留学経験が拓いた私のキャリア

vol.3 「Why you?」をあらゆる方法でアピールしよう

横山匡氏
横山匡氏

横山匡氏 アゴス・ジャパン代表取締役

吉岡さん、中曽根さんのお話に登場した留学準備や大学生活のポイント、その後のキャリアについて、アゴス・ジャパン代表取締役の横山匡さんに解説していただきました。
 

■アメリカの大学・大学院進学にあたって、出願の段階でどのような準備をしましたか。

●中曽根さん

 <中曽根さんのプロフィール・記事はこちらから>

 

私はずっと日本の学校に行っていたので、英語が最大の壁でした。留学を決めて初めて受験したTOEFLは悲惨でした(笑)。それでもTOEFLができないと、出願しても門前払いなので、とにかく頑張った結果5か月で飛躍的に成績が伸び、TOEFLのスコアならどこの大学院でもOKというところまで行きました。


次に、自己分析で「自分は何を学びたいのか」と「自分のアピールポイントは何か」をひたすら考えるとともに、行きたい大学院が求める学生像と自分のどこがマッチするかも考えました。


そのために、周りの人に自分のことをひたすら聞き、アピールポイントとなるキーワードを拾って、エッセーを書き、カウンセラーの方に添削していただいて練り上げました。


推薦状は3通用意しました。大学院入試では、どういう人から推薦されているかは重要なポイントですが、有名な人なら誰でも良いのではなく、自分の長所も欠点もよく知っている人にいろいろな観点から見てもらうことが大事です。私の場合は、大学時代の体育会の部長と、学業面では大学時代の国際関係のゼミの教授、そして私のことを小さい頃から知っている知り合いに書いていただきました。


これらと並行して、出願する国際関係の大学院を探して5-6校に絞り、エッセーや推薦状の文言を各大学が求めるような文言に変えて提出しました。最終的にいくつかの大学から合格をいただきましたが、コロンビア大学SIPA(School of International and Public Affairs)に進学しました。入学選考で、大学はその学生が今どんなに優秀かということよりも、その大学を卒業した後どれだけ活躍するか、そしてその大学や大学のコミュニティにどれほど貢献するかを見たいわけです。エッセーや推薦状では、それに合わせて大学院が納得するストーリーを書くのがコツだと思います。

 


●吉岡さん

 <吉岡さんのプロフィール・記事はこちらから>

 

いちばん印象に残っているのは、どの大学でも「あなたは他の人と何が違うか、どこがどのように優れているのか」をひたすら問われることです。外国人であることで、アメリカの大学にどうしたら「この学生に来てもらいたい」と思ってもらえるか、自分がどのように貢献できるかをどうやって売り込めるか、そしてそれをエッセーにどのように盛り込むかを、それこそ四六時中考えていました。
そして、カレッジカウンセラーや担任の先生にアドバイスを受けながら、ひたすら自分の過去を振り返り、自分が何を学びたいのか、なぜそう思うようになったかを考えました。

[横山さん]
成績は「過去の成果」ではありますが、「将来性の証明」という点ですべての基礎になっています。ここがしっかりしていないと、狙ったことに成果が出せないと見なされ、エッセーで何を書いても説得力がありません。アメリカの大学・大学院入試は「セルフマーケティング=自分を相手にプロモーションして、自分の将来を大学に買ってもらう」ということなのです。
そのためには、入学審査官に「この学生の将来像は魅力がある」という印象を与えるとともに、「その将来像に届く、成果を出すまで努力できる人材だ」と思わせなければなりません。テストやエッセーや推薦状は、そのための説得力なのです。その時点で何ができるのか、という自慢ではありません。端的に言うと「Why you=なぜあなたなのか」ということ。10年後、20年後に、自分が学校やそのコミュニティに資する可能性とは何かを見せることなのです。


■スコア以外にどの様な点をアピールすればよいのでしょうか。

●中曽根さん

エッセーには、少しでも自慢できるものを全て盛り込みました。SIPAでは、入学前のキャンパスビジットでアポなしでアドミッションオフィスを訪ねました。そこにいた人に時間を取ってもらって、持って行ったレジュメを渡して、絶対に入学したいということを最大限にアピールするとともに徹底的に質問しました。結果的に、SIPAに合格できたので、書類の上だけでは伝わらないことをわかってもらえたのだと思います。その意味で、実際にその大学の人に会いに行くのはとても大事だと思います。

