「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」

理工系人材育成に関する産学官行動計画(平成28年8月)

<内容>

はじめに

1.産業界のニーズと高等教育のマッチング方策、専門教育の充実

(1) 産業界のニーズの実態に係る調査に基づく需給のマッチング

(2) 産業界が求める理工系人材のスキルの見える化、採用活動における当該スキルの有無の評価

(3) 産業界のニーズを踏まえたカリキュラムの提供

2.産業界における博士人材の活躍の促進方策

(1) 産学連携による博士人材の育成の充実

 ① 産学共同研究を通じた人材育成の推進

 ② 中長期研究インターンシップの普及

 ③ 「博士課程教育リーディングプログラム」の促進

 ④ 新規分野の開拓における博士人材の活躍促進

(2) 研究開発プロジェクト等を通じた人材の育成

3.理工系人材の裾野拡大、初等中等教育の充実

(1) 実験や科学的な体験等を通じた理工系科目に対する学習意欲・関心の向上

(2) キャリアパスの見える化等を通じた職業・進路への興味・関心の喚起

 

はじめに

少子高齢化、資源・エネルギー問題など、様々な課題が存在する中、国際競争を勝ち抜くため、昨今イノベーション創出の必要性がますます高まっている。そのような中、理工系人材は、大学を含む研究機関、国際機関や行政、産業界などの様々な分野で活躍することが期待されており、特に産業界においては、イノベーション創出に欠くことができない存在として、人材需要が高まっている状況である。

 

しかしながら、海外企業では、イノベーション創出の担い手として理工系人材が多方面で活躍しているにもかかわらず、我が国においては、人材の流動化が進んでいないこともあり、産業界における能力と意欲に応じた適材適所での理工系人材の活躍促進が課題となっているため、理工系人材の質的充実・量的確保に向け、戦略的に人材育成に取り組んでいく必要がある。一方で、理工系人材が活躍する世界は、予想を超えた速度で革新が起こり、10年後、20年後には新しいビジネスや市場が誕生するなど、人材の需要も常に変わるものであることを念頭に置いて、基礎・基盤的な教育研究を礎にイノベーション創出につなげることができる人材育成を推進していくことも必要である。

 

産業界で活躍する理工系人材を戦略的に育成するため、「理工系人材育成に関する産学官円卓会議(以下「円卓会議」という)」において、これまで議論してきた「産業界のニーズと高等教育のマッチング方策、専門教育の充実」、「産業界における博士人材の活躍の促進方策」、「理工系人材の裾野拡大、初等中等教育の充実」の3つのテーマについて、現状課題の認識を共有した上で、産業界で求められている人材の育成や育成された人材の産業界における活躍の促進方策等として、「理工系人材育成に関する産学官行動計画(以下「行動計画」という)」を提示する。本行動計画は、平成28年度から重点的に着手すべき取組について、産学官それぞれに求められる役割や具体的な対応策をとりまとめたものである。今後、本行動計画の実効性を高めるため、政府及び円卓会議に参加する団体ごとにあらゆる機会を活用して関係者への周知を行うとともに、積極的に社会への広報を行うことを通じ、幅広い関係者が本行動計画を実行していくことが重要である。

 

本行動計画については、毎年度、政府及び円卓会議に参加する団体ごとにその取組の進捗状況をフォローアップし、円卓会議において確認した上で、必要に応じて改訂を行うとともに、更に実効性を高めるため、目指すべき指標を設定するなど、産学官において理工系人材育成の取組を推進する方策を検討・実行することとする。

 

 

1.産業界のニーズと高等教育のマッチング方策、専門教育の充実

<現状課題認識>

円卓会議において、例えば情報技術分野など人材が不足している産業分野があることや、産業界は、専門分野に特化した知識・技術だけでなく、基礎的知識や教養をも必要としており、特に企業が必要とする専門分野の基礎的知識については採用した学生に対して再教育している実態があることが示された。競争環境の変動に伴いニーズが変動しうる産業界と中長期の視点で人材育成を図ることが求められる高等教育機関ではそれぞれ人材育成に対する考え方が異なるものの、中小企業が必要とする分野も含め産業界のニーズをしっかり把握した上で、学士・修士・博士それぞれの段階においてマッチングを進めるような取組を強化していくことが必要であることが共有された。

このような現状を打開するため、具体的には以下のような対応策を産学官で進めていくことが必要である。

 

(1)産業界のニーズの実態に係る調査に基づく需給のマッチング

○産業界のニーズの実態に係る調査の実施、継続的な人材需給の状況に係るフォローアップの実施

今後の科学技術の進展により、既存の産業構造や技術分野の枠にとらわれず、新しいビジネスや市場が生み出されることによって産業界の人材ニーズは変化する可能性があり、正確な将来予測をすることは困難であるため、産業界のニーズと高等教育のマッチングを行うに当たっては、マクロな観点からの、需給の現状把握と中長期の将来予測を行う必要がある。

 

そのためには、産業界のニーズの実態に係る調査(産業界の人材ニーズ実態調査、就職状況調査等)を行い、大学等が産業界のニーズを把握することによって、需給のマッチングにつなげることができると考えられる。

 

このため、シンガポールやイギリスのように、産業界のニーズの実態に係る調査結果に基づき、理工系人材の質的充実・量的確保に向けた取組を継続的に検討することができるようなスキームを構築することが必要である。具体的には、円卓会議の下にワーキンググループを設置し、継続的に人材需給の状況についてフォローアップする。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【政府】

産業界のニーズの実態に係る調査(産業界の人材ニーズ実態調査、就職状況調査等)(以下「産業界ニーズ調査」という。)を継続的に実施し、産業界のニーズの実態について定点観測する。具体的には、円卓会議の下に「人材需給ワーキンググループ(仮称)」(以下「ワーキンググループ」という。)を設置し、当該調査結果の分析及び産業界の将来的なニーズに係る議論を行うとともに、当該分析に基づき、理工系人材の質的充実・量的確保に向けた対応策を検討する。年度末をめどに、円卓会議に結果を報告する。

