この仕事をするならこんな学問が必要だ<印刷業界編>

厚さわずか0.76ミリのカード1枚に先端テクノロジーが詰まっている ~カード社会を支える印刷技術

大日本印刷株式会社

情報イノベーション事業部 C&Iセンターマーケティング・決済プラットフォーム本部 

土屋輝直さん

※2017年掲載。所属・肩書は取材時のものです。

第4回 スマートフォンでの非接触IC決済ビジネスがスタート!

DNPでは、現在、カードに次ぐ決済ビジネスを展開しています。

 

2008年頃から、海外のスマートフォンに「NFC」(Near Field Communication 近距離無線通信の国際規格)という、ICカードに組み込まれているのとほぼ同じチップが組み込まれるようになりました。そしてこのチップにカード情報を「発行」すると、スマートフォンをかざして電車の改札を通ったり、コンビニエンスストアで買い物をしたりできるようになります。この技術の登場により、カードの決済機能はスマートフォンに移行し、カードの発行枚数が減ることが予想されました。そこでDNPでは、4年前から先行投資として、スマートフォンによる決済サービスの技術開発を始めました。

 

プラスチックのカードは、工場の厳重なセキュリティの下で「発行」されますが、スマートフォンの場合は個人がスマートフォン上で手続きをすると、通信によってサーバーからカードが「発行」されることになります。このとき新たに、セキュリティのための鍵(暗号)の管理技術や、ネットワーク・サーバーシステムとその運用技術が必要になります。

 

開発プロジェクトを立ち上げた当初は、スマートフォン決済が普及するかどうか不透明でしたが、2016年10月25日、Apple Payが日本に上陸しました。Apple Payの中には、DNPが提供する技術も入っています。2016年の12月13日にはAndroid Payもスタートしました。今、DNPは、多くのカード発行会社からモバイル決済関連の新しいビジネスのお話をいただいています。

 

さらに、これまで企業と顧客の接点はカードやメールなど分散していましたが、今後全てスマートフォンに集約される流れがあります。DNPの決済の技術は、その核となると期待しています。

 

カード開発には大学で何を学んだ人が携わっているのか

 

以上のようなカードの研究開発を大学の学問との関連でみると、ICの実装には電気電子系出身者が、加工プロセスに材料工学系出身者が携わっているケースが多くはありますが、大学で学んだ分野と仕事が厳密に対応しているわけではありません。もう少し広い枠で技術系人材を採用し、ICカード部門に配属されたら、仕事をしながら仕事に必要な知識や技能を学んでいくのです。

 

情報工学系については、組み込みソフトウエアを学んできた人がICチップのOSやアプリケーション開発に携わっています。とはいえ、カードのOSはニッチな分野なので、大学で学んでくる人はいません。しかし、情報工学の基礎があれば、OJTで技術を修得できます。こうしたニッチな技術は、大学ではなく企業がそれぞれ持っているものなのです。

 

メイドインジャパンの品質を支える信頼性工学は統計学的な分野で、機械系の学部学科の、1、2年生で学ぶと思います。しかしその後学ぶことが少ないため、忘れている人が多いようです。

 

私自身は、大学の学部では生産機械を学び、大学院では、知能機械システムを研究していました。

 

入社後は、生産技術の研究所に配属され、約12年間、DNPの生産技術全般について研究していました。その後、ICカードの技術部門に約6年半勤務しました。配属された当初は、私にとって新しい分野がたくさんあり、社内の研修、本を購入しての自学自習もしつつ、仕事を通じて修得しました。これは私に限ったことではなく、皆、同じようにして学んでいます。

 

スマートフォン決済のような、新しい事業を立ち上げたり新しい製品を開発したりする場合は、必要な人材をいろいろな部署から集めて、チームを立ち上げています。

 

運営:リベルタス・コンサルティング

 (協力:河合塾)

 

 

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