「先進国のみならず開発途上国でも活躍できる創造力をもった人材の育成」を掲げ、10年前より学生自身が社会の課題から「問い」を見つけ、調査と検証を重ねた上で解決策を提示するという学生中心PBL型学習を実践している。また、外部評価の一環として学外のプレゼンテーション大会に継続的に挑戦することで学生の意欲を高めている。
プログラムタイプ | 実践型学習(企業連携) | 単位の授与 |
あり |
実施している期間 |
平成16年4月〜平成26年1月 |
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実施規模 |
参加教員: 1名 受講学生: 15名(2013年度3年次のみ) |
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授業時間数 |
45時間 (これ以外に100時間を超える課外学習あり) |
学生のプレゼンの機会 |
あり(5回) |
評価の回数 |
自己評価の回数: 28回 他者評価の回数: 2回 |
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当該プログラムの実施範囲 | ●研究室やゼミで実施 |
本ゼミでは「先進国のみならず開発途上国でも活躍できる創造力をもった人材の育成」という目標を掲げ、ゼミ募集の際にも学生に明示している。そこで、2年次後期から始まる本ゼミでは3つの取組みを柱にしている。第1に「開発経済学」を学ぶこと、第2は語学学習と留学の奨励、第3に今回の取組みの中心となるサブゼミ(授業外)のプロジェクト型社会貢献活動による理論と現実の往還作業である。
このサブゼミの活動と卒業生・先輩による「メンター制」を組み合わせることで、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を徹底して養うとともに、ゼミ生の8割以上が長期留学を経験し、就職活動等の進路獲得活動と就労後の活躍につなげている。
育成のための取組内容と育成のプロセス
<2年次学生>
・ゼミ決定(6月)
・メンターとのマッチングとキャリア形成プランの作成(6月~7月)
※先輩学生がマンツーマンでつく(実際には2年生1名に対し2名以上の先輩)メンターを任命し、新ゼミ生はそのメンターと相談しながら「キャリア形成プラン」を各自で作成し、指導教員に提出する。指導教員は7月中にキャリア形成プランをもとに個別懇談し、学生自身が夏休みとその後の学生生活をどう過ごすかについて確認する。
・2~4年生/卒業生参加の合同合宿の開催(8月)
※7月中には現役学生全員にゼミ卒業生の希望者(2013年度は90名)による「卒業生サポーター」がメンターになり、夏合宿から面談やメールでのやり取りをスタートした。
・着想シートの作成、ボランティア活動への参加(8月~9月)
・専門演習I開始(9月)、留学試験への挑戦(9月~11月)
※2013年度にゼミに入った16人中11名が本学交換留学試験や外部奨学金による留学を獲得(それ以外の3名が私費留学への準備を開始)。
・書評課題の作成(12月~1月)
※開発経済に関連する指定図書から1冊を選び2500~3000字の書評を作成し、指導教員によるフィードバックとゼミ生間によるピアレビューを実施した。
・サブゼミ(授業外ゼミ活動)の開始(1月)
※1月下旬に2年生のみの合宿を行い、着想力強化のためのワークショップを実施した。
<3年次>(長期留学を行う学生については帰国後)
・専門演習II開始、第2回キャリア形成プランの作成(4月)
※開発経済学の中級テキストを順に担当を決めて学んだ。また、「第2回キャリア形成プラン」を作成し、ゼミの時間を使って共有した。
・プロジェクトテーマの検討およびプロジェクトの形成(4月~5月)
※2回の全体会、および10回以上のグループ別検討会を通して「考え抜く力」を育成。プロジェクトテーマおよび2チームへの編成を行った。さらにチームごとに「プロジェクト計画書」「工程表」を作成した。
・リサーチ(文献、インタビュー)、仮説づくり(6月~7月)
※インタビューのアポイント取りはすべて学生で行うことで「前に踏み出す力」を育成した。
・仮説発表、検証作業(8月~9月)
※夏合宿では先輩・後輩ゼミ生に加え、卒業生の前でプレゼンテーションを行い、徹底したフィードバックを受けた。実際に仮説を検証することで「考え抜く力」を磨いた。指導教員からは30回にわたるフィードバックを行い、徹底した検証作業を求めた。
・メンバーの入れ替え、チームビルディング(5月~9月)
※長期留学に出発するメンバーと帰国してきたメンバーの入れ替えが発生するため毎月のようにメンバーが入れ替わることになり、引継ぎ等の工夫が必要になることから、それらを通し「チームで働く力」を磨いている。
・学外プレゼンテーション大会への準備と発表(9月~12月)
→2013年度は26大学178チーム中、第1位を獲得
・ゼミ進路勝利大会の開催(12月)