 

【教育機関】

大学関係者による協議体(以下「大学協議体」という。)を大学関係団体等の協力によって設立し、産業界のニーズの実態や将来の産業の在り方も念頭においた中長期の人材需給予測を踏まえ、産業界とも意見交換をしながら、行動計画に掲げられた教育機関に求められる役割や対応策をより効果的に実行するための具体的な検討を行うとともに、各取組の進捗状況を確認・検証し、翌年度の取組に反映させる。

●産業界ニーズ調査を参考に、大学等は学生・生徒及びその保護者に対し、どのような分野が産業界のニーズが高いのか情報提供する。

 

【産業界】

産業界におけるニーズの実態等について情報共有するため、大学協議体に積極的に参加する。

●中長期的視点も含め産業界のニーズの具体化に取り組む(産業界・企業として、学生や学び直す社会人が大学等で修得することが必要と考える能力・専門的知識(スキル)の明示、経営トップによる自社ビジネスの将来像の提示等)とともに、大学等及び学生に対し情報発信を強化する。

 

<中長期的対応>

大学協議体において、産業界のニーズの実態や人材需給の動向を踏まえ、関係分野を有する大学が協議し、新たな教育プログラムの創設等の対応に協力して取り組むような機能を担う。

●ワーキンググループ等の議論を通じて、我が国が目指すべき産業構造を見据え、中長期的な視点から産学官による人材育成の方向性を合わせる。

 

○成長分野を支える数理・情報技術分野(セキュリティ、AI・ロボティクス、IoT、ビッグデータ分野等)等に係る産学協働した人材育成の取組の強化

 

○産業界が人材を必要とする分野に係る寄附講座の提供や奨学金の給付の検討

調査結果を踏まえ、産業界から大幅に人材が不足しているとの指摘のある成長分野を支える数理・情報技術分野(セキュリティ、AI・ロボティクス、IoT、ビッグデータ分野等)や中長期的に成長が期待される新たな分野等について、産学協働して実践的な教育を行うことにより、人材育成の取組を強化することが必要である。

 

また、国や大学において奨学金等により経済的負担の軽減策を図ることを通じ意欲と能力のある学生の誰もが大学・大学院等に進学できるようにするとともに、産業界が人材を必要としているにもかかわらず教育機会が失われつつある分野については、産業界が大学等に対する寄附講座の提供、その分野に進学する学生に対する奨学金の給付やその分野を修了して入社した学生への奨学金の返済支援を戦略的に行うことにより、人材確保につなげる。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●産業界において人材を必要としているにもかかわらず教育機会が失われつつあるなど人材が不足していると考える分野、成長を支える数理・情報技術分野や中長期的に成長が期待される新たな分野等について、大学等における実践的な教育への参画を促進するとともに、寄附講座の提供、その分野に進学する学生への奨学金の給付やその分野を修了して入社した学生への奨学金の返済支援を含め、能力や専門的知識もいかした適切な採用・配置・処遇等を戦略的に進めることなどを通じ、人材育成・確保に取り組む。

●特に、数理・情報技術分野については、様々な産業分野が抱える課題の解決に大きく貢献することが期待できることから、講師・研究員の派遣や教材の提供などを通じ、実践的な教育に積極的に参画する。

●博士課程学生からポストドクター等の若手人材に対し、各々の専門性を有しながら、産業界が求めるスキルを獲得し、産業界を含む多様なキャリアを実現するため、研修プログラムの開発・実施について、大学等と連携して取り組む。

 

【教育機関】

人材が不足していると考える分野、成長を支える数理・情報技術分野や中長期的に成長が期待される新たな分野等の人材育成について、産業界ニーズ調査結果や政府の動向も勘案しつつ、各自の特色を踏まえた対応を検討・実行する。

●様々な産業分野や学問分野において数理的思考力や情報技術による貢献が期待されていることから、文理を超えて数理的思考力の修得を促進するとともに、医療・農業・経営・公共政策等の他分野と数理・情報を融合した教育研究を行うことにより、産業高度化や経営力強化等の社会的課題を解決できる能力の修得を促進する。また、数理・情報分野の専門的知識や最先端の技術の修得に当たっては、実践的な教育を行う産学連携ネットワークの構築や社会人の学び直しを含めた産学協働による短期集中型プログラム(集中開講の履修証明プログラムなど)の提供等を促進する。

●大学・大学院等への進学意欲を持つ優秀な学生等が経済的な不安を抱えることなく見通しをもって進学できるようにするため、奨学金等の経済的な支援の充実に取り組む。

●高等専門学校において、早期からの専門教育が効果的とされる情報セキュリティの教育プログラムの開発・実習環境の整備や、医療・農業等他分野における実際の課題を踏まえ、AI・ロボティクス等を社会に実装する教育の展開など、今後の情報技術分野における実践的技術者を養成する教育の充実に取り組む。

 

【政府】

●産業界ニーズ調査結果を踏まえ、人材が不足していると考える分野、成長を支える数理・情報技術分野や中長期的に成長が期待される新たな分野等について、実践的な教育を推進する政策を検討・実行する。まずは、喫緊の課題となっている数理・情報活用能力を備えた人材育成・確保について、初等中等教育・高等教育段階から研究者レベルまで包括的に取り組む。特に高等教育段階については、データ解析やプログラミング等の基本的知識を持ち、数理的思考力やビッグデータ・AI等の基盤技術を新しい課題の発見・解決に活用できる人材の育成を促進するため、大学等における数理・情報教育を強化する。

