社会人基礎力を育成する授業30選

学部1年から大学院修士1年まで、7科目でのPBLを通じて分野横断的に能力を育成

芝浦工業大学/システム理工学部 大学院理工学研究科システム理工学専攻

システム工学教育

5学科にまたがったプロジェクトベースラーニング(PBL)を、学部1年から大学院修士1年まで、7科目にわたり実施し、関連講義と連携させることで、分野を横断する問題解決能力、チームワーク、コミュニケーション能力を育成する。

プログラムタイプ 実践型学習(企業連携) 単位の授与

あり

実施している期間

平成3年4月〜平成25年3月(現在継続)

実施規模

参加教員: 延べ67名 職員: 4名 TA: 延べ12名 

受講学生: 延べ1710名 連携企業数: 2社

授業時間数 245時間 学生のプレゼンの機会

あり(19回)

評価の回数

自己評価の回数: 8回 他者評価の回数: 24回

当該プログラムの実施範囲 ●学科・学部全体で実施

対象プログラムの具体的な内容

従来の工学教育は、一つの専門分野に対し知識、理論を受動的に学ぶ教育が行われていた。しかし、これからの社会では、各分野の専門能力を持つと同時に、分野を越えた世界・社会の問題を総合的、系統的に把握し、解決策を創りだし、組織的に解決することができる人材が求められている。この課題を意識し、本プログラムは開始された。本プログラムは、1991年に創設されたシステム工学部(現、システム理工学部)の全学科の共通教育として開始され、20年以上に渡り毎年改善が行われている。

 

2011年には、大学院にシステム理工学専攻を新設し、学部、大学院を通して6年間の分野横断教育を開始した。大学院教育では、学部教育の目標に対し、グローバル環境でリーダシップを持って、イノベーションを推進できる人材育成を強化している。


世界や地域、分野を横断した課題を解決でき、深い専門能力とシステム思考のプロジェクト遂行能力を備えた人材を目標として、以下の育成目標を設定している。

 

1.問題の発見、問題分析、解決策の創出、評価を行うことができる(システム思考)

 

2.社会的かつ分野横断の問題をモデル化し、システム工学の技術・ツールを適用し、制約条件下で問題を解決できる(システム手法)

 

3.プロジェクト計画を立案し、人に働きかけ、知識と技術を活用し、プロジェクトを遂行できる(システムマネジメント)

 

4.学際的なチームで活動でき、多分野の人とコミュニケーションができる

 

5.論理的な文書の記述ができ、口頭発表、討議等のコミュニケーションができる

 

6.ニーズに合致し、制約を満たすシステム、サービス、プロセスを設計できる 

 

育成のための取組内容と育成のプロセス

システム工学の教育プログラムは、学部のProject Based Learning(PBL)4科目、講義3科目、大学院のPBL3科目、講義2科目から構成されている。PBL科目は全てグループで分野横断の問題解決を実施し、学部1年生から大学院修士1年までPBLで経験と実行力を付け、「前に踏み出す力」と「チームで働く力をつける」。PBLと連携した講義で理論を学び「考え抜く力」を高める。経験と理論を交互に学び高めている。

 

学部1年次には、PBL科目「創る」で創造の実践と苦労を味わう。学部2年次にはシステム工学A、システム工学Bの講義とシステム工学演習A、システム工学演習BのPBLで発想、問題発見、問題分析、構想設計、評価、工程計画、定量的意思決定を学び、分野横断の問題解決に5学科混成で取り組む。3年次にはシステム工学Cでプロジェクトマネジメントを学び、システム工学演習Cで自主的に課題設定したテーマで解決を行う。大学院に進むと、システム工学特別演習で学部生とのチームのリーダとなりPBLを推進し、システムマネジメント特論でリーダシップを高め、産学連携PBLでイノベーション創出に参画し、国際PBLでグローバルな問題解決と異文化理解力を高める。

 

育成の評価

全ての講義とPBLに対し、明確な学習・教育目標を設定し、PBLに対しては、目標とする行動特性の水準を示すルーブリックを設定し、授業開始時に学生に示している。これに基づき、学生よる事前事後の自己・相互評価と教員による事後評価を行う。学生は、電子学修ポートフォリオにより成果を記録し、振り返りを行う。また社会人基礎力試験PROG(Progress Report on Generic Skills)を1年入学時、3年後期、修士1年に実施し、社会人基礎力の向上を定量的に評価し、学生にフィードバックしている。


効果的な育成・評価のための工夫

「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果

【前に踏み出す力】

分野・学科混成で課題解決を行うためのPBLを7回、講義5回交互に行い、学んだことは必ずPBLで実践する教育を行っている。学びは、前に踏み出すこと、実践することが前提であり、学生が必ず行動を起こさなければならない状況にする。PBLでは課題ごと、フェーズごとにリーダを交替し、多くの学生がリーダを経験するように仕組みを作っている。

 

国際PBLでは、異文化のなかで、英語が得意であろうとなかろうと、国籍、文化が異なる学生とチームを組み、英語でコミュニケーションとらねばならぬ状況に学生を入れる。このようなことで前に踏み出す力をつける。

 

【考え抜く力】

1年次は、システム思考の体系を講義で学ぶ前にPBLで問題解決の体験をする。学生は最終的にはなんとか成果物を作り上げるが、チームワーク、工程計画などの点では失敗し挫折を味わう。ここで、初めて講義を行い、システム思考、発想法、階層的問題分析設計法、プロジェクト計画法などの理論を学ぶと、学生は理論を基盤に計画し考え抜くことの重要性を知る。PBLのデザインレビューでは教員から学生の計画や設計を厳しく指導する。学生は、試行錯誤するが、あきれめずに考え抜く力を身につける。

 

【チームで働く力】

システム工学教育の全てのPBLは、分野の異なる5学科の学生の混成チームでの問題解決を行う。また、大学院1年生と学部3年生の混成でのPBLや国際チームでのPBLも実施している。学生は各専門分野を活かし、力を持ち寄り、相互に高め合う。学生相互に皆が分かるように教え合いを学生に要求している。また、産学連携PBLでは、学外の地域、企業の方から社会の価値観に基づいて、意見をもらいディスカションを行う。

芝浦イメージ

その他、当該プログラム独自に設定している能力項目を育成する際、その内容、課題、育成の工夫点や成果

本プログラムでは、グローバル人材力と新しい価値創造に向けたイノベーション人材力を独自目標として設定している。グローバル環境での問題解決と異文化理解力を高めるため東南アジアの大学と協働で、国際PBLを実施し成果がある。イノベーション人材の育成のため、企業や地方自治体と連携し、産学連携PBLを実施している。経験者の修士2年生がTA役で活躍している。

 

教育の効果を適切に評価・検証し、さらなる成長を促すための工夫

教育の効果を適切に評価・検証するため、学習・教育目標の達成度を示すルーブリックに基づき、PBLの文書報告、口頭発表の学生自己評価・相互評価、教員評価を行う。自己評価は電子学修ポートフォリオに記録され学生が振り返りを行う。科目毎の期末試験と別に、社会人基礎力試験PROGを実施する。

 

 

担当:教授 井上 雅裕

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