学年混成チームによる問題発見・解決に取り組む演習。コンピュータを活用するプロジェクトの企画・提案書を作成し、最終回に全チームのポスター発表を行う。テーマは、チームごとに学生たちが自ら考え設定し解決方法をまとめる。また、企業連携により、知識およびマインドの伝達、評価による多様な価値観への気付きを与える。
プログラムタイプ | 実践型学習(企業連携) | 実施している期間 |
平成19年10月 〜平成26年3月 |
実施規模 |
参加教員: 23名 職員: 1名 TA: 35名 |
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授業時間数 | 15コマ | 学生のプレゼンの機会 |
あり(4回) |
評価の回数 |
自己評価の回数: 2回 他者評価の回数: 4回 |
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当該プログラムの実施範囲 |
●学科・学部全体で実施 |
本プログラムでは、年齢や能力の異なるメンバーの集まりにおいて、
(1)根拠に基づいた問題発見・解決の推進、
(2)自分の適性・能力に気づき、チームへの貢献のための主体的な行動、
(3)価値観の多様性への理解、
ができる人材を育成する。授業においては、企業講師によるマインドやスキルの伝達を行う機会を交えながら、学生自身が試行錯誤を繰り返しながら方向性や提案内容を決める。半期の授業を通してチームプロジェクトを体験し、様々な気づきを得ることを目指している。
本取り組みは、3年間立場を変えながら継続する。これにより、さまざまな立場による考え方を体得する機会としている。
以上の方針により、社会人基礎力における、アクション、シンキング、チームワークを総合的に学習する。
コンピュータのスキルを得る演習は1年次からあるものの、問題発見・解決に関する訓練は4年次の卒業研究になって行うものであった。そのため、問題発見・解決を主体的に行う訓練が不十分であることが課題であった。
また、本学部では、1年次から研究室に配属され、1〜3年次の部屋、4年次・大学院生の部屋があり、個人の机やPCなども用意されている環境がある。このような恵まれた環境にありながら、同じ部屋の他人に関心を持たない学生たちが増加し、縦のつながりはおろか、横のつながりでさえ仲間意識が薄れていく傾向がみてとれた。
このような背景から、主体的に課題に取り組み考え抜く姿勢、および、縦横のつながりを醸成することが喫緊の課題とされた。
育成のための取組内容と育成のプロセス
本プログラムは、1〜3年次の必修科目(1学年160名)であり、20クラスで授業を行っている。各クラスには1〜3年次生が居り、その混成チーム(1学年1〜2名)により演習を行う。各チームにおいて、1年次は「発表者」、2年次は「記録者」、3年次は「リーダー」といった役割に対する主目標があり、チームの中で各自が役割を果たしながら、問題解決のための企画の提案を行う。
半期の間に(1)課題設定、(2)問題分析、(3)企画立案、のステップを踏み、中間発表を経て企画・提案書を作成し、全チームの参加する最終成果発表会(ポスター)に臨む。授業各回の進行は、チームごとに学生が自主的に行い、(1)宿題の報告、(2)ディスカッション、(3)宿題の決定、というプロセスを繰り返す。
また、企業講師を招き、プロジェクトを進めるためのマインドやスキルに関するワークを行い、その知見を自分たちのチームの運営に活用させる。学生は、自己評価を事前、事後で行い、また、他チームについての評価を中間発表・最終成果発表会にて行う。最終成果発表会後に、全体の振り返りを行う。最終発表会には、企業による評価・表彰があり、社会人と接する機会を設けている。
育成の評価
授業における評価はクラス担当教員が行う。毎回の授業の様子、週報、議事録の内容から貢献度を総合的に判断する。学生の提出物は、全てチームごとのポートフォリオに綴じており、授業全体を俯瞰しながら評価ができるようにしている。
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果
当事者意識をもたせるため、クラス担当教員には、以下のような対応を依頼している。
(1)テーマ設定は学生が行う、
(2)チームの進行は3年次生に責任をもたせ、中間発表・最終成果発表会の日程に間に合うようなスケジューリングを行わせる。
3学年混合で行うことにより、学年が上がるごとに責任感が増し、また、下級生の意見を尊重してあげたい、という意識が自然と芽生えている。また、下級生にとっては、下の立場を経験しながら、自分は次年度こうなる、という姿を見ながら演習をしている。これらは、必修科目なので避けられないという意識、また、研究室の先輩・後輩という環境も後押ししているものと考えている。
中間発表会、最終成果発表会は、他チームの状況や考えを見たりする機会として設定している。このとき、単に好き嫌い、ということで評価するのではなく、論理的、説得的であるかどうか、といった、物事の見方を教えるための評価項目を設定している。評価項目は発表会の事前に配布し、評価項目を意識させながら発表資料作りを行うとともに、他者の発表についても、学生はその視点で評価を行う。このように評価指標を意識させることで、客観的な物事のみかたが自然に身に付くことを狙っている。
その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果
専門力:
ICTに関連する幅広い知識の裏付けを背景に、技術の特性に見合った社会応用を検討できるかどうか。
また、選択したICTが妥当であるかどうかは、論理性や説得性などを考慮して示すよう指導することで、必然的に多くの調査や検討を必要とさせる。
教育の効果を適切に評価・検証し、さらなる成長を促すための工夫
自己評価は、社会人基礎力の項目を参考に授業に必要な項目を設定し、スキルレベルを独自に定義している。受講生は、表を参照しながら初回と最終回に自己評価を行う。このとき、評価項目とスキルレベルが一覧できるため、自分が何を目指していけばよいかを受講生が意識することを可能としている。
最終回においては、個人としてのチームへの貢献の振り返りを行うだけでなく、発表会において受けた質疑や他チームの内容を見てチームとしての振り返りも行う。これらの議論により、多様な価値観への気づきを促す。
企業連携においては、最終成果発表会における質疑や評価(表彰)によって価値観を学生に伝える機会とするだけでなく、クラス担当者の裁量で授業への参加を依頼しており、企業の視点を直接伝える機会とし、参加企業からは、感想や改善に関するフィードバックを受けている。
担当:講師 松田 浩一
キャリアデザインタスクフォース 松田 浩一、羽倉 淳、市川 尚、
後藤 裕介(ソフトウェア情報学部)、高瀬 和実(学生支援本部)