小学校、中学校、高校における事例発表

浜松市立元城小学校 木工製品の企画、製造、販売のビジネスに小学6年生が挑戦 「元城キッズチャレンジビジネス」

静岡県浜松市立元城小学校 教頭 平松光一郎氏 (現 浜松市立浅間小学校 教頭)

5人一組になって木工製品の会社を作る

 

本校は静岡県浜松市の中心市街地にあり、浜松市役所や、徳川家康がいた浜松城の公園に隣接しています。明治6年に浜松市第1番小学校として設立され、今年創立140周年を迎えた歴史と伝統のある小学校です。


本校のキャリア教育は、総合的な学習の時間を中心に取り組み、市民力の育成をめざしています。市民力とは「勤労する意欲、物づくりや新しいことに挑戦する精神」だと教えています。3年生では地域、4年生では福祉、5年生では環境について学び、6年生では自らの生き方や夢について考える学習として「元城キッズチャレンジビジネス」を行っています。
 
ここでは、「元城キッズチャレンジビジネス」についてお話しいたします。「元城キッズチャレンジビジネス」は、地元の木工製品製作会社「豊岡クラフト」の協力を得て、6年生が、木工製品の企画、制作から販売に至る一連の活動を、会社組織を作って行う取り組みです。


平成16年度に始まり、スタート時は経済産業省、浜松市商工会議所の協力のもと活動をしました。支援が終了した後も、本校PTAの皆様や地域の皆様から多大な協力を得て続けています。


1年間にわたる取り組みの中の、主なポイントを紹介させていただきます。


実際の活動に入る前の6月、修学旅行の際に、キッザニア東京や浅草などに行き、将来の夢体験や接客の仕方を学ぶ機会を設けます。このときに、どの職業でも利用してくれる人のことを真剣に考えていることや、商品を販売するときは商品を気にいってもらえるように接客しなければならない等を学びます。


7月、木工製品製作会社「豊岡クラフト」の山崎会長から、木工製品の良さを学びます。豊岡クラフトで作られた製品を実際に見ながら、木の温かみや木目の美しさなど木工製品の素晴らしさを学習し、「素晴らしい木工製品を作ってお客さんに喜んでもらおう」という物づくりの精神や、チャレンジする精神を養っていく良い機会になっています。子どもたちからはその後の学習に対する意欲が感じられました。


9月には豊岡クラフトの工場で、商品の製造現場を見せていただき、木工製品の製造工程を学びます。この工場見学は、自分たちが考えた木工製品をどのような順序で作るべきかを知ると同時に、皆で協力することの大切さを学ぶ良い機会になっています。


10月には元PTA会長である、地域の建築会社の社長を招いて、会社の仕組み、会社でのさまざまな仕事と役割、会社作りに必要なことについてお話を伺います。この学習では、自分たちの会社を設立したら一人ひとりが意欲的に取り組まなければいけないことや、皆で協力することの大切さも学んでいます。


会社の仕組みを学んだ子どもたちは、いよいよ自分たちの会社を設立します。1つの会社は5名程度で組織し、会社ごとに社長、営業部長、企画部長、宣伝部長、出納部長等の役割を分担します。その後は商品の開発が始まります。これまでの学習を生かしながら、会社ごとに商品を考えていきます。各会社の中で試作品作りに活躍する子、皆の意見を聞いてまとめることができる子など、それぞれの子の良さが表れる様子が見られています。商品を開発する中で、実際に販売するデパート等、繁華街に出向いて商品に対するリサーチも行っています。工作が苦手で試作品作りで活躍できなかった子どもは、このリサーチ活動で活躍するといった姿を見ることができました。


そして、高さの異なるペンを収納できるペン立てや、書籍の冊数に合わせてついたてが動かせる「スライド本立て」など、日常生活での使いやすさを考えたさまざまな案が出てきます。

 

 

販売の苦労も味わい、収支報告発表も行う

 

12月からは商品の販売に向けての活動も始まります。チラシやポスターといった商品の宣伝広告について、元PTA会長である地域の乾物店の方から学び、実際のチラシなどを見ながら、どのようなものを作ればよいかを教えていただきます。その後、地域にある店や施設などに貼ってもらうポスターや、販売当日に配布するチラシを作成します。


