社会人基礎力を育成する授業30選

1年次からの実習を通じて知識獲得の必要性を認識させるとともに、日常的に地域の方と活動を共にし地域目線で課題解決プロジェクトを展開

北九州市立大学/地域創生学群

地域創生実習

1年次から3年次までの学生が、コースに応じた様々な地域における様々なカウンターパート団体が持っている課題に対して、地域の方々と共にその解決に取組む活動。学生チームは、課せられた実習内容に沿って、事前学習、実習計画の作成、実践活動、中間振り返り、実践活動、最終振り返り、報告というプロセスを繰り返すことで、実践力の養成に努めている。

プログラムタイプ

実践型学習(企業、病院介護施設、NPO、地域団体等々との複合的連携)

単位の授与

あり

実施している機関

平成21年4月〜

実施規模

参加教員: 13名 職員: 4名 受講学生: 年間約300名

連携企業数: 年間約50団体

授業時間数

年間を通じて常に各チームが動いているので授業時間は不明

学生のプレゼンの機会

あり(都度)

評価の回数

自己評価の回数: 随時 他者評価の回数: 1回

当該プログラムの実施範囲

●学科・学部全体で実施

対象プログラムの具体的な内容

主とした実習内容は、商店街や農村地域の活性化、地域の6次産業化、NPO等地域団体の活動支援、学内広報活動、市内の小中学校でのスクールボランティア活動、療育センター・福祉関連施設等におけるボランティア活動、自閉症児を対象とした療育キャンプの企画・実施、地域の健康づくり活動など多岐にわたる。

 

地域創生実習の特徴は以下の3点。

1. PBL(Project Based Learning)とSL(Service Learning)が同時並行する。単なるイベントの企画と実施だけではなく、年間を通じた地道な協働活動を展開することが重要である。週末や長期休暇も学生たちは地域の方々と共に活動し、本当の意味での地域のプレイヤーとしての目線を獲得しつつ、大学生としての発想、知識を活かしたアウトプットを地域の中で発揮することである。

 

2. 1年次から3年次までの縦チームを構成する。実習各チームは基本的に1年生から3年生までが混合するチームである。3年生はチームリーダーとして組織マネジメントや地域との関係性構築の役割を担う。2年生は現場の第一線にてルーティン的、創造的な活動を展開する。1年生は地域との関係構築や仕事の進め方を覚えるために、指示された活動を多方面にわたって展開する。このように学年混成チームを組むことで役割意識の醸成と学生の主体性を育む。

 

3. 教員はファシリテート役である。あくまで学生の主体性を担保するために、教員は学生に寄り添いながら、活動内容に対してはアドバイスにとどめる。ただし、学生の目標設定に対する到達や、その他活動の質を保つための指導は厳しく行っている。従って、日常の学生指導は地域の方にその任をお願いしている。

 

このように、学生たちは、自分たちが地域の主体者として活動する為、課題解決に向けた一連の必要な活動に対して妥協することなく、成果に対して責任を持っている。従って、成果に対しては自主的な調査、学習、活動などが、土曜日日曜日や長期休暇中でも日常的に行われている。

 

育成のための取組内容と育成のプロセス

地域における課題解決活動を主とする「実習」と専門知識を習得する「講義・演習」を1年次から同時並行させることで、学びの往還を行う。そうすることで、知識獲得の必要性を認識することができるだけでなく、学んだ知識を実践する能力を養うことができる。

 

また、「実習」に関しては、コースに応じて様々なカウンターパートとの協働チームが構築されている。年々一部変化していくが、現在は以下のとおり。(平成26年1月現在)

北九州市立イメージ
図表 地域創生学群の演習と実習の積み上げ

《地域マネジメントコース》

1. 猪倉農業関連プロジェクト

2. 合馬まちづくりプロジェクト

3. 学校事務・教育支援プロジェクト

4. 地域創生学群広報実習

5. 小倉商店街プロジェクト

6. コラボラキャンパスネットワーク実習

7. まちなか・イベント連携実習

8. 門司商店街活性化プロジェクト

9. 地域共生教育センター・421ラボ実習

 

《地域福祉コース》

1. 学外地域組織連携活動

2. 独居高齢者友愛訪問

3. 認知症職場体験実習

4. 自閉症児療育キャンプ

5. 北九州市立療育センター

 

《地域ボランティア養成コース》

1. シニア体力アップ実習

2. 寺子屋実習、スポーツ探検隊

3. 車いすソフト・野球

 

《その他》

1. FMKITAQラジオ番組制作実習

2. 東日本大震災関連プロジェクト

3. スクールボランティア

 

育成の評価

1. ポートフォリオでの評価

KSP(Kitakyu Sousei Portforio)を導入し、学生には年度初めの目標設定と年度終わりに振り返りを行う機会を設けることで、自己の課題や成長を確認している。また、KSPをもとにした教員との面談も随時行っている。

 