●意欲と能力のある学生等が、経済的理由により進学等を断念することがないよう、安心して学ぶことができる環境を整備するため、大学等奨学金事業等の充実を図る。

●博士課程学生からポストドクター等の若手人材に対し、各々の専門性を有しながら、産業界が求めるデータサイエンス等のスキルを獲得し、産業界を含む多様なキャリアを実現するため、産業界と大学等が連携して研修プログラムの開発・実施する取組を支援する。

 

(2)産業界が求める理工系人材のスキルの見える化、採用活動における当該スキルの有無の評価

○産業界が求める理工系人材のスキルの見える化、産業界の採用活動における当該スキルの有無の評価の強化

産業界が理工系人材に求めるスキルを見える化することにより、学生の学業に対するインセンティブが増大し、学生の履修行動が変わることにつながると考えられる。

 

具体的には、産業界が分野ごとに必要とする理工系人材が有すべきスキルを見える化し、学生に必要な科目の履修を促進する。また、産業界の採用活動における当該スキルの評価基準を明確にするとともに、学士・修士・博士それぞれの段階における学生のスキルの見える化を行うことにより、スキルの有無の評価を強化する。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●大学等や学生に対し、理工系人材に求めるスキルを具体的に提示する。

●採用活動において、当該スキルの有無の評価を強化する。なお、スキルの有無の評価に当たっては、履修履歴(成績証明書等)及び履修証明について一層の活用を検討するとともに、資格試験の活用等を引き続き進める。

 

【教育機関】

●大学教育には、専門的知識及び最先端の技術と、その修得した知識・技術を応用して他分野の学問や企業の課題を発見・解決する能力の双方を育成する体系的なカリキュラムが必要であるため、通常の学位プログラムに加え、産学協働による短期集中型プログラム(集中開講の履修証明プログラムなど)等の提供を促進する。

●産業界等との間で育成すべき人材像を共有し、「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)、「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)を定めるとともに、学生が体系的な学修を進められるよう、ナンバリング(※1)やカリキュラムマップ(※2)等により、カリキュラムの順次性の明確化を図る。

●MOOC等のICTを活用した教育について、社会的ニーズの高い分野から、実効性の高い教育プログラムを設けることで、学生のスキル修得に役立たせる。

 

【政府】

●学生が就職を希望する業種ごとに、産業界が学生に求めるスキルを簡単に把握することができるシステム(以下「スキルの見える化システム」という。)を構築する。まずは、理系女性を対象に、スキルの見える化システムの開発を行う(※3)。

 

<中長期的対応>

●スキルの見える化システムが、社会インフラとして就職活動に活用されるよう改善を行う。

 

※1 ナンバリング・・・授業科目に適切な番号を付し分類することで、学修の段階や順序等を表し、教育課程の体系性を明示する仕組み。

※2 カリキュラムマップ・・・学生に身につけさせる知識・能力と授業科目との間の対応関係を示し、体系的な履修を促す体系図。

※3 平成28年度「理系女性活躍促進支援事業」(経済産業省)を活用。

 

(3)産業界のニーズを踏まえたカリキュラムの提供

○教養教育・専門教育の基礎となる教育の充実、分野横断的な教育プログラムの提供、研究室・専攻・大学の枠を超えた人材・教育交流等の取組による人材育成の推進

 

○実践的な内容・方法による授業の提供、地域若しくは産業分野の特性をいかした大学等と産業界との間で対話の場の設定等を促進

 

○大学等における社会人の学び直しの促進

社会では様々な分野の課題が複雑に絡みあった事案に直面する機会や専門分野を超えてプロジェクトに参加することが多々あるため、特化した専門分野に偏ることなく、教養教育、数学や物理、情報などの基盤となる分野の基礎教育の充実、文理を超えた分野横断的な教育プログラムの提供、研究室・専攻・大学・機関の枠を超えた人材・教育交流等を促進すべきと考えられる。また、MOOC等のICTを活用して教育内容を発信する取組を促進し、産業界及び大学における教育プログラムの補完や社会人の学び直しツールとして活用することも有効と考えられる。

 

専門分野の枠を超えた俯瞰的な視点を持ち、修得した知識・技術を社会に応用できる実践的・専門的な能力を育成するため、実践的な内容・方法による授業の提供(産業界から講師を派遣・登用、PBL、企業の実例を用いた演習、インターンシップ(有給インターンシップを含む)等)等を促進する。

 

産業界のニーズを大学等に共有するためには、地域若しくは産業分野の特性をいかした企業と大学等との対話の場(以下「産学対話の場」という。)の設定、産学連携を積極的に促進することも有効である。

 

高度人材の育成に向けた専門教育や、幅広い教養、リーダーシップ、新しい価値を創造する能力、職業実践的な知識やネットワーク構築を目的として、大学等における社会人の学び直しを促進する。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●インターンシップ学生を受け入れ、学生への学習機会の提供に協力する。特に、産学協働による人材育成、キャリア教育の推進の観点から、インターンシップの枠組みを拡大する。

●職員の知識の更新、能力の向上、他企業の職員とのネットワーク構築を図るため、大学等の実践的・専門的プログラムに職員を派遣することや企業における実例を教材として大学に情報提供することを検討する。

●地域若しくは産業分野ごとに産学対話の場を設定するなどにより、好事例の発信等を積極的に行う。例えば、大学関係者との意見交換のほか、学生が、大学で学んだ能力や専門的知識を活用して企業が抱える具体的問題の解決策を検討するような事例も考えられる。

 

【教育機関】

●社会人基礎力の育成を含む教養教育、数学、物理学、情報学や統計学などの専門教育の基盤となる分野の基礎教育の充実、文理を超えた分野横断的な教育プログラムの提供、研究室・専攻・大学・機関の枠を超えた人材・教育交流等の推進に向けた対応を検討する。