※3年生が最適な進路を見つけることができるよう4年生ゼミ生が主催し、卒業生約20名が参加してのゼミ進路勝利大会を開催し、エントリーシートの自己分析、自己アピールの添削、グループディスカッション、面接練習等を終日かけて実施した後で、卒業生と現役学生との交流会をもった。
<4年次>
・就職活動と隔週ゼミの実施(4月~7月)
※本学経済学部では4年次前期のゼミは単位化されていないが、本ゼミでは隔週で実施して精神面での進路サポートを実施した。
→7月中に全員の進路が確定
・卒業論文の作成(8月~1月)
※夏合宿で卒業研究計画を発表し、フィードバックを行い、9月~12月の演習IVでは全員が2度の中間報告と1度の最終報告、終日をかけての最終フィードバックを実施した。
・後輩学生へのサポート(6月~1月)
※4年次学生は全員が2年生ゼミ生へのメンターとなり、個別サポートをするとともに、3年次ゼミ生の進路サポート、プロジェクトサポートを行った。
・障がい者雇用プロジェクトの継続(8月~1月)
※2012年度に提案した中小企業の障がい者雇用を推進するプロジェクトを継続し、多摩地域の中小企業20社の事例集の作成を行った。また10月の本学大学祭では八王子福祉作業所と協力して出店し、障がい者と一緒に作業を行った。それに先立ち、3月には東京都中小企業家同友会と協力して加盟200社へのアンケートを実施した。
育成の評価
1)キャリア形成プラン
2004年よりゼミ独自でキャリア形成プランのフォーマットをつくり、それに基づき2年次の6~7月、3年次4月の2回にわたりキャリア形成プランを作成し、冊子化している。
2)着想シートの作成
ゼミ独自の着想シート・フォーマットを作成し、雑誌や新聞などをもとに着想したテーマ案を、社会的重要性、オリジナリティ、学生ができるアプローチという3点から考察し、冊子化している。
3)サブゼミ・プロジェクト計画書・工程表の作成
3年次の5月と7月に2度にわたりゼミ独自のプロジェクトの計画書と工程表を作成し、冊子化している。
4)プロジェクト評価シートの活用
サブゼミのプレゼンテーションをする際には、評価シートを使用し、教員、卒業生、先輩ゼミ生、後輩ゼミ生等からフィードバックを受けるようにしている。たとえば、2013年夏合宿で使用した評価シートの基準には、次の項目があった。
・情報収集力:
情報の正確さ・情報の信憑性・アンケート収集の努力、どれだけ自分たちの足を使って調べたか
・論理性:
一貫性はあるか・論理的矛盾の有無・計画性・アプローチ過程における目標設定・提案の実現可能性
・着眼点:
独自性・斬新性・既存のものと差別化されているか
・明解なプレゼンテーションが行われているか(自分の言葉で説明できているなど)
・パワーポイントが有効に使われているか(スライドのデザインが見やすい・わかりやすいなど)
・質問への回答が適切であったか(質問の趣旨を的確に捉えて答えているなど)
・計画の実効性(夏休みの調査の妥当性)
・プレゼンテーション大会で優勝できそうか
5)外部評価の導入
・ゼミとしてプレゼンテーション大会に定期的に出場することで、客観的な審査を受けることが可能になる。またゼミ内で行いフィードバックも外部評価に沿った基準にすることでゼミ内と学外の評価の一貫性をもたせるようにしている
・学生が開拓した企業や団体等に指導教員が事後ヒアリングを実施することで、改善点を検討するようにしている
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果
1)「考える力」の育成:
学生には「内外の社会問題を学生が取り組める課題まで絞り込み、プロジェクトを創り検証した上で、提案を社会に発信する」という課題を出すことで、学生自身が社会の課題から「問い」を見つけることが可能となるよう促している。また約30回にわたりフィードバックすることで「考える力」を磨けるようにしている。さらに2年次には、長期休みを利用して着想シートの作成を課している。
※効果:
2013年度に出場した3大会全てで第1位を獲得し、各審査員からも着眼点に対して高い評価を得た。
2)「前に踏み出す力」の育成:
指導教員は学生に対してインタビューマナーについて教えるが、インタビュー等のアポイントはすべて学生が行うようにしている。
※効果:
たとえば2013年度の2つのプロジェクトの内の1つ「中小企業の海外進出と学生インターンシップ」を組み合わせるプロジェクトでは、50社にアプローチをし、30社とのメールのやり取りをし、23社とのインタビューが実現した。さらに、学生プランへの2社の参画が決定した。また、学生のプランに賛同したJETRO海外アドバイザーや商工会議所課長、地方銀行による協力体制を構築することができた。
3)「チームで働く力」の育成:
先述したようにゼミ生の8割が長期留学するためにメンバーの入れ替わりが激しく情報共有が大きな課題であったが、学生自身でGoogle DriveやLINEを有効活用し、メンバー全員が情報を共有するとともに連絡をとりあうよう努力した。
※効果:
2013年10月時点で日本にいた3年次生15名全員がプロジェクトにコミットすることができた。
担当:教授 西浦 昭雄