社会人基礎力を育成する授業30選

「対話」「協働」「責任」を重視し、教育者・保育者を目指す学生の実践力を継続的かつ体系的に育成

浜松学院大学/現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科

DiCoRes(ディコレス)プログラム

このプログラムを通じて、全ての学生に具体的な実践活動の機会を意図的に提供することにより、人・モノ・自分と真摯に向き合いながら対話する力、自ら進んで他者と協同する力、物事をやり遂げる責任感といった、専門性に裏付けされた実践力が身に着き、卒業時には現場の即戦力として活躍できる保育者・教育者を育てることができる。

プログラムタイプ その他(実践型学習(関連施設連携)) 単位の授与

あり

実施している期間

平成24年4月〜平成26年3月(継続中)

実施規模

参加教員: 13名 職員: 12名 受講学生: 240(全学科生)名
連携企業数: 6(校・園)社

授業時間数

通年30時間(×4年間継続)+60時間+その他の授業も連動

学生のプレゼンの機会

あり(4回)

評価の回数

自己評価の回数: 4回 他者評価の回数: 4回

当該プログラムの実施範囲 ●学科・学部全体で実施

対象プログラムの具体的な内容

DiCoRes(ディコレス)プログラムとは、社会人基礎力の養成を基盤にしつつ、教育者・保育者を目指す学生の実践力を継続的かつ体系的に養うべく、学科カリキュラムの中心に据えて展開する本学科オリジナルの実践力育成プログラムである。

 

育成のための取組内容と育成のプロセス

<1年 教育者・保育者の実際を知る>

科目名:コミュニケーション演習I(必修)、子どもコミュニケーション(必修)

本学付属の幼稚園・こども園や近隣の小学校(教員養成協力校)に直接出かけ、実際に保育場面や授業風景を観察したり、子どもと関わったりする「観察体験」(計4回)を行う。そこで「実践の奥にある教育者・保育者の努力」を知り、保育者・教育者の心構えを身につけるとともに、自分自身がどの職種に就職したいのかというキャリア意識を形成する。また、後期は学園祭にて全員が模擬店(DiCoResショップ)を出店することで、他者と協同する力を身につけるとともに、ディベート大会に取り組み、課題発見力・論理的思考力・発信力を身に付ける。

 

<2年 子どもの興味・関心を引き出す>

科目名:コミュニケーション演習II(必修)

乳児、幼児、小学生を対象とするイベント「DiCoResミュージアム」を学生自身が企画・実践することを通して、教育者・保育者に求められる企画運営力や他者との協調性を身につける。また、子どもの発達に応じた教材・遊具とは何か、子どもへの関わり方はどうしたらよいかなど、子どもたちの興味・関心を引き出す方法を具体的に学ぶ。

 

<3年 子どもの学びを深める>

科目名:子ども実践ゼミ(必修)

2年次の経験を発展させ、地域の子どもを対象とした継続的な教育・保育実践「DiCoResプロジェクト」に取り組み、子どもの興味・関心を引き出すだけでなく、学びをより深めさせるための教育・保育実践の方法を学ぶ。また、地域の保護者や教育者・保育者を対象とする研修会の運営に携わり、研修の企画運営力や外部機関との調整力を身につけるとともに、現場の「生の声」を聞くことで「時代のニーズ・地域のニーズ」の内容と現状をより具体的に把握する。

 

<4年 教育者・保育者として一人前になる>

科目名:卒業研究(必修)

3年次からの活動を継続し、「時代のニーズ・地域のニーズ」を意識しながら、学生それぞれが取り組んできた教育・保育実践を論文等にまとめ、理論化する力を身につける。また、地域公開の成果発表会を実施し、プレゼンテーション能力を磨くとともに、地域に自分自身の学びの成果を還元する。なお、卒業前にはOSCE(客観的臨床能力試験)を実施し、学科教員全員が試験官となり、実践力の最終試験を行う。

 

<その他>

・現場の様子を把握するとともに、社会人基礎力の基盤を培うために、ボランティア活動を単位化している。「ボランティア入門」(1年後期:必修)と「ボランティア実習」(2年通年:選択)という科目において、1年次から積極的に様々な現場へ出向き、課題意識をもって実践に何度も携わる機会を設けている。また、科目外でも積極的にボランティア活動に携われるよう、特別の掲示板やメールを用いて情報提供を行っている。

 

・優れた学生のリーダーシップを育成するため、オナーズプログラムを学科カリキュラムに位置づけ、集中的なトレーニングを行っている。

浜松学院大学イメージ

効果的な育成・評価のための工夫

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果

DiCoResプログラムでは、学生の積極的な実践活動により、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を育成する。そのため、まずはプログラム対象者である学生自身の意識づけが重要となる。

 