●吉岡さん
私も何が売り込めたかわからないです。高校は地元の小さな女子高で日本人は1人だけでしたから、その中でどう目立つかを考えました。日本にいた時はバスケットボールをやっていたのですが、向こうの生徒に比べたら体格があまりにも違うので諦めました。そこで、走ることならできる、と陸上に転向しました。頑張ると認めてもらえる環境のおかげで、3年の卒業時には陸上部のキャプテンもしました。それを大学にも見てもらえたかもしれません。
左から、横山氏、吉岡氏、中曽根氏
左から、横山氏、吉岡氏、中曽根氏

[横山さん]
合格するために大事なのは、自分という人間を知ってもらうことです。大学は、この学生が入学してきた時、環境の変化に適応できるかどうか、コミュニティに貢献できるか、ということを見ています。環境の変化の大きい留学生はなおさらです。ですから、実際に会って、大学の人に「この人は大丈夫だ」と思わせるのは、実は書類以上に重要だと言えます。アメリカのアドミッションでは、「してはいけないこと」はNGですが、それ以外で自分をアピールするために何をどれだけするかの判断が、結果として差別化につながります。

アピールポイントとして、大事なのは最終的に個人の資質です。日本人としての特性が自分のアピールに役立つなら使ってもよいですが、それでは他の日本人出願者と同じになりかねません。「21世紀に世界で一番ヒットを打ってきた」というイチローのように、ピカピカの1行の文章で自分を売り込むことができる人はほとんどいません。しかし、自分の魅力や能力をいくつかあわせて、4~5行でならその人の強みを出すことができます。そのユニークな4~5行をどのように見つけるかが重要です。


入学審査の重要なポイントの一つに「International Curiosity」が挙げられています。世界中で起こっていることに、あなたが興味を持っていることを証明できることが必要です。今は遠い外国であっても、来年はクラスメートの母国になるかもしれないのです。そこで、どんなに小さいことでも自ら関わって行動に移すことができそうだ、と見せることば大事なのです。


■英語力、コミュニケ―ション力については、日本人でも大丈夫でしょうか。

写真はUCLA [撮影]石原萌恵さん
写真はUCLA [撮影]石原萌恵さん

[横山さん]
TOEFLも、以前はペーパーテストでしたが、今はインターネットで行われるようになっています。TOEFL iBTとなってからは、英語を「どれだけ知っているか」ではなく、「どれだけ使えるか」に焦点をあて、より実生活に即したコミュニケーション能力を測定するようになってきています。英語がネイティブと話すより、異なる言語の人同士の意思疎通のために使われることが多くなってきているからだと思います。

入学してからは、最初は誰もが苦労します。環境も勉強の方法も変わる上に、言葉の壁もあって、最初は落ち込む人も多いでしょう。しかし、合格したということは、若さや伸びしろ、固定概念ではない発言のおもしろさ等など、何かが買われているはずなのですから、開き直ればよいのです。合格したのであれば、落ち込むことも含めて自分の将来を買ってもらった、ということなのです。


英語のコミュニケーションで苦労することは確かに多いですが、コミュニケーションに必要なのは「英語力」、「発信したいメッセージ(の内容)」、「発信する意欲」の3つです。このうち「英語力」が苦手だと思い込んでいる人が多いですが、「発信する意欲」「発信したいメッセージ」は日本語のコミュニケーションでも必要であり、この2つをきちんと持たずに英語力だけがあっても、意味のあるコミュニケーションはできません。アメリカでは、「The Answer」でなく、「Your Answer」が求められます。自分が何を伝えたいか、をまず意識しましょう。


向こうでよく聞かれる3つの質問が、「What do you want to do?」「What do you think?」「Why?」です。「自分は何がしたいか・どう思うのか・それはなぜか」が何よりも大事なのです。

 