●大学協議体における産業界との定期的な意見交換を踏まえた検討により、各大学はカリキュラムの改善などの対応を検討・実施する。

●MOOC等のICTを活用した教育の積極的な導入、PBL、企業の実例を用いた演習や実務家の活用などにより、教育方法の質的転換を図る。

●学生の年次や専門分野を勘案し、単位化、中長期、有給などを含め、学生にとって教育効果の高いインターンシップの提供に取り組む。また、各大学において、学生のインターンシップを仲介する人材(キャリア教育支援コーディネーター等)の配置を促進し、地域の産業界との連携強化を図る。

●社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的プログラムの充実を検討するとともに、その開講に当たっては、社会人が受講しやすい工夫を設けることとする。また、他大学等との連携・協働による相互の補完も必要であるため、国内大学間での教育コンテンツの互換性や教養科目の標準化に向けた検討を行う。

●地域若しくは産業分野ごとに産学対話の場を設定するなどにより、好事例の発信等を積極的に行う。例えば、産業界との意見交換のほか、学生が、大学で学んだ能力・専門的知識を活用して企業が抱える具体的問題の解決策を検討するような事例も考えられる。

●MOOC等のICTを活用した教育について、社会的ニーズの高い分野から、実効性の高い教育プログラムを設けることで、産業界における研修や社会人の学び直し等に役立たせる。

 

【政府】

●理工系学部の専門教育の基礎となる数理・情報教育の標準カリキュラムの整備に取り組む。

●PBLなどのアクティブラーニング等を実施する大学の取組を促進する。

●各大学等のインターンシップ実施に関するデータを継続的に収集・分析・公表するとともに、インターンシップの好事例や実施の際の留意点等を掲載した「インターンシップガイド(仮称)」を作成することにより、教育効果の高い多様なインターンシップを促進する。

●地域若しくは産業分野ごとに産学対話の場の設定について、好事例の発信等により促進する。

●社会人や産業界のニーズに応じた大学等の実践的・専門的プログラムを文部科学大臣が認定・奨励する仕組み(「職業実践力育成プログラム」(BP)認定制度)等を一層活用し、大学等における社会人対象プログラムの充実を図るとともに、学び直しによるキャリアアップや生産性向上に係る好事例をシンポジウム等で横展開することにより、社会人や産業界の学び直しに関する理解・関心を高める。

 

 

2.産業界における博士人材の活躍の促進方策

<現状課題認識>

博士人材は、大学を含む研究機関、国際機関や行政、産業界など様々な分野で活躍することが期待されているにもかかわらず、近年、博士課程(後期)修了後の進路が見通せない等の理由から、優秀な若者が博士課程(後期)に進学しなくなっている「博士離れ」の状況が懸念されており、このような状況は、我が国の研究開発力や国際競争力の低下をもたらしかねず、優秀な学生が希望を持って博士課程(後期)へ進学を決意できる環境をつくることが重要であるとの意見が示された。更に、リーダーに必要な能力が身についていない等の意見も示された。

 

博士人材に対しては、多様な進路を産学官一体となって広く描くことが重要である。このため、産学共同研究を通じて、科学技術と社会や産業界とのつながりを理解してもらう取組等が重要であることが指摘された。また、中長期研究インターンシップや「博士課程教育リーディングプログラム」等の先進的な取組の成果が見られつつあるが、産業界において博士人材が活躍するための取組の充実が必要であるということが共有された。

このような現状の課題を打開するため、具体的には以下のような対応策を産学官で進めていくことが必要である。

(1)産学連携による博士人材の育成の充実

円卓会議の議論において、博士人材の育成については産学共同研究や中長期研究インターンシップの推進や「博士課程教育リーディングプログラム」が有効ということで意見が一致した。一方で、現状においては、産学共同研究における学生の関わりが弱く、産学共同研究を通じた人材育成が十分になされていないことから、以下の対応策が有効である。

 

①産学共同研究を通じた人材育成の推進

○教員や博士課程(後期)学生の人件費等を含めた産学共同研究費の拠出の検討、大学における秘密情報の保護ハンドブックの作成

企業が我が国の大学等に拠出する1件当たりの産学共同研究費はその8割以上が300万円未満であるとともに、いつまでにどのような成果を出すのかが曖昧、といった背景もあり、現在の産学共同研究は、本業に支障が出ない範囲での小規模な取組にとどまっているものが多数を占めると考えられる。

 

本格的な産学共同研究の実施に向けては、産学共同研究に携わる教員の時間を確保し、一定期間に成果を出すための大学側のコミットメントを高めることが必要であることから、例えば、クロスアポイントメント制度(※4)を活用することが有効である。

 

※4  研究者等が、大学、研究開発法人、企業等のそれぞれと雇用契約関係を結び、給与支払をいずれかの機関に片寄せする「在籍型出向」形態を利用することにより、各機関の責任の下で業務を行うことができる制度である。制度の積極的な導入・活用を進めるため、厚労省及び財務省等の制度官庁との協議を経て、経済産業省、文部科学省で、医療保険・年金や退職金等の取扱い方法を「クロスアポイントメント制度の基本的枠組と留意点」として、平成26年12月26日にとりまとめた。平成27年11月時点でクロスアポイントメント制度の適用は125件であるが、大学教員の人件費を民間企業が負担するような事例は極めて少ない状況である。

 

 

大学と企業の「組織」対「組織」による本格的な産学共同研究を拡大するとともに、そうした場に、博士課程(後期)の学生を一人前の研究者として参画させることは、高い教育効果を生み出すものと期待される。その際、企業と大学における個別の契約の中で、当該共同研究に参画する学生に対して人件費を支援するなど充実した経済的報酬を措置していくことも重要である。なお、営業秘密や学生の発明の取扱いが困難という懸念があるが、海外では、企業は学生と雇用契約を結ぶことで営業秘密等について適切に管理されていると考えられ、学生が産学共同研究に参加しているケースが多い。

 

