「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

文部科学省による「理工系人材育成戦略」

文部科学省 専門教育課企画官 関 百合子氏
(第1回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

理工系人材育成の必要性は、いわゆる生産年齢人口が非常に減ってきている点にあります(下図)。65歳人口の割合が急激に増え(左のグラフ)、18歳人口の減少がずっと続いている(右のグラフ)状況があり、世界がグローバル化する中で、いかに他国に肩を並べて新しい産業を起こしていけるか、または技術を維持していけるかというところで、付加価値の高い理工系人材というのは非常に大切になってきます。また、社会構造がどんどん変化していく中では、これまでの価値だけではなくて、イノベーションが非常に大事になってきますので、理工系人材の育成は今まで以上に大切であるというのが戦略の発端となっています。質の充実はもちろんですが、18歳人口が減っていく中で、量的確保に向けても、人材育成に取り組んでいく必要があると考えます。

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その戦略の位置付けについて、まとめたものが下図となります。産学官がそれぞれの社会的役割、つまり責任と役割に応じて取り組むものではありますが、その際に当然ながら、産学官の協働が不可欠だと考えます。

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文部科学省では、今年2015年3月に「理工系人材育成戦略」として、2020年度末までに集中して進めるべき三つの方向性と10の重点項目を整理いたしました。


「戦略の方向性」の一つ目が「高等教育段階の教育研究機能の強化」です。二つ目は、初等中等教育段階の子供たちや、若者、女性、社会人を対象とした施策の推進。三つ目が、「産学官の対話と協働」となっており、ここで、産学官の対話の場として、「理工系人材育成に関する産官学円卓会議」が設けられたというわけであります。「理工系人材育成戦略」に基づき、産学官が協働して進める行動計画を作ることがこの会議の最大のミッションとなります。それぞれの項目にのっとり、実際に2020年に向けて戦略的な人材育成を図っていくことを目指しております。

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理工系人材に期待される活躍の姿は次の4つになると考えられます(下図)。一つ目は当然ながら「イノベーション」。二つ目が「起業、新規事業化」。起業家活動についてOECDの主要国で比較したグラフ(左下)を見ますと、日本は最下位となっています。アメリカと比べても3分の1の起業者であり、イノベーションを起こす、起業するといった精神も含めての部分が諸外国と比べると低いと言えると思われます。三つ目は「産業基盤を支える技術の維持発展」。右下の図は、産業界が衰退を懸念している絶滅危惧学科の例ですが、化学工学や冶金・金属工学、土木工学などの学問分野が脆弱になってくると、その産業基盤も脆弱になってしまいます。こうした技術をいかに維持発展していくかということも期待されているわけです。四つ目は、「第三次産業を含む多様な業界での力量発揮」への期待です。中央下のデータは、理・工・農学分野の就職動向について、平成5年と平成25年の比較をしたもので、この20年で就職について非常に変化していることがわかります。事務・販売・サービス職種を中心に第三次産業へ就職する人の比率が増えており、理科系の素養を持つ人材が多分野に行っている状況が見て取れます。

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ここからは、「理工系人材育成戦略」の10の重点項目について、順に説明いたします。

 

まず、「戦略の方向性1」の重点1「理工系プロフェッショナル、リーダー人材育成システムの強化」についてです。これは、大学等、高等教育段階における理工系教育の質保証を推進するというものです。大学が産業界とコミットしながら、課題解決型教育手法などによる体系的な職業教育プログラムを実施し理工系のプロフェッショナルを養成する、または、高等専門学校教育などの高度化に対する取組を行う、あるいは、優秀な博士課程の学生を広くグローバルに活躍できるリーダーとして育成するための体系的な教育を構築するといったことを挙げております。

