「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

若手社員に対する「企業内理工系基礎教育」の状況


須藤 亮氏 株式会社東芝常任顧問(産業競争力懇談会)

(第2回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

須藤 亮氏
須藤 亮氏

私は、当会議には、産業競争力懇談会(COCN)の実行委員長として出席しております。COCNは、日本の大手製造業35社が加盟している団体で、科学技術に関して、年間10件ぐらいのプロジェクトを連携して進め、その成果を国などへの政策提言としてとりまとめ、国のプロジェクトなどを通じて、新しい技術の社会実装を加速しよういった活動を行っています。

 

今回は、COCN参加企業での若手社員に対する「企業内理工系基礎教育」の状況を調べてまいりましたので、紹介いたします。


まず、日立製作所、三菱電機、東芝等の電機系企業の状況です。各社とも、入社1年目から3年目の間に教育をしております。講師は社内の専門家、あるいは、だいたい社内に教育機関を持っておりますので、そこの専任講師、また、一部、大学教員で行っています。

機械系・電気系・情報系と幅広く、機械系では、俗に言う4力学、電機系では制御工学、電磁気学、電気回路、半導体基礎、信号処理。情報系ではコンピュータ基礎、アルゴリズム基礎、ネットワーク基礎などの講義を行っています。主に機械学会あるいは電気学会のテキスト、あるいは市販の教科書等、あるいは、社内に当然ノウハウが蓄積されていますので社内作成テキスト等を用いています。

下図は、経済産業省の調査(企業における現在の業務に必要な専門分野=学びのニーズ)の電機系人材についてまとめたものの上に、企業内教育として行っている内容を示したものです。横軸は、業務に必要な専門分野です。左の部分が、機械系、その右が電気系ですが、それらの割合の高いところを会社の方では教えており、企業内教育と学びのニーズとだいたい合っていると言えます。

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具体的な事例をお話しいたします。電機系A社の新人基礎工学履修状況・理解度についての調査結果です。機械系は材料力学、流体工学、熱力学、振動工学等、電気系は制御工学、電磁気学、交流回路、電子回路といった学問を大学で学んできたかという問いに対して、学んでこなかったという人は45%となっています(左の円グラフ)。右側がかなり問題なのですが、仕事をスタートするときに、こういった分野を理解していないという人が47%になっています。少し理解しているが29%、ある程度20%という状況です。特化した分野の専門技術力については、もちろん高いのですが、基礎的な知識の幅が狭いという状況になっています。

下図は、機械系の会社の例です。入社1年目、あるいは、会社によっては3年目以降も行っています。講師陣は、先に紹介した電機系とほぼ同じで、社内の専門家、社内専任講師、大学教員等。機械に特化した会社ですので、機械4力学は、その演習まで一般的に行っています。それから弱電、強電、制御。機械系ですので、やはり2D3D、CAD、製図やメカトロ技術といった教育をやり直しています。

企業の教育内容を、また、先ほどの経産省のグラフに重ねてみました。やはり、学びのニーズの高いところの教育が中心になっているということがわかります。

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次は、建設系の会社です。土木と建築と分かれていて、基礎的な教育がかなり異なっているということです。入社1年から6年目ぐらいまでと、かなりの期間をかけて学び直しを行っています。土木系企業では、コンクリート基礎や土木設計、建築では構造力学や材料などが教育内容です。

情報系は、かなり積極的な教育を各社行っており、入社1年から2年目で、グループ内の専任講師が教育に当たっています。システム構築、プログラミング、セキュリティ入門、ソフト・ファームウェア開発技術、サーバ・ネットワーク、ハードウェア機構といった情報系に必要な教育を実施しています。

下記は、C社の例です。この会社は社内に教育機関を持ち、外部でも要請されれば有料で教育・研修を行うために、きちっとしたカリキュラムを持っています。それを社内でも実施しているのです。入門として情報リテラシーやIT基礎、初級としてアプリケーション設計の基礎と、ITサービスマネジメント、OS、データベース、ネットワークセキュリティ、JavaやC言語等のプログラミングを教育しているということです。

この企業では、これらテクニカルなスキルに加えて、判断能力を高めるといったコンセプチュアルなスキルや、コミュニケーション能力といったヒューマンスキルも、研修では行っています。手段としての「情報」にならないように、工夫しているということです。

先ほどの経産省のグラフに、この教育内容を載せてみますと、やはり、比率の高いところの教育が行われています。

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化学・材料系では、入社1年から6年目で、プロセス技術、機械・電気・計装の設備技術などを行っているということです。

以上、業種ごとに紹介してきましたが、学部、修士(会社によっては博士にも)に対して、入社1年目から3年目の間に、社内の先輩や専門家、専任講師、社内講師を使って、教育を行っています。自分の会社の事業に関連した基礎的なところが中心なのですが、業種を問わずに行っているところは、やはり機械・電気・材料等の基礎的なところでした。経産省が調査した「学びのニーズ」と、企業の教育内容はほぼ一致していると傾向にありました。情報系については、かなり独自にカリキュラムを工夫しており、おそらく大学で学んでこなかっただろうというのを前提に、一から教えているというのが現状であると思います。ここのところが、当会議でも議論になるかと思います。

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