我が国においても、営業秘密等について、①「大学における営業秘密管理指針作成のためのガイドライン」を改廃し、大学が学生と雇用契約を締結する等によって企業等との共同研究で取り扱う秘密情報を適切に管理することを明記した「大学における秘密情報の保護ハンドブック」の作成や②産学共同研究契約における共同研究費への大学が学生を雇用する経費の計上を通じて、適切に管理することが有効である。

 

また、産学共同研究を行う企業が、大学が学生を雇用する経費を含めた共同研究費を措置することにより、学生に対する処遇を充実させることは、優秀な学生を国内外から我が国の大学院へ引き付けることにもつながると考えられる。

 

これらの取組を通じ、産業界は個々の博士人材の能力を見極めた上で、従来型の雇用慣行にとらわれることなく、採用や能力に応じ、専門性もいかした適切な配置・処遇等を進めていくことが有効である。

 

なお、学生の就職活動等に活用できるよう産学共同研究に参画した実績や成果を提示できる方法を工夫することも一案である。

 

ポスドクについても、人材の多くが有期雇用等の不安定な状態にあり、産業界への流動が進んでいないことから、産学共同研究への参加を一層促進する必要がある。

 

更に基礎研究の成果が実践的な応用研究につながるものであることを踏まえ、応用研究とあわせて基礎研究についても産学連携により充実していくことを通じて、大学の産学連携機能の強化とともに、大学の教育力・研究力の向上を図るといった好循環を作り出していくことも重要である。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【政府】

●大学と大企業・中小・ベンチャー企業におけるクロスアポイントメント制度の活用を更に促進し、産学の人材交流を推進するとともに、企業が社内の優秀な人材に博士号を取得させる取組を推進するための方策を検討する。

●学生が産学共同研究に本格的に参加できるよう、「大学における営業秘密管理指針作成のためのガイドライン」を改廃し、大学が学生と雇用契約を締結する等によって企業等との共同研究で取り扱う秘密情報を適切に管理することを明記した「大学における秘密情報の保護ハンドブック」を作成し、その普及に取り組む。

●企業から大学等への産学共同研究に係る投資が促進されるための環境を整備することで、企業から大学等への投資を今後10年間で3倍に増やすことを目指し、学生の産学共同研究への参加機会を拡大する。

 

【教育機関】

●大学は、大学ごと又は大学間で連携して、産学による人材育成(学生を含む若手が主体性をもって産学共同研究に参画し、論文等を発表等)が可能な体制を構築するとともに、企業との個別の共同研究契約において、学生を雇用する経費を含めた共同研究費の獲得を促進し、学生に対し、労働時間に見合う給与を支給する。

●政府や円卓会議による提言等も踏まえ、産学共同研究に加えて、寄附、委託研究、クロスアポイントメント等も各大学の特性や実態に応じて組み合わせて活用することにより、円滑な人事交流を通じた人材育成に取り組む。

●本格的な産学共同研究への実施に向け、大学における産学連携活動の位置づけの向上や取組体制の強化等を通じて、企業から大学等への投資を今後10年間で3倍に増やすことを目指し、学生の産学共同研究への参加機会を拡大する。

 

【産業界】

●クロスアポイントメント制度を活用し、大学・公的研究機関からの研究者受入れ、企業から大学・公的研究機関への研究者派遣を実施する。

●本格的に産学共同研究に参加する大学教員、ポスドク及び学生に対し、共同研究費の中に大学が学生を雇用する経費を含めるなどの支援(企業による大学教員、ポスドク及び学生への投資)を行う。

●大学における産学連携活動の位置づけの向上や取組体制の強化等をトリガーとして、企業から大学等への投資を今後10年間で3倍に増やすことを目指す。

●多くの企業が、優秀な博士人材に門戸を開いている実態を更に社会に発信する。

●産学共同研究等を通して、個々の博士人材の能力を見極めた上で、博士人材の採用・配置・処遇等の見直しの検討を進めることなどにより、人材育成・確保に取り組む。

 

<中長期的対応>

●企業間、企業・大学間の共同研究を通じた人材交流を促進することにより、従来型の雇用慣行にとらわれることなく、優秀な人材の採用・登用促進を図り、人材の流動性を高めることを目指す。

●円卓会議は、産業界と大学による産学協働の取組の状況を把握し、更なる促進策を提案して連携を強めていくよう取り組む。また、大学と研究開発法人・大学共同利用機関等との連携促進策も提案する。

 

②中長期研究インターンシップの普及

○中長期研究インターンシップへの企業及び大学の更なる参加の促進

企業内の研究活動に博士人材を関わらせることで教育を行う中長期の研究インターンシップについては、教育効果が高く、産業界の評価も高いという点から推進することが有効である。

 

研究インターンシップのテーマについては、産学共同研究に至る以前のアイデア段階の未成熟なものにおいても気軽に進められ、また一部の分野においては企業と学生の距離が物理的に離れていても遠隔でインターンシップを実施できるようになっており、実際にインターンシップを実施した後に産学共同研究につながっていく事例も出てきている。そのため、産業界としても、オープンイノベーションのきっかけを見つける、敷居が低く産学連携を始めることができる、などのメリットが指摘されている。

 

「(一社)産学協働イノベーション人材育成協議会」(以下「協議会」という。)が行うインターンシップ事業には、多くの大学が参加しており、実績も出始めていることから、本事業への企業及び大学の更なる参加を促進していくことが有効である。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●オープンイノベーションのきっかけを見つけるという観点から、中長期研究インターンシップに関する政府、協議会を始めとした関係団体及び大学等の取組に積極的に参加する。

 

【教育機関】

●教育効果が高いという観点から、中長期研究インターンシップに関する政府、関係団体及び産業界の取組に積極的に参加するなど、産学官で連携するとともに、意識の高い学生の参加を促す。

 

【政府】

●本格的な産学共同研究を実施する機会の増大を図るという観点から、中長期研究インターンシップの有用性について、産業界及び教育機関への普及に努める。

●効果を上げ始めている中長期研究インターンシップの取組を発展させるため、産業界及び教育機関に幅広く周知・広報を行う。

 