1月に入ると豊岡クラフトの山崎会長から製品の制作方法を説明していただき、商品を製作していきます。部品を組み立てヤスリをかけ、ニスを塗って仕上げます。昨年は木工用ボンドで部品の組み立てをしたのですが、本年度は昨年の反省を生かして、木ねじを使って強度を高めました。


2月には、これまでの活動の集大成となる商品販売を行います。地域のデパートに特設会場を設置していただき、一生懸命お客様を呼び込みます。商品の販売が終わった後、子どもたちからは「思っていたより販売は大変でした。お客様が来てくれても買ってはくれませんでした。世の中は甘くないなと思いました。でも、初めて1つ売れた時は『やっと1つ売れた』という気持ちでとても嬉しくなりました」等の感想が聞かれました。


販売活動が終了した後には売上の会計処理を行い、収支の確認をします。会社ごとに売上とかかった費用から利益を計算し、当初の計画と実績を比較して、良かった点と改善点について、会社ごとに発表します。最後にこれまでの学習を振り返り、自らの生き方や夢について考え、それをまとめます。そしてその内容を保護者の前で発表します。振り返りでは「『キッズチャレンジビジネス』の学習を通して、いろいろな人に支えられて生活していることを改めて感じました。私も将来はたくさんの人を支えられる人間になりたいです」等の声が挙がっており、また、商品を購入していただいた方からお手紙をいただいたりもしています。


今年の「キッズチャレンジビジネス」は、働くことの意義、物づくりへの誠意、おもてなしの心、感謝の気持ちなどを学び、自らの生き方や夢について考えることができる素晴らしい学習になりました。また、子ども一人ひとりが他者のことを知る良い活動にもなっています。地域の方、保護者の皆様の協力がなければできない活動です。地域の方、保護者の皆様と一緒に実践していくことで、子どもたちの将来に向けての大きな財産になっていくように思います。実は昨日、本年度の販売活動を行ったところです。当校ホームページにそのときの様子を載せてありますので、ご覧いただければ幸いです。

 

 

上越市キャリア・スタートウィーク実行委員会 子どもの夢と地域の夢を紡ぐ「上越『ゆめ』チャレンジ事業」

発表者:上越市教育委員会学校教育課 指導主事 藤田賢一郎氏(発表時)

 

5日間の職場体験を市内の全中学校で実施

 

上越市は平成18年度に文部科学省の「キャリア・スタートウィーク推進地域」の指定を受け、2つの中学校が2日間の職場体験活動を始めました。平成20年度からは市内の全中学校、22校での取り組みが始まり、2年生約1800人が、毎年5日間の職場体験を行っています。20年度に職場体験を受けた子どもたちは高校3年生になりました。これから毎年巣立っていく、夢チャレンジ世代の若人1800名が、上越市をより良く変えていくと信じています。


「上越『ゆめ』チャレンジ事業」に参加した子どもの感想です。「地域の大人と一緒にする活動はとてもやりがいがある」「地域の大人から褒められて、一人前と認めてもらえると嬉しい」「もっと頑張って期待に応えたい」「人に喜んでもらえると自分も嬉しい」。「上越『ゆめ』チャレンジ事業」に参加した、多くの子どもからこういった声が寄せられています。


学びと感動を共有することで、地域や受け入れ事業所も変わっていきます。受け入れ事業所数は180から640に増えました。5日間の体験に関しても、当初は「3日ならなんとか」という意見が多かったのですが、平成23年度には、88%が肯定的な意見となりました。また、事業所の皆様からは「私たちも初心に返ることができた。」「中学生の爽やかな挨拶で気分良く業務が開始された」「中学生に自分の仕事を理解してもらおうと指導していたら、共に成長できた」といった大変嬉しいご意見をいただけるようになりました。


