平成25年度キャリア教育推進連携シンポジウム

文部科学大臣表彰受賞校による事例発表

2.青森県板柳町立板柳中学校「明日へはばたけあおもりっ子 キャリア教育推進事業」

発表者:青森県板柳町立板柳中学校校長 永澤正己先生

永澤正己先生
永澤正己先生

平成23年度より3年間、小学校・中学校・高校が、中学校を要とした校種間連携によるキャリア教育を実施しました。小中高の各校長が推進部となり、教頭が連絡調整部となる研究組織を作り、キャリア教育の視点を取り入れた教科の授業実践を行う「学習研究部」と総合的な学習の時間あるいは特別活動の担当者が入って、校種間連携を踏まえた体験活動の企画・実践に取り組む「体験活動部」の2つを設け、展開しました。本校での、学習研究部と体験活動部の実践についてお話しします。

 

■キャリア教育の視点を取り入れた授業づくり

 

我々が授業づくりで最初に確認したことは、キャリア教育ありきではなく、学習指導要領に示された授業の目的を達成するために、キャリア教育を効果的に取り入れることでした。あくまでも学習指導要領や子どもの実態をもとにした授業のねらいを第一にし、その上で、学習内容が児童生徒の日常や地域社会、将来の職業、生き方とどうつながっていくか、どう活用させるかを考えました。そして学習方法を工夫し、子ども達に必要な基礎的・汎用的能力を育むために、何を学ばせるのかを考える。これがキャリア教育の視点を取り入れることになると考えました。

 

具体的な授業作りの方法として、学習内容から児童生徒の日常などにつなげるという視点では、ゲストティーチャーの活用、体験活動、日常や職業との関連させることを考えました。学習方法から基礎的・汎用的能力を育むという視点では、グループでの話し合い、観察実験、自己評価と目標の再設定などを取り入れました。

一例を紹介します。社会科では、自分たちの街のフィールドワークを通して、街の課題や魅力を考えました。理科では、毎月の電気使用量を計算することで普段の生活と理科の学習のつながりを見直すきっかけになりました。道徳では、将来の夢がはっきりしない生徒が増加した現状から、資料や保護者からの手紙を読ませることで、向上心や個性の伸張を図るという授業を行いました。学級活動では、三者面談を1ヶ月後に控えて事前に作成した自己の進路プランとメンタル面を比較し、高校選択に終わるのではなく、この1ヶ月間で何に取り組んでいくか、どんなことを考えていくか、そんなことをみんなで探ってみました。

ゲストティーチャーも活用しました。社会科では、実際の警察官を招き、模擬裁判を行い、日常生活と犯罪や司法の関わりを考えました。美術では、プロのデザイナーを招き、町内の商店の包装紙をデザインし、商店の工夫や努力を学んだり、授業の後、包装紙を実際に店で活用してもらうなどしました。いずれも、学校の学びと実際の仕事がリンクした授業になりました。

 

成果としては、各教師の中でキャリア教育の視点を取り入れた授業のあり方について共通理解が図られ、また、日常の授業で教師にキャリアを意識する芽が育ってきました。一方、課題として挙がったのが、評価方法が難しいということ。また、キャリア教育の年間計画、各教科の年間計画の継続的な見直し、小中高の系統性を考えた授業づくりのための連携、家庭や地域、企業との一層連携が大事であるといったことが確認されました。

 

■体験活動でのねらいを焦点化させる「板柳プラン」

 

総合的な学習の時間あるいは学校行事での体験活動には、活動があるけれど学びが全くない、という厳しい指摘があります。体験活動を一過性のイベントで終らせないために、体験活動の学びを日常行われる教科学習や学校生活と結びつけ、ねらいとする効果を高める工夫をすることが大事です。また、体験活動を通して何を学ばせ気づかせていくか、より具体化、焦点化することが大事です。

 

ねらいの効果を高めるために、事後指導を特に大切にしていました。子ども達が気づいたことを振り返り、話し合いや文章化する作業を通して、より深い学びが展開されることになります。そして、事後指導の充実には、当然事前指導も工夫改善されなければならないということに気づきました。

 

一方、何を学ぶか具体化、焦点化するためには、キャリア教育を教育課程の中でどのように位置づけていくか全体計画を見直し、方向性を再確認することが大事です。そこで、我々は、他県の先進的な取り組みを参考にして、板柳中学校プランを作成しました。

 

3年間の実践研究の中で基礎的・汎用的能力の共通理解についてワークショップ型の検証を行いながら、基礎的・汎用的能力の4つの能力について学校としてどう捉えていくか、そしてどう迫っていくのか焦点化を図りました。このようなプランは連携を図っている町内の4つの小学校や1つの高校でも策定されています。板柳町全体で育みたい能力や資質の概念、活動場面や手立てを具体化し、校種間による系統性を持たせた指導を展開するための指針・プランとして板柳プランが完成しました。

具体的な実践について紹介します。中学生が職場体験の後に小学校を訪ねて、職場体験を通して学んだこと、気づいたこと、考えたことを小学生の前で発表する「ゲスト講話」を行いました。小学生は中学生の話を聞きながら、数年後の自分の姿と思いを重ねていたりします。また、職場体験は、小学校での職場見学や高校でのインターンシップなど連動した取り組みとして考えています。

 

修学旅行では、東京都内にある複数の夜間学級を訪問して学習活動に参加、交流したり、東京に在住する板柳町出身者を訪ね、生活や仕事のことについてインタビューしたり。立場の異なる様々な人との触れ合いを通して、生徒には深い学びや大きな気づきがありました。修学旅行そのものの見直しを図る上でも貴重な実践だったと考えています。

 

この他に、町内の小中高校6校で一斉に挨拶強化週間を実施。小中高校生の有志が集まってゴミ拾いボランティアをしたり、赤い羽根共同募金活動をしたり。小学6年生対象の学校説明会では、中学の生徒会役員が説明し、中学校の授業体験も行いました。

 

成果としては、教科の授業と体験活動を結び付け、事前事後指導の充実を図ったことで、子ども達の学びを深化させ、次の授業への関連付けや年間指導計画の見直しといった点でも効果がありました。また体験活動や学校行事の狙いをキャリア教育の視点から見直し、具体化・焦点化させたことで、活動場面や手立てがより明確になりました。

 

異年齢交流も一定の成果があったと考えております。ただ、小中高の校種間連携は、教育課程の壁があり、調整に時間がかかるなど課題が残りました。また、保護者・町民・関係機関との連携も重要で、そのためには学校が発信基地となって広報活動を繰り広げていくことが大事だと思いました。

 

この3年間の実践を通じて、キャリア教育は、学習内容と生きること、働くことを、学校教育全体としてつなぐ、学校の意識改革であるということを強烈に感じました。また、キャリア教育は、小中高の学習を継続性や発展性を重視してつなぐものであり、各発達段階において学ぶこと、生きること、働くことへの問いかけをすることは、教師自身への問いかけでもあり、大きな収穫となりました。

 

そして、教育が、社会のために、という視点を持つことはもちろん大事なことですが、一方で子ども一人ひとりのために我々学校や地域社会や企業、大人は果たして何ができるのか、今一度見つめ直すことが重要だと考えました。キャリア教育が、教育のために大人がつながっていくという意識の改革を促す助けになればと願っています。

 

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