③「博士課程教育リーディングプログラム」の促進

○「博士課程教育リーディングプログラム」における産学の協力の促進

産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成することを目的に平成23年度から開始された「博士課程教育リーディングプログラム」は、産業界からの講師・メンターの派遣・登用、長期インターンシップの受入れなど、多様な協力が積極的に行われている。本プログラムを始め、各大学院の取組に対して、引き続き、産業界からの協力が促進されることが有効と考えられる。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●各プログラムへの講師・メンターの派遣、長期インターンシップの受入れなどに引き続き積極的に協力する。

 

【教育機関】

●産学官連携の下、修士・博士5年一貫の研究科・専攻の枠を超えた教育プログラムの形成に引き続き取り組む。

●「博士課程教育リーディングプログラム」のように、産業界との密接な連携の下に研究科・専攻の枠を超えた教育プログラムを進め、一貫制の博士のコースのみならず、修士+博士コース(博士前期・後期制)も含めた充実を図る。

●多様な産学連携の方法を通じて、企業に進む博士課程修了者の道を更に広げる工夫の検討を進める。

 

【政府】

●各プログラムへの支援を引き続き行う。

●「博士課程教育リーディングプログラム」の取組や、修了者の活躍状況などを把握し、これらに係る広報に取り組む。

 

<中長期的対応>

【教育機関】

●支援期間終了後を見据え、プログラムの定着・発展に努める。

 

④新規分野の開拓における博士人材の活躍促進

○新規分野開拓における博士人材の活躍機会の促進

新産業を興すような分野の開拓においては、博士人材が活躍することが有効であることから、アントレプレナー教育を充実させるとともに、ベンチャー企業経営者と学生の交流等の機会を創出することが重要である。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●卓越研究員制度の活用等により、新規分野を開拓するような優秀な若手研究者に対し、安定かつ自立して研究を推進できるポストを用意し、新産業を興すような科学技術イノベーションを実現する若手研究者を育成・確保する環境を整備する。

 

【教育機関】

●卓越研究員制度の活用等により、新規分野を開拓するような優秀な若手研究者に対し、安定かつ自立して研究を推進できるポストを用意し、新産業を興すような科学技術イノベーションを実現する若手研究者を育成・確保する環境を整備する。

●特定の分野に拘泥することなく、分野横断的又は他の分野で活躍できる能力の育成に取り組む。

●起業家マインドを醸成するアントレプレナー教育や、起業家を目指す者や支援者の集う場等のネットワーク提供とあわせて、民間企業等と協働した課題解決や新事業の構想・実施、好事例の発信に取り組む。また、教員の事業化メソッドや起業家マインドの醸成を含めた産学連携に必要な能力の向上にも取り組む。

 

【政府】

●新規分野を開拓するような優秀な若手研究者が、安定かつ自立して研究を推進できる環境を実現し、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍し得る若手研究者の新たなキャリアパスを開拓するため、卓越研究員制度による若手研究者の挑戦の機会を更に拡充する。

●アントレプレナー教育の全国ネットワークの形成を進めるとともに、海外のベンチャー企業が集積する地域に挑戦意欲のある若手研究者を送り込むなど、多様な文化に触れる場を増やし、グローバルに活躍する人材の育成を支援する。

 

<中長期的対応>

●チャレンジしやすい社会の実現により、起業やベンチャー企業に対する社会的受容性や地位を向上させ、起業家マインドを持つ人材を拡大する。

 

(2)研究開発プロジェクト等を通じた人材の育成

○研究開発プロジェクト等を通じた人材育成の実施

中長期的なシナリオ及びその出口を見据え、学生にプロジェクトマネジメントやグローバル対応力等を身に付けさせるために、チャレンジングな性格を有する研究開発プロジェクトや、分野の枠を超えて横断的に取り組む研究開発プロジェクトの実施等を通じ、人材育成を図ることが有効である。(例:ImPACT、SIP)。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●革新的研究開発推進プログラム(ImPACT(※5))や戦略的イノベーション創造プログラム(SIP(※6))に限らず、産業界は、学生がプロジェクトマネジメントやグローバル対応力を身に付ける機会に参加するための協力を行う。

 

※5 ImPACT・・・産業や社会の在り方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進することを目的として創設されたプログラム(Impulsing PAradigm Change through disruptive Technologies Program)

 

※6 SIP・・・総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設するプログラム (Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program)

 

 

【教育機関】

●ImPACTやSIP等の大型研究プロジェクトにおいては、プロジェクトマネジメントに関する能力等を備えた人材育成の視点を盛り込み、修士・博士課程の学生やポスドクのRA(リサーチ・アシスタント)としての雇用も含め、積極的な参加を促す。大学院生をRAとして雇用する際には、給与水準を労働時間に見合うよう設定する。

 

【政府】

●理化学研究所AIPセンターにおいて、世界レベルの研究者を糾合し、研究開発と高度なデータサイエンス等の人材育成を一体的に行うとともに、卓越研究員制度や競争的資金の活用を含む若手の研究人材に対する支援の強化を図る。あわせて、優秀な博士課程の学生、ポストドクターなど研究者の更なる研鑽・活躍の場となる数理・情報科学分野の活用にも配慮した国際研究拠点の形成を推進し、データ利活用分野での専門人材の育成を加速する。

 

<中長期的対応>

●第5期科学技術基本計画のとおり、産学官が総力を挙げて研究開発及び社会実装を進めるSIPを強力に推進するとともに、ImPACTの更なる発展・展開を図ることにより、学生が大型研究プロジェクトに参加する機会の拡大を図る。

 

 

