この仕事をするならこんな学問が必要だ<非鉄金属業界編>

幅広い用途のある非鉄金属は、化学系にはたまらないマテリアル研究の宝庫

三菱マテリアル株式会社

中央研究所 都市資源リサイクル研究部 岡田智さん

※所属・肩書は取材時のものです。

みなさんがよく使うスマホに、金やレアメタルが使われていることを知っていますか。都市でゴミとして大量廃棄される家電製品の中に存在する有用な資源を、都市鉱山と言います。非鉄金属の大手企業の三菱マテリアルは、都市鉱山をリサイクルさせる開発研究をしています。それが、資源のないと言われる日本にとってどれほど有望か。同中央研究所の都市資源リサイクル研究部の岡田智さんに、非常に幅広い最新のマテリアル研究から都市鉱山のリサイクル研究まで、さらにそこで求められている学問についてお伺いしました。

 

おすすめ本

『レアメタル超入門』中村繁夫(幻冬舎新書)

 


第1回 世界に誇るレアメタルのリサイクル技術。都市鉱山を活用した資源大国目指す

非鉄金属って何でしょう。非鉄とは鉄以外の金属を指します。主には銅・鉛・亜鉛。この3つが非鉄のベースメタルと言われますが、三菱マテリアルでは、銅・鉛に加えて錫の製錬を行っており、亜鉛の製錬は行っていません。鉄は一般に構造材として使われますが、非鉄は機能材料として幅広い用途がある。その点が鉄との大きな違いです。

 

当社は、銅をはじめとする非鉄金属とセメントという2つの基礎素材、および金属加工品や電子材料などの製造を事業の柱としております。さらに、昨今の循環型社会形成に向けた動きの中で、話題のレアメタルをはじめとするリサイクル事業も推進しており、それぞれの事業領域が当社の将来を担う重要な役割を果たしています。

 

大阪のあべのハルカスのセメントを開発

 

例えば、セメントの最近のトピックでは、世界最速で固まる、世界最高強度のセメントを開発しました。それは日本一超高層ビル、大阪のあべのハルカスに使用されています。また、非鉄金属製錬では、香川県にある三菱マテリアル直島製錬所が世界に誇れる銅の製錬技術と生産量を有しています。三菱マテリアルは、もともと鉱山・炭鉱事業から出発しており、直島製錬所は1917年から操業している歴史ある銅製錬所です。

 

ここで私は5年間勤務していましたが、その間、銅鉱石や廃棄物から銅だけではなく金・銀を取り出す技術を開発し、リサイクルで先鞭をつけました。直島は現在、貴金属の回収やリサイクル分野でも世界に誇れる技術を持っています。

 

スマホのリサイクルで資源大国に

 

現在は、三菱マテリアル中央研究所の都市資源リサイクル研究部に属しています。同研究部では、レアメタルやフッ素などのリサイクル、また環境保全のために必要な前処理技術や、革新的な湿式・乾式化学反応プロセスの開発に挑戦しています。

 

そのキーワードは都市鉱山です。都市鉱山とは、都市で大量廃棄されるスマホや家電製品の中に存在する有用資源のことで、これらレアメタルをリサイクルさせる研究をしているのです。そのほか、例えば、リチウム電池の処理、リサイクルの研究を行っています。ゆくゆくは都市鉱山を有効活用した資源大国ニッポンを目指したいですね。

 

日本に資源はないとよく言われますが、実は白金、銀、レアメタルのインジウムなどの日本の都市鉱山の保有するストックは世界の消費平均を越えていると言われています。都市鉱山の専門家によれば、この都市鉱山を活用すれば、資源大国と呼ばれるにふさわしいポテンシャルを持っているということ。それが近年の都市鉱山研究でわかってきたのです。

 

この業界に興味がわいたら/BookGuide

『レアメタル超入門』

中村繁夫(幻冬舎新書)

近年盛んに資源危機が叫ばれるレアメタル(希少金属)資源についての入門書。タンタルやニオブ、コバルトなど携帯電話やデジカメの小型化に不可欠であるが、資源は局在している。商社の資源部門でレアメタル資源の日本の草分けである著者が、各国の資源争奪状況や日本の置かれている状況について述べ警鐘を鳴らしています。


運営:リベルタス・コンサルティング

 (協力:河合塾)

 

 

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