第2回キャリア教育推進連携表彰 最優秀賞受賞 諏訪市教育委員会

「諏訪市におけるものづくり教育の推進~キャリア教育の一環として~」

発表者:諏訪市教育委員会教育長 小島雅則氏、諏訪市教育委員会 地域連携相談員 五味聖氏

ものづくりの伝統を次世代に伝えたい


諏訪市は本州のほぼ中央に位置し、7年に一度行われる御柱祭や、厳寒時の諏訪湖に出現する御神渡りをご存知の方も多いかもしれません。現在、人口は51,000人で、学校数は小学校が7校、中学校は4校、児童生徒は約4,200人です。


戦前は製糸業が盛んでしたが、戦後は「東洋のスイス」と呼ばれるほど、時計やカメラ、オルゴールなど光学機器の精密機械工業で栄えました。現在も精密機械工業を中心とした多種の部品製造業が盛んで、世界に誇る最先端の精密加工技術を用いたものづくりの伝統を、なんとか次世代に継承していきたいという想いが、ものづくりを軸とするキャリア教育を始めたきっかけです。

 

ものづくり教育を中心としたキャリア教育の5本の柱

(図をクリックすると拡大版へリンクします)
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諏訪市キャリア教育には大きく5本の柱があり、市内全小学校の全学年に対して実施しています。


諏訪市のキャリア教育の中心となるのが、ものづくり教育であり、その大きな柱が「相手意識に立つものづくり科」という教科です。2つ目の柱は小学校5年生と中学校2年生を対象とした「地域密着型ものづくり講座」。3つ目の柱は市内小学校6年生全員に対して行われる「腕時計の組み立て体験」で、4つ目の柱は10月に開催される「工業メッセへの出展」です。詳しくは後述します。


さらに、5つ目の柱として、ものづくり教育以外の場で実践されている、各小中学校のキャリア教育があります。

 

危機感からものづくり講座を開始


私どもの、ものづくり教育の歩みを紹介します。


平成15年、市内の企業の経営者が、後継者づくりやものづくりの精神の継承を何とかしたい、若者の汚い仕事を敬遠する風潮を何とかしなければならないという危機感から、地域密着型のものづくり講座を開始しました。小学校5年と中学2年を対象に、学校近くの企業22社からご協力をいただいて開始しました。


平成17年、経済産業省のキャリア教育プログラムモデル事業に応募し、「ユーザー視点のものづくり教育」を始まりました。


平成19年には、2年間の「ユーザー視点のものづくり教育」の実践を基盤として、「相手意識に立つものづくり科」を教育課程に位置付ける、いわゆる特区の申請をしました。この際に乗り越えなければいけなかった最大の点は、ものづくりを通して学校教育として、いったいどのような力をどう伸ばすのか、評価をどうするのか、ということでした。19年度には、第2回ものづくり日本大賞(経済産業大臣賞)をいただきました。


平成20年からは文部科学省の教育課程特例校指定を受け、「相手意識に立つものづくり科」という正規の教科として発足し、本年に至っています。

 

地元企業と学校、行政が連携

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「相手意識に立つものづくり科」などのキャリア教育を実施するにあたり、地元企業や学校、行政が連携し、各種の委員会や連絡会を組織してすすめています。推進組織の中核となる“ものづくり委員会”を設け、各学校の職員を中心に、企業OBのアドバイザー、行政の担当者が連携して、ものづくり教育を運営しています。


また、学校支援地域本部と連携して、地域のボランティアの方々にたくさん入っていただき、サポートしていただいています。

 

正規の教科「相手意識に立つものづくり科」


諏訪市のキャリア教育の大きな柱である「相手意識に立つものづくり科」は、市内の全小中学校で、年間25時間、正規の授業に入れている教科です。したがって評価をし、通知表や指導要録にも記入をしています。


その内容は、文字通り、自分以外の人、家族、友達などさまざまな人のためのものづくりを行います。たとえば小学校2年生では、保育園児との交流会で園児に贈るプレゼントや、自分たちが栽培した花の押し花を使った、家族に贈るコースターを作ったりしています。小学校3年生では、家族の手の大きさに合わせて作った竹箸を包装し、メッセージカードを縫い付けています。