3.理工系人材の裾野拡大、初等中等教育の充実

<現状課題認識>

円卓会議において、初等中等教育は理工系人材の基礎となるものであり、極めて重要である等が共有された。また、次世代の理工系人材の裾野拡大は、産業界にとって、将来の競争力の確保という観点からも重要であるが、学校の授業や設備などでは必ずしも魅力を感じさせるのに十分でない、理科の得意な小学校教員や実験の際の人員、教員の最新知識が不足している、より多くの子供や女性に理工系の職業や進路への興味・関心を持ってもらうためキャリアパスを見える化する取組が必要である等の意見が示された。

 

学習指導要領に基づく学校における理数教育の実施に加え、大学や企業等による出前授業等やスーパーサイエンスハイスクール、スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール等の先進的な取組の成果が見られつつあるが、産学官が協働して、理工系人材の裾野の拡大、初等中等教育の充実のため、各種取組のより一層の充実が必要であること、理数教育の充実・先進的な取組によって知識を身に付けさせるだけでなく、これを活用して将来的に社会で活躍・貢献できるようにすることが重要であること等が共有された。

 

このような現状の課題を打開するため、具体的には以下のような対応策を産学官で進めていくことが必要である。

(1)実験や科学的な体験等を通じた理工系科目に対する学習意欲・関心の向上

○大学や企業等による理科実験教室、出前授業や教材開発(実験教材、DVD・オンライン教材等)等の科学技術の魅力を発信する取組の拡大

 

○大学や企業等が実施した小学生・中学生・高校生等を対象とする理科実験教室や出前授業等に係るノウハウやコンテンツ等の情報を共有する仕組みの検討

理工系の職業に関心を持たせるためには、初等中等教育段階において、理科の素養を備えた教員を増やし、実験等の体験的な学習活動の実施、最先端の研究内容、研究者・技術者や実験施設・設備に触れる機会を通して楽しさを感じさせることが必要であり、大学や企業等による理科実験教室、出前授業や教材開発(実験教材、DVD・オンライン教材等)等の科学技術の魅力を発信する取組の実施が有効であると考えられる。

 

現在も、大学や企業等において、小学生・中学生・高校生等を対象に理科実験教室や出前授業等に取り組んでいるが、個々に取り組んでいるため、各者が行った活動のノウハウの蓄積、コンテンツの共有や各取組内容の把握、各大学や企業、地域が連携した取組、需要と供給のマッチングがなされていない状況である。これらの情報の共有や、連携のための仕組みを検討することが必要であると考えられる。例えば、各教育委員会が大学や企業等と協力して土曜日の教育活動を実施する際、より効果的な理科教育の実施に向けて大学や企業等が組織的に連携して、ノウハウの蓄積やコンテンツ等の情報の共有を行うことにより、子供たちに充実した学習機会を提供することなどが考えられる。

 

また、初等中等教育段階において、目的意識を持った観察・実験を行うこと等により、自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を養うことや、高等学校情報科を始めとする情報教育、ICT活用の推進などが重要である。このため、現在も取り組まれている、理科教育設備整備の充実や理科観察実験アシスタントの活用、ICT環境整備の促進などのほか、例えば、大学において、理科・算数等の理系科目を指導する教員を対象とした研修講座を設けることも考えられる。

 

理系の科目を学ぶことの意義や有用性を実感する機会を持たせる観点から、学ぶ内容が実社会・実生活と関連していることや応用することで最先端の科学技術につながることを気付かせる教育内容とすること、ものづくりやプログラミング等のアウトプットの実感が得られる内容とすることも重要であると考えられる。

 

また、退職した教員や技術者などを学校支援ボランティアとして一層活用することも有効と考えられる。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●産業界において、大学や教育委員会等とも連携し、理科実験教室、出前授業や教材開発(実験教材、DVD・オンライン教材等)等の取組を一層推進するとともに、その実施結果をホームページで広報するなどにより、科学技術の魅力を発信する取組の拡大を図るとともに、大学等で行われる、特に意欲や突出した能力を有する小学生、中学生、高校生等の能力を更に伸ばすための取組に対し、必要なリソースの提供を含めて積極的に協力する。

 

【教育機関】

●大学等において、産業界や教育委員会等とも連携し、子供の理科・算数等の理系科目に対する興味・関心を高めるような理科実験教室、出前授業、教材開発(実験教材、DVD・オンライン教材等)の取組を一層推進するとともに、その実施結果や理系科目で学ぶ内容が実社会でどのように役立っているのかをホームページで広報するなどにより、科学技術の魅力を発信する取組を拡大する。また、突出した意欲や能力を有する小学生、中学生、高校生等に対し、その能力を更に伸ばすための取組を実施するとともに、工学教育について、中高生に対する教育プログラムを開発し、大学・企業などの研究者が指導に当たる。

●大学や教育委員会等が連携し、初等中等教育の理系科目を指導する教員を対象とした研修講座の開講を検討する。その際、産業界と連携して、理系科目で学ぶ内容が実社会で役立っている現場を体験する機会の提供も視野に入れる。

●理科教育においては、児童生徒が観察・実験などで実物に触れて探究的な学習を実施することが大切であることから、一人一人が実験装置を操作できるよう、理科教育施設・設備充実等の環境整備を図る。

●中学校や高等学校における進学の際の志望校選択、あるいは学部・学科の選択の段階においては、生徒の興味・関心や産業界の現状、将来の就職に配慮した進路指導の在り方について検討を進める。その際、中学校段階での進路指導においては、工業科・情報科等の高等学校を経て理工系人材としてのキャリアを選択することなども視野に入れた指導の在り方の検討も進める。

 

【政府】

●大学や企業等が個々に取り組んでいる小学生・中学生・高校生等を対象にした理科実験教室や出前授業等の活動のノウハウを蓄積、コンテンツの共有や各取組内容を情報共有し、地方公共団体の教育センターと教員養成系大学等を中心に、各大学や企業、教育委員会、地域が連携する仕組みを検討する。

