社会人基礎力を育成する授業30選

初年次を実社会の課題に取組むための準備期間と位置づけ、実社会での学びとの融合を実現

京都産業大学/キャリア形成支援教育科目(コーオプ教育領域)

O/OCF-PBL(On/Off Campus Fusion - Project Based Learning)

課題解決活動を通じて実社会で必要となる心構えや能力を身に付けるために設定された科目である。大学での学びと実社会での学びとを融合させながら、実践指向型の課題解決型学習にて、1年次から3年次まで体系的な能力伸長を図るものである。

プログラムタイプ

実践型学習(企業連携)

単位の授与

あり

実施している機関

平成18年4月〜現在

実施規模

参加教員: 9名 職員: 4名 受講学生: O/OCF-PBL1:257名・O/OCF-PBL2:95名・O/OCF-PBL3:12名

連携企業数: 8(7企業1団体)

授業時間数

O/OCF-PBL1: 30時間 O/OCF-PBL2・3: 37.5時間

学生のプレゼンの機会

あり(外部者向けには1: 0回, 2: 2回, 3: 2回)

評価の回数

自己評価の回数: 2回/1学年 他者評価の回数: 2回/1学年

当該プログラムの実施範囲

●全学的に実施

対象プログラムの具体的な内容

育成のための取組内容と育成のプロセス

O/OCF-PBLは定型的社会から非定型的社会に向けた段階的なプログラムとして設計されており、学生が無理なく課題解決行動に取り組めるように、そして必要な能力を不足なく身に付けることができるように、様々な工夫がなされている。

 

「O/OCF-PBL1」は1年次対象の授業で、1クラス25名程度で編成(2013年度は10クラス)されている。2年次以降に、実践的な課題に取り組むための準備段階として、【社会人基礎力】の発揮に、必要な様々な行動スタイル(アクティブ・リスニングやアサーティブなコミュニケーション等)を学内において繰り返し学び、行動の習慣化を図っている。そのことは、【自他肯定感】や【自在に人と関わる力】をも涵養することになる。また、同時に、チームでの課題解決の練習を行うことを通じて、課題解決の基本的プロセスを体験させている。学生がこのような目標に向かって意識的に取り組めるように、担当教員はコーチングおよびファシリテーションのマインドを学生に接し、また毎時間、「イキイキ自分づくり振り返りシート」を課している。提出されたシートは担当教員が目を通し、必要に応じてコメントを付して次週に返却している。学期終了後には、シートの記録と教育効果の測定結果との関係を分析し、教育システムの改善に役立てている。

 

2年次春学期開講の「O/OCF-PBL2」および3年次春学期開講の「O/OCF-PBL3」では、12名程度のチームを1つのクラスとし(2013年度はそれぞれ7クラスと1クラスを開講)、企業等から提供いただく課題を解決することを通じて、各種の能力を身に付けることを目標としており、次のような工夫をしている。

 

(1)「O/OCF-PBL2」では企業等からの課題が具体的であるが、「O/OCF-PBL3」における課題は抽象度が高く、そもそも何が具体的に解決すべき課題であるかを発見するところから取り組みがはじまる。

 

(2) 学生と企業等には、課題オリエンテーション、中間報告、最終報告、成果報告書作成の4つのタイミングで必ず顔を合わせる他、必要に応じて訪問や問い合わせなどを行うことが求められており、課題提供者と頻繁かつ違和感なく接触することで社会における自らの居場所を学生が主体的に作り出せるようにしている。

 

(3) 教員は教えることを極力避け、学生の意欲を高め、能力を引き出し、自分の持てる能力に気付かせるために、コーチングおよびファシリテーションのマインドをもって接することに徹している。

 

(4) 学内外の関係者に向けた成果報告会を実施することで、課題解決のプロセスや成果のみならず、自らが身につけた能力について言語化してプレゼンテーションできるようにしている。

 

(5) 中間面談および最終面談を通じ、自らの【社会人基礎力】の伸長を自己評価するとともに、教員および課題提供企業による他者評価も実施している。さらに、自己評価と他者評価とのギャップについては、学生が納得するまで面談時にすり合わせを行い、学生の成長につなげている。

 

育成の評価

【社会人基礎力】については、学生自身による自己評価を中間・最終の2回行い、この自己評価とクラス担当教員や他クラス担当教員、さらに課題提供企業の担当者からの評価による他者評価を組み合わせている。教員による他者評価では、評価を学生の成長に資すべく、その場で学生にフィードバックしながら面談をしている。評価基準と評価シートは、本学で作成したものを使用している。

