工業高等専門学校におけるキャリア教育の実例

NPO法人キャリアデザイン研究所・副理事長

元(国立)沼津工業高等専門学校キャリア支援室

現・沼津工業高等専門学校 学校運営諮問委員

キャリアコンサルタント・産業カウンセラー

村松 正敏

工業高等専門学校は、技術者を育成する高等教育機関として、求人倍率、就職率が非常に高いため、充実したキャリア教育を行っていると思われていますが、実際にはいろいろな課題を抱えているようです。キャリアコンサルタント・産業カウンセラーである、筆者は、母校である沼津工業高等専門学校で「キャリア教育」に関する授業を実施しました。ここでは、これらとともに、他の高専や大学・高等学校からの依頼で行った事例も交えながら、その取り組みを紹介いたします。

<連載第3回>自己理解が進み、自己開示によりコミュニケーションも進む「ジョハリの窓」を使って

◆プログラム例「ジョハリの窓による自己認知・他人認知」

 

「ジョハリの窓」はアメリカの心理学者ジョセフとハリーによって開発された「自己理解の手法」であり、古典的とも言われていますが、現在でも学生に限らず企業内での人材育成研修などで多く採用されています。筆者も入社後の人事研修で幾度か体験し「気づかない自分」を理解する非常に有効な手法と確信したので、あえて取り入れることとしました。

 

ここでは、下記表を冒頭で説明し、人間には4つのこころの窓を持っていて、(1)自分で気がつかない自分(Blind Window) (2)他人にわかってもらっていない自分(Hidden Window)をまず知ることにより、誰もが知っている自分を広げることでコミュニケーションも円滑になりWin-Winの関係づくりにつながることになるということを理解させました。

 

具体的には次のように行います。

 

(1)4~5名程度のグループを作る(1年生のようにまだお互いを充分理解していない段階では効果も出にくいので2年生以上が望ましいし、就活前の学年にも効果があります)。

 

(2)1人あたり5~6枚のメッセージカードを配り日頃のクラスメートとの接触や行動を思い出しながら、記述してもらう。

 

(3)できるだけお互いをよく知っている同士、日ごろの付き合いが多そうな同士を同じグループとすると効果的である。

 

(4)進めかたは下表の通り。「自らの気づき」と「周りに語る」「周りから指摘してもらう」「納得する」ことが重要となる。

 

(5)1時間で難しいこともあり2回に分けて実施することも予め検討する。

 

終了後には、各自の振り返りのためのレポートの提出を行い、教員のコメントを記入して返却を行うようにしました。レポートへのコメントはできる限り、次への踏み出しができるような言葉を書きます。

 

「自分が欠点と思っていたことが良く思われていて驚いた」、「知らない自分を知ることができてよかった」といった記述には、「気づきができてよかったですね。具体的にどのようなことに気づきましたか? 明日からの行動にどのように活かせると考えましたか?」といったように、さらに意識を持たせるコメントをつけました。

 

全員のレポートをすべて読み、コメントするには相当の時間を費やすこととなりますが、学生には喜ばれたようです。

 

具体的なメッセージカードを次に紹介します。

 

◆筆者プロフィール

筆者は、工業立国日本を支える「中堅技術者を育成する」目的で昭和37年に全国に12の国立工業高等専門学校が開設された際、その1つである「沼津高専」の第1期生(電気工学科)として入学。卒業後大手の精密化学工業に入社したが3年ほどで技術職から営業職に異動したことがきっかけで50歳の時に関係子会社に移籍、役員(営業本部長)として退任するまで一貫して営業部門に在職。関東、中京地区の多くの法人営業を担当する中で多くの企業人と接触を持ち議論してきたことのひとつが「キャリア教育」である。現在の「キャリア教育」が単なる「就職内定獲得対策」になっている傾向が強いように思われ、キャリアデザインや自己実現、さらには自己理解、コミュニケーション向上といった側面が疎かになっているのではないか、との危機感も感じ、母校のキャリア教育をはじめキャリアコンサルタント・産業カウンセラーとして、母校以外の高専、地元(千葉県柏市)の高等学校や大学でもキャリア教育を実施してきた。現在は主として厚生労働省認定の「まつど地域若者サポートステーション」にて若者の就労支援相談を担当している。

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