■キャンパスビジットのやり方や、現地で見てくるポイントを教えてください。

●中曽根さん
私の経験では、街の雰囲気を知ること、大学の学生にいろいろ聞くこと、そして先ほど言ったように、自分を先に売り込むこと、この3つをやっておけば間違いないと思います。2年間生活するところですので、授業以外のスタディソースを知っておくのは大事だと思います。大学では、カフェテリアなどで会った学生にひたすら話しかけることです。けっこう答えてくれますよ。ネガティブなところも聞きます。そういうことは、ネットで調べても出て来ませんから。

●吉岡さん
私もやはり学生に会って話を聞き、ひたすら構内を歩き回って自分に合うかどうかを確かめました。できれば、実際に授業に参加してみて、教授やクラスの雰囲気がしっくりくるかどうかを経験してみるのがよいと思います。あとはもう直感ですね(笑)。
写真はUCLA [撮影]石原萌恵さん
写真はUCLA [撮影]石原萌恵さん

※キャンパスビジットとオープンキャンパスの違いは?


日本の大学の「オープンキャンパス」は、受験生を対象にして年に数回、主に通常授業が休みの週末や休暇中に日程を設けて開催するイベント形式が一般的です。模擬授業も、高校生を対象にした特別プログラムで行われます。一方、アメリカの大学の「キャンパスビジット」では原則として毎日見学を受け付けており、予約も必要ない大学もあります。在学生ガイドが常駐しており、キャンパス内を案内して回る「ツアー」も行われます。在学生ガイドは成績優秀者が就く業務で、学生にとっては非常に名誉となる役割です。

 

[横山さん]
キャンパスビジットのツアーは、たいてい大学院でも大学でも上級生の学生がガイドをします。構内を廻るだけなら自分でもできますが、ツアーは学生以外入れないエリアにも入ることができるというメリットがあります。また、授業を見学して、来年自分がこのメンバーの中でどんな貢献ができるかを考えるとよいですね。じっくり見るためには、最低1校1日は欲しいですね。どの大学へ行きたいかを考えて、綿密に予定を組んで行くとよいと思います。

■アメリカの大学卒業後に日本で働く人も多いようですが、現地での就職はどのような状況でしょうか。
[横山さん]
アメリカで学位を取ると、1年間はOPT (Optional Practical Training) として、学生ビザのまま実習生として残る権利が与えられます。しかし、権利があるだけで、仕事を保証するわけではありません。これはヨーロッパにはない、アメリカ特有の制度です。正規雇用に関しては、あえて現地の学生を雇うより、あなたを採用する方がメリットがあるという理由がないと、企業は採用してくれません。OPT の1年だけで、継続雇用はされない、ということももちろんあります。

■アメリカの大学で学んだことは、その後どのように役立つのでしょうか。
[横山さん]
海外の大学(院)で学ぶことで大事なのは、What to know.→How to learn.→最後にWho to connect with.と変化します。個人の能力の成長もさることながら、10年経つと一緒に学んだ周りの人の能力も上がってきます。そうすると10年後、政治やビジネス、人権の世界で友達の中からあなたを助けてくれる人が現れ、今はできないことが10年後には可能になる、ということもあるのです。「お前のためなら駆けつけてやる」という人が世界中にできるということなのです。


今はインターネットでいくらでも知識を得ることができます。その中で教育の価値とは、その場で自分自身が生きた、ということです。そこで共に生きてきた仲間が「人脈」として残っていくのだと思います。よく「居心地のいいところから出なさい(Get out of your comfort zone.)」と言いますが、私はget out ofではなくexpandだと思います。自分の人生で、自分に関係のある人・場所・ものを広げるのが留学であると思っています。


30年前に私が留学指導を始めた時、学生を指導する先輩が「行けばわかる」と言っていました。今ではその気持ちがよくわかります。大前研一さんが、「人生に大きな変化をもたらすなら、3つのことを変えよう。24時間の使い方を変える。会う人を変える。住むところを変える」とおっしゃっていましたが、留学は3つが一気に変わります。人生を変えるチャンスなのです。


~アゴス・ジャパン新春特別セミナー コロンビア大学、タフツ大学卒業生が語る「留学体験とその後のキャリア」講演から

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