2.アセスメントでの評価

地域創生力を測定するオリジナルなアセスメントを作成し、年度終わりに受検させることでセルフチェックを行っている。また、今年度から汎用性のある基礎力測定テストを受検させ、客観的な評価を行っている。

 

3.日常的な関与の中での評価

教員、地域のカウンターパート、学生と、学生の成長や課題について協議する機会は日常的な活動の中に埋め込まれていると言える。学生の課題や目標がどんなことであり、それをどのような活動で成長していきたいと考えているか、といったことは常にその3者で共有している。

効果的な育成・評価のための工夫

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果

本学群における育成のための取組内容と成長のプロセスについての特徴は主に以下の6点である。

 

1. 随時目標設定を行う。

全体としては1年に1回の年間目標の設定を行っている。これまでの1年を振り返りつつ、次年度はどのような活動について、どのように活動し、どのような力を伸ばすのかを、地域創生力アセスメントの結果を参照しながらポートフォリオ上で目標設定を行う。また、1年間のうちに行われる数度のプロジェクトに取り組む際には、その都度目標設定と終了後の振り返り検証を行っている。一方で、プロジェクト自体には、プロジェクトの目的に対する成果指標として数値目標を設定させている。その数値目標をチームで追うことで成長を加速させる。

 

2. 初年時教育

1年次の基礎演習において、地域活動における心構えやマナーを徹底している。心構えについては、FMラジオ番組制作にあたって、企画、取材、シナリオ構築、放送までの一連のプロセスを全員体験することになっている。その中で「ものごとの評価基準は自分以外にある」「顧客側からプロデュース側への視点転換」「地域で学ばせていただいているという意識」といったことを理解させている。例えば、授業やミーティングに遅刻した際は、自分のミスである遅刻がチームメイトや地域の方、教員など様々なステークホルダーに影響を与えることを徹底して指導している。

 

3. 縦横のチームでの活動

福祉コースで一部展開されている対人支援技術獲得に関する実習以外は基本的にチームで活動することになっている。3年生は地域マネジメント、2年生は組織マネジメント、1年生は現場で第一線での活動、といったような学年やチームに応じた組織構築を学生と教員とで話し合いながら構築していく。役割をしっかり理解した上での活動により学生のパフォーマンスを担保している。

 

4. 主体性を発揮させる

地域課題の解決にあたっては、基本的には学生同士のミーティング、地域の方とのミーティングなど日常的な活動については、学生たち自身で計画して行うようにしている。教員の関与としては、日常的な「報告・連絡・相談」への対応と、月1回程度の振り返り機会時の指導が中心である。日常的な学生指導は、地域団体や企業等の地域のカウンターパートの方々に指導していただく体制を構築している。また、主体性を担保するために「地域創生学群資料室」を学生に開放。ミーティングや資料作成などを学生たち自らが行える、自由に集える「場」をつくっている。

 

5. 演習と実習の往還

1年次から演習と実習を必修科目として開講し、実習での学びを演習に活かしたり、演習で学んだことを実習で活かしたりといった、知と実践の往還を日常的に展開できるようなカリキュラムとなっている。また、地域マネジメントコースに関しては、実習担当教員と演習担当教員が別々になることもあり、より幅広い専門分野の地域での活かし方を学び、実践することができる。

 

6. アウトプットの機会

地域創生学群全体としては、年に1回開催している「地域創生フォーラム」が学生の活動発表の場となっている。しかし、各チームとも地域の方々への成果報告の場は随時設けられており、活動やその成果を発表する場は年に数度持っている学生がほとんどである。

 

その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果

地域創生学群の取組の最大の特徴は、PBLとSLが同時並行することであり、そのことによる重層的なタスクフォースが組まれることである。

 

大学の専門性ベースではなく、地域課題ベースの活動であるので、基本的に春休みや夏休みといった長期休暇関係なく、通年での活動となっている。その中でも地域の日常に組み込まれたルーティンワークをしっかり展開することを重視しており、日常的な活動から学びをSLとして重視している。猪倉実習では、サテライトキャンパスに学生が寝泊まりしながら農作業と地域の方々との接点を持っている。門司港実習では、「昭和レトロ館」を年間通じて毎週土日に開店している。療育センター実習やスクールボランティアについても年間を通じた活動となっている。

 

しかしそれだけではなく、ルーティンを展開すると同時に年に数度のプロジェクトをPBLとして展開し、ルーティンと同時並行させることで役割行動を意識させている。

 

加えて、地域課題に応じて同時多発的に複数のプロジェクトや組織をスクラップアンドビルドし続けながら動かしていくことで、特に上級生では組織マネジメント実践できる仕組みとなっている。

 

教育の効果を適切に評価・検証し、さらなる成長を促すための工夫

地域創生力にレベル設定を行い、ルーブリック的な観点で評価を行う。このルーブリックは教員、学生、地域の方に公開されており、評価の一貫性を担保している。

 

 

担当:教授 眞鍋 和博

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