大学就活事情

~大学の学部・学科選びは、どう仕事につながるのか

Vol.3 若年者の転職市場は、IT技術者か営業職が主戦場

第二新卒は、入社後、簡単に

ミスマッチと考えて転職

現在入社3年以内の離職率は、七五三と揶揄されるように、中卒7割、高卒5割、大卒3割と言われています。また、終身雇用制度が崩壊したとは言えないまでも、以前より転職に抵抗感がなくなっています。これは、最初から転職するつもりではなくても、誰にでも、転職を経験する可能性があることを意味しています。

 

業績不振によるリストラなどではなく、本人の意志による転職については、年代による層によって、理由や状況が異なります。

 

転職の最初の契機は、新卒入社後比較的早い時期に訪れ、5月病、研修中など様々なタイミングで、就職した会社や仕事とのミスマッチを感じ、転職を考える層が現れます。

 

「企業はそもそも総合職として採用するため、最初の配属先で、ある程度ミスマッチが起こるのは当然です。しかし理由をきくと人間関係を挙げる人も多く、重ねて何があったかを問うと、上司から叱られただけで人間関係がうまくいかないと考えて『今の会社を辞めたい』というケースもあります。全般的に、打たれ弱くなっている印象ですね」(東さん)。

 

「現代の若者は最初に就職した企業に一生勤めたいという気持ちは強いのですが、一生勤められる会社ではないという見切りも早い。転職が一般的でなかった時代は上司に叱られた程度では辞めませんでしたが、現在は転職に対する心理的ハードルが低くなり、『一社目は運が悪かった』くらいに考えるようです」(歌津さん)。その他「土日は必ず休みたい」など、勤務条件を転職理由に挙げる人もあります。

 

続いて、25歳から32歳程度までの「経験者転職」と呼ばれる層があり、仕事内容や勤務条件などに対する何らかの不満や、仕事の幅を拡げたいといったことが主な転職理由となります。転職先企業からは即戦力として期待され、全業種、全職種ともに、最も需要が高いのがこの層です。

 

3つめが35歳以上で、この層は、高度な専門性やマネジメント力を評価されての転職となります。さらにシニア層の転職がありますが、こちらはリストラや定年退職後の再就職等、社会的要因が高くなります。

 

キャリアチェンジできる

職種はITエンジニア

このうち、高校生・大学生が将来を考えるにあたって参考となる32歳程度までの転職についてみてみましょう。勤めていた企業で営業をしていた人物が営業する商品や対象となる人が異なる営業職に応募するといったケースもありますが、職種を変更する場合に多いのは、「ITエンジニアへの転向」です。これは、若年者であれば、IT技術がなくても、転職先の企業に研修制度があり、受け入れてもらうことができるためです。人材を育成する時間も資金もない中小企業でも、国のキャリアアップ助成金などを活用して研修費用に充てることができます。また、自社で研修を行う企業もありますが、ITエンジニアの研修を行う業者に委託すれば、育成の手間もかかりません。

 

株式会社学情 人材紹介事業部 兼 Re就活プロジェクト担当 ゼネラルマネージャー 渡邊弘基さん
株式会社学情 人材紹介事業部 兼 Re就活プロジェクト担当 ゼネラルマネージャー 渡邊弘基さん

「ITエンジニアの中で、未経験者にとって最もハードルが低く、入口となるのが、企業のサーバーなどの保守や運用監視を担うネットワークエンジニアで、この職種の求人は大量にあります。出身学部としては理系が喜ばれますが、文系でも採用してもらえます。未経験者の場合、ネットワークエンジニアの技術は最短で1カ月、長くて3カ月程度の研修で修得させ、その後、すぐに客先常駐して、業務に就くことになります」(渡邊さん)。

 

なお、転職先企業には、ネットワークエンジニアからシステムの設計や構築を行う、いわゆる上流工程を担うエンジニアになるためのステップを用意している企業もありますが、客先から保守や運用監視の仕事しか受注しておらず、キャリアアップできない企業もあります。「ITエンジニアとしては、給与等待遇面を考えても、上流の仕事ができるようになれるかどうかが非常に大切です。もちろん保守運用しか請け負っていない会社に転職しても、自分で勉強してより高度な技術を身につけ、再度転職することはできます。ただ、うっかりしていると転職できる年齢の30歳を超えてしまうので、注意が必要です」。

 

ネットワーク技術者より高度なスキルが必要で需要が高い人材としては、プログラマーやその上のSE、つまり設計開発の職種があります。これには未経験者が就くことはできず、実務経験が1、2年は必要で、転職先の企業が必要とするプログラミング言語を修得していることが条件となります。「最もニーズが高いのがWeb技術者です。現在、スマートフォンで家電を操作するなどのIoTや、スマートフォンで決済をするフィンテックなど、何でもインターネットとつなぐのが時流です。ゲームも、インターネットとつないで楽しみますよね。そしてこの傾向は、今後しばらく続くでしょう」(渡邊さん)。

 

また、渡邊さんは「裏を返せば、ITの知識を持っていれば、その知識を使える営業職に転向するなど、転職先は広がります。一方、特に総務や人事、広報など管理部門の中途採用募集はあまりなく、職種転向には限界があります」と話します。

 

なお、ITエンジニア以外で転向しやすい職種としては、渡邊さんは「土木建設現場の施工管理・現場監督(※)」と言います。「施工管理と現場監督はニーズが非常に高く、20代前半であれば、土木や建築学科を卒業していなくても採用してもらえます」。

 

ほかに中途採用募集が多いのは、専門性の高くない介護職や、外食産業の接客業などで、職種のバリエーションは決して多くありません。したがって、今後の社会、特に産業界動向にも着目した上で、将来のキャリアを考えることが大切です。

 

 

※施工管理の仕事には資格がなくても就けるが、施工監理技士の国家資格があり、1級を取得すると監理技術者講習を受けて、監理技術者資格者になることができる。監理技術者資格者になると、携われる工事の金額の規模が大きくなり、仕事の幅が広がる。

 

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