そこで、入学直後に行われる1泊2日の「フレッシュマンキャンプ」をはじめ、1年次の必修科目「子どもコミュニケーション」(前期)と「コミュニケーション演習I」(通年)において、「DiCoResプログラム」の目的や内容、期待される効果について丁寧な説明を行うことで4年間の見通しをもって積極的に取り組めるよう働きかけている。また、キャリア意識が乏しい学生も多くいるため、キャリア意識を向上させるためのワークやアクティビティ、ディスカッション、観察体験などの機会を積極的に取り入れながら、常に学生たちに「問い」を投げかけることで、キャリアについて考えさせ、授業内外を通じて、適切な学習の場や機会を提供するようにしている。

 

一方で、論理的に物事を深く考え、自分あるいは自分たちの意見を人前ではっきりと発信するという点に課題を抱える学生が多い現状を受け、1年次後期にディベート大会を学科行事として開催している。あえて大会として競争意識を持たせることで学生の動機づけを図っている。勝ち負けが大事なわけではないと繰り返し指導しているが、やはり勝負事になるとやる気がでる学生も多く、調べ学習の結果を発表していた従来の様子とは異なり、ディベート大会の様子は活況に満ちている。毎年、教員からすると意外な学生が思わぬ才能を発揮する瞬間を見ることができるなど、学生の新たな一面を発見できる場としても活用している。

 

その他、次年度以降の展望が見えるように、先輩と交流する機会を設けたり、上級学年の発表会に下級学年の学生を参加させたりしている。こうした取り組みにより、指示待ちの受身体質な学生が大半を占めていた従来の状況が改善され、プログラムの趣旨に則り、かつ、キャリア意識に基づいて自らのアクションを選択できる学生が増加し、授業内外の場において様々な事柄に挑戦しようとする学生が多くなった。

 

次いで、2年次のDiCoResミュージアムは、学科全体を挙げての大規模なイベントとして位置づけ、全員が力を合わせて一から企画・運営せざるを得ない状況をつくっている。各自のキャリア意識に基づいてクラスを選択できる制度を整えることで、学生が主体的に取り組めるよう配慮している。必ず個々の学生に役割を与えるようにしているが、学生の中には他者に依存し、自らの責任を果たさない者がいるため、時には学生が涙を流すほど厳しく対応している。例えば、自分の行いがどれだけ他者に迷惑をかけているのか、信頼を勝ち取ることがどれだけ重要なことなのか、苦労の先にある達成感を得るために自分には何ができるのか、といった問いかけをしながら学生本人の自覚を促している。また、すぐに妥協して安易な方に流れてしまう学生が多いため、常に教員は「それで子どもたちは本当に喜んでくれるのだろうか?」「もっとやれることはないのか?」という具合に要求水準を高める問いを学生たちに発し続け、学生たちがやれるかどうかのギリギリのラインを見極めながら指導にあたるよう共通理解を図っている。

 

その他にも企画に対する責任感を醸成するために、例えば、学生自身が関係諸機関に後援をもらったり、近隣市町村の園・学校すべてにチラシを郵送して積極的な広報活動を行ったりするという、活動を組み入れている。

 

実際に、学生たちは長期休業期間中を含め授業外の時間を相当使いながらも教員の期待に応えられるよう頑張ってくれており、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を育成する主たる場になっている。毎年数百名以上の幼児・児童が参加する大きなイベントとなっており、参加者がかけてくれるポジティブな言葉が学生たちの動機を高めてくれている。

 

ただし、2年次における単発的なイベント型実践のみでは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」を確実に身に付けることはできない。DiCoResプログラムは4年間の継続的なプログラムとして学科カリキュラムに位置づけており、2年次に取り組んだDiCoResミュージアムでの経験を踏まえ、3、4年次に自らの学びを深められるようにしてある。具体的には、専門分野に分かれたゼミを学生の意思でもって選択する。そして各々の専門性を高めるため、2年間を通じた子ども対象の継続的な実践活動「DiCoResプロジェクト」に取り組む。4年次の最後には、自らの実践を理論化もしくは作品化し、本プログラムを通しての4年間の学びの集大成を図る。

 

3・4年次における指導方針は2年次と同様であり、常に自身の役割や責任を自覚させながら実践の質を高めるという観点から、学生に問いかけをし、対話でもって各自の具体的な目標を定め、実行に移すという方法を採っている。また、3・4年次の実践ではフィールドが必要になるため、担当教員は独自のルートを使いながらフィールドを開拓し、関係機関と綿密な連絡・調整を行うことで信頼関係の構築を心がけている。実際、地域の方から高く評価される機会が増え、むしろ、地域の方から本学に声をかけてくれるようになってきた。成果の一端は新聞等でも取り上げられている。なお、2~4年次の全ての学年において成果発表会の機会を必ず用意している。これは学生が自らの実践をカタチにして発信し続け、聴衆から明確なフィードバックをもらうことで、自らの課題意識を深め、次なる成長に向けたアクションを起こせるようにするためである。

 

 

担当:准教授 名倉 一美

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