「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

中長期研究インターンシップの定着に向けて

北野正雄先生 (一社)産学協働イノベーション人材育成協議会 代表理事
/京都大学 副学長・理事 

(第4回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

産学協働イノベーション人材育成協議会は、中長期研究インターンシップを促進しようという目的で創設されました。

 

産業界から、イノベーション創出のための理工系人材の育成の要請があり、一方で大学側には、修士・博士修了者がアカデミアにとどまらず社会の様々な場で活躍できる状況を作りたいという思いがあります。特に博士課程の学生が企業の現場に出て中長期研究インターンシップを行うことが、産学のマッチングの促進や意識改革につながると考えられます。


しかし、多くの課題があります。中長期インターンシップは、従来は大学と企業がそれぞれ個対個で行ってきた個別の取り組みでした。大学としては、なかなか組織的に対応ができていません。企業の側でも、博士課程の学生に何をしてもらったらいいか定まりにくいということがありました。このような状況を受け、複数大学と複数企業からなる産学連携のコンソーシアムとして、この協議会が平成26年1月に設置されました。経済産業省事業として、平成25~27年の3カ年の補助金を受けて行っているものです。

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仕組みとしては、企業が中長期研究インターンシップの場を提供する。大学の方は学生を募って派遣する。その際マッチングが大事になりますので、オンラインシステム上に、学生の情報、企業側の情報を登録する。さらに、各大学にコーディネーターを配置し、そのウェブシステムのデータに基づいてマッチングを行う。協議会自体は、より良いシステムを検討していく。このような仕組みを構築しています。


あくまでもこのインターンシップというのは、就職に直結させるものではなく、博士課程の学生の教育を産学が協力して行っていくというものです。学生の方は自分の研究にとらわれないスキルの習得や視野の拡大、またアカデミアでなくても自分の才能を発揮できる可能性があるというキャリアパスに関する気づきを得てもらう。企業側は、博士人材とその萌芽的な研究領域に対する理解していただく。このような実質的な交流を行うために、中長期インターンシップは2カ月を目安に設定しています。

 

補助金は27年度で終了しますので、大学・企業ともにそれぞれ年会費を出していただき、この組織を支えています。当初12大学8企業でしたが、現在は11大学28企業が参画しています(下図)。現在入会を検討中の企業もたくさんありますが、今後この会員数をさらに増やすのが我々の重要な課題になります。

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マッチングは、大学に複数の企業が訪問して、インターンシップの概要を説明する交流会という形で頻繁に行っています。

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実際にインターンシップに派遣した例を紹介します。九州大学の数学専攻で代数を専門とする博士課程の学生が、電子楽器メーカーにインターンシップに行きました。下図が両者の実施後のコメントです。学生はかなりアカデミック志向が強かったのですが、数学を企業で生かすことができるということに気づいた。企業側の方も、基礎学問を使うことで技術ブレイクスルーの可能性があることに気づいたということで、非常に良い例だと思います。

指導教員も、一般的には学生が2カ月研究室を抜けることに対しては最初は否定的ですが、実際に学生がインターンシップから帰ってくると、非常にアクティブになっているなど、学生に変化が見られるため、良い評価を得ていることが多く見受けられます。

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登録学生数は約500名、マッチングの成功した累計件数42件と、まだ多いとは言い切れませんが、26年度に開始して、急速に伸びてきています。協議会としては、学生に、より多くの選択肢、より多くの業種・企業にインターンシップに行けるチャンスを確保するためにも、参加企業数を増やすことに現在取り組んでいます。


大学の方でも、博士課程を充実させ、従来のように研究だけではなく、いろいろなことに博士として取り組ませたいと思います。例えばリーディング大学院などはそのような試みですが、インターンシップはリーディング大学院でも非常に重要な要素になっています。その意味で、協議会の取り組みは、そのインフラとしての役割を担えると思っています。


また、場合によっては文理の壁を越えたインターンシップや、国際化という展開の可能性もあると思います。高校生が大学を選ぶ、大学生が企業を選ぶときに、外見で選ぶ風潮がありますが、中身を見て自分の適性も考えて選んでいくという流れに、我々の取り組みがつながっていくことも期待しています。

 

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