第5回キャリア教育推進連携表彰

【優秀賞】

団体名

釈迦内サンフラワープロジェクト実行委員会

■活動の内容(概要)

<ひまわり製品の販売体験の様子>
<ひまわり製品の販売体験の様子>

釈迦内サンフラワープロジェクト実行委員会は、「こどもたちの未来を創りあげていく」というコンセプトの下、地域で大切にされてきた「向陽」=ひまわりを活用し、釈迦内小学校の児童が地域と連携しながら、耕作放棄地でのひまわりの種まき、収穫から、ひまわり油の製造、販売までの6次産業化に取り組んでおり、人間力・協働力・社会力等を培う実践的ふるさとキャリア教育として、地域に新たな活力を生み出している。

 

■受賞理由

・農業生産が盛んな地方圏でも、農業体験のほとんどない子供たちが増えている。そのなかで、付加価値の高い農業を目指した6次産業化の取組に子供たちに参加させることは地方創生の観点からも評価できる。

・「ひまわり」をテーマに、多彩な人の参画を可能にし、その中心に子供の学びを据えている。地域一丸となって、広がりのある継続的な活動を展開しているだけでなく、子供の参画度を高め、かかわった人すべての地域への帰属意識の醸成につなげている。

・「向陽(ひまわり)」という、地域の象徴を中心に据えながら、幼保・小・中の子供たちが、それぞれの発達段階に応じた活動を通して、様々な社会体験を積んでいくプログラムとなっている。

・幼保の段階からこのような社会体験を積んだり、地域の大人と触れ合っていくことは、その後のキャリア形成をはぐくむ基盤となる活動である。

 

■連携・協働している機関や団体、組織

【教育関係者(学校、教育委員会等の機関や団体)】

釈迦内小学校(活動主体)、北陽中学校、向陽こども園、釈迦内保育園、大館市教育委員会、秋田大学、秋田職業能力開発短期学校、横手市立浅舞小学校、由利本荘市立矢島小学校 等

 

【行政や地域・社会、産業界等】

秋田県、大館市、釈迦内小学校PTA、釈迦内まちづくり協議会、釈迦内婦人会、釈迦内公民館、秋田銀行、北都銀行、釈迦内郵便局、いとく、ダンロップ、トヨタ、ANA、大館能代空港 等

 

■活動開始の経緯

【活動開始時期】2011年~ 【継続年数】5年目

平成22年に釈迦内小4年生が取り組んだ「元気いっぱいひまわりプロジェクト」(ひまわりを育て、収穫した種を油に加工する取組)に地域の方々が共感し、釈迦内まちづくり協議会が主体となり、平成23年から取り組み5年目を迎えた活動である。釈迦内小の創立時の名前「向陽」にちなみ、ひまわりを核にしながら、子供たちの実践的ふるさとキャリア教育を推進しようと、「ALL FOR CHILDREN~すべては未来を担うこどもたちのために~」をコンセプトに地域全体で取り組むプロジェクトである。

 

■「協力性」についての具体的な取組、工夫している点など

まちづくりを行う中で「こどもたちの未来を創りあげていく」というコンセプトを決め、事業目的の中心に小学校を核にした「実践的ふるさとキャリア教育の推進」と定めた。地域住民に呼びかけて休校地の借用を行い、延べ1.5ha以上の土地を確保することができた。牛糞まきでの土づくり、種まき、除草、収穫には、地域住民、各種団体、企業の方々などへの呼びかけを行い、多くの方が子供と一緒に活動し、「顔の見えるおつきあい」を深めている。パンフレットや配布用種を窓口においてくれる銀行や郵便局、店舗前花壇をひまわり植栽に当て景観美化に貢献してくれる企業の協力がある。

 

また、県内の同様の取組をしている小学校とはふるさとキャリアサミットを実施している。子供にとっては地域の方と直接触れ合いながらキャリア実践ができ、地域住民にとっては子供と接することでの生き甲斐づくり、学校の教育活動に協力することによる自己有用感の醸成につながっている。企業にとっては社会貢献にもなり、学校と地域それぞれにとって「give&give」の関係性が広がっており、地域の一体化が進んでいる。

 

■「継続性」についての具体的な取組、工夫している点など

事業を進める上で、学校、住民、企業、農家、協力してくださる方が、地域の共通課題を「ひまわり」を中心に、それぞれが得意分野をもちより、「できる時にできる人が、できることを行う」というスキームを掲げ、組織化を図った。また、年間スケジュールを決め、子供たちは栽培、収穫、商品化、販売というすべての工程に主体的に参加し、住民や企業はまちづくり活動として参画する。販売収益を自然体感学習を中心とした子供たちの体験活動費に充当する仕組みを創り、漁業や畜産、ホームステイなどさらなるキャリア体験を積む機会がもてるようにしている。

