本プログラムは、卒業所要単位126単位のうち、10単位ある倫理キャリア科目の必修科目であるキャリア教育演習とキャリア教育演習リーダーを中心とした一貫したキャリア教育である。学年横断教育とは1年生と3年生が同じ教室で学ぶ教育で、合わせて1471名(平成25年度)が、必修科目として36教室に分かれて受講している。
プログラムタイプ | 実践型学習(企業連携) | 単位の授与 |
あり |
実施している期間 |
平成23年4月〜 |
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実施規模 |
参加教員: 142名(特任教授1名、特任准教授5名、特任講師64名、専任教員72名) 職員: 6名 TA: 32名 受講学生: 1923名(平成25年度1年:752名/2年:452名/3年:719名) 連携企業数: 46社・団体 |
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授業時間数 | 120時間(80コマ) | 学生のプレゼンの機会 |
あり(2回) |
評価の回数 |
自己評価の回数: 16回 他者評価の回数: 81回 |
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当該プログラムの実施範囲 | ●全学的に実施 |
本取組みの特徴は、
(1)産業界出身の特任講師を中心としたきめ細かな支援体制
(2)学習ポートフォリオシステムの活用
(3)学生同士のピアサポート
にある。
学年横断教育は、多数の特任講師のきめ細かな支援のもと、学生同士がプロジェクトチームを結成して進めるもので、3年生のリーダーシップの下で学生自ら課題を設定し、1年生と3年生が協力して課題解決に取組む。学生は、プロジェクトを進める中で、「チームで働く力(チームワーク)」を体験的に学び育成するとともに、問題解決へ向けて「考え抜く力(シンキング) 」を磨く。また、3年生には特に「前に踏み出す力(アクション)」が求められ、1年次のフォロワーシップから3年次のリーダーシップまで学年進行で学ぶ。プロジェクト活動を通して、学生の社会人基礎力を養成すると共に、自己理解、社会人意識、キャリア設計、ITリテラシーの向上を目指す。
必修化により、例えばコミュニケーションが苦手な学生にも履修する機会が与えられ、全体的な底上げを図ることができる。学習ポートフォリオシステムを活用して、キャリア教育の特任教員や特任講師から綿密な声掛けを行い、学生に対してきめ細かな支援体制を構築している。同時に、学生相互のコミュニケーションも、この学習ポートフォリオシステムの掲示板機能で行う。
多様なバックグラウンドをもつ産業界出身の特任講師の協力を得て授業を進め、学内のキャリア教育以外の専門教育の教員も担任として授業に参画(年2回)する。学生が多様なバックグラウンドを持つ人との接点を持てる仕組みを設けている。
核家族化や地域コミュニティの希薄化が進行している現在、若者の人間関係は多様性を失っている。さらに地方から上京して入学し一人暮らしをしている学生はそういう状況に陥りやすい。本プログラムにおいては3年間のキャリア教育を通じて、本来、家庭や地域社会で経験すべき機会を提供し、代替することで多様性のある対象とのきめ細かな“つながり”を経験させる。学生は積極的に多種多様な”つながり”の機会を得て、異分野と融合するチームワークを育 成するための素地を築く。また学年の異なる先輩後輩、外部の産業界出身の特任講師、研究者でもある専任教員など多様性のある人とともに課題解決の取組みを行い、新しい価値創出に向けた「課題発見力」や課題解決に向けた「実行力」を養い、グローバル社会で仕事を進める上で必須となる多様性への理解や、多様性のある集団の中で仕事を進める経験を積む。
育成のための取組内容と育成のプロセス
本プログラムのキャリア教育演習およびリーダーでは、基本的な構成として特任講師から活動内容を提示し、チーム活動を実施、最後に振り返りを行う。振り返りはチーム単位による話し合いを行い、個人は振り返りのレポートを提出する。この流れで、学生自身が自己評価により改善点を言語化することで、次の機会での具体的な行動に結び付けられる構成にしている。
