社会人基礎力を育成する授業30選

中堅・中小企業の若手社員と学生のチーム形成により、実践的かつ継続的な産学協働プログラムを実現

京都産業大学/キャリア形成支援教育科目(コーオプ教育領域)

企業人と学生のハイブリッド

企業の若手社員と学生のハイブリッドによる人材育成プログラム。若手社員1人と学生3人がチームを形成し、社員が直面している業務上の課題の解決に向けて、調査や分析、ディスカッションや上司への中間プレゼンテーションなど検討を重ね、課題解決の方策を提案。

プログラムタイプ

実践型学習(企業連携)

単位の授与

あり

実施している期間

平成23年4月〜現在に至る

実施規模

参加教員: 1名 職員: 4名 受講学生: 33名

連携企業数: 10社 (H25 実績)

授業時間数

28時間(1.5h×16回+最終成果発表会4h)

学生のプレゼンの機会

あり(2回)

評価の回数

自己評価の回数: 2回 他者評価の回数: 2回

当該プログラムの実施範囲

●全学的に実施

対象プログラムの具体的な内容

育成のための取組内容と育成のプロセス

本プログラムは、学生、若手社員ともに本プログラムの意義、内容、役割、期待することの共有からスタートする。

 

学生への共有の最初の場は受講説明会である。本プログラムを受講できる学生は30名程度であるが、説明会には200名以上が参加する。説明会では、意義、内容等を詳しく説明し、担当教員の想いも伝える。実際に受講を申し込んでくる学生は約60名であり、担当教員が全員面接をし、受講者を決定する。

 

社員に対しては、訪問等で上司、人事責任者とともに本プログラムの意義等を直接説明し、共有を図っている。

 

このようなプロセスを経た若手社員10名(平成25年度は11名)、学生30名(平成25年度は33名)が、若手社員1名と学生3名でチームとなり、社員が直面している業務課題について解決策を検討し、最終的には上司に成果を発表する。

【課題の設定と共有】

京都産業イメージ1

【若手社員1名+学生3名のチーム】

若手社員には、チームとして4ヶ月間取り組んでいく業務課題の設定のため準備として、「企業課題シート」に「経営理念/ビジョン」「事業戦略/マーケティング」「人材開発/組織体制」といった項目を記入してもらい、自社を俯瞰的に捉え直してもらう。若手社員はこのような全社的な視点から自社を捉えた経験は少ないため、新たな問題意識を獲得できる可能性がある。その上で、自分の業務上の課題を設定してもらう。そして、全社的な捉え方、自らの課題が適切であるのかを上司と摺り合わせをし、「企業課題シート」を完成させ、提出してもらう。

 

この「企業課題シート」にもとづき初回授業で学生に説明する。その際、若手社員への事前の課題として「学生に分かりやすく、興味が持てるように、自企業・業界、自らの業務内容を説明してください。そして、全社的な課題も含めて、本プログラムで取り組む、自らが業務上で直面している課題を、学生に分かりやすく、やる気がでるように説明できる準備をしてきてください」とお願いしている。

 

しかし、上手く説明できている若手社員はほとんどいない。前半の大きな壁は、この課題の共有化である。企業の業務内容が十分に理解できず、会社見学をするチームも多い。チームとして、どれだけ深く課題を共有できるかが重要なポイントとなってくる。

 

【社会人基礎力に関する講義・トレーニング】

課題が共有化された次のステップは、その解決策の検討である。

 

本プログラムは、9月末~1月中旬までに全9回の授業、各社での中間発表1回、全体での最終成果発表会で構成される。授業は隔週で90分の連続2コマ、全9回のうち社員が参加するのは4回で、残りの5回は学生のみで行っている。社員が参加する4回の授業では、社会人基礎力としてコミュニケーション、課題解決、創造・発想についてグループワークを中心とした講義・トレーニングを行っている。学生と社会人が同じフレームワークを身に付け課題に取り組む土台作りである。イメージとしては社員研修に近い内容と形態であろう。

 

また、若手社員が後輩、部下を持った際に、教えた内容どのように定着させるのか、その効果的な教育手法についても、担当教員の通常の授業技法に基づいたノウハウを伝授している。それはアウトプットを前提とした「学習者の能動性を喚起」する手法である。この手法を用いて、本プログラムの講義・トレーニングを行っている。

 

【チームでの作業】

本プログラムの大半に費やされるのが、チームでの作業である。学生と社員が授業で一緒になるのは4回だけであるが、むしろ授業外で費やされている時間の方が圧倒的に多い。かなりの頻度でメール、スカイプ、LINE等でのやり取り、企業やカフェ等でのミーティングを行っている。

 

また、社内でのアンケート調査、顧客へのヒアリング、工場見学等、様々な工夫をし解決策を検討している。

 

【中間発表】

開始2か月半後の12月中旬に、チームで社員の企業に伺い、上司、その他社員に中間報告をする。

 

中間報告は社内会議のようで、上司からはかなり厳しい指摘を受けることが多い。学生へも自社員に対してなされるような厳しい指摘もあるが、発表後に丁寧に説明、アドバイスもいただける。学生は、大学でのこれまでのプレゼンとは違い、会社で社員がプレゼンすることの意味と厳しさを痛感する時である。

 

【最終成果発表会】

中間発表から1か月後の1月中旬に最終成果発表会を行う。全10社の上司、社員、学生、学外参観者、本教職員、元受講生を前に最終成果を発表する。

 

