平成25年度キャリア教育推進連携シンポジウム

基調講演2

キャリア教育実践による効果について~企業の視点から~

菊池匡文氏(横須賀商工会議所 専務理事)

菊池匡文氏
菊池匡文氏

■人づくりは商工会議所の使命

 

平成20年から「産官学による中学生自分再発見プロジェクト」というキャリア教育事業をスタートさせています。日本には商工会議所が514あるのですが、プロパーの職員を置いて事務局を設置して、キャリア教育に携わっている商工会議所は、おそらく私達だけだと思います。

 

なぜ商工会議所か、という質問をよく受けます。きっかけは、平成16年、若年無就業者の「キャリア・サポート事業」でした。当時の会頭が、若い人がいい車に乗ってハローワーク通いをしている場面を見て、これでは将来、地域の産業がおかしくなってしまうと危惧しました。それで、「商工会議所は企業で成り立っている。企業は人で成り立っている。だから商工会議所は人をつくることが使命である」という考えから、「キャリア・サポート事業」という取り組みを始めました。

 

この取り組みは、無就業者の若い人達を3ヶ月研修をして、その後1ヶ月企業に受け入れてもらう、そのまま就職できればベスト、できなくてもこれを起点に就業意欲を高めてもらうという活動です。加えて、彼らの、例えば、クラブ活動で優勝したといった、自分しか知らないターニングポイントを明文化して、それをキャリア認定証として渡す、そして就職活動など自分を表現する場に活用してもらうという事業を行いました。実は、これは、国の「ジョブカード制度」のモデルとなりました。

 

ところが検証の結果、アルバイトで何も不自由はないとか、失業保険をもらえているんだからいいんだとか、そういう若者も多く、対処療法ではダメだということがわかりました。産業界がしっかり義務教育段階にまで入って、地域の受け皿として、取り組む必要がある。その考えから、この「よこすかキャリア教育推進事業」が始まったわけです。

 

 

■商工会議所が中心となった組織作り

 

まず組織作りを行いました。下図にありますように、横須賀市教育委員会と、横須賀市の市の施策を担っている「都市政策研究所」と、横須賀商工会議所の三者で組織を作りました。真ん中によこすかキャリア教育推進事業事務局があり、これが商工会議所に設置されています。

商工会議所では、コーディネーターを2名設置しています。一人は、市立の総合高校の副校長の方で、もう一人は、もと中学校のPTAの方。商工会議所のプロパーの職員が一人、マネジメントでついております。

 

その下にある企業応援団は、私達の会員事業所で、その企業から派遣される社員の方々を、「MTT/マイタウンティーチャー」と呼んでいます。「地域の働く人達は、地域の先生である」というコンセプトなのです。そして、横須賀市の全中学校23校の支援を行っております。

 

■プログラムの作成プロセス ~学校の思い、目的を重視

 

プログラムは2種類あり、1つが、下図でいうと、左側の「支援プログラム」。これは、基本プログラムといえます。もう1つが、右側の「自校開発プログラム」で、学校がそもそも取り組んでいるものがベースとなっているものです。

どちらのプログラムも、まずは、校長の思いや方針のヒアリングから始まります(ステップ1)。それをもとに、教頭、担当者、学年主任等が、何を実際にどうしたいのかの検討に入ります(ステップ2)。そこに、生徒の分析や指導教師の思いなどを加味して、年間プログラムを私達が主導で先生方と一緒に作ります(ステップ3)。そして、ステップ4、プログラム実施前の打合せ、実施当日。1年間終わった段階で効果検証を一緒に行います(ステップ5)。

 

プログラムの作成過程では、学校の思いを最大限に重視するため、パッケージを押し付けるのではなく、各校の目的に応じて作っていくことになります。

 

■支援プログラム ~産業界が担当するプログラム

 

「支援プログラム」には、以下の3つがあります。

1.グループディスカッション「出会いが心を揺さぶる」

2.ポスターセッション「私の仕事紹介します」

3.県専門学校各種学校協会との連携「私の夢伝えます」

 

「出会いが心を揺さぶる」は、MTTマイタウンティーチャーが、生徒達と車座になって、働くことについて、一緒にグループディスカッションします。右の写真は、グループディスカッションの光景ですが、真ん中にいるのがMTTです。

 

「私の仕事紹介します」は、MTTによる、仕事に関するポスターセッションです。例えば、漬物屋の主人が来て、素材から最終的な漬物にするまでを、生徒達と一緒に実際に行います。県専門学校各種学校協会と連携した「私の夢伝えます」では、例えば、自動車の専門学校からは、実際に車と機材を持ち込んで、生徒達に、車の仕組み、実際の整備の過程などを学ばせます。美容系の専門学校からは学生が来ます。いつもは教えられる側の学生が実際に中学生に教える機会は、専門学校にも非常にありがたがられています。

 

■自校開発プログラム ~地域の特色も生かして

 

自校開発プログラムは、学校オリジナルのプログラムで、とりわけ地域の特色を生かした、企画的なプログラムです。

 

一例を紹介しますと、ある中学校は、横須賀唯一の無人島「猿島」を盛り上げようと考えました。そして、「猿島ミッション」と銘打って、猿島をどうしたらいいか企業にプレゼンしたり、生徒達とMTTが一緒になって、無人島文化祭を行ったりしました。また、生徒達が、ワカメを原材料にした「猿島チップス」を提案、実際に商品化して売り、横須賀のおみやげコンテストでも準優勝しました。

 

ある中学校では、サツマイモの種芋を植えて収穫を行っていました。それを、キャリア教育にしようと、加工して、商品化したのです。そして、実際に地域の産業祭で販売。実際にお金が入るわけですから、これを種芋の仕入れに使うとか、寄付をするとか、お金の使い方も考えるという学びになります。

 

こうしたキャリア教育を通じて、生徒、先生、MTTのみなさんに、多くの気づきがありました。

 

生徒からは、「『夢は夢のままで終わらせない』という言葉から、看護士という夢を絶対にかなえたいと思った」「MTTの一言から、人前で話すときに、自信を持って話せるようになりました」という気づきがありました。先生方からは、「このプロジェクトで、学校だけでは実現しなかったことが実現した」「どこの学校でも活用できるプログラムだ」と、プログラムの有効性について評価がありました。

 

多くのMTTが、「もう一度自分を見直すきっかけになった」と述べています。送り出す企業の側としては、「自分自身の社会的な役割や立場を客観的に見られるよい機会になった」「参加者から好評であったので、いろいろな部署から派遣するようになった」と、好意的に捉えていただいています。

 

最後に、成功のポイントとしてまとめますと、まずは、産官学による密な連携であり、コーディネーターを設置したこと。そして、産業界が直接教育に関わる重みを感じながら、地域企業と思いを共有したことだと考えます。そして、実際には、関わる人それぞれの努力の結晶だと思っています。

 

 

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