現役の情報技術者をインストラクタに迎えた、産学協同でのプロジェクト管理教育。システム開発プロジェクトを疑似体験させ、品質・納期・コストを意識したプロジェクト管理の実際およびコミュニケーションの重要性を理解させる。
プログラムタイプ | 実践型学習(企業連携) | 単位の授与 |
あり |
実施している期間 |
平成24年9月〜平成25年1月 |
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実施規模 |
参加教員: 9名 TA: 15名 受講学生: 69名 連携企業数: 1社 |
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授業時間数 | 45時間 | 学生のプレゼンの機会 |
あり(1回) |
評価の回数 |
自己評価の回数: 3回 他者評価の回数: 2回 |
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当該プログラムの実施範囲 | ●学部全体で実施 |
情報技術者を育成するにあたり、教員による学内での講義や演習・実験だけでは、システム開発現場におけるプロジェクト管理の実際を理解させ、かつそのために必要な能力(いわゆる“社会人基礎力”)を身に付けさせることは容易ではなかった。そこで、現役の情報技術者をインストラクタとして演習に迎え、産学協同でのプロジェクト管理教育を実践(“逆”インターンシップ)し、受講生に社会人基礎力を身に付けさせることを含め、平成16(2004)年度から開始、現在まで継続実施している。
育成のための取組内容と育成のプロセス
主な取組み内容
●複数班構成の体制でのプロジェクト管理・運用を疑似体験させ、システム開発プロジェクト管理の実際をより深く理解させる
●チーム内/対顧客会議および企業関係者の立会いの下で成果報告会に参加することで、コミュニケーション・プレゼンテーションの能力、システム開発におけるデザイン(設計)能力を向上させる
●複数回の“振り返り”により、教育目標を周知および教育効果を浸透させる
●コンピテンシー評価を実施することで、受講生および学生スタッフがどのような自己成長をしたのかを確認させる
育成プロセス
受講前アンケート(自己評価)
→**対顧客会議およびチーム活動における指導(見守り、助言)
→ 中間講評(他者評価、**の途中で実施)
→最終講評(他者評価)および総括(自己評価)
→ 受講後アンケート(自己評価)
育成の評価
評価者
受講生自身(自己評価)、教員・企業参加者による他者評価
評価基準
自己評価では演習の育成目標能力項目を詳細化・具体化した上で、どの程度到達しているかを受講前後で比較し相対的に評価。他者評価では、同様の項目をもとにチーム単位で受講終了時に評価する。
活用ツール
(独)情報処理推進機構IPA提言のIT人材育成向けコンピテンシー評価基準を用いたオフラインアンケートおよび本学部独自設定のオンラインアンケートを使用
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果
当該能力育成の際の課題
受講生自らが当該能力の重要性を認識し、能動的にその能力を身に付けようとする意識を植え付け、行動させなければならない。
当該能力育成の際の工夫点および成果
演習初回のガイダンスや各種講義、受講前アンケートにおいて、当該能力についての基礎知識を理解/認識させる。演習中は、受講生の周辺に“先輩”役の上級生、“上司”役の企業技術者および教員等を配置し(下図参照)、受講生の行動を見守りつつ、状況に応じて受講生に対し助言を行う。助言内容は単なる行動指示ではなく、受講生に対し次の適切な行動をさせるための“気づき”を与えることに重点を置いている。さらに、毎回の授業終了後、業務報告書(日報)を受講生に作成させ、“先輩”や“上司”からその内容にコメントを与え、次回の授業で受講生にそのコメントを確認させている。
演習時間外には、いわゆる“飲みニケーション”を実践する場を設け、“先輩”役の上級生および“上司”役の企業技術者および教員等とのコミュニケーションが円滑に行えるような環境づくりを行っている。
その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果
システム開発プロジェクト管理が実践できる能力を身に付けさせるため、企業技術者から現場のノウハウを随時受講生に紹介している。“上司”役としての受講生とのコミュニケーションや、業務報告書、演習内の講義担当、“飲みニケーション”といった様々な場面で実施している。
教育の効果を適切に評価・検証し、さらなる成長を促すための工夫
受講生が当該能力をどの程度身に付けたのかについて、受講前後の相対的な変化を測定するための受講前・受講後アンケートを実施し、演習前後でどのような自己成長をしたのかを受講生自身に確認させる。アンケートでの評価基準については、独自で設定した基準とともに、外部専門団体提言のIT人材育成向けコンピテンシー評価基準を採用し、より他視点かつ客観的な評価基準を採用している。また、中間講評および最終講評として、大学・企業(スタッフ)側の視点での受講生の成長を公表している。
その他教育づくりの工夫
学内外の関係者と連携・協働した取組を高めるための工夫
大学院レベルの講座を企業で開講し、技術者の専門スキル向上へ協力する。若手技術者に演習内講義部分を担当させ、プレゼンスキル向上へ協力する。成果報告会に地元産業界や関連自治体等から出席いただき、第三者視点からの演習全体についての講評をいただく。
継続的で汎用可能にする工夫
企業側への上記2種類のスキル向上の取組みを継続的に提供する。当該演習をJABEE(日本技術者教育認定機構)認定コースの必修科目とし、学部として継続的に取り組むことができる体制を確立する。IT系学会(情報処理学会)内研究会主催の情報システム教育コンテストへ継続参加し、汎用可能とするアドバイスを専門家から受ける機会を作る。
より多くの学生に関心を持たせ、参加させる工夫
現役技術者とより多くコミュニケーションする機会(授業中、授業外での懇親会)を提供し、演習への関心や参加意欲、加えてIT業界への関心を持たせる。演習関連科目を具体的に示し、演習前の受講を推奨する。合わせて、それら科目において演習との関連性を適宜示す。
担当:准教授 稲永 健太郎