平成25年度キャリア教育推進連携シンポジウム

文部科学大臣表彰受賞校による事例発表

1.仙台市立寺岡小学校「寺岡小学校の自分づくり教育」

発表者:仙台市立寺岡小学校 教諭 研究主任 目黒薫先生

目黒薫先生
目黒薫先生

■「仙台自分づくり教育」で寺岡小のゴールに迫る

 

寺岡小学校は仙台市の北部に位置しており、28学級児童数820名の学校です。全てが一戸建ての大きな2つの団地が学区で、保護者の生活レベルや学歴がとても高く、教育熱心な方々が多く住まれています。3年前の東日本大震災では団地への被害は少なかったのですが、本校の体育館には被害があり2年間使用することができませんでした。

 

このような団地に住む本校児童は、学力は高いのですが意欲や積極性という面ではまだ十分とはいえず、人と関わることは苦手です。いろいろな学習行動を卒なくこなし、生活行動でもあまり問題はみられませんが、自分に自信がなく自己肯定感は低い傾向にあります。また、今まで地域の方々と接する場が少なく、自分達が地域の一員であるという意識が希薄でした。このような児童の実態を踏まえ、どんな学校にしたいのか、どんな子ども達に育てたいのかということを全教職員で話し合い、研修を重ね、発達段階別に低、中、高学年の目指す子どもの姿を設定しました。高学年の目指す子どもの姿を寺岡小学校の卒業時のゴールの姿としたところ、「仙台自分づくり教育」で目指すものと一致しており、「自分づくり教育」を学校を上げて取り組むことで、寺岡小学校のゴールの姿に迫ろうと考えました。

 

「仙台自分づくり教育」では、将来の社会的・職業的自立に必要な態度や能力について、国の基礎的・汎用的能力の提案を受け、独自に5つに整理しています。それが「かかわる力」「うごく力」「みつめる力」「いかす力」「みとおす力」です。これらはそれぞれが独立しているものではなく、相互に関連、依存した関係にあります。全てをまとめたものを「たくましく生きる力」と考えています。

 

先程の、寺岡小の目指す子どもの姿に対応している「かかわる」「みつめる」「うごく」という3つの力に重点を置いて育てていこうと考えました。すなわち、場に応じたあいさつができる、友達の良さを認め支えることができる、地域の良さを知り地域を大切にすることができる、というゴールの姿は「かかわる力」を育むことで、自分の良さを自信を持って様々な方法で表現できる、という姿は、「みつめる力」を育むことで、失敗を恐れず挑戦し、集団の中で自己を生かそうとする、という姿は、「うごく力」を育むことで、ゴールの姿に迫ることにしました。

 

■普段の授業の中で、3つの力を育む

 

そして、これらの3つの力を、「自分づくり教育」の時間や場を特設して育成するのでなく、普段の教科領域の指導、すなわち、全ての教育活動を通して育てることとしました。さらに、このような授業を人と地域と関わりながら進めることでより確かなものとなると考えました。また、「自分づくり教育」の有効な活動である断片を系統化した年間指導計画を各学年で作成し、教師が年間の見通しを持って、「自分づくり教育」ということを意識して行うことが子ども達のゴールの姿に結びつく教育活動になると考えました。

 

具体的な活動を紹介します。「かかわる力」を育てるために、総合的な学習の時間では6年生が地域のためにできることを地域の人と一緒に話し合う活動を、4年生では住みやすい寺岡にするために児童センターや市民センターでボランティア活動を行い、音楽科では1年生が鍵盤ハーモニカを使い、相手の音を聞き自分の節をつなげて演奏する活動を、図画工作科では3年生が友達と紙版画の版を貸し借りして想像を広げて作品を作る活動などを行っています。

 

「みつめる力」を育てるために、総合的な学習の時間で6年生がインタビューを通して、今の自分の「好き」を見つけるという活動をNPO法人と連携して行い、体育科では2年生が表現運動を振り返り自分や友達の動きの良さを認め合う活動を行っています。「うごく力」を育てるためには、学級活動では、1年生が感謝を伝えるための活動を計画し、実行する活動を、国語科では3年生が話し合いを振り返り、改善点を次回に活かす活動を行っています。

 

毎日の授業の中で、自分づくり教育を意識しながら3つの力を育ててきました。宮城教育大学の協力の下、15項目の自分についてのアンケートを作成し、全学年で実施しました。昨年度に比べ3つの力が十分に育っており、特に自分の特徴や長所を自信を持って言えるという項目では、全ての学年でスコアが高くなっており、「自分づくり教育」の成果と感じています。

 

他にも成果を挙げると、コミュニケーション能力の向上により、自分や周りの人の良さに気づくようになり自己肯定感に高まりが見られたこと。地域ぐるみの教育の推進により、自分達は地域の一員であるという自覚が持てたこと。また、活動に対する意欲や積極性の向上も見られ失敗を恐れず実行する姿が多くみられるようになりました。多くの人との関わりではボランティア意識が高まり、最近では皆や地域のためにできることはないかと話し合い、行動に移すようになりました。

 

「自分づくり教育」を進めることは、まさに社会の中でたくましく生きる力を育んでいると言えます。あの震災から3年が経ちます。被災地である仙台でこれからの復興の担い手を担う子ども達のたくましく生きる力を私達は育てていかなければなりません。寺岡小学校は自分づくり教育を核に、「笑顔で元気」を子どもと学校と地域の合言葉にして、これからも社会の中でたくましく生きる力、生きる児童の育成に努めていきたいと思います。

 

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