 

また、活動による収支予算を明確にし、収益は活動費として種の購入、ひまわり油やお茶の制作費として予算化を図っており、継続した子供の活動を支える収支設計を行っている。年5回SP実行委員会を開催し、活動や収支状況の把握、ひまわり活動・地域づくりへの課題への対応や新たなアイディアを出し合うなど協議を行い、改善を図っている。

 

■「実践性」についての具体的な取組、工夫している点など

<ひまわりの種植えをしている様子>
<ひまわりの種植えをしている様子>

借り主へのあいさつや活動趣旨説明、地域の方や保護者、保育園・こども園の園児と一緒に行う種まき、除草、収穫、種取りなどの活動は、自然の営みを知り、働くことの意義と有用性、チームで働く大切さを体感するキャリア実践の場となっている。特に、種取は約1000kg以上を取る膨大な作業量であることから、実行力や主体性が飛躍的に向上する。

 

また、ひまわり油のラベル作り、販売活動のプレゼン・セールストークの工夫などで表現力・発信力が高まっている。さらに、休耕地での栽培に加え、多くの人に呼びかける種入りパンフレットを子供が作成し配布する「一戸一ひまわり運動」を展開している。どの家庭にもどの道端にもひまわりが咲いている「ひまわり(向陽)の街釈迦内」づくりを目指した活動により、地域のあちらこちらにひまわりが目につくようになってきている。

 

■「発展性」についての具体的な取組,工夫している点など

釈迦内小学校では児童会組織の中に「ひまわりキッズ委員会」を設け、活動の準備や運営を主体的に行うだけでなく、地域への呼びかけをしている。また、「ひまわりという素材を用いた地域貢献・地域活性化」のために、SKIP(Shakanai Kids Innovation Projectの略)に取り組み、各学年が「福祉」「環境」「発信」などをテーマにした活動は、地域に新たな明るさをもたらしている。PTA組織にも「ひまわり部」を設け、活動の全面的な支援、SPとの連携を図っている。「一戸一ひまわり運動」による種・パンフレットの配布は地域住民とのつながりをさらに強め、種や実の持ち寄りは個人・団体で200以上にものぼっている。

 

秋には「ひまわり感謝祭」を行い、協力してくれた方々を招待し、感謝状を渡すとともに、ひまわり活動を振り返るプレゼンを行い、共に汗した喜びを分かち合う機会になっている。「ひまわり写真コンテスト」「ひまわりかかしコンテスト」などを実施し、高校写真部・川柳選者・新聞社と連携しながら文化面での地域づくりに広げている。釈迦内婦人会は「ひまわりアイス」や「シフォンケーキ」を製品化、秋田職業能力開発短期学校では種取りの苦労を知って「電動種取り機」を開発。ホームページなどでひまわり活動を広く紹介することで、他県からの視察も多く、同様の活動を行う団体も増えてきている。

 

■学校現場の評価・ 感想・コメント

単発的なキャリア教育は実践できるが継続して取り組む実践は難しい中で、社会人基礎力の育成と地域づくりに役立つ実践的なふるさとキャリア教育が展開できている。地域の方と一緒に活動することで、「顔の見えるおつきあい」によるつながりが深まり、あいさつがよくなったり、地域のボランティアに積極的に参加したりする児童が増えている。進んで課題に取り組んだり、創意工夫して課題を解決しようとしたりする姿も見られる。また、全国学力調査でも全国トップレベルの本県の平均点を上回るなど、ふるさとキャリアで培われた力が授業を通し学力にも確かに反映している。

 

■関係諸機関(行政・産業・地域団体等)からの評価・感想・コメントなど

・学校単独のキャリア教育は多く実践されているが、地域と一緒になり、一つの目標に向かって地域づくりにまで発展する取組はなかなか見られない。ひまわりを核にしたふるさとキャリア教育は、四半世紀・半世紀後の消滅可能性都市から脱する未来戦略とも言える。(市教委)

・ひまわり活動に参加させてもらわないと、地域づくりに関わったり、子供たちや地域の方々と接したりする機会もない。地域貢献への一助ともなり、企業イメージの向上にもつながる貴重な取組である。(企業関係者)

・子供たちが汗いっぱい流しながらひまわりを育てたり、刈り取ったり、種を取ったりする姿を一緒に見ながら活動し、元気や勇気をもらっている。この子たちが釈迦内の未来を背負うことを確信している。(地域住民)

 

出典:第5回キャリア教育推進連携表彰受賞者事例集

運営:リベルタス・コンサルティング

 (協力:河合塾)

 

 

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