「社会人基礎力を育成する授業30選」受賞

「アカデミック・スキル」という授業の場で京都府と連携した取り組みを実施

同志社大学 政策学部教授 関根千佳先生

関根千佳先生
関根千佳先生

同志社大学政策学部では、少人数教育を柱に行っていますが、その中に社会の様々な課題を解決する方法を考える「アカデミック・スキル」というプログラムがあります。このプログラムは読解、分析、構想、伝達、という4つのジャンルに分かれています。実施時期は、1回生の秋学期と2回生の春学期で、それぞれ15人から20人程度です。テーマや授業の方法は各教員に任されていて、例えば海外のNGOについて調べるということをしているところもあれば、ひたすら英語のテキストを読み込むという授業もあります。私の場合は、どんどん学生を外へ出します。基本的にはインタビューや現地訪問などのフィールドワークを行い、そこで出てきた問題点をディスカッションし、考えたことを実社会でプレゼンするという形の授業になっています。

 

私の授業では、ユニバーサルデザインの社会を作ることをテーマにしているので、その一環として「京都おもいやり駐車場利用証制度」(国際的にはパーキングパーミット制度と呼ばれている)をどのように普及させるか、ということについて、京都府と連携して活動しています。障害者だけでなく、高齢者、妊産婦やけが人など幅広いニーズのある方に利用証を発行して、それがあれば広めの場所に駐車ができるという制度ですが、残念ながら十分普及しているとはいえません。それはなぜなのか、どうしたらもう少し先に進めるのか、学生が府の担当者と考え、府民にインタビューを行い、解決策を探り、提言を行うという授業を行っています。

 

自分たちで道を切り開こうとする姿勢が、社会人基礎力の発揮につながる

 

最初はユニバーサルデザインの体系や、世界のパーキングパーミット制度について私が講義をします。先進国ではこの違反には人道上の罪として高額の罰金が科されるのに、日本では法律すらないという状況をまず知ってもらいます。

 

次に、「突撃インタビュー」といって、商業施設や病院などの駐車場管理者や、そこに車を停めようとしている多様な市民に学生が話を聞いてきます。最初は「一人で行くんですか?」と躊躇していた学生も、事業者や利用者から直接話を聞くことで次々に課題を見つけてきます。次に京都府庁に行き、行政側の話を聞きます。京都府の担当課長とのセッティングは、入庁3年目の京都府の職員がしてくれました。この職員は毎回90分の授業にもほぼ毎週、参加してくれています。

 

そして持ち帰った課題をチームで話し合い、提言するためのプレゼンテーション資料を作ります。私は課題の掘り下げ方やわかりやすい資料の作り方などを毎回厳しく評価し、改善のためのアドバイスをしますが、基本的に、内容はすべて学生に任せて、「来週までに調べて、手直ししてきてね」と毎週、宿題を出すのです。

 

課題の深掘りと解決策の提示に際しては、「Whyを5回」というのが、合言葉になっています。「なぜ日本ではできないのか?」「行政に予算がないから?」「広報が足りない?」「その理由は何?」と、原因を深いところまで探っていきます。「その結果、あなたが考える解決策は?」「それがどうして有効と言えるの?」「費用対効果は?」と、解決策でも納得できるまで授業で話し合うのです。いつもスムーズにいくとは限りません。グループ内で意見が対立することもあれば、解決策がなかなか見出せない場合もあります。調整はとても大変で、つらい目にあうこともありますが、学生たちは、自分たちで道を切り開こうとします。利用証交付窓口である県内のすべての保健所に問い合わせをしたり、オンライン地図を運営する企業の担当者を東京から京都まで呼び、話を聞いたりもしています。すべて私の知らないところで、学生たちで自発的に行ったのです。

 

最終的に解決策の提案を、京都府庁でチーム毎にプレゼンテーションします。ストーリーや構成はすべて学生が考えます。今年は、4つのチームでもっと効果的な広報のしかたはないか提案をしましたが、他県の事例も使って、京都府の職員をあっと言わせたところもあります。

終了後の感想として、「自分たちで作り上げる、構想を練る、実行することはこんなにおもしろいものなのか」、「チームワークや責任を持つことの大切さに改めて気づいた」、「まわりをひっぱっていけるような力を身につけられた」、そういう言葉がものすごくたくさん出てきました。

 

私は、社会に出て必要な力は、まずは問題点を発見する力だと思います。課題は何か、なぜ起きるのか、5W1Hをまず特定します。もう一つは問題を解決するために、考え抜く力だと思います。何が必要なの?それはなぜ?と、Whyを5回繰り返すことで、解決の糸口が見えてくるのです。

 

私はもともとはグローバルなIT企業で18年SEとして働き、その後、ソーシャルビジネスを起業して社長を13年経験し、その後に大学で教えているのですが、学生が伸びることを実感できる大学とは、本当におもしろいところだと思います。彼ら彼女らは自分で道を切り開いていける可能性を持っています。大学では、教育が一番おもしろい。地域や社会の課題を解決できる人材を育てていくために、企業や行政はもっと一緒になって取り組めるはずです。それが可能になれば、日本の大学教育はもっともっとおもしろくなるのではないかと思います。

 

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