中間発表で上司から全くのダメ出しをされ、一から再スタートするチームもあり、この1か月はどのチームにとっても厳しく辛い1か月だと思われる。

 

発表については、投票数に応じて最優秀賞、優秀賞を決定する。毎回、ゲスト審査員にご参加いただき審査員特別賞を授与する。

 

最終発表会では、学生、若手社員ともに感極まる場面が多々あり、上司、参観者も目頭が熱くなる。学生、若手社員はそれだけの達成感を得た現れであろう。

 

【プログラム終了後】

プログラム終了後に、若手社員、上司、学生にそれぞれ以下の評価シート等を完成させ、提出をしてもらう。

 

■学生:

「相互振り返りシート(学生用)」、「業務報告書(レポート)」「学修実態調査」「アンケート(学生用)」

 

■若手社員:

「プロセス管理&能力開発シート」、「相互振り返りシート(社員用)」「アンケート(社員用)」

 

■上司:

「プロセス管理&能力開発シート」への記入、「アンケート(メンター用)」

効果的な育成・評価のための工夫

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果

【前に踏み出す力】

本プログラムは、受講説明会からスタートする。そこでは学生に期待することと、学生だけではなく若手社員の育成も主眼においていることを伝える。つまり社員はボランティアやゲストで参加しているのではなく、会社の業務として、参加していることを理解させ、いい加減な姿勢で参加することは許されないこと、学生への要求レベルがかなり高いことを厳しく伝え、本プログラムに参加する「覚悟」を持たせている。説明会へ参加し、想像していた以上にハードなプログラムであることを理解した学生は多く、参加した約200人のうち、実際に受講を申し込む学生は約60名となる。

 

選考は、応募してきた学生全員に対し、担当教員が面接し、その「覚悟」を学生、教員双方で確認する場としている。選ばれた受講生30人には、説明会、書類提出、面接を経て選ばれたこと自体にすでに価値があることで自信を持たせ、選ばれなかった学生の分まで全力で取り組まなくてはいけないことを「自覚」させる。初回の授業では、その学生の「自覚」と「覚悟」を全員の前で発表させ、本プログラムは開始される。

 

このプログラムに参加することは「仕事」に取り組むことと同じであることを、説明会から終了時まで徹底して伝えている。参加する企業は多業種にわたる。学生にとって興味ある業種・企業もあれば、全くそうでない業種・企業もある。学生には、「新入社員」になった気持ちで取り組むよう求めている。従って、学生は希望する企業があるようだが、「学生の意見は一切聞かない」と言っている。新入社員の配属先は会社が決めることであり、新入社員、若手社員に求められることは、その与えられた仕事できちんと成果を出すことである。成果が出て初めて自分の希望が聞き入れられる。よってこのプログラムに参加する若手社員、新入社員である学生は、その成果を出す力をきちんと身に付けることがゴールであることを明確に掲げている。

 

過去3年間、本プログラムの全受講学生93名、全若手社員31名、途中で辞めた学生、若手社員は一人もいない。それは、覚悟と自覚をきちんと持たせて取り組みを始めた結果であると思われる。

 

【考え抜く力】

また、社会人基礎力を育成するための講義内容について、その次の回では必ず前回の復習とともに、その間、講義内容をどれだけ活用したかを確認している。「脳内占有率を上げろ」がキーワードである。講義で身に付けたスキルを使わなければ、翌週には無になってしまう。身に付けたスキルをある時期、集中して使わなければ自分のものにならない。論理的思考、コミュニケーションスキルも、講義でなるほどと思ったとしても、その後意識して活用しなければ役に立たない。そのために、講義で身に付けたスキルの「脳内占有率」を上げて、集中して使うように言っている。それを毎回確認することによって、受講者にプレッシャーを与え、「考え抜く力」の定着を図っている。

 

【チームで働く力】

本プログラムの最終ゴールは、チームで高い成果を出すことである。そのために、自分の役割、何をすればいいのかを常に考える癖を持たせ、メンバーと共有、リーダーへの報告という仕事での基本を学ばせている。

 

学生にはさらに、上司(リーダー)である若手社員を伸ばすためには、その部下(メンバー)である学生が伸びる必要があり、自分たちの成長が他者の成長にも繋がることを感じさせている。メンバー同士、横のつながりだけの切磋琢磨ではなく、リーダーとの縦の関係においても切磋琢磨が必要であることの重要性を理解させる。そうすることで、リーダー、メンバーといった他人のために頑張ることができ、他人からみて「一緒に行動したい」と思われる思考と行動が出来る人間とチームが出来上がる。

 

その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果

本プログラムでは、社会人基礎力の育成の他、キャリア意識の醸成も目指している。

 

【学生に対して】

学生、特に3年生に対しては、直後に控える就職活動において、仕事とはどういうことなのか、自らの言葉で語れる力を身に付け、単に内定が獲得できればいいという表面的な就職活動ではなく、その後の職業キャリアをどのように形成していきたいのかという視点を多少なりとも持ちながら就職活動に臨めることを目指している。

 

【若手社員に対して】

本プログラムでは、開始後1か月半を経過した時期(11月中旬)に、若手社員のみの「中間振り返り会」を実施している。この振り返り会は授業終了後に2時間程度行う。これまでの取り組みでの課題や悩み、例えば学生の自主性に任す部分と指示を出す部分のバランスのとり方、学生との距離感の持ち方、学生のモチベーションの保ち方等の共通した悩みについて自由に話し共有する場である。

 

 

担当:准教授 松高 政

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