平成25年度キャリア教育推進連携シンポジウム

文部科学大臣表彰受賞校による事例発表

3.三重県立津高等学校「大人・地元との接続を意識して『志』を育てるキャリア教育」

発表者:三重県立津高等学校 進路指導主事教諭 上村和弘先生

上村和弘先生
上村和弘先生

■学校生活そのものがキャリア教育

 

当校は創立134年の進学校です。進学校はキャリア教育と距離があると思われがちですが、進学校にもキャリア教育は必要だということをお伝えできればと思います。

 

今、我々が大切にしているのは、「キャリア教育」と「授業」です。それによって生徒たちに、「基礎学力」と「人間力」をつけたいと思っています。これからの不透明な時代において、基礎学力があれば彼らは学び続けていける。そして、人間力があれば、周りとつながっていける。そうすれば、キャリアチェンジを繰り返したとしても、自分をビルトアップしていけるだろうという考えです。

 

当校は旧制一中ということもあり、三重県を担う人材を今まで育ててきました。そういうこともあり高い教養と知性を持ったリーダーを育成したいと願いがあります。そのために我々が考えているのが、「三兎を追え」ということ。三兎とは、授業、部活動・学校行事、本物の体験の3つです。

 

私達は、学校教育そのものがキャリア教育であると考えています。授業もキャリア教育、受験も自分でチャレンジするキャリア教育。そして、自分の責任で選択するという姿勢、態度を育てたいと考えています。そのために、必要なのが、授業、部活動・学校行事、本物の体験、の三兎をやり切ることです。

 

■授業も受験もキャリア教育

 

一兎目、授業について説明します。本校ではアクティブラーニングを取り入れています。自主自立の校風の下、制服がありません。そういう意味で、お互いが話し合う授業が増えてきています。教師が主体だとティーチングになります。生徒が主体だとラーニングです。そこで教師はコーチとして関わるという仕組みを授業に取り入れています。

 

そのためには発問はポイントになると考えています。1つ目の発問は前回の授業の復習。2つ目の発問は彼らが持っている最低知識、断片的な知識の確認。一問一答型は今の生徒たちは非常に得意です。ただし、3つ目の発話では、論理的思考力や考察力を問う発問をします。答えのないことを考えさせるという発問をすると生徒は嫌がり、困った感じになります。そういう場面では、お互いに話をさせ、少しハードルを下げて情報共有させるという手法を取り入れています。

 

授業の目標は、生徒が主体的に本質を学ぶというところです。進学校ですので、授業が彼らの学校生活のほぼ大半を占めるので、授業がキャリア教育であるという意識を持って、各教科の授業作りに取り組んでいます。

 

二兎目の部活動については、90%以上の生徒が3年生でも活動していますし、自主的な学校行事も活発に行っています。

 

また、部活動引退後に放課後の時間を使って、生徒達が志望大学別に勝手にグループを作って、勝手に勉強しています。これを「大学別グルーピング」と呼んでいますが、教師が教えるということは基本的にはありません。自分達が学習計画を立てて、場所だけを確保してもらい、そこで勉強しているのです。受験は、社会の問題に比べたら、センター試験で何点とったら受かるとかクリアなゴールがあって、それに向けてチャレンジしやすい状況です。「それに向かって時間もマネジメントできなくてどうするのだ」という問いかけを彼らにして、「失敗もあり」ということで取り組ませています。

 

■偏った進路希望。本物を体験させることが大事

 

三兎目は、本物を体験するということです。平成25年の夏休みには、右図のような企画があり、生徒は自分で選んで参加するという形をとっています。NPOと連携して、インターンシップやジョブシャドウイング(仕事密着体験)などの就業体験も行っています。

 

なぜこのようなことをするのかと言うと、進路指導の課題があるからです。1年生で進路希望調査をしますと、360人のうち、医者志望が50人、先生志望が80人という数字になります。他はわからないという状態です。それは、実際に働く大人の背中が見えていないからだと思います。教員が彼らの勤労観、職業観を培うことに関わることが大事だと思います。そこで、外に出ていく、地元で体験させる、地元の大人に会いに行く、来てもらう、といったことを行っているのです。

 

一例として、医者志望も多いのですが、彼らを現場に連れて行くということで、三重の神島という小さな島の診療所に連れていきました。彼らは、こういうところで活き活きと働いている医師の姿をみて、自分と重ねてやる覚悟があれば、それを糧にします。その覚悟がない人が医者になってもらっては困ります。そういう引き合わせ方をしたいと思っています。

 

文系の生徒に対しては、文系キャリアプロジェクトというものを行っています。例えば、商店街での取り組みでは、今年3年目になりますが、1年目は地元商店街の活性化プランを、2年目は中小企業の社長さんに入っていただいて、地域の活性化プランを考えました。今年は「20年後の三重を創る」というテーマで、20年度の三重県をどうしたいのか、そのために自分達には何ができるのかを提言としてまとめさせています。これはなぜかと言いますと、彼らの志望として公務員も多いのですが、それは親に薦められたり、安定していると考えたりしているから。しかし、公務員になるなら、キチッと夢を持って公務員になって欲しい。そこで、そういう公務員の人に学校に来てもらっています。できあがった提言書は三重県知事に提出する予定です。

 

以上のような取り組みを行うことで、難関大志望者が増えるという仮説を私は持っています。実際浪人生が増えました。受験を通じて、チャレンジしていく気持ちを彼らに植え付けたいと思っています。また、大学入試はゴールではありません。20年後社会を支える人材を作りたい。これも我々の使命だと考えています。

 

文科科学省の「普通科におけるキャリア教育の調査研究校」の認定を受けて活動していますが、今後もできるだけ多く活動の成果を広げていきたいと思っています。

 

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