この事業では、地域や事業所の皆様が学校教育への参画や社会貢献を果すだけでなく、地域の人材育成や、地域や職場の活性化に繋がると考え、チームとして上越の若人を育てていこうとしています。私たちの願いは、「何かをしたい」という自分の夢だけではなく、「誰かの為、世の為、人の為に何かをしたい」という志ある若人が育つ上越市にすることです。そのために子どもの「ゆめ」と地域の「ゆめ」を紡ぐ「上越『ゆめ』チャレンジ事業」の推進を、私たち上越市キャリア・スタート・ウィーク実行委員会が支援しています。もちろん私たちだけでできることではありません。今年度上越市教育委員会は、市内の76校の小・中学校すべてをコミュニティー・スクールとして指定しました。地域と学校が共に知恵を出し合い、協働しながら子どもたちの豊かな成長を支えていく人の輪が、さらに強く深く根付きつつあります。

 

受け入れ事業所データベースや、活動例を示した手引きの作成など、さまざまな工夫

組織の概要を紹介します。当実行委員会は上越商工会議所等の受け入れ支援組織、上越市PTA連絡協議会等の保護者関連組織、上越市中学校長会等の学校関連組織、NPO法人上越地域学校教育支援センター等の事業所とのコーディネート支援組織で構成され、教育委員会が事務局を務めています。


私たちは5日間の体験にこだわっていますが、力を入れているのは5日間の体験だけではありません。たとえば入学式で名前を呼ばれたら大きな声で返事をする、他の小学校から入学してきた新しい友達に思い切って話しかけてみるなど、こういったことは学校生活を良くするだけでなく、将来の社会的・職業的自立に必要な人間関係形成能力を育成する機会と考えています。つまり入学から卒業までのキャリア教育のストーリーを通した中で、「上越『ゆめ』チャレンジ事業」を中核として捉えています。


地域の子どもたちを地域で育てる機運を高め、「ゆめ」チャレンジの趣旨を事業所の皆さんにご理解いただくために、職場体験受け入れ事業所説明会を行っています。また、講習や研修支援も行っています。中学生へのマナー講習では、私たちが講師を務めています。


さらにICTを活用した支援にも力を入れています。受け入れ事業所データベースとして、NPO法人上越地域学校教育支援センターから提供された「子ども版スクールオフィス」を、学校や職場間の調整に活用します。子どもたちや教師は、各学校のコンピューターから、受け入れ事業所の確認や希望の入力などを行います。たとえば事業所の調整は2校間なら電話予約で済みますが、5〜6校になれば2校が連絡しあっているうちに他校が事業所に連絡してしまうことも危惧されます。しかし「子ども版スクールオフィス」を活用すれば、同じ事業所を希望している生徒がどの学校に何名いるかを一覧で知ることができ、事務局もそれを知ることができます。


また、職場体験活動が円滑に行われるように、手引きやリーフレットの作成を行っています。教師向けには「上越市キャリア教育テキスト」を、受け入れ事業所向けには「上越『ゆめ』チャレンジ事業」の趣旨や体験のポイント、5日間の活動例を示した手引きを、さらに事業所を含めた地域全体の啓発のためにリーフレットを作成・配布しています。


「一見火の気の感じられない灰の中から火種を掘り起こす事が大切である。掘り出した火種は次の火を呼び起こす」。これは上杉謙信公から数えて10代目の上杉家当主、上杉鷹山公の名言です。「上越『ゆめ』チャレンジ事業」が掘り起こした、「地域の皆で志ある若人を育てていく」という火種が次の火種を呼び起こしていけるよう、実行委員会の一員として、そして上越市民としてできる限りのことをしていきたいと考えています。

 

 

山梨県立甲府昭和高等学校 小中高合同会議 -小中高が連携したキャリア教育の取り組み

発表者:山梨県立甲府昭和高等学校教諭 丸山淳氏

小中高の教職員の交流が活発に

 

本校は3年生が8クラス、1・2年生が各7クラス、合計22クラスがあり、各クラス40名という規模の普通科高校で、来年創立30周年を迎えます。甲府盆地の真ん中に位置し、学校の隣には中央自動車道の甲府昭和インターチェンジがあります。近い将来には学校の近くにリニアモーターの駅ができるという噂もあります。


