富士通の採用・若年者育成における社会人基礎力の活用事例

富士通株式会社 人事労政部 人材採用センター長 豊田建氏


富士通では、新卒採用と、内定から入社2年目までの研修で、社会人基礎力を活用しています。この取り組みをご紹介します。

 

「求める人材像」として社会人基礎力を明示する

 

2008年から、新卒採用の内定者育成に社会人基礎力を導入しました。内定者が、学びの場から働くことへの移行にあたって、社会人基礎力というものさしを使って一度自分を振り返り、今後ビジネスパーソンとして働くためにどのような力が必要かを考えてもらう。そして、入社後も同じスキームで若手社員の育成を行うことにしました。これがATT(Action, Thinking, Teamwork)チャレンジです。これについては後ほど詳しくご説明します。

 


2009年からは、新卒学生の採用の場面にも社会人基礎力を導入しました。まず、「求める人材像」として「好奇心を持って行動できる」「富士通に共感できる」とともに、「継続して社会人基礎力を伸ばすことができる」ことを明記しました。

 

さらに、webエントリーでの書類選考と、面接時の評価項目に社会人基礎力を使っています。webエントリーでは、学生にはまず「社会人基礎力とは何か」の説明を読んで内容を理解した上で、基礎力の項目に従ってセルフチェックをしてもらいます。その上で自分が自信を持っている社会人基礎力について、その理由を書き、さらにその基礎力を発揮した場面について、背景と自分が取った行動、その結果を400字で書いてもらっています。

 

各部門の部長・課長が実施する一次面接では、社会人基礎力に関してのみ質問します。その際は、「どういった場面で、どのような行動をし(力を発揮し)、その結果どのような結果になったのか」を話してもらいます。学生は、とかくプロセスの部分が抜けがちになりますので、具体的にどういう行動をしたか、ということを徹底的にヒアリングする形で行います。

 

「社会人基礎力」の言葉を使って、内定から配属後まで一貫した教育を行う

 

次に、内定から入社2年目までの若手社員の育成プログラム「ATT(Action, Thinking, Teamwork)チャレンジ」についてご説明します。当社では内定から2年目までの社員の育成は人事採用センターが責任を持つことになります。

 

このプログラムの目的は、ビジネスパーソンとして求められる力を、社会人基礎力の言葉を使ったPDCAを通して身に付けさせ、さらにこれを自立的に行えるように支援すること、さらに、結果的にこれによって業務遂行力の基礎を固めることです。


 

この期間は、内定から入社までの学生生活の場をフェーズⅠ、入社直後から導入教育期間の研修期間のフェーズⅡ、配属されて実際の仕事に就いてから2年目までのフェーズⅢの3つの期間に分かれています。

フェーズⅠでは、内定者6人に対して先輩社員のメンターが1人と、人事採用センター社員のクラスメンターが1人付きます。ここで、内定者は社会人基礎力で自己評価を行い、さらに学生生活の中で、どういった能力をどのように伸ばすかという計画を立てます。1か月後に、ここで立てた目標に対してどのような行動改善ができたかをこの6人で報告し合い、メンター(現場の社員)がアドバイスをします。


入社してからも、フェーズⅡでは研修の場でクラスのマネージャーがメンターとなり、フェーズⅢでは配属先の部門の上司と先輩の社員が付いて、同じ形でセルフチェックと話し合いを行い、セルフマネジメントサイクルを習慣化します。足かけ3年間で、このようなセルフチェックを8回行います。

 

目標を立てるためのサポートの仕組みも作る

 

フェーズⅠ内定期間には、毎月内定者を集めるわけにはいきませんので、最初のキックオフだけ集まって実施し、その後はSNS上で実施できるプラットフォームを用意しました。


内定者には、毎月学生生活の中でチャレンジできる目標を設定してもらいます。目標を達成するために質の高い行動を身に付け、次の目標はより高くなる、そんなスパイラルを期待しています。

 


当社には、約500人の内定者がいますが、自立的に行動の質を上げていける人もいれば、できない人もいます。そのような人を支援する仕組みもSNS上に作りました。例えば「何かを作成するとき」には、「プロトタイプを作ってみる」「自分の考えを整理する」「つなげて考える」「アドバイスをもらう」等、取るべき行動を想起できるパターンを提示して、ヒントを与えるというものです。

 

このようなことを通して、行動の質を上げ、PDCAを身に付けさせることで入社に向けた準備をさせるわけです。このSNSの仕組みは研修会などでご紹介したところ、大学の先生方から評判がよいため、商品化に向けてプロトタイプを開発し、実証研究用として複数の大学様に提供を始めました(下図:己歴)。

 

下図は、内定期間中からのセルフチェックのプロットの典型的な例です。内定期間から入社に向けて、少しずつ評価が上がっていきます。ところが、入社して研修を始めると、ビジネスパーソンに求められる社会人基礎力はこんなものではなかったということがわかり、一回しぼみます。それが研修を受ける間にまた徐々に上がっていきますが、いざ職場に行って実際の仕事に就くと、また1回しぼむ、それが2年目の終わりに向けてまた上がっていく、というものです。

 

それぞれの役割や場面に応じた社会人基礎力の育成を目指して


社会人になったからといって人が変わるわけではなく、また新しい能力が増えるわけではありません。学生と社会人では、発揮する力は同じであっても、求められる場面や期待される行動の質が変わってくるのです。このプログラムを始めて、内定者は、学生時代に身に付けた自分の持っている力を、社会人基礎力というものさしを使って整理することで、社会人に求められる力が考えられるようになったと思います。


これは、若い人だけでなく、課長や部長、あるいはもっと上位のマネージャーにとっても同様で、その立場に応じた社会人基礎力が必要なのだと思います。

 

また、このプログラムを導入する以前は、育成の場面で上司が各々「バイタリティがない」とか「責任感が…」のようにいろいろな言葉を使っていましたが、社会人基礎力を共通言語としたことで、「今回の件については、主体性の点でどうだったか」というように、定義のはっきりした言葉で指導できるので、上司と新人との意思疎通がスムーズになりました。また、メンターを務めることによって、先輩社員自身も成長することにつながっていると思います。

 

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