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重点2は「教育機能のグローバル化の推進」です。技術者の活動は、研究者のみならず、国際化が非常に進展しており、語学だけではなく、世界規模の広い視野で課題発見・解決ができる理工系人材が求められています。留学機会の確保はもちろんですが、文系の留学と比べますと、実験等が多い理工系分野において、どのようにカリキュラムの一つとして留学プログラムを設定していくかといったことも課題の一つと思われます。現在は、「スーパーグローバル大学等事業」や「トビタテ!留学JAPAN」といった取組をしております。また、平成25年12月には、工学、農学、医療、社会科学分野を海外からの留学生の受入れ重点分野に設定したところであります。

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重点3「地域企業との連携による持続的・発展的イノベーション創出」については、地方創生とも関係しています。地域の企業との産学連携が重要であることは言うまでもありませんが、大学の研究成果を社会に還元するために、産学のマッチングをするための目利き人材「マッチングプランナー」を介在させた、被災地での復興促進プログラムを展開しているところです。また、地域イノベーション戦略支援プログラムも23年度から行っています。

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重点4は、「国立大学における教育研究組織の整備・再編等を通じた理工系人材の育成」です。国立大学ではミッションの再定義を数年前から行っておりますが、大学の強みや役割を改めて検討するとともに、今求められている産業的、社会的ニーズや役割に対応するため、限られた財源、資源の中で大学内の組織を整備・再編等することにより、機能強化を図ろうというものです。例えば、下図の秋田大学の例では、三つの学部を四つに再編するといった、全学的な組織再編を実施しています。

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「戦略の方向性2」となる、重点5は、「初等中等教育における創造性・探究心・主体性・チャレンジ精神の涵養」です。理科離れが叫ばれて久しいですが、例えば、下図右のPISAでは数学に対する学習意欲はOECDの中の平均以下となっています。また、その下の、OECDの教員の指導環境の調査「TALIS」では、日本の教員は生徒から主体的な学びを引き出す自信が低いといったことが調査結果から指摘されています。小・中学校の段階から理科を好きになってもらうためにも、科学が変化していく中で教える自信がないという声に対応するためにも、理科については、専門的な指導ができる教員を置く加配措置や、実験アシスタントの配置などを実施しております。高校では、チャレンジする個性の伸張を念頭に、「スーパーサイエンスハイスクール」事業や、大学と高校が連携し、高校生が大学で学ぶ「グローバルサイエンスキャンパス」事業に現在取り組んでいるところです。また、国際科学オリンピック等への支援も取り組んでいます。

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重点6「学生・若手研究者のベンチャーマインドの育成」としては、「グローバルアントレプレナー育成促進事業」と称し、いわゆる起業家精神の醸成をねらいとし、大学や企業が一緒にイノベーション人材を創出できるような取組を文科省で支援をしているところです。

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重点7「女性の理工系分野への進出の推進」については、例えば、JST(科学技術振興機構)の中で女性研究者の出産、育児、介護等があった場合の両立のための支援、JSPS(日本学術振興会)ではポスドクの産休等などからの円滑な復帰を支援しております。

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重点8「若手研究者の活躍促進」としては、今までも既に取り組んでいますが、雇用の安定のために、テニュアトラック制(若手研究者が安定的な職を得る前に、任期付きの雇用形態で自立した研究者としての経験を積む仕組み)を実施する大学を支援したり、幾つかの大学でコンソーシアムを形成し若手研究者のキャリアアップを図る仕組みを支援したりしているところです。

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重点9「産業人材の最先端・異分野の知識・技術の習得の推進」は、少し観点は変わりますが、社会人の学び直しの促進です。右側の円グラフにありますように、大卒社員が修士課程で学び直したいかという質問に対して、半分はしたいと答えています。しかし、費用が高い等の理由が学び直しの障害になっています。文科省では現在、産官学のコンソーシアムを組織しての学習プログラムや、大学院での学び直しのプログラムを展開しているところです。

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最後に、重点10は、「理工系人材育成・産学官円卓会議の設置」です。戦略を確実に実行するための行動計画を産学官の対話により検討し、人材の育成と人材需要・雇用のマッチングを促進することを図っていきたいと考えております。

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