初年次キャリア科目「キャリア形成概論I」は、「自分と他者と社会を知る」をテーマに大人数でペア・グループワークを行っている。この科目でキャリア形成の基礎を学び、大学4年間を通して体系的に就業力・社会人基礎力の各力を育成していく。
プログラムタイプ |
その他(理論学習とワークを組み合わせ、240名の学生が授業をつくる) |
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単位の授与 |
あり(半期2単位) |
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実施している期間 |
平成23年4月〜(平成23年度に新規開講)毎年度前期(4月~7月)に開講 |
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実施規模 |
参加教員: 1名 受講学生: 243名(平成25年度) 連携企業数: 2社 |
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授業時間数 |
計21時間(1回につき90分間の授業を計14回実施) |
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学生のプレゼンの機会 |
あり(14回)(毎回の授業で学生が発表等でマイクを持つ) |
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評価の回数 |
学生の自己評価の回数: 計2回 |
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当該プログラムの実施範囲 |
●全学的に実施 (全学共通教育科目として全学年全学部の学生を対象 選択科目) |
育成のための取組内容と育成のプロセス
■授業内容
個人、ペア、グループによるワークを通して、1.これまでの自分、2,今の自分、3.組織社会における自分を整理し、それをもとに4.将来を描き、その将来像実現のために今自分は何をするかを考え、5.そのための行動計画を立てて、“自分のキャリアをデザインする”ことを行っている。このプロセスを通して、大学で学ぶこと、社会に出て働くこと、長い人生を生き抜くことを考える機会を設けている。すなわち、キャリアを時間軸(自分のこれまで・今・これから)と社会軸(自分の強み・とりまく社会の変化と自分の立ち位置)の両軸でデザインする。
■授業プロセス
全14回(1~14)のコンテンツ(実施したワークと導入した「理論」)
1. オリエンテーション・ラポール形成ワーク
2. エニアグラムの実施「ジョハリの窓」
3. ライフラインチャートの作成「ライフキャリアレインボー」
4. モチベーションの源を探る
5. 価値観・人生観・仕事観を整理「キャリアアンカー」
6. したいこと・できること・すべきことを洗い出す「職業選択理論」
7. 即興劇鑑賞:劇団TILT”キャリア”の視点でインプロ(ドラマ)を意味づける。
8. ボイストレーニング体験:楠瀬誠志郎氏(アーチスト)“社会を生き抜く力”を考える
9. 働くとは?・とりまく社会の現状・社会に求められる人材とは?について考える。
10. ポジティブスタンス「ポジティブ心理学」
11. キャリアデッサン未来年表
12. キャリアビジョン 目標設定 「計画的偶発性理論」
13. 行動計画 後期科目オリエンテーション
14.コミットメントクラス全員とエールの贈りあい総まとめ
■授業の特徴
授業中の様々な試み(履修生による進行や履修生の提案を含む)
グランドルールの徹底
授業の資料を早く教室に来たメンバーが手渡す&挨拶習慣
席のくじ引き
毎回新しいメンバーでチームを組む
開始時のハイタッチ!
