情報工学科学生に求められる7つのコンピテンシーを、画像・映像コンテンツを作成する半年にわたるチームプロジェクト(4名前後で構成するチーム単位で、与えられた課題に対して基礎実習、仕様作成、プログラム等構築、実行・評価、プレゼンテーション、レポート作成の過程を経るプロジェクト)によって獲得し、2年間4科目の連続履修で学生自身の宣言・実行・気付き・改善(PDCA)を促すことを目的とする。
プログラムタイプ | 実践型学習(企業連携なし) | 単位の授与 |
あり |
実施している期間 |
平成21年4月〜 |
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実施規模 |
参加教員: 7名 TA: 12名 受講学生: 年間延べ70名 |
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授業時間数 |
各科目90分×15週/時間(4科目) |
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学生のプレゼンの機会 |
あり(各科目2回) |
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評価の回数 |
自己評価の回数: 2回 他者評価の回数: 1回 |
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当該プログラムの実施範囲 | ●その他(大学・学部・学科が推進している『段階別コンピテンシー育成』に関し、Leading Departmentの情報工学科が育成主対応科目としている、2年生後期〜4年生前期にわたる4科目) |
育成のための取組内容と育成のプロセス
1科目15週にわたるプロジェクト型演習の授業計画に対して、各回の内容から「学生に期待する行動」を定義し、その行動から観察可能なコンピテンシーを全7種類33項目から定義した。
次に、科目別(学年・期別)に設定されているコンピテンシーの目標水準と照合しながら、各回の「学生に期待する行動」の中でコンピテンシーの発現と認められる行動例(教員・TAが観察・点検可能なもの)を定義した。授業計画とコンピテンシーの対応表の一部を下部(1)に示す。
これを、授業内容、期待される行動例、発現・向上が期待されるコンピテンシー項目、TAに求められる行動例、TAにふさわしくない行動例を各回1ページにまとめた「TAガイド」を作成し、TAに配布している。TAはこれをもとに各回の学生の行動を観察し、標準的な水準ではない(高い、または、低い)行動例があった場合には担当教員に報告する。教員は学生本人からの活動報告も勘案の上、指導等必要な手立てを講じる。第1回分のTAガイドを下部(2)に示す。
以上により策定した授業計画・TAガイドに基づき実施する。各科目は、概ね課題説明、基礎知識・技能習得、課題解決手段の考案、解決手段の構築(仕様策定、役割分担の決定、プログラミング)・検証、成果発表・総括の順で進む。流れを下部(3)に示す。
最終回である第15回には、成果デモ&ポスタープレゼンテーションを実施し、自己評価・他者評価を行う。作成したポスターは学科エリアに掲出する他、画像・映像コンテンツ演習4の成果コンテンツについては、オープンキャンパスで公開し、高校生を中心とする見学者の体験に供する(説明役も学生が務める)。
(1) 授業計画とコンピテンシーの対応表
(2) 第1回分のTAガイド
(3) 演習の流れ
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果
学科専門科目で学んでいる知識・技術を生かした課題を設定することにより、実践の場として適切な水準を設定している。特に、「画像・映像」という成果の良し悪しが一目でわかる分野にしたことにより、学生の興味を喚起している。
各科目では教員・TAの手取り足取り的な指導は行わず、個人・チームで考えることを重要視している。例として、TAにはTAガイドを通じて「問われたら正解を教えるのではなく、考えさせる指導をすること。解を教える場合には必ず複数にし、学生自身に選ばせること」としている。
また、4科目のうち最後の「画像・映像コンテンツ演習4」では、「裸眼立体視ディスプレイを用いてリアルタイムコンピュータグラフィックスを用いた対話型コンテンツを作成すること。高校生がオープンキャンパスで体験する場を想定」との課題が各チームに与えられており、この課題を満たす何をどこまでどうやって制作するのかは、各チームが考案しなければならない(このため、概要説明、基礎技術の習得も含め、制作コンテンツの方針が決まるまで5~6週間かかる)。
履修学生は、授業時間以外にも個人・チーム単位で授業の振り返りと次回への準備に時間を割く必要が生じる。これにより、専門知識・技能のみならず、組織的行動やコミュニケーションを含むコンピテンシー各項目の向上の必要性を感じ、完成に向けてチーム・個人での行動を加速させる。
構想がまとまった段階で中間プレゼンテーションを行い、担当教員・TAおよび他チームより疑問点・不足点・意見を突かれる。また、最終回の第15週では成果デモ&プレゼンテーションを行い、成果を披露し発表・説明・質疑に対応する他、画像・映像コンテンツ演習4の成果は直ちにオープンキャンパスで公開される(説明役は原則として制作した学生が務める)。また、全科目のポスターは学科エリアの廊下に掲出され、学科学生・教職員はもちろん、他学科学生・見学者等の目に触れる。このように、科目の内外で、コンピテンシーに関する気付きと改善を促す工夫が盛り込まれている点が特徴の一つである。
また、この体験を最大4回2年間行うことにより、前科目での体験から生じる反省を直ちに次科目でのチームプロジェクト推進に活かすことができる。この学生自身によるPDCAサイクルが何回も廻るように全体が設計されている点も特徴の一つである。
担当:教授 牧野 光則