空き缶サイズの人工衛星モデルCANSATの設計・製作・実験を行う。米国の砂漠で開催されるロケット打上実験イベントでの実証実験を最終目標とし、要求される外部審査を突破し、ミッションを達成可能な、高性能・高信頼性な衛星モデルを製作する。
プログラムタイプ | 実践型学習(企業連携) | 単位の授与 |
あり |
実施している期間 |
毎年4月〜9月(別途、10月〜11月に学外成果発表等あり) |
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実施規模 |
参加教員: 3名 TA: 1名 受講学生: 11名 連携企業数: 1社 |
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授業時間数 |
15回×90分+フライト実験(気球やモデルロケットを使用) |
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学生のプレゼンの機会 |
あり(15回) |
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評価の回数 |
自己評価の回数: 15回 他者評価の回数: 9回 |
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当該プログラムの実施範囲 | ●単一の授業のみで実施 |
本プログラムでは、半年という短期間の間に、様々な専門知識を総動員し、理学的・工学的意義のあるミッション策定から、設計、試験、実験運用、報告まで完遂することにより宇宙システムプロジェクト開発の方法論を実践的に体得する。
また、宇宙開発等の開発現場で必要とされる、非常に限られたリソース・時間の中で厳しいミッションを成功に導ける以下の能力を備えた人材の育成を目標としている。
-科学・技術・社会に広く目を向け、これらに資するミッションを創出できること。(課題発見力、創造力)
-限られたリソース・時間の中でミッションを確実に達成するための機体設計とスケジュールの策定ができること。(実行力、計画力)
-設計→製作→試験→評価→再設計の繰り返しを忍耐強く実施し、極限環境においても確実にミッションを達成できること。(主体性、実行力、ストレスコントロール)
-複雑な開発プロセスを適切に役割分担し、各自がプロジェクトマネジメントを意識しながら、協力して目標を達成できること。(チームで働く力)
-審査会、交渉等において、ミッション内容・成果・課題等を、相手の背景や文化の違いを意識した上で、確実に伝えられること。(発信力、働きかけ力、グローバルコミュニケーション能力)
育成のための取組内容と育成のプロセス
10人程度のグループを作り、厳しい制約条件、激烈な打上環境に耐える衛星システムの設計・試験とミッション設定のトレードオフを繰り返して、開発を進める。チーム内で効率的な共同・分担が必須であり、作業を通じチームワークを身に着けさせる。毎週の講義では、進捗報告、ディスカッション、環境試験、審査会等を実施し、担当教員の他、受講経験のある上級生等から指導・審査を受ける。また、ロケット打上をとりまとめるNPO法人大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)が開催する外部審査・報告会および、衛星開発企業AXELSPACE社が主催するミッションコンペ等に参加し、最後にアメリカでの打上イベントにおいて最終的な評価を受ける。各審査においては、ドキュメントの作成およびプレゼンテーションが要求され、ミッション内容・過程・結果を適切にまとめ、伝える力を養う。ロケット打上は米国での国際コンペであり、ロケット打上グループや他の参加者との調整・交渉、現地報告会等を通じて、多様な文化背景を持つ人々に対して、自分の考えを伝える能力、相手を理解する能力、共同で物事を実施する能力を養う。
育成の評価
評価は、講義内で設定している審査会で行うとともに、アメリカでの実験に必要な外部審査(UNISECにより実施)により評価を受ける。また、衛星開発企業が独自に実施しているARLISSを利用した設計コンペ(AXELSPACE CUP)へもエントリーし、専門家の評価を受けている。2013年度は本学学生グループが最優秀賞を受賞した。
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果
実践的な社会人基礎力を養うためには、チームによるプロジェクトの創出、マネジメント、実行・達成の一連の流れを実体験することが非常に有効である。
本プロジェクトは、宇宙システムの開発をテーマとし、国際的な環境でプロジェクトをミッション創出から打ち上げ・運用まで経験させる。一発勝負で後戻りのきかないロケット打ち上げ時に、機体が過酷な環境にさらされ、打ち上げ後は一切手出しが出来ず、しかも成功失敗が明快に分かる中で、確実にミッションを成功させるには、社会人基礎力の全てが高いレベルで要求される。限られたリソース・時間の中でのミッション策定(前に踏み出す力)、開発、試験(考え抜く力)はお互いが密接に関連することや、効率よくチームで作業をすることの重要性および難しさを受講者は作業を通じて実体験し、その上で講義において指導を行うことにより、効果的に能力を習得できる。また、ロケット実験に必要な外部審査等を受けるにあたり、ミッション内容や設計詳細に関するドキュメントおよびプレゼンテーションが要求されており、発信力を養う実践訓練となっている。
本プログラムの受講後、学生の作業マネジメント力や説明力は著しい向上が見られ、学生アンケートにおいても向上を実感したとの回答が多く得られている。
その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果
本プログラムではグローバルコミュニケーション能力の育成も大きな目的の一つと設定している。米国打ち上げ実験(ARLISS)においては、ロケット担当者(米国人)への説明・交渉や、現地での技術交流会等、様々な国の人々と交流する機会も多くあり、コミュニケーションスキルを磨く良い機会となっている。
教育の効果を適切に評価・検証し、さらなる成長を促すための工夫
本プログラムでは、講義の一環として設計審査会を数回実施する他に、ミッション定義や模擬衛星の完成度について、NPO法人大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)による外部審査・指導を受けている(米国ロケット実験参加の必須条件)。また、衛星開発企業主催の模擬衛星設計コンペにもエントリーし、幅広い有識者の評価および指導も受けている。教員のみならず、衛星開発の第一線で活躍されている方々からの評価・助言は、学生達のモチベーションを大いに向上させており、非常に有意義であったとの感想を得ている。
教育プログラムの評価
これまでの取り組みが評価され、平成25年度の本学グローバル理工人育成コース「科学技術を用いた国際協力実践プログラム」に採択されている。
今年度はロケット打ち上げ実験コンペおよび、AXELSPACE CUPの両者において本プロジェクト受講生が最優秀の評価を得た。
また、米国ロケット打ち上げ実験終了後に参加学生へのアンケートの結果、
-課題発見・解決力がついたと思うか : 「非常に思う」7人、「思う」1人
-異文化理解が深まったか : 「非常に思う」4人、「思う」4人
-チームワーク力がついたと思うか : 「非常に思う」6人、「思う」2人
(有効回答8名、「非常に思う」「思う」「どちらとも言えない」「思わない」で回答)
という評価を得ている。
担当:連携教授 松永 三郎、助教 中西 洋喜、助教 坂本 啓