2013年3月4日、「社会人基礎力育成グランプリ2013」の決勝大会が東京・大手町の日経ホールで開催されました。
「社会人基礎力育成グランプリ」は、大学での授業や活動を通じて、学生の社会人基礎力がどれだけ成長したかを、学生自身の発表によって競う大会。2008年に「産学連携による社会人基礎力の育成・評価事業」のモデル大学7校の参加でスタートし、今年6回目を数えます。2009年からは予選が実施され、今年は全国6か所の地方予選に92大学109チームが参加。「社会人基礎力」が、全国の大学に確実に浸透していることをうかがわせます。
決勝大会は、大阪工業大学、相模女子大学、香川大学、多摩大学、日本大学、福岡女学院大学、関西大学、石川県立大学の8大学が出場し、それぞれの取り組みを発表しました。また、学生の発表以外にも三井住友銀行の北山禎介取締役会長による基調講演や、決勝大会に出場した8大学の学生によるトークセッションなども行われました。
各賞の受賞校は以下の通り。
★大賞★
大阪工業大学 工学部(近畿地区代表)
発表テーマ:
なにわの町工場で鍛えられた社会人基礎力
~ものづくりに青春をかける学生エンジニアの挑戦~
★準大賞★
石川県立看護大学 看護学部(中部地区代表)
発表テーマ:
世代間交流による「健康なまち」創造の軌跡
―健康は一人じゃなく、みんなで創るもの―
日本大学 工学部(北海道・東北地区代表)
発表テーマ:
道を身近(ミチか)に ~村民と学生との協働による道づくり~
★会場特別賞★
多摩大学 経営情報学部(関東地区代表)
発表テーマ:
「日本大好きプロジェクト」
※決勝進出8大学の詳細はこちら
経済産業省 http://www.meti.go.jp/press/2012/03/20130305006/20130305006-2.pdf
大賞を受賞した大阪工業大学工学部(関西地区代表)は、中小企業と薄板製造機械の開発に関する共同研究を行った学生たちの挑戦を発表。当初は職人肌の社長との会話も儘ならなかった学生たちでしたが、提案についてのエビデンスを準備することで、コミュニケーションの糸口がつかめるように。さらに、実際の製作段階では、機械製作会社との折衝から、「アイデアだけではダメ、実行するためには実証する必要」というものづくりの基本に立ち返り、課題を克服。当初大きく予算をオーバーしていた製作費も、最終的には予算内で収め、無事製品化に辿り着いたといいます。課題を発見し、企業人とのリアルなコミュニケーションを経て、解決に至ったPDCAの過程と成果を丁寧に説明しました。
準大賞の石川県立看護大学看護学部(中部地区代表)は、4年生の卒業研究活動でもあった、月1回の健康ワークショップの活動実施からの報告。学生主体の活動に、地域住民やNPO、行政の協力を得て内容を充実させるとともに、PDCAをしっかり行ったり、後輩に仕事を任せることで育てたりすることも行い、医療看護知識の向上や地域の保健活動への貢献ができていることがうかがわれました。
もう1つの準大賞受賞校の日本大学工学部(北海道・東北地区代表)は、地元福島県平田村に道路や橋の施工・管理に学生が参加したことの発表。道路舗装等の作業だけでなく、地域の住民の中に入って話を聞いたり、架ける橋に愛着を持ってもらう工夫をしたりし、住民が協力しあい、利用する道路や橋などの生活基盤の維持管理を行う昔の土木技術の「道譜請(みちぶしん)」を実践しました。
今年の決勝大会出場の8大学中6大学が、これまでにも決勝大会に出場経験があり、その時と同じプロジェクトを後輩が引き継いで行っている学校もありました(多摩大学、福岡女学院大学)。社会人基礎力育成を恒常的に教育プログラムの中に組み込み、教育効果を上げている大学同士が揃い、取り組みとしては甲乙つけがたい内容でした。学生のプレゼンや、質疑応答も十分準備を重ねてきたことがうかがわれます。
その中で大賞・準大賞を獲得したのは、社会人基礎力を発揮することによって、企業や地元の人など相手を巻き込んで動かし、事態をよい方に変えていくことに成功したこと、そして地域の産業やいわゆるQuality of Lifeの向上に資する活動に取り組み、その中で学生が成長したことが印象に残った大学であったといえます。
◆関連サイト
経済産業省 「社会人基礎力育成グランプリ2013」受賞者決定!
http://www.meti.go.jp/press/2012/03/20130305006/20130305006-1.pdf