「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」報告

理工系人材育成に係る追加分析データ
(産業界のイノベーションニーズと学びニーズの関係、理系女性に係る分析データ等)[調査実施:河合塾]

経済産業省大学連携推進室 宮本岩男室長
(第3回「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」より)

第1回、第2回の円卓会議でもご報告いたしましたが、産業界で技術者として働く人約1万人にアンケート調査を実施しました(2015年1月下旬~2月上旬、調査実施:河合塾)。そして、「企業における現在の業務で必要な専門分野」についての回答結果(下図)をご紹介しました。ここからは、機械分野やITの分野に、産業人材の学びのニーズ、技術者の学びのニーズが高く表れていることがわかります。

 

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大学には、「教育」という大きなミッションがありますが、もう一つ、「研究」というミッションもあります。その辺りにつきまして、今回さらに解析いたしました。

教育ニーズとイノベーションニーズ ~大学の教育機能、研究機能の観点から

上図は、30の専門分野について集計したものですが、それらを細分化した、約200の専門分野で分析しているのが下図になります。


赤い折れ線が、産業界において、業務を遂行する上で習得するニーズが高い専門分野、簡単に言いますと「学びニーズ」。青い折れ線は、産業界の技術者の、特にその中でも研究職・開発職に所属している1300人くらいの方に聞いた、自分たちの事業のイノベーション等、新たな事業の展開・成長に向けて、研究が進むことが望ましい専門分野、つまり「イノベーションニーズ」です。緑の折れ線は、どのような分野にどの程度、研究者が存在するかというのを、科研費のデータベースのデータを用いて示したものです。

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左のほうから見ていきますと、機械、電気の専門分野については、赤い線も青い線もともに高く出ています。つまり、学びニーズもイノベーションニーズも高いという特徴が見えます。一方で、研究者数は、若干少ないのかもしれません。

 

右に進みますと、材料分野が出てきます。材料系の特徴を見ますと、赤い折れ線の学びニーズは比較的小さくて、一方でイノベーションニーズが高いという傾向が見られます。研究者数は、いくつかの分野で高いのですが、低い分野もあるという状況です。



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続きのグラフになりますが、上図では、左のほうにITの分野が並んでいます。特に、赤い折れ線=教育ニーズが圧倒的に高く出ている辺りが、ITの基礎的な分野になります。イノベーションニーズにしても一定程度はありますが、研究者は非常に少ないという状況です。

 

その右には、ITの先進分野である、人工知能、ヒューマンインターフェイス、画像処理、音声処理などが並んでいます。これらは、学びニーズは非常に低いのですが、イノベーションニーズはある一定程度あるという状況です。また、研究者数は、少ないですが、人工知能の分野ではある程度はいるということが見られます。

右の半分は、バイオ系の分野がずらっと並んでいますが、この分野に関しては、学びニーズはどの分野も非常に低く、イノベーションニーズに関しては、一部の分野では高く出ています。分子生物学、がんに関係する分野、薬学の一部でイノベーションニーズが出ています。一方で、研究者は多く、足りている状況であると思われます。

産業界が大学等に教育と研究とでは期待する内容が異なることがうかがえる分析となりました。本会議では、人材育成機能について議論をする場ですが、大学の教育と研究の機能を区分して議論していく必要があると思います。

専門分野を活かした就業と仕事のやりがい、年収の関係

下図は、産業界で働く技術者の方々が、大学のときに学んだ専門性をどの程度生かした仕事に就いているのかについて、職種ごとに分析したものです。全業種、約1万人のデータを集計しています。

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一番左端に「基礎・応用研究、先行開発」職種、次に「設計・開発」職種、右のほうには、「システムエンジニア」「保守・メインテナンス」「製造・施工」職種が並びます。これは、大学等のときに学んだ専門分野を強く関連づけて働いている割合が高い職種から、左から順番に並べました(赤線)。そして、それぞれの方に同時に調査した、現在の仕事のやりがいをどの程度感じているかと、給与のレベルはどうかということを、ポイント計算してみました。非常に乱暴な言い方をしますと、研究職や開発職については専門性が高く求められており、仕事のやりがいも高く感じておられる就業者の方が多い、どちらかというと給与も高いという傾向があります。専門性があまり求められないような職種になると、給与が下がり、やりがいも比較的低くなるという傾向にあります。


これを業種ごとに集計したのが、下図になります。

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機械系、電気系、材料系、化学系、建設系、情報系の業種をまとめました。どの業種も赤線の高い順に職種を並べていますが、やはり、「基礎・応用研究、先行開発」に関する研究職に関しては、専門性が高く求められている割合が高いのが、全業種共通となりました。専門性があまり求められない業種としては、「製造・施工」「保守・メインテナンス」などが、どの業種でも多くなるという傾向にあります。


「仕事のやりがい」から見てみますと、専門性が高い職種に関してはやりがいも高い傾向にあり、どの業種も、赤い線(専門性)と青い線(やりがい)はおおむね連動するような形になっていると言えます。一方で、仕事のやりがい(青い線)と年収の水準(緑の線)の関係を見ますと、青い線と緑の線は連動性が非常に悪く、必ずしも年収が高いとやりがいが高いとは言えないようです。年収が高いとやりがいもあるように思えるのですが、そうではなくて、むしろ専門性をどう生かして仕事ができているかということのほうが、仕事のやりがいと高い関連性があるように見えます。

それが顕著に出ていますのが、右下の情報系におけるコンテンツ作成等のクリエイティブ系職種に就いている方々です。この人たちの年収は情報系におきまして最も低くなっていますが、一方でやりがいについては、研究・開発職以外の職種では最も高くなっています。これらのことから、就業者の専門性を生かした就業を促進するということが、企業にとっても高い意義があるのではないかと思われますので、紹介をさせていただきました。

理系の女性の状況

理系全体の裾野の拡大に向けて、特に理系の女性が少ないという観点から、理系の女性をどう拡大するかという議論もあります。理系の女性という観点から、データを整理しました。

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上図は、男女に分けて文理別の人数を比較したものです。高校3年時、男性の場合は、文系志望が10人に対して、理系は7.5人くらいの比率となります。一方、女性の場合は、高校3年で、文系が10人いると、理系志望は2.9人くらいです。その比率が、そのまま大学生の理系・文系の比率と連動しています。


さらに、女性の場合は、修士になりますと、理系のうち、保健または看護にいる方が多いからだと思いますが、その人たちが修士に進まないため、修士の理系の女性数は男性に比べて圧倒的に少なくなるという構造も見えてきます。

1万人の産業人のアンケートから、男性・女性がどのような専門分野にどのような割合で分布しているか比較しました(下図)。青の棒グラフが男性、赤の棒グラフが女性です。

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女性が男性より多い割合で分布している分野は、化学、建築、生活・家政、デザイン、バイオ分野となっています。そもそも理系の女性にもっと活躍していただくためには、女性の理系への進学割合を高めることも必要ですが、一方で、教育ニーズがそれほど高くない、生活・家政、デザイン、バイオの分野に多くの理系の女性が偏って分布しているという状況から、理系センスを持つこれらの分野の人たちに、他の理系分野でも活躍していただけるような対策を施すことも必要ではないかと考えられると思います。


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