 

【自他肯定感】や【自在に人と関わる力】については、心理学における交流分析分野の知見を活かして開発されたPCエゴグラム(適性科学研究センター)およびOK分析質問票という測定ツールを用いて、学生の能力伸長を測っている。測定結果は、学生の成長に結びつけるべくフィードバックしている。

 

「O/OCF-PBL1」では学期終了後に、これらの測定結果と「イキイキ自分づくり振り返りシート」の記録との関係を分析し、教育システムの改善に役立てている。

効果的な育成・評価のための工夫

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題育成の工夫点や成果

当初、学生は単に無気力なだけであると受け止めていた。しかし、やがて、そうではなく、定型的社会での暗記・再生型の学びが習慣化してしまっていることに気づくに至った。非定型的社会において、暗記・再生型の学びはもちろん必要だが、経験を内省的に意味づけする意味構成型の学びこそがより重要である。つまり、大学に入るまでに習慣化してしまっている学びの型を変えるのが根本的な課題であることに気が付いたのである。

 

そこで、学生の発達段階に応じて、定型的な世界から非定型的な世界へ漸進的に進めるように、1〜3年次までのプログラムを次のように設計した。

 

(1) 1年次

「個からグループ、グループからチームへ」を目指しながら、定型的世界から非定型的世界へと誘い込む。そのために、外発的、内発的にモチベーションを高める工夫をしている。外発的にモチベーションを高めるため、教員は教えることを極力避け、コーチングおよびファシリテーションのマインドをもって学生に接することにしている。留学や特殊な事情がある場合は除いて、中途で脱落する学生が極めて少ないのがその成果として挙げられ、アンケートによれば、授業内容に満足および非常に満足にマークした学生が94.0%(2013年度実績)であったことからも高い成果を挙げていることが推察できる。

 

例えば、内発的モチベーションにかかわる【自他肯定感】や【自在に人と関わる力】については、既に述べたような仕組みで醸成を図っている。【自他肯定感】については、学期初めには24%の学生のみが【自他肯定感】を持っていたが、学期終わりには40%に増加していた。逆に、自他否定感を持っている学生は11%から7%に減少している。なお、【自在に人と関わる力】は事前事後で統計的に有意に増加していた。

 

また、自他肯定感の測定は本年度から開始したため、経年変化を追うことはできない。しかし、自在に人と関わる力については2・3年次になった時の伸びに問題があり、今後の課題になっている。

 

(2) 2・3年次

「O/OCF-PBL2」と「O/OCF-PBL3」はともに企業等からいただく課題の解決に取り組む、「よくある」PBL型授業ではあるが、課題の具体性(抽象性)、課題解決から始めるのか課題発見から始めるのか、教員がどこまで活動に介入するのか、この辺りを変化させることを通じて、学生が自立的に学習できるように仕向けている。学生のモチベーションを外生的に上げるために、コーチングおよびファシリテーションのマインドをもって学生に接することにしているのは「O/OCF-PBL1」と同様である。

 

また、いずれの授業においても、「活動あって学びなし」とならないように、毎週課される振り返りシートや複数回の評価面談等を通じて、自分はどのような目的で当該の行動をとったのか、それを通じてどのようなことを学び、どのような能力が身に付いたのか、その能力は授業外でも発揮することができるのか、これらの点について絶えず考えさせる機会を作っている。成果として、受講生の満足度が非常に高い(「O/OCF-PBL2」:86.2%、「O/OCF-PBL3」:81.8%)だけでなく、各能力について数値上の伸長が見られる。しかし、社会人基礎力の伸長について、「チームで働く力」に対する自己評価と他者評価にはそれほど差はみられないが、考え抜く力と前に踏み出す力には差はみられ、原因の解明はこれからの課題である。また、卒業生調査の結果から、受講経験者の就業感は非経験者のそれとは明らかに異なっており、自己実現に根ざした考えとなっていることが明らかになっている。

京都産業イメージ2

その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果

【社会人基礎力】と【自他肯定感】や【自在に人と関わる力】の育成は不可分な関係にあるため、本項についての記述も、含まれていると考えている。すでに述べたように、2・3年次で具体的に課題に取り組む前に、1年次でその準備をしているのは、学生のモチベーション向上に貢献しており、他に類を見ない本学独自の取組であるということができる。

 

 

担当:准教授 伊吹 勇亮

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