社会人基礎力を育成する授業30選

教員と職員が協働で構築・実施した学部横断的な教育プログラムにより、学生・教職員ともに成長

東洋大学/グローバル・キャリア教育センター

キャリア・ディベロップメントプロジェクト 埼玉県産業人材育成情報発信事業 埼玉県内企業魅力発信動画プロジェクト

埼玉県の施策協力依頼を受け、埼玉県内の各企業の事業内容や働く人々を取材し、動画撮影を実施。撮影した動画をウェブページ「彩の国はたらく情報館」および「埼玉県内企業魅力紹介システム」に掲載し、広く埼玉県内の企業の魅力を伝えるもの。

プログラムタイプ その他(問題発見解決型学習(企業連携)) 単位の授与

なし

実施している期間

平成25年6月〜平成25年12月

実施規模

参加教員: 3名 職員: 1名 受講学生: 14名 連携企業数: 1社

動画撮影先企業: 4社

授業時間数

取材・編集のための事前学習 6時間、取材先企業との交渉 6時間、撮影計画・シナリオ立案 10時間、ビデオ撮影 6時間、映像・音声編集 36時間。計64時間

学生のプレゼンの機会

あり(1回)

評価の回数

自己評価の回数: 0回 他者評価の回数: 0回

当該プログラムの実施範囲 ●研究室やゼミで実施
●専門組織(キャリアセンター等)により学部横断的に実施

対象プログラムの具体的な内容

埼玉県の依頼を契機として、東洋大学内で別個に行われていた「キャリアゼミ」と「白山インターネットTVステーション」(HiTS)プロジェクトが協同・連携して開始した。学部を跨いで協働することで、新たな学習意欲を向上させることが出来る、中小企業の実態を客観的な視点で映像という形で表現することで学生自身が理解を深められると考えられた。

 

4企業の取材・撮影・編集を担当し、1分版と10分版のプロモーション動画を制作した。

 

育成のための取組内容と育成のプロセス

(1)映像制作のプロセスと撮影・編集技術に関する授業を受け、これから行う活動の具体的イメージ、知識を形成する。(⇒想像力、課題発見力の育成)

 

(2)それぞれ学部学年が異なったグループを作り、授業外に打合せを実施する。以後、企画、取材、撮影、編集を一貫して学生のみのグループで行う。(⇒主体性、チームで働く力の育成)

 

(3)取材対象企業について調査し、収集した情報を分析する。(⇒課題発見力の育成)

 

(4)作品の構成を考え、企画書を作成し、教員の助言を受けて数回作り直す。(⇒計画力の育成)

 

(5)企業との交渉を行い、事前の打合せおよび撮影を伴う取材を学生のみで行う。(⇒働きかけ力、状況把握力、傾聴力、柔軟性、規律性の育成)

 

(6)ナレーションの録音、見出し・テロップの追加、映像の装飾・加工など、教員の助言を受けつつパソコンによるノンリニア編集を完成までやり抜いて作品を完成させる。(⇒実行力、ストレスコントロール力、発信力の育成)

 

(7)PBL(Project Based Learning)を土台にし、どのような課題を達成するのか、その課題遂行にはどのような問題が起きるのか、その問題にはどのような対処が必要なのか、という3点をチームで補完しながら、また、協議調整を図って納期までに仕上げた。

 

育成の評価

(1)作業の進捗状況、および企画、取材、編集の各段階において、教員が評価した。

 

(2)企画に関しては、教員が企画書を評価し、修正すべき点を学生にフィードバックし、一定水準に達するまで数回の改訂作業を繰り返した。

 

(3)取材に関しては、企業との交渉を逐次報告させ、教員が助言を行った。

 

(4)編集に関しては、作品が部分的にまとまったタイミングに教員が評価し、改善すべき点を学生にフィードバックし、一定水準に達するまで修正作業を繰り返した。

 

(5)報告会を実施し、それぞれのチームの作品を発表するとともに、このプロジェクトにおいて、個々人が成長したプロセスを言語化し「伝える力」の原動力となったことを共有した。

 

この報告会には取材先企業・埼玉県庁ならびに本学指導教員、グローバル・キャリア教育センター長ほかプロジェクト事務局担当職員が出席した。

効果的な育成・評価のための工夫

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果

(1)「前に踏み出す力」(アクション)に関しては、学生自らが企画、取材、編集を通して行うという経験と、作品を完成させたという成功体験によって、主体性、働きかけ力、実行力を育成することができた。

