平成25年度キャリア教育推進連携シンポジウム

キャリア教育推進連携表彰受賞団体による事例発表

地域に学ぶ「トライやる・ウィーク」 兵庫県教育委員会県下全市町組合教育委員会

発表者:兵庫県教育委員会副課長兼中学校教育係長 平田高之氏

平田高之氏
平田高之氏

平成7年に起きた阪神淡路大震災からの教訓、さらに平成9年の神戸市須磨区児童連続殺傷事件を背景として設置された「心の教育緊急会議」において、様々な実体験を通して子ども一人ひとりが自分なりの生き方を見つけられるよう支援していく教育にシフトしていく重要性が宣言され、その取り組みの一環として、「トライやる・ウィーク」は、平成10年度に誕生しました。その後、「トライやる・アクション」や特別支援学校での実施など、生徒の成長や地域コミュニティーの構築を目指し、県民全てが関わる兵庫の教育の取り組みとして発展しているところです。

 

■「トライやる・ウィーク」とは

 

「トライやる」の名称は、挑戦=トライと共に、学校、家庭、地域社会の3者=トライアングルの意味も込められています。ねらいは、生徒の主体性を尊重した様々な活動や体験を通して、豊かな感性や想像性などを自ら高めたり、自分なりの生き方を見つけたりすることができるように支援するとし、対象は県内公立中学校、特別支援学校、中等教育学校2年生全員となっています。平成24年度は、366校49514名が活動しましたが、この15年間では75万7428名となり、兵庫県の人口が現在約558万人ですので、その14%近くが経験したことになります。実施時期は6月または11月を中心とした5日間です。原則として、自宅から活動場所へ通い、1週間学校には登校せず、したがってこの期間は部活動もしません。

 

活動分野は、職業体験活動が大半を占め、84.4%。他は、ボランティア・福祉体験活動が7.3%、文化・芸術創作体験活動や農林水産体験活動もわずかですがあります。活動内容は、保育園や幼稚園で活動する幼児教育が最も多く20.8%、量販店や小売店などでの販売が19.3%、役所や消防署での活動が7.9%、そのほかに、飲食店、社会福祉施設、学校関係等がそれぞれ5~6%あります。

 

17312か所の活動場所で、22855名の指導ボランティアの方々にお世話になり活動しています。約30%の事業所において、「トライやる・ウィーク」を実際に経験された指導ボランティアの方がおられまして、アンケートには「体験する側から指導する側になり、心に残る体験にしてあげたいと思いました。中学生に教えることは想像以上に難しく自分達も貴重な時間を過ごしたのだと改めて実感し、『トライやる・ウィーク』の良いところを確認することができました」という感想がありました。

 

推進体制としては、まず「兵庫県『トライやる・ウィーク』推進協議会」を設置。知事、教育長のほか、経営者協会、漁業・農業・森林組合等、受け入れを協力する51団体の代表で構成します。また、全ての市町教育委員会に、「市町『トライやる・ウィーク』推進協議会」を設け、さらに全ての中学校に「校区推進委員会」を設置し、市の推進教育委員会と連携して生徒の希望に応える受け入れ先や指導ボランティアの確保に努めています。予算については、必要経費の一部を、1学期当たり15万円を交付し、本年度の予算額は約1億9600万円となっています。

 

■事前事後指導でより効果が出るように

 

職場体験活動では、ケーブルテレビ局、病院、農場、工場と様々な職場で活動を行っています。「トライやる・ウィーク実施中」というのぼりを作成し、事業所に立てさせていただいている学校が多くあり、「トライやる・ウィーク」の実施期間中には県内各地で見られる、兵庫県の風物詩となっています。

 

また、文化・芸術創作体験活動としては、例えば赤穂市の塩田での塩作り、織物、丹波市の陶芸、城崎温泉の麦わら細工等地域の伝統産業を体験し、地域の良さや故郷の恵みに触れることにより、故郷意識の醸成にもつながっています。

 

そうした活動に向けての意欲を高め目的意識を明らかにするために、事前・事後指導の充実に努めています。事前指導は、中学1年生から進路学習と関連させながらの指導、活動時の心得や社会人としてのマナー等を学び事前訪問といったことを行っています。事後指導としては、活動のまとめを作文集や報告書にしてお世話になった事業所への報告、指導ボランティアや保護者を招いての報告会の開催など、中学3年に向け志望する進路実現のために目的意識を高める進路指導につなげています。

「入院経験や『トライやる・ウィーク』の活動から医療従事者になりたいと思い、皆の前で発表することで夢が明確になった」という生徒の声からは、事後指導の有効性がうかがえます。

 

平成15年度より、「トライやる・ウィーク」発展的活動として、「トライアルアクション」を実施しています。これは、地域のよさに触れることができるよう、地域の行事等の企画運営を行うもので、土・日や夏季休業中を中心とし、例えば福祉施設で6月に「トライやる」を体験した生徒が同じ場所で夏祭りやクリスマス会に参加。福祉教育の一環として敬老会、デイサービス訪問、配食サービス等も行っています。「トライやる・ウィーク」は対象は2年生だけですが、「トライアルアクション」は、全ての学年が対象になっています。全体で56.8%に当る208校45430名が活動しました。

 

■「トライやる・ウィーク」は進路選択に影響

 

生徒からは、「私たちの目に触れていないところで、多くの大人が大変な仕事をしていてくれるから、私たちが普通に生活できているのだとわかりました」「トライやる・ウィークの事前学習で仕事には楽しさだけではなく、厳しさもあると学びましたが、実際に体験すると自分の思った以上に厳しいものだと思いました」というような感想がありました。

 

教職員からは、「自分も経験した活動だが15年経って振り返ると、改めて中学生が次の一歩に踏み出すステップなっていく活動だと思います」など、本授業のねらいの達成が実感できる感想が届けられています。実際に、「トライやる・ウィーク」の就業体験で酪農への興味が芽生え、岡山大学農学部を卒業後、地元但馬に戻り酪農家が経営する製菓店で正社員で働く若者のケースなどが寄せられており、中学生の進路選択に大きな影響を与えるということがうかがえます。

 

成果としては、「地域全体で子ども達の育成に関わろうという機運を醸成したりするなど、地域コミュニティーの構築にも寄与している」という意見。また、「生徒一人ひとりの主体性を大切にしたものになっている。キャリア形成を図る社会体験やボランティア体験など多様な体験活動が行われている」という評価が挙げられています。

 

しかしながら、長年の実施により定着しているものの、学校によって取り組みの熱心さなどに温度差が生じたり、活動が行事化してしまい一人ひとりの希望に応じた受け入れ先の確保が難しくなっているという課題も挙げられています。トライアルウィークは本年で16年目になりましたが、このような成果と課題を踏まえながら、さらに充実させ、今後も学校、家庭、地域が連携して中学生のキャリア形成を支援していきたいと思います。

 

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