●中学校、高等学校等において実施される科学部活動等の取組や、そこに在籍する教員の指導力向上のための取組、先進的な理数系教育を実施する高等学校等を指定し支援するスーパーサイエンスハイスクール、特に意欲・能力を有する高校生を対象に次世代の国際的科学技術人材の育成プログラムを実施する大学を支援するグローバルサイエンスキャンパス等の既存の取組に加え、特に意欲や突出した能力を有する小学生、中学生等の能力を更に伸ばすための取組を、産業界、大学、教育委員会等と連携して全国各地で推進する。

●教育機関においてボランティア人材を有効に活用できるよう、リタイアした技術者等を登録する学校支援のためのボランティア組織の設置を促進する。

●初等中等教育段階における観察・実験の充実を図るために、理科教育振興法に基づいた、理科教育設備の整備や観察・実験アシスタントの配置支援など、理数教育充実のための人的・物的の両面にわたる総合的な支援を引き続き推進する。

●次期学習指導要領改訂における理数教育に関しては、知識・技能、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力・人間性等の着実な育成を図るために、探究的な学習を充実させる方向で検討を引き続き進める。特に、高等学校においては、スーパーサイエンスハイスクールにおいて取り組まれている「課題研究」等の成果を踏まえつつ、数学と理科にわたる探究的科目として「理数探究基礎(仮称)」「理数探究(仮称)」を新たに設けることとし、引き続き中央教育審議会における検討を進める。

 

<中長期的対応>

●生徒自身が体験することで学習内容の有用性を理解するために、観察・実験を重視した教育内容の充実を図る。

 

(2)キャリアパスの見える化等を通じた職業・進路への興味・関心の喚起

○将来の職業と結び付いた学問分野を選択する意識を持たせるような仕組みの発展・充実

○キャリアパスの見える化等への企業及び大学等の更なる参加の促進

○子供の親を対象とした取組の促進

○理工系分野での女性の活躍促進

より多くの人が理工系の大学・職業を選択肢の一つとして認識し、興味関心に応じて選択が可能となるよう、

●将来の職業と結び付いた学問分野を選択する意識を持たせるような仕組み(スーパーサイエンスハイスクール、スーパー・プロフェッショナル・ハイスクールや大学や企業等と連携した授業の実施など)を発展させる必要があると考えられる。

●進路選択の参考になる身近な事例やロールモデルの提供、大学や企業の見学会の開催、就業体験や、社会で活躍している理工系人材のキャリアパスを見える化し、ウェブやイベント開催等を通じた継続的な情報発信などにより、理工系分野への興味・関心を喚起するための取組が有効であると考えられる。

●子供の理工系の進路選択に当たり、親から受ける影響が大きいことを踏まえ、大学や企業による、親を対象にした見学会、説明会の開催など、理工系の進路に対する理解を深めてもらう取組が考えられる。

●科学技術により、将来の変化を予測することが困難な時代に対応するとともに、社会を牽引する人材を育成するため、創造性を育む教育や、先進的な理数学習の機会の提供等を通じて、優れた素質を持つ児童生徒及び学生の才能を伸ばす取組を充実することが考えられる。

 

上記の取組については、特に、より多くの女性が理工系の大学・職業を目指せるようにする観点からも積極的に進める必要がある。また、進路選択の参考になる身近な事例・ロールモデルとして、仕事とライフイベントのバランスを保ちながら、多方面で活躍している女性研究者や女性技術者が増えていくことが有効であり、そのためには大学等における保育環境整備の推進等、両立を可能とする環境の整備が重要である。

 

アクションプラン

<短期的対応(2、3年以内)>

【産業界】

●産業界は、小学校、中学校、高等学校における将来の職業選択を意識した取組(企業見学会、イベント開催、業界の展示会や製品・サービス等の教材提供等)に積極的に参画するとともに、従業員に対し、これらの取組への親子参加を奨励(イベント等の推奨、参加費用の一部補助、休暇の付与等)する。

 

【教育機関】

●生徒が自分のキャリアを自律的に設計できるキャリアデザイン能力を身に付けるために、小学校、中学校、高等学校においては各学校段階のキャリア教育内容との接続を意識し、系統的なキャリア教育を行う工夫の検討を進める。

●大学等は、理工系分野における女子学生の比率が低いことを踏まえ、女子の理工系分野への進路選択を進める観点からも、小学校、中学校、高等学校等における将来の職業と結び付いた学問分野を選択する意識を持たせる取組に積極的に参画する。

●職業選択の参考となるインターンシップ等の職業体験の機会を拡大する。

●ロールモデルを示すことを通じて、分かりやすく将来展望をイメージさせることが重要であるため、産学が協力して、モデルとなるケースを発信する。特に、現場でいきいきと仕事に取り組んでいる女性や理工系の女性教員等の身近なロールモデルとなる方から理系の魅力やものづくりを目指したきっかけを聞くなどの進路選択の参考とする機会を積極的に設ける。

●大学等の理工系分野における教員の女性比率が低いため、積極的な募集活動やライフイベントとの両立を支援する取組を強化する等の環境整備を進め、女性比率向上を図る。

 

【政府】

●「理工チャレンジ」(内閣府ホームページ)等の広報媒体において、仕事とライフイベントを両立しながら活躍している理工系女性の姿を継続的に発信すること等により、女子中高生等の理工系分野への興味・関心を喚起する。特に、女子の理系学部への進学率向上(全国平均の約3倍)に大きな成果を上げているスーパーサイエンスハイスクールの取組を発展・充実させる。

●大学等と地域が連携した保育環境の整備や保育サービスの充実を図るとともに、女性の就労や社会参画につなげるため、学びを支援するモデル等を構築・普及する。

●産業界、大学、教育委員会等と連携し、小学生、中学生、高校生等が、身近なロールモデルから最先端の科学技術等に触れる機会を確保することで、将来の理工系分野を担う人材の知識や意欲等を高める取組を推進する。

 

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