「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

諸外国における人材育成分野の産学連携取組事例

経済産業省大学連携推進室 宮本岩男室長
(第4回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

海外では産学連携を通じて、どのような形で博士人材の教育あるいは活用がされているかについて紹介します。

 

◆フランス
フランスにおいては、博士課程の学生が海外企業に流出しないようにという観点が強く、自国の博士の学生を、国内の企業・研究機関に就職することを促進するような取り組みを行っています。政府の奨励金の形の支援もあり、年間約1300人の博士課程の学生を、国内の企業・研究機関で雇用して、研究開発に携われるようにすることで、国内の企業・研究機関への就職率が非常に高くなっています。

◆アメリカ
米国については、政府の取り組みはあまり見えてはきませんでしたが、一般的な産学連携のあり方として、学生の企業での就業体験に単位を認めることなどで、就業体験を促進しています。そのような、インターンシップ、CO-OP教育の結果、博士課程も含めて、多くの学生が企業に就職していることがわかりました。

◆イギリス
英国には、博士や修士の修了者を、6カ月から3年間、企業に派遣して、彼らの専門分野の知見を、企業の課題解決に役立ててもらおうという取り組みがあります。それを行うために、KTP(Knowledge Transfer Partnership)という制度の中で、KTPの事務局が共同研究先の企業を探し、マッチングを行っています。その結果、多くの博士、修士修了者が実際にそれらの企業に就職することにつながっています。この取り組みに対して政府助成も行われているようです。

◆ドイツ
ドイツでは、フラウンホーファーのような研究機関が大きな役割を果たしているようです。フラウンホーファー研究所の所長等は、大学教員を兼務しているため、多くの学生が研究所に出入りし、そこで企業との共同研究を行っています。実際にフラウンホーファー研究所には、研究に携わる2万2000人ぐらいの内、6400人ぐらいは学生だということです。その結果として、多くの博士取得者が産業界で活躍しています。

◆韓国
最後に韓国の例です。韓国には、少し変わった取り組みがあります。法律に基づき、企業と大学が契約を結び、企業が大学に学科を設置しています。「採用条件型学科」と「再教育型学科」という2つのタイプがあります。「採用条件型学科」というのは、企業が大学の教育内容に要望を出す代わりに、採用保証をする。つまり、企業内大学のようなものです。もう一つは、企業の技術者の再教育を、大学のカリキュラムを使いながら行うというものです。「採用条件型学科」では年間約1000人、「再教育型学科」では約1万1000人が学んでいます。

下図は、「採用条件型学科」の設置状況です。どのような大学とどのような企業が契約しているかがわかります。下半分の「企業・機関」の欄に「振興院」とついた機関がならんでいますが、これは、中小企業が資金・規模等の面で大学と一対一の関係を結べないときに、介在する第三者機関で、多くの中小企業を束ね、大学と契約しています。

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以上、諸外国の様々な事例を報告させていただきました。
<まとめ>

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