これまで、「相手意識に立つものづくり科」では3つの基本方針を設定して行ってきました。1つ目は、地域の特性を活かすこと。地域の企業や人材、技、材料等を極力活用して行っています。2つ目は、豊かな心情を育てること。これは最も重要だと考えています。相手を大切に思う心、思いやりの心を育てることは、おそらくいじめの撲滅にもつながるだろう、そんな思いで行っています。


3つ目は、自己の将来を考えさせること。人との関わり、ものとの関わりを通して、人の生き方等を受けとめ、ものづくりの楽しさを味わう同時に、自分の将来を考える契機となることを期待しています。


実施面で大事にしているのは、“二度づくり”ということです。同じ題材で試作や模型を作ったり、改善を行ったり、発想の転換をしながら二度作ってもらう。二度づくりをすることで、技能の向上や使いやすさのための工夫、発想の転換といった力が養われていくように思います。


作品は、校内作品展を開き、保護者や地域の皆様にも公開。児童相互の情報交換の場にもなっているようです。

 

社会と接する体験学習の機会も多数用意


このほか、校外に出て、より広い体験をさせる体験活動があります。その一つが、「地域密着型ものづくり講座」です。諏訪市のものづくりキャリア教育の始まりとなった活動で、学区内の企業の方のものづくりへの想いや工夫、困難などを聞くとともに、簡単な製造体験をさせていただいています。圧力計や金型、プリンターの製造、プラスチック成型、ガラス表面のデザイン、バネ作りなどさまざまな体験があり、最近では伝統産業として味噌の食品製造工場やいちごのハウス栽培などの農業関係の方からも協力いただいています。


また、これとは別に各中学校では全校3日間の職場体験学習を実施して、このものづくり教育と組み合わせた学習をしています。


地元にある大手の時計メーカーさんの全面協力を得て「腕時計の組み立て体験」も行っています。市内の小学校6年生全員が、本格的な時計の部品の組み立てを体験します。午前中4時間30分ほどの時間ですが、緊張感と集中力で、全員が完成します。最後に自分で組み立てた時計をいただくのは大変な喜びです。教えてくださる技術者は、技能五輪の世界チャンピオン、日本チャンピオン、現代の名工といった方々で、そういった方々が子供たちのために一肌脱いで下さっています。


さらに諏訪市では、海外からの参加も含めて370ほどの企業、大学、研究機関等が参加した工業メッセが毎年行われますが、そこに私たち教育委員会として、子供たちの作品を出展しています。ブースを設け、それぞれの小中学校からものづくり科で作った作品を展示します。最近では企業や研究機関の皆さんも足を運んでくださって、「子供の作品からは学ぶことが多いのです」と言っていただき、大変ありがたいことです。もちろん子供たちも見学に来ます。


「相手意識に立つものづくり科」を通して学んだことを総合的に活かす場として、毎年12月に販売活動(「チャレンジショップ」)を行ってきています。一般市民にも開放し、多くの方が買ってくださいます。チャレンジショップに向けた製品づくりでは、買っていただく目的で作るため、数や包装の工夫、宣伝、基本的なマーケティング等も学習します。売れないものはなぜ売れないのかも含めて大事な学習の場です。

 

課題もあるが、地域に定着した子供の楽しい教科


「相手意識に立つものづくり科」は、アンケートによると、毎年75~80%の子供が、「もっとやりたい、もっと工夫したい」と、楽しい教科として受け止めているようです。中学校卒業後にどんなキャリア教育を進めていくか、あるいは他の教育活動とどう関連付けていくかなどの大きな課題もありますが、地域に定着し、子供たちの楽しい大事な教科として築いてきました。企業の皆さん、地域の皆さんの大きな理解と協力があって続けてこられたと思います。

 

諏訪市ホームページ 「相手意識に立つものづくり科」について
http://www.city.suwa.lg.jp/www/info/detail.jsp?id=5077

 

第2回キャリア教育推進連携表彰 最優秀賞受賞 諏訪市教育委員会

※動画(文部科学省)

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