初年次教育として1年前期は、社会人基礎力の理解と意識付けを「管理栄養士への道」で、2年次通年で社会人基礎力を原動力とした知識・スキルの蓄積法を「栄養教育論・栄養教育論実習」で実施し、3年生で実施される臨地実習へと繋ぐ授業展開をしている。
プログラムタイプ | 通常授業 | 単位の授与 | あり | ||||||||||||||||||||||||
実施している期間 | 平成21年4月〜現在実施中 | ||||||||||||||||||||||||||
実施規模 |
参加教員: 1名 受講学生: 1年・2年約80〜90/学年、延べ人数約255名 |
||||||||||||||||||||||||||
授業時間数 |
67.5時間(1科目22.5時間×3科目) |
||||||||||||||||||||||||||
学生のプレゼンの機会 |
あり(4回/各学年で2回) |
||||||||||||||||||||||||||
評価の回数 |
科目別の評価回数
|
||||||||||||||||||||||||||
当該プログラム の実施範囲 |
●学科・学部全体で実施(管理栄養士専攻1年 管理栄養士への道) ●単一の授業のみで実施(2年 栄養教育論・栄養教育論実習) |
1. 学則で社会人基礎力を発揮する大学であること示している 2. 社会人基礎力推進委員会が設置されている 3. シラバスに社会人基礎力の発揮法を取り入れている 開講科目全てに社会人基礎力の12の能力要素を如何に発揮するかと毎回(15回)の授業で、理解目標と発揮してほしい能力要素を記述し、学生と教員間で社会人基礎力の意識の共有をして授業展開している。 4. 管理栄養士専攻では、教員に担当科目のうち1科目に1能力要素を発揮させる授業を展開している 教員はシラバスの社会人基礎力を元に、特に発揮させることにより知識・スキルの蓄積に成果を出すことができると考える能力要素を1つ提示して授業展開している。 |
<管理栄養士への道>
1. 能力要素の発揮法
(1)主体性・働きかけ力・実行力:
個人能力を主体的に発揮し、グループ活動では積極的に働きかけ行動をすることができる。
(2)課題発見力・計画力・創造力:
授業内に課題を提示するので例題より課題を発見し創造力を発揮し、段取りよく計画し効率よく課題解決することができる。
(3)傾聴力・発信力・柔軟性・情況把握力・規律性・ストレスコントロール力:
傾聴力を発揮して講義内容、メンバーの意見を理解し内容を整理する。自己の意見と異なっても、柔軟に受入れ新しい価値を生みだす材料とする。規律性は、指定時間内に課題が解決するように、メンバー間の決定事項等を守り、問題が発生したときは、問題の発生源は何か把握し、情況を確認しながら話し合い解決へと導き、ストレスを溜めない行動をすることができる。
2. 目標設定および活動形態
目標:
社会人基礎力の育成プロセスの第1段階は、12の能力要素の理解、第2段階は能力要素の意識した行動をとることからスタートする。
活動形態:
第1段(個人→グループ活動)の能力要素の理解度の把握は、能力要素について記述試験を行い、コメントをつけて返却後、理解できていない能力について全員に対して再度講義を行い、グループで確認する。この直後に「やる気(振り返り)事前シート」に自己ビジョン、12の能力要素を自己評価(評価基準を元に)し、能力要素別に自己の強み・弱みを明確にし、さらにレベルを上げる行動について記述し提出する。提出されたシートの中で低い能力要素についてレベルアップのコメントを入れて返却する。
2段階(個人→グループ→全体活動)では、各自が大学生活の中でどの様に12の能力要素を意識して実行するのか記入し、実施内容をグループ内で発表後、全体発表をする。発表では質疑応答することで、個人間の社会人基礎力育成への刺激を図る。
最終授業(15回目)に「やる気(振り返り)事後シート」を記述する。事前同様にレベルアップのコメントを記入して返却する。
<栄養教育論>
1. 能力要素の発揮法
管理栄養士を目指す学生にとって、自らのビジョンを達成するための重要な授業であることを意識して臨み、特に課題発見と創造力および発信力の能力を発揮する展開をする。
(1)主体性・実行力:
1年次に修得した関連科目は、指示がなくても復習し授業に備え、授業への取り組み姿勢は、毎回の小テストの得点を上げる行動をとることができる。
(2)傾聴力:
授業内容の理解と整理ができ、その内容をノートに記述することができる。
(3)課題発見力・創造力:
毎回実施する課題発見シートを活用して、課題解決を実施することができる。
(4)発信力:PDCAサイクルを活用して、改善のための課題は何かについて質問するので、その解答・考え等を発言することができる。
2. 目標設定および活動形態
目標:
1年の管理栄養士への道を基盤に、社会人基礎力の理解と意識をさらに習慣化する。
活動形態:
(個人→ペアー活動)
(1)「課題発見シート」(本日の授業の課題発見と解決はいつ、どこで、どれくらいの時間をかけて解決したのか記入するシート)と小テストを実施した。小テストは、前回の授業内容の重要ポイントを出題し、自分の知識蓄積の課題に気づくことができるようにした。