山梨県の教育指導重点における重点施策の中の「体系的なキャリア教育の推進」の一つに、小中高連携による一貫した進路指導の推進があります。これに基づき、同じ町内にある押原小学校、押原中学校と本校は、平成21年から3年間にわたって山梨県の「児童・生徒キャリア育成推進事業」の研究協力校として、キャリア教育の一環としての小中高連携の実践に取り組むことになりました。小中の連携、並びに中高の連携も実施されていますが、今回は小中高3種の連携について話します。

 

初年度は、小中高連携の狙いとしては、「指導内容の一貫性」「児童・生徒の相互交流による人間関係形成能力の育成」「教職員の交流による相互理解の深化」の3つが掲げられました。教職員の交流については、県の指定を受ける前から本校職員が中学校に出向く形で中学生向けの授業を行っていましたが、これを契機に、中学校の先生方が高校に来て授業参観をしたり、または本校の職員が中学校に行って授業を拝見したり、その後お互いに意見交換を行うようになりました。

 

 

小中高合同会議を開催、子どもたちで活動内容を決定

 

活動2年目は、この連携に伴う新しい活動として、小中高連携の2つ目の狙い「児童、生徒の相互交流による人間関係形成能力の育成」に焦点を当てた、「小中高合同会議」が開催されました。この会議は小学生7名、中学生8名、高校生5名で構成され、児童・生徒が企画から運営までを担当しています。平成22年6月の合同会議では、会議の席では、小中学生からもいろんな意見が出て、「地域の美化活動をしよう」ということで話し合いがまとまりました。


私たちが住んでいる町にはJR身延線の駅があり、皆が使う駅だということで、「駅美化活動」を行いました。小学生は安全確保の観点から当日の美化活動には参加せず、花の準備や啓発ポスターの作成を担当し、中高生は役割分担を決めて、美化活動を行いました。


9月、2回目の合同会議では、小学生も直接参加できるよう、清掃活動場所に押原公園が追加されました。ここはJリーグのヴァンフォーレ甲府のベースでもある、地域の運動公園です。そして3回目の活動では、地域のふれあい祭りに参加してアンケート調査活動を行い、地域住民との交流を深めました。


この年の最後の合同会議では、1年間の活動の反省と次年度の活動方針を児童・生徒が話し合い、それを踏まえて職員が集まって、3年目の研究テーマを「自己と他者、社会の理解を通して、児童・生徒の自律を促す」に決めました。また各段階での育成目標を定め、各校の主な行事を通してどのような力を身につけさせるかという一覧表も作成しました。


活動3年目の平成23年度の合同会議では、この年のメイン活動として「登・下校時の危険箇所マップ作りをしよう」と子どもたちが決めました。実際に子どもたちが地域に出向き、一時停止の標識がある所とない所をチェックしたりして、どういう道が危ないのか具体的に共有しようとマップ作成に取り組みました。

 

今後の実践体制や検証方法などの課題も

 
3年間の活動を経て、いろんな課題も見えてきました。1つ目は実践体制です。この3年間は先生方を少しずつ多目に配置していただきましたので、通常勤務に加えてなんとかこの活動に時間を割くことができましたが、現在は通常勤務に戻っています。教科指導、生徒指導、部活動の指導もある中でどのようにこのキャリア教育を小中高が連携していくのか、これはなかなか難しいという声が関係先生方から挙がっています。


2つ目は小中高の連携です。特に小学生が参加するので、活動場所によっては保護者の理解が得られないとできないという制約がどうしてもかかってしまい、活動範囲が規制されるという課題があります。


3つ目はこれらの行事・授業の検証方法です。単年度で評価できるものもありますが、そうでないものもたくさんあります。子どもたちがこのような行事に参加して、小学生が高校生のお兄さんお姉さんたちと交流したことで、「いつかあんなふうになりたい」と思ってくれていれば良いのですが、この検証ができるのは数年後になってしまいます。その辺りの検証が難しいという意見がありました。

小学校、中学校、高校における事例発表

※動画(文部科学省)

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