 

(2)「考え抜く力」(シンキング)に関しては、とりわけ企画立案の段階で、企業活動を映像でPR・宣伝するという課題に取り組むなか、計画力、課題発見力、想像力を育成することができた。

 

(3)「チームで働く力」に関しては、企業取材による映像制作というグループ作業でなければ実現できない課題に取り組む過程で、参加学生一人一人が終始チームプレイを学ぶことができた。とりわけ取材、編集の段階では数多くのトラブルに遭遇しており、計画の柔軟な変更、即時の判断力の行使などの対処が必要となり、トラブルを乗り越えることで、柔軟性、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力を育成することができた。

 

(4)とりわけグループの代表者となった学生たちは、リーダーシップの意義を認識し、その能力を培うことができた。

 

その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果

東洋大学イメージ1

当該プログラムは、メディア・映像・編集という専門的な知識・技能が必要であったため、専門教員の指導・協力があって実現したものである。また、専門教員と共に実践的なキャリア形成において当該プログラムをPBL(Project Based Learning)として実行するために、キャリア教育教員と共に、大学職員がプログラム実行において大きな役割を担った。

 

具体的には、学生と企業の連絡に際しての社会人基礎的な指導と支援(メールのエチケット・アポイントメントに際しての注意等)また、委託先とも言える埼玉県庁との様々な調整は、大学職員の協働で実現したものである。また、当該事業実施により、単位認定外講座であっても、学生は自らの学びの実践を求めていること、当該事業で教員と職員が協働で教育プログラムを構築できることが再認識された。また、事務的な要素が多いと思われがちな職員についても、新たな教育支援職員としての重要性が認識され、SD(Staff Development)としての育成事業となることが分かった。

 

教育の効果を適切に評価・検証し、さらなる成長を促すための工夫

映像制作終了後に発表会を開催し、学生が自らの活動を分析・反省するとともに、指導教員、取材先企業関係者から評価を受け、自分たちの活動をより客観的に理解できるようにした。

 

今後行うPBL教育において、経験者である学生を学生メンターおよびファシリテーターとして参加させ、更なる成長の促進教育を構築する計画である。

 

経験を教えることで深化させ、新たな気づきを発見するためにも、「終了」することから「開始」をする継続的プログラムとしたい。

 

そこで、初めて自己点検がなされるものである。

 

その他教育づくりの工夫

東洋大学イメージ2

(1)このプロジェクト自体が、東洋大学の学生と教員による学部横断的な取り組みである。知識や技能の異なる社会学部、法学部、経済学部、経営学部、国際地域学部の学生がグループ作業をしたことで、教育的な効果が高まった。

 

(2)東洋大学が埼玉県の行政と企業と連携することによって、大学教育が地域社会へ貢献をする機会となり、広く公開される映像作品を制作するという課題が学生の動機づけとなった。

 

PBL教育として、更に様々な分野の企業との協働を行い、学生の社会人基礎力となるものを具体的な経験として積み重ね、その経験を具体的に記録する方法を検討している。ポートフォリオのような機能を持ち合わせた新たなシステムの導入を想定している。いつでも、どんな時でも自分の経験を積み重ねて記録することが重要と思われる。学生の成長は、成果・結果だけではなく、活動の経緯(プロセス)にある。本事業でも、学生の日々の活動報告からその成長を読み取ることが教員・職員側にはあった。であるからこそ、学生自身が成長の記録を持つことで自身の行動への自信や肯定感が生まれると思われる。

 

 

担当:グローバル・キャリア教育センター副センター長 小島 貴子 (理工学部准教授)

わくわくキャッチ!
社会人基礎力の育成の手引き
社会人基礎力の育成と評価

新着記事

「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」レポート

文部科学省と経済産業省では、「理工系人材育成戦略」を踏まえ、産学官の対話の場として「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」を設置しました(2015年5月~)。

留学経験が拓いた私のキャリア

吉岡利代氏(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ)

中曽根康隆氏(国会議員秘書)

横山匡氏(アゴス・ジャパン代表取締役)

「社会人基礎力を育成する授業30選」実践事例集
◆社会人基礎力育成の効果的な取組のポイント
◆「授業30選」受賞大学事例
◆受講生のコメント  ほか