送している。また、区内関係学校に郵送、ホームページアップなど、継続的に関心を高めるための「見える化」に取り組んでいる。
■「実践性」についての具体的な取組、工夫している点など
本会は学校における職場体験・キャリア教育を下支えすることを目的とし、次の活動をした。
・当初、最大の課題は職場体験受入事業所の開拓と事故・怪我に関することと実施内容・方法についてであった。そこで、平成17年~23年にかけて、関係中高関係者・教育委員会と事業所が連携して、11業種の「職場体験ガイダンス」を開発、学校の「予見・回避義務」を果たす「安全指導マニュアル」「衛生指導マニュアル」を開発した。
・事業所や学校、地域にキャリア教育・職場体験の推進・理解を図るために、平成18年~26年にフォーラム・シンポジウム・熟議など6回開催する。中でも、職場体験のマンネリ化、イベント化に警告を発するため、より効果的な取り組みとなるよう「受入事業所から見た、キャリア教育の課題と展望」~停滞期をどう打破するか~をテーマとして開催した。ここでは、その意義と必要性の理解不足によるものであり、打破する鍵は学校関係者と事業所関係者のコミュニケーションを図ることが重要であるとした。
・平成22年より、定期的にセミナーを開催した。毎年、キャリア教育・職場体験に関しての先行課題をテーマにするとともに、毎年、中学校1校ずつ職場体験実施による成果・課題を報告。また、学校現場へ職場体験先の紹介、職業人講話の講師紹介を、大田工業連合会・東京蒲田ロータリークラブ等の連携団体を通して実施してきた。
■「発展性」についての具体的な取組、工夫している点など
キャリア教育・職場体験がマンネリ化しないように、フォーラムを開催し、また、毎年開催されるセミナーにおいて、先進的なテーマを取り上げ広く参加を呼び掛けている。事業所関係者・教育関係者の累計参加者は100名を超えている。
・それにともない、他地区からの参加・交流が進んだ。特に佐渡市では同様な組織を立ち上げを検討し、佐渡市産業振興課島づくり推進室や教育委員会関係者が、セミナー等に参加するとともに、本会から佐渡市に伺い実践方法や課題について交流を図った。
・区内の公・私高等学校も推進・支援のため連携を図るようになった。私立東京実業高校のキャリアセンター設立とインターンシップ実施に、支援、助言した。また、都立大森高校のインターンシップ実施への支援も始めた。本会の取組みが、地域連携・貢献活動の事例として、大学生の学びの対象となった。
・大正大学地域構想研究所と連携し、「地域連携・貢献論」として特に「自らの仕事に社会貢献を見出し実践している人」として、講義をしていくこととなった。
■学校現場の評価・ 感想・コメント
・保護者から、会員の職場体験に関しての感想:息子はお伺いする前にはとても緊張しておりましたが、お蔭様で思いがけなく喜ばしい時間を過ごさせていただいたようで「あっという間に終わってしまった」と残念がっているほどでした。もともと精緻な「モノづくりの国」として世界から信頼されている。そのような、日本の根幹の一級の職場でこのような体験ができ幸運だと思っております。息子には体験した時間を忘れないで、何事にも真摯な姿勢で取り組める人間になって欲しい。
・生徒の感想(職業人講話):「落ち込んで泣いているヒマがあったら、その時間努力しろ」という言葉を聞きました。私は、その言葉にすごく感動しました。私は落ち込むとウジウジしてしまうタイプなので、今までその時間が勿体ないと思いました。これから、落ち込んでしまったり、悔しいこと悲しいことがあったら、今までの倍頑張ってみようと思いました。
■関係諸機関(行政・産業・地域団体等)からの評価・感想・コメントなど
大田工業連合会等関係団体は、当該団体が掲げる「子どもたちの環境を改善し、社会人としての完全なる成長を手助けすること」に賛同し、子供たちが好きな大人たちの集まりとして出発し、様々協力推進してきた。そして、年を経るにつれ、そのことの重要性を理解すべく、様々な角度からのセミナー、フォーラムの開催により事業所関係者等への啓発活動をすすめる大きな力を持った集団に変貌を遂げ、今後一層の発展を期待できる。
大田区教育委員会は、これまでキャリア教育推進協議会21をはじめ、関係機関の連携、協力のもと、今日、職場体験活動の一層の充実を図っているところである。さらに、おおた教育振興プラン2014に重点的に進める教育施策の一つとして、「豊かな心を育むアクションプラン」に職場体験の充実を掲げて、キャリア教育一層の充実を図っている。
平成26年度東京都「地域教育推進ネットワーク東京協議会」にて外部人材活用事例として評価を頂き報告した。平成23年度文科省「キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議」にて活動事例として評価を頂き、報告書に掲載された。
出典:第5回キャリア教育推進連携表彰受賞者事例集