この仕事をするならこんな学問が必要だ<IT業界/基幹情報システムサービス>

あらゆるモノがインターネットにつながるM2M/IoT社会到来~IT業界を支えるデータサイエンティスト、システムエンジニアの必要な知識とは

阪田史郎先生 元NEC研究所所長/元千葉大学 工学部 情報画像工学科

※IoTはInternet of Things=モノのインターネット、M2MはMachine-to-Machine=(人の介在なしの)機械同士の情報のやりとりの略です。

千葉大学の阪田先生は、元NEC、大学ではM2M/IoT、最先端ITの専門家です。M2M/IoTは、かつて2012年頃までユビキタスネットワーク呼ばれた技術と同じ概念で、当時はユビキタスネットワーク社会を実現することがIT業界の大きな目標でした。そもそもユビキタスネットワーク社会って何?ということから始まり、IT業界の可能性、IT業界の人気のSE(システムエンジニア)、データサイエンティストってどんな仕事か、どこで学べばよいかについて伺いました。

 

おススメ本は阪田先生の近著 

『スッキリ!がってん!無線通信の本』


第1回 最先端IT、何でもネットワークにつながるM2M/IoTって何?

大学で、ユビキタスネットワーク社会の実現を目指して、ITの最先端技術、M2M/IoTを専門に研究しています。

 

2000年頃から2012年頃までよく使われた「ユビキタス」をご存知ですか。ユビキタスの基となったユビーク(ubique)は、ラテン語でuniqueの反対語でどこにでも、という意味です。宗教的な文脈で神の遍在をあらわすために用いられるため、ユビキタスネットワーク社会は、至る所に神が宿る便利な社会ということです。どこでも様々なネットワークを介してコンピュータとつながっている社会と言ったらいいでしょうか。例えば、家電や自動車、センサ、電子タグ、ロボットに加えてスマホ、ドローン、アイウオッチなどもそのよい実例です。

 

さて、そういう新しいユビキタスネットワーク社会を実現するM2M/IoTとは何でしょう。

 

M2MはMachine-to-Machineの、IoTはInternet of Thingsの略です。従来のインターネットは人と人のコミュニケーションですが、これに対しM2M/IoTは、人を介さず機械同士があるいは、あらゆるモノがインターネットにつながることによって実現する仕組みの総称です。ユビキタスがどこでも(everywhere)ネットワークであったのに対し、IoTは何でも(everything)ネットワークということで概念は同じと言えます。

 

M2M/IoTの身近な例では、GPSを内蔵したペットが震災で助け出された例があります。あれはGPSいう位置を検出するセンサを介してモノがインターネットにつながった例ですね。大気中にセンサをばらまきCO2濃度を計測し、ネットワークでつなぐことによって地球温暖化の調査をした例もそうです。

 

いずれの場合も、M2M/IoTは、センサとセンサネットワークが重要なキーワードです。スマホもドローンも災害探索ロボットも、センサを内蔵しているからこそ、ネットワークとつながった多種多機能のサービスを発揮できるのです。スマートグリッドの中核となるスマートメータリングは、各家庭の電力量等を測定するスマートメータをセンサとしたM2M/IoTネットワークと言えます。

 

このようにM2M/IoTは、センサネットワークを介して、防犯・防災から災害発生時の救済援助、橋梁や建造物の崩壊予知、電力・水道・ガスなどのスマートメータリングやCO2・有毒物質のモニタリング、環境・省エネ、医療・介護、高齢者や児童の見守り、物流、農業への応用など私たちの生活の隅から隅まで役立つことが期待される技術なのです。

 

これを学べる大学の学問に何があるでしょう。情報系の情報ネットワークの学科ではセンサネットワークが学べます。知覚情報処理の学科でも、いろいろなセンシング技術が学べます。人工知能を学ぶ知能情報学の中の、探索・推論・アルゴリズム、機械学習、データマイニングの知識も欠かせません。また、ヒューマンインターフェイスが使いやすさのカギとなるので、感性情報学(感性情報処理)も必要になってきます。このようにM2M/IoTは、非常に幅広い分野に関与しています。あまり分野が幅広すぎて何に手を出したらいいかわからないくらいで、難しいですね。やはり学び方で大事なのは、視野と見識の広さ、洞察の深さと、これらに裏打ちされた先見力を養う姿勢ということになると思います。

 

興味がわいたら

『スッキリ!がってん!無線通信の本』

阪田史郎(電気書院)

高校の物理と数学の知識だけで無線の原理から応用までを理解できるようにわかりやすく書きました。無線通信のM2M/IoTへの応用についても最新の内容をできるだけ書いていますので、この分野を目指す人には役立つと思います。


『M2M無線ネットワーク技術と設計法 スマートグリッド・センサネットワーク・高速ワイヤレスが実現する未来ICT』

阪田史郎(科学情報出版)

専門書です。M2M/IoTは今後30年間、ICT分野で最も高い成長率で、最も激しい技術革新を起し、最も大きな市場を生み出すと言われています。そのM2M/IoTを実現するための無線ネットワークの種類、特徴、最先端技術などを詳しく解説。阪田研究室の研究成果も紹介しています。


『日経サイエンス』

日経サイエンス社(雑誌)

理工学部の学生であれば時々興味が持てるような記事が掲載されます。


『数理科学』

サイエンス社(雑誌)

高校の内容を超える記事が多いですが、数学に自信のある高校生には興味が持てる記事が時々掲載されます。


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