名刺交換ワーク
毎回の授業のながれ(前回のおさらい レクチャー ペアワーク グループワーク 全体発表 キャリアファイルへのメッセージの贈りあい 授業終了時の分かち合い)
WebClassの活用
レスポンスシートの活用(授業改善提案等)
オリジナルキャリアシートの活用
授業途中の全員席替え
ファシリテーターによる進行
社会人の参加
履修生によるアイスブレイク企画進行
コラムの朗読
ゲストセッションの履修生による司会・前座
履修生による成果物表紙デザイン
将来の自分への手紙にメンバーからの手紙を入れて将来送付
成果物の作成(自分はどんな人生を歩みたいか)
元気が出る言葉集:2クラス合同成果物
4年生スピーチ
履修生による修了挨拶
やむを得ない場合の補講の他クラス振り替え(相互参加・2クラス両方に参加含む)
授業外での交流を深める企画 等
育成の評価
■本人による自己評価:
本科目における個々の目標を初回にシートに記し、最終回に振返る。「成城の就業力。」(32項目)を授業初回と終了時にWEB上で検査し、その向上度を検証する。行動計画の進捗管理と軌道修正も授業中に行なう。
■教員による成績評価基準:
生き方、考え方の定量評価はしない。主体性、他者貢献、チームワーク、課題等に取組む姿勢を評価する。以下の基準をシラバスに記載し授業初回に明示した。
1. 授業への参加度(56%)、2. プレゼンテーション・提出物等(19%)、3. 定期試験*(25%)、の合計点で評価する。授業への参加度については、個人・ペア・グループワークにおける能動的態度と協調性、キャリアに対する主体的な姿勢を尊重し評価する。*定期試験は記述式(持込み可)。
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題育成の工夫点や成果
■育成の内容(一部・例)
1. 毎回の授業において、冒頭のレクチャーの後は、個人ワークによる個の考えの整理と意味づけを行い、ペア・グループワークに繋げる。
2. 誰もが意見を自由に交わせるよう「グランドルール」を設けた。
3. 前に踏み出すためのマインドセットや、ビジョンから目標設定・行動計画のプロセスを経て、コミットメント(明日から実行することの宣言)にはクラスメイトとエールの贈りあいをした。
4. 座る席は毎回くじ引きで決める。大教室大人数の中で、初対面4~5人ごとチームになり、ファシリテーターを決めて協働ワークを行なう。
■育成する際の課題
1. 学生が日常(授業以外の時間や修了後も)どれほど「キャリア」を意識できるか。行動レベルにつなげる気づきを学生は得ているか。
2.この授業のプロセスにおいて、履修者がキャリアデザインの在りかたを考える上で、窮屈な前進レールの上を走らせていないか。
3. グランドルールで多様な発想を縛っていないか気になる。批判的に物事を捉えたり、異なる価値観からのフィードバックも重要。(同調でなく議論する・本音を出す)
4. 計画を実行しているか、その進捗管理と軌道修正のフォローがしきれていない。
5. グループワークは"単発な出来事の披露"で終わっている印象がある。いかに深みがあるダイアログができるか、学生がそのテーマにいかに深く向き合えるか。(時間が足りない場合だけでなく、時間が十分でも問いの立てかたが不十分で話を拡げづらい)
■育成の工夫点や成果
1. 本科目だけで完結をしないよう、併行して展開する「キャリア形成概論II」を担当する講師や、後続演習科目等との連関を図っている。
2. ポジティブさを無理強いしないよう、プロアクティブとの違いを示し、多様な意見や感情について尊重するよう努めた。
3. 緻密に計画を立て達成し成功し続けることだけが素晴らしいのではなく(成功者、成功部分のみにフォーカスするのではなく)、予期せぬ変化に柔軟に対応し山を乗り越えたその背景を分析するなど、自分のキャリアと重ねて意味づけられるように工夫した。
4. 議論を深める際の質問やキーワードをヒントとして記したワークシートを別途配付した。またいくつかのチームには発表をしてもらい、他チームのプロセスを共有し気づきを促した。
その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果
■独自に設定している能力項目
自己効力感向上・コミュニティ・オブ・プラクティス(自分はできる!という自信、多様性を重視しながら相互成長を図る集団づくり)
■育成の内容
授業の準備や進行を履修生(できるだけ多くの)が担うことで、小さな成果による自信と、応援する気持ちと、一体感を形成していく。
■育成する際の課題
1. 普段は人の前にでない履修生に役を担ってもらい、小さな成功を体感してほしい。
2. 大人数の履修生一人ひとりとどのくらい正面から向き合えるか。個々のレベルに配慮したテーマの設定
3. 本科目は選択科目ゆえ、「キャリア」に関心がない学生へのサポートはどうすべきか。
4. 展開が早かったり、コンテンツを詰め込みすぎで消化不良感あるのでは。
■育成の工夫点や成果
・できるだけ早く全員の顔と名前を覚え、名前で声をかけ、役割を担う機会を積極的に提供する。各役割の準備・本番・振返りまでを見守りつつ、頃合いを計らいサポートする。
・授業の改善案を都度全員に訊き、クラス・授業づくりに当事者意識を持ってもらう。
担当:特別任用准教授 勝又 あずさ