授業は月曜日1限に設定している。週最初の月曜日1限に出席させることにより、その週の他の授業への出席状況によい影響を与える意図で設定している。また通年の授業を以下の3期に分けて考えている。
第1期(3回) 関係構築(ピアサポート実施) 第2期(4回) オープンラボ見学(研究室見学) (ピアサポート継続→大学で身に付けるべき専門性を考える) 第3期(9回) プロジェクト活動 |
第1期の関係構築期では、初めて会う1年生と3年生および担任となる専門教育の教員、および特任講師の関係構築と1年生と3年生同士のピアサポートを目的としている。自己紹介を中心とした内容としており、1年生は、自ら自己紹介を行う際の「発信力」を強調し、3年生には他の学生が行う自己紹介を聴く際の「傾聴力」と、質問の仕方への意識を高める。
第2期では、ピアサポートの継続した実践を行う。この期間では、大学院オープンラボでの研究室見学を行うが、1年生と3年生が見学先を検討して、最終的な見学先を決める過程で調査の仕方、質問の仕方、議論における合意形成の考え方への意識づけを行う。研究室の選択は、学生の興味を広げる役割を期待しており、見学前には、学生の興味が低い研究室も、見学後には興味を持つことも多い。振り返りとしては、チーム活動を行う上で、求められる言動を意識させ、向上させるための方針を明確化させる。
第3期では、夏休みをはさんで実施されるプロジェクト活動が中心となる。企画内容となるテーマ決めから開始し、教室単位での発表を見据えた進捗の管理、外部への折衝などを特任講師、キャリア教育の特任教員の支援を受けながら進めていく。進めていく過程では、進捗の報告を毎週義務付け、特任講師からフォローを行う。
◎1年次
1年生は入学直後、大学という未知の世界に入り、希望を持つと同時に不安を抱え、能動的に行動を起こせなくなってしまうことも少なくない。学年横断教育となるキャリア教育演習では、3年生からピアサポートを得られる。
◎2年次
2年次には履修者数が在籍学生数の70%~80%となるキャリアデザイン1およびキャリアデザイン2にて、社会人基礎力のさらなる底上げと3年次のキャリア教育演習リーダーの準備につながる取り組みを行っている。
「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」等、社会で活躍するために必要だと思われる能力を育成する際の課題、育成の工夫点や成果
■能力レベルに応じた社会人基礎力を高める環境整備
特任講師は、学生およびプロジェクト活動を行うチームに対し、より高いレベルを目指すアドバイスを与える。プロジェクト活動を進めている過程で、課題や提案内容に対し問い、学生にさらに深く考えさせている。
■本人が自立的に育成できる仕組み
学習ポートフォリオシステムにおいては、履修学生全体への配信機能があり、学生が自ら手を挙げて取り組める情報を配信している。これまでボランティアの情報や電気通信大学OBの講演会などが配信された。
また、プロジェクト活動は、授業終了後も継続できることを伝えており、社会連携センターや図書館などの学内組織、学生ボランティア部などの学生団体との連携の仕組みを整えている。
本プログラムの3つの特徴は社会人基礎力を育成するための活動を支える柱である。
(1)産業界出身の特任講師を中心としたきめ細かな支援体制
●きめ細かな支援を実現する教育体制
●社会で活躍された産業界出身者を特任講師として採用
●キャリア教育の特任教員による教材の作成
●毎回の授業後にFDを実施
●特任講師と学生との密なコミュニケーション
●専任教員の関わり
(2)学習ポートフォリオシステムの活用
●学習ポートフォリオシステム
●ITを用いたコミュニケーション手段を用いた“つながり”の実現
(3)学生同士のピアサポート
●チーム活動を中心とした授業内容
●振り返りを行い、体験を能力として定着化
担当:特任教授 竹内 利明、特任准教授 皆川 昭俊