大学就活事情

~大学の学部・学科選びは、どう仕事につながるのか

Vol.2 企業の人材ニーズが理系就職の有利・不利を決める

文系は学んだ分野に有利・不利なし

専門知識よりポテンシャルや

バイタリティが評価される文系採用 

インターンシップ後の就活は、まず文系は、インターンシップの結果、企業が採用したいと考える学生については、「飲み会」などと称して頻繁に呼び出されるなど、囲い込みが始まるケースもあります。しかし、そうした学生も、広報活動解禁の3月になると、就活サイト等を通じて他の企業にもエントリーします。「プレエントリーする企業は、2〜3年前は100社程度でしたが、雇用情勢が好転したことと、就活期間が以前より短くなったため、現在は、就活サイトで50~60社にプレエントリーし、その後20社程度の企業に本格的にエントリー、順調な学生は10社程度の面接に行き、3社程度から内定をもらうという流れです」(東さん)。

 

株式会社学情 東京企画営業部 本部長 新卒採用ディビジョン ゼネラルマネージャー 歌津智義さん
株式会社学情 東京企画営業部 本部長 新卒採用ディビジョン ゼネラルマネージャー 歌津智義さん

なお、プレエントリーとは就活サイトや企業のホームページからのエントリーで、エントリーすると企業から資料が送付され、その書類を提出すると本エントリーとなります。

 

「インターンシップに参加すれば内定が出るわけではありませんが、インターンシップに参加した学生はその企業にエントリーするケースが多いため、その中の優秀な学生が採用につながるケースも出ています」(歌津さん)。

 

次に、企業は何を重視して、学生を採用しているのでしょうか。

 

これまで、文系学生の採用は、学部・学科を問わない総合職・一般職などコース別の一括採用で、大学で修める学業ではなく、アルバイトなど学業外の活動が評価される傾向にありました。しかし東さんは「3年ほど前から大手企業を中心に、文系・理系を問わず、面接で大学での学びについて質問する企業や成績表を提出させる企業が増えています」と話します。

 

これは、採用活動の解禁を後ろ倒しにする流れと連動したもので、産業界が、学生が学業を修める環境を整えようという趣旨に基づいた動きです。しかし歌津さんは「見るのは成績であって、専門分野に関する知識や技能ではありません」と指摘します。「例えば経済学部の学生の場合、3年生の段階で経済学に詳しいわけではありませんし、面接者自身に経済学の知見がなければ、学生に質問して評価することはできません。将来専門職採用が進めば状況が変わるかもしれませんが、企業が総合職・一般職として一括採用している現状では、採用の際に、学んだ分野による有利不利の影響はほとんどないでしょう」。

 

さらに身も蓋もない話をしてしまえば、歌津さんは「同じ大学や学部でも一般入試で入学した学生とAO入試や推薦入試で入学した学生との学力差が大きいため、企業は大学名ではなく、高校や中学の名前を見てポテンシャルを測ることもあります」と言います。文系を中心に、専門科目の成績よりバイタリティなど基礎的・汎用的能力を重視する傾向も従来と変わらず、「企業は経済学部や経営学部の男子を採用したいと思っていますが、面接をすると文学部の女子のほうが成績もよいし元気もよいので、女子に内定を出すという図式もよく見られます。

 

また、根拠が妥当かどうかは別にして、特に男子は、文学部より経済学部や経営学部の学生のほうが、交渉や見積もりに必要な“計算”ができると考える企業もあります。財務や会計、マーケティングといった企業で必要と思われる知識やスキルも、学部卒程度では専門性が低いため、大学で学んだかどうかより、実際に使用する際に学んで使うことができるポテンシャルが評価されます」(東さん)。

 

ただし、大手企業の場合、例えば「早稲田大学の政治経済学部のどのゼミの学生はしっかり勉強してきている」と把握しているケースや、ゼミに入っていなかった学生が敬遠されるケースもあるといい、大学時代に厳しいゼミに入って学業に力を入れることは、就職面でも意義があります。

 

理系は、IT・建設業界が人手不足、

化学・バイオは供給過剰 

一方理系は、広報活動が解禁される前の2月には、水面下でエントリーして、就職先が決まる学生も多くあります。企業だけでなく大学や学生も、4年生の6月には卒業研究に取り組みたいため、3年生の3月までに就職活動を終えることを望む傾向があります。

 

また、理系のかつての就職は、主にメーカーが大学枠を設け、10人枠があれば、必ずその人数の推薦された学生が採用されていました。しかし7〜8年前からは大学推薦を得ても必ずしも採用されなくなり、現在早稲田大学を含め、自由応募が圧倒的に多くなっています。ただし、私立では、慶應義塾大学は推薦によって就職する学生がまだ多いようです。

 

とはいえ、企業側からすると、いわゆる日東駒専以上の大学であれば推薦制度自体はまだあり、特に重電系などの大手メーカーでは、推薦された学生の中から多く採用しています。

 

なお、国立の旧帝大クラスの大学院生の就職は、企業と研究室の産学連携が盛んなことから、推薦された学生が採用される慣例が残っています。

 

業界別では、人手不足の業界、すなわち需要(企業が採用したい人数)が供給(学生数)を上回る業界では、指針より早く内定を出して、学生を確保しています。「ごく一部のIT企業は、3年生の12月にエントリーを締め切り、1月に内定を出しています。それでも、超人気企業以外は、学生から内定を辞退されることがよくあります。超人気IT企業は初任給も非常に高く、都市銀行や総合商社も採用したがるような人材を確保できています」(東さん)。

 

もう1つ、土木建設業界も人手不足であり、広報活動をスタートした段階でほぼ全ての学生が内定を得ています。これは、建築学科や土木学科のある大学が少なく需要と供給がマッチしているのが理由です。また、人手不足は、東京オリンピックまでという見方がある一方、東日本大震災の復興や、都市のインフラの老朽化など、土木・建築関係の人材需要は当面続くという見方もあります。

 

機械や電気・電子も、機械や自動車メーカーだけでなく、メーカーを中心に、土木建築、食品など全ての業界で必要な分野であるため、学生の内定状況は好調です。さらに機械や電気・電子分野の知識は人材が不足するIT業界でも必要であり、機械や電気・電子系の学部・学科卒の学生の中にはIT業界への就職を希望する学生も多いから、希望する職種に就ける学生が多いようです。

 

材料工学は、どの大学にもある分野ではなく国立大学が中心のため学生数が少なく、修士課程修了者は、有機・無機・金属ともに、学生の多くは自分の専門に関連する職に就くことができます。

 

他方、同じ理工系でも化学系や農学系(バイオ系)の学部・学科は、学生の人数が多く、優秀な女子も多いのですが、残念ながらどの企業でも必要な分野ではなく、学生数(供給)に対し、採用人数(需要)は圧倒的に少なくなっています。ほかに、物理と数学も、産業界全体のニーズが少なく、専門分野に関連する企業や職業に就職するのは困難です。 

 

では、修士課程修了者を含め、化学系・農学系学科出身者で化学メーカーや食品メーカーなど関連する企業に就職できなかった学生はどこに就職しているのでしょうか。

 

その受け皿が、人材が不足しているIT関連企業のエンジニア、または多様な企業の営業職です。「よって、どの大学の就職実績をみてもIT関連に就職している学生が多くいます。理系の学生は、論理的思考力が評価され、金融、商社の営業や、外食産業の店長候補などとして採用したいというニーズも高いですね」(東さん)。 

 

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