コラム

グローバル時代の教育について考える

諏訪康雄 

法政大学名誉教授、元中央労働委員会会長、

経済産業省/我が国産業における人材力強化に向けた研究会委員(人材像WG座長)


第2回 グローバル人材の育成

小説のハリー・ポッターや小公女、あるいはアジアの独裁者の子が在学していることで一躍有名になったボーディング・スクール(寄宿学校)。英国やスイスの例がよく知られている。そのなかには、親も「グローバル人材」ならば、子もその予備人材といったおもむきの学校が少なくない。


西欧では植民地を統治する高官も夫婦単位で赴任する習わしが強かったから、現地での教育制度が貧弱な時代には、母国などの先進国でその子弟を教育するシステムが不可欠だった。寄宿学校はこうした要望に応えた。現在では、多国籍企業の国外子会社の経営を担う社員群(エクスパトリエイトと呼ばれ、入社後はずっとA国の子会社からB国のそれへ、次いでC国のそれへ…と渡り歩き、本社の重役陣に名を連ねるまで、ずっと国外勤務ということもしばしばの層)が、その子どもたちを入れたりする。もちろん、会社が費用をもつ例もよくある。


成り立ちにおいて、富裕な貴族や実業家などの子弟を預かっていたこともあり、寮費を含めた学費はかなり高額になる。英国で妻が放送局のキャスターで夫が会社経営者のご夫妻にお会いした際には、数年前の邦貨にして毎年900万円くらいかかるので、3人の子どものうち1人だけを行かせるのがやっとだ、と嘆いていた。日本人で娘をそうした学校に入れた人も、学費の高さには悲鳴を上げていた。


だが、それだけの素晴らしい教育はしてくれるようだ。別の知人がスイスの寄宿学校に息子を入れようとしたときは、親子そろっての面接があり、「子どもをどんな職業につかせたいか」と問われ、「まだ決めてない」旨の返答をしたら、「どの職業につかせるかで個人別のカリキュラムが変わってくるのに、そんなことでは親としていかがなものか」とたしなめられたそうだ。まさしく社会に出て活躍できる人材を育成する教育、そして二度とない人生をしっかりと送らせようとする教育を志向しているらしい。


日産自動車のカルロス・ゴーン氏のようなグローバル人材が日本には少ないという問題意識が世間に広がっている。だが、各国からの子女を引き受け、寄宿制で教育する一貫校は、日本にほぼ皆無といってよい。大学でさえも国際化が遅れており、トップ校でも本格的な国際人材教育は緒についたばかりだ。そもそも、エクスパトリエイト制度を徹底する会社なども、ほとんどない。日本のグローバル人材不足には、それなりの構造的・システム的な理由があったとしかいいようがない。

 

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