(2)授業内で5つ以上の質問をして、学生の発信力を高める環境を整えた。育成状況は、課題発見シート(毎回の授業)、授業到達シート(3回)より、個人を対象に記入内容より育成能力要素についてコメントを入れ返却。各シートは1年次のファイルに追加(ポートフォリオ)。
<栄養教育論実習>
1. 能力要素の発揮法
特に課題発見力、創造力および発信力を発揮する。
(1)主体性・働きかけ力・実行力:
個人で習得している知識を主体的に発揮、グループ活動では課題解決に知識・スキル・人・物・金・情報等に積極的に働きかけることができる。
(2)課題発見力・計画力・創造力:
学習者へ生活習慣病予防の行動変容を促す教育プログラムの作成、ポスター、リーフレット等の媒体作成は、課題を発見し、創造力を発揮し、計画的に課題解決することができる。
(3)傾聴力・発信力・柔軟性・情況把握力・規律性・ストレスコントロール力:
メンバーの意見を理解し整理でき、作業の進捗状況等の情況判断、グループの決定事項等を守り、問題発生時は、メンバーで話し合い解決し、ストレスをためない行動をとることができる。
2. 目標設定および活動形態
目標:
前期の栄養教育論で育成した能力要素を基盤に、疾病患者を症例に実践的な課題発見・課題解決(創造力)・発信力を、前期評価レベル以上を目指し、創造力をコアとして活動する。
活動形態:
(個人→ペアー→グループ活動(成果発表含む))
自己ビジョンを達成するためには、「授業記録シート」を活用し、本日の授業で何を理解・習得するか、どの位理解したのか、100%理解するために必要なことは何かなど記述した後、その原動力の能力要素「創造力」を如何に発揮したか記述後提出し、教員は育成コメントを入れて返却する。
経済産業省主催の社会人基礎力プロジェクトを平成19年度より実施して見えてきた課題
(全教員を対象とした取組み)
1. 教員の社会人基礎力のアップ
教員の社会人基礎力が向上できれば、学生の社会人基礎力の育成はできる。学生の社会人基礎力育成は、授業に関わる教員が社会人基礎力を活用した授業展開の効果について同じ方向性で取り組むことが重要であると考える。
2. 本学は授業に社会人基礎力を取り組むシステムを運用するには、評価基準と育成基準の設定が必要
課題:
社会人基礎力推進委員会を立ち上げ、授業展開へのシステムは構築できたが、全教員が授業展開できない現状にある。
工夫:
(1)一人ひとりの教員が、社会貢献できる学生をこの4年間でどのように育成しようと考えることが、運用へ導くことになると考える。
(2)評価基準は設定されているが、育成基準が個人の教員に任されているため、何をどうしたらよいかわからない教員のためにも、育成基準の作成を早急に実施することが必要である(現在作成中)。
(3)授業展開している教員を各学科・専攻から抽出し、授業展開法、問題点、改善法等を共有する勉強会を実施する(現在実施中)。
3. 担当教員が能力要素の活用法を学生に伝える力が必要
課題:
成果を生みだす「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」は、単独能力で発揮されるものではなく、能力要素の中の「主体性」を基盤に置き、成果目標に向けて何が必要な能力なのか、12の能力要素をネットワーク化して発揮することを伝える力が必要と考える。
工夫:
教員は学生が、本時の授業テーマを習得するためにどのように能力要素をネットワーク化すればよいか準備して臨み、授業開始時にそれを学生に伝えることで、教員も学生も常にテーマと能力要素を意識・発揮することができ、本時の知識・スキルの蓄積量は増えると考える(個人的に実施している)。
4. 教員の意識改革への働きかけを強くする
課題:
教員全員の取組みが必要である。例えば規律性の発揮では、レポート提出が遅れても受け取る教員、受け取らない教員がいると、学生は教員によって行動、態度を変える。いつでもどこでも能力要素を発揮することができない環境を作る。
工夫:
大学全体の方向性を明確にし、教員の意識改革作業をする。どんな学生を育成するか、教員一人ひとりが宣言する環境をつくる。
5. 学生への支援コメントの方向性を明確にする
課題:
平成25年度より管理栄養専攻全教員(15名)に1能力要素の授業展開を実施しており、学生は各教員が指定した能力要素の発揮状況を自己評価して提出している。その後教員は育成コメントを記入し返却する(事前・中間・事後の3回実施)。結果は教員の社会人基礎力への意識の持ち方により、「がんばれ、この調子」など抽象的なコメントや学習へのコメントとなり、能力要素の育成との関連性がみられない。
工夫:
2.で記述したように、育成法を各教員が提案し、学生の特性に合わせた育成基準の作成が必要である。
6. 社会人基礎力の発揮法は、授業中、常に習得知識と発揮する能力要素を意識させることがポイント
授業開始時に本日の授業のテーマを板書し、このテーマを達成するためには能力要素の何を発揮するのか、明確に学生に伝えた後、授業に入る。授業終了後5分を使いテーマの到達度と社会人基礎力をどのように発揮したか記述する。これにより、学生は本日の授業内容を理解し、何を習得すればいいのか明確になったことで、授業中、テーマを意識しながら授業に取り組むことができた。また能力要素についても記述しなければならないので、意識して取り組んだと伝